黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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どうやら完全にパソコンがいかれたため、ノーパソで投稿します。

なるべく早めに修理をしてもらうつもりですが、時間がかかるかも。

なお、一期の話は書きあがっているので投稿はできると思います。


黒騎士とギンガの光

 

「わっしー……会いたかったよ」

 

 再び現れたバーテックス。

 

 それと戦った勇者部。

 

 樹海が崩壊して元の世界へ戻った。

 

しかし、友奈と美森の二人はどういうわけか違う場所へ飛ばされて、包帯に巻かれた少女、乃木園子と出会う。

 

「あなたが戦っているの……ずっと感じていた。呼び出しに成功したよ」

 

「わっしー?」

 

「えっと、東郷さんの知り合い?」

 

「いいえ、初対面の筈よ」

 

「っ!」

 

 初対面。

 

 この言葉に乃木園子はショックを受けながらも話を続ける。

 

「ごめんね、わっしーっていうのは私の大切な友達の名前なんだ。それと、バーテックス退治お疲れ様」

 

「あなたは、バーテックスを知っているんですか!?」

 

「知っているもなにも私は勇者として戦っていたから、名前は乃木園子っていうんだ」

 

「勇者として、戦っていた?」

 

「うん、そうだよ~、一応は先代の勇者なんだ」

 

「先代……」

 

「私はね、大切な友達と一緒に戦ってたんだ、まぁ、今はこうなっちゃったんだけどねぇ」

 

「まさか……」

 

「友奈ちゃんは満開したんだよね?」

 

「はい、しました」

 

「咲き誇った花はどうなると思う?」

 

 何か思うところがあったのか美森はリボンを握り締めていた。

 

「散華……神の力を振るった人間への代償」

 

 乃木園子は話を続ける。

 

 満開をするたびに散華として体の一部を神樹へ捧げる。

 

「じゃあ、その体は」

 

「うん、代償の影響だよ~」

 

「どうして、私達が」

 

「神が選ぶのはいつだって無垢な少女。汚れがないから神の力を振るうことができる。だからこそ、黒騎士さんの存在を大赦は邪魔だと思っているんだろうねぇ」

 

「黒騎士さん……」

 

「そして、俺のことも邪魔に思っているのだろう」

 

 雲に乗ってニンジャマンとガオシルバーが降り立つ。

 

「ガオシルバーさん!」

 

「貴方が二人目の黒騎士さんと同じ戦える人なだね~」

 

「ガオシルバー……大神月麿だ。そのっち」

 

 ガオシルバーの言葉に乃木園子は目を見開いて、小さく笑みを浮かべる。

 

「あはは」

 

 笑みを浮かべた園子。

 

 ニンジャマンは傍観していたが急に身構える。

 

 視線を向けると大赦の人間が友奈たちを囲んでいた。

 

 包囲するような彼らの動きにニンジャマンとガオシルバーは身構える。

 

「私を連れ戻しに来たみたい……抜け出したのがばれちゃったから」

 

「そのっち……」

 

「この子達を傷つけたら許さないよ。私が呼んだ大切なお客様だから」

 

 園子の言葉に大赦の人間は頭を垂れる。

 

「ごめんね、怖い思いをさせちゃってシステムのことを隠したのは大赦なりの優しさだと思うんだよ……でも、私は、そういうことをいっておいてくれたほうが良かったと思うなぁ……そうだったら、あの人と会った時に」

 

 最後の方は声が小さすぎて聞き取れなかった。

 

「ウソつき……」

 

 誰にも聞き取れないくらい園子は小さな声で呟く。

 

 ガオシルバーとニンジャマンの二人は大赦の人間がいなくなって友奈と美森へ近づいた。

 

「二人とも大丈夫か?」

 

「ケガとかはないか!?」

 

「は、はい!色々あって驚きましたけど……その、ニンジャマンさんとガオシルバーさんはどうしてここに?」

 

「お師匠様に呼ばれたんだ」

 

「お、お師匠様?」

 

「おう!六大神の中で三神将と呼ばれているんだ!」

「あの、ニンジャマンさん!」

 

「おう!」

「お願いがあります!」

 

 東郷美森はあることを考えていた。

 

「ニンジャマンさん、お願いです。六大神様に会わせてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日向が海岸沿いを歩いているといきなり背後から襲撃を受ける。

 

 ひらりと躱すと目の前に現れたのは木刀を構えた三好夏凜。

 

「何の用だ?」

 

「アンタ、風に何をしたのよ!」

 

「何のことだ?」

 

「とぼけるなぁああああああああ!」

 

 叫びと共に振るわれる木刀を躱す。

 

 繰り出される一撃を日向は回避して距離をとる。

 

「俺は何の覚えもない」

 

「ふざけんな!アンタとで、デートをしてから風の様子がおかしくなったのよ!うどんなんて一杯食べてお腹いっぱいだっていうし、独り言も増えたんだから!」

 

「……独り言はともかく、うどん一人前でお腹いっぱいは普通じゃないのか」

 

 日向の問いかけに夏凜は視線をそらす。

 

 正論ではあった。

 

「だとしても!アンタが風に何かを言ったから症状は悪化したのよ!責任をとりなさい」

 

「どうしろというんだ?」

 

「風に会いに行くこと」

 

「それはできない」

 

「なんでよ!?」

 

「俺は俺でやることがある」

 

 そういうと日向は歩き出す。

 

 夏凜が追いかけようとする。

 

 くるりと日向は向きを変えて近くの茂みの中へ入っていった。

 

「あ、こら!」

 

 茂みの中に入った日向の視線は木の傍で腰かけている少年へ向けられていた。

 

「久しぶりだね!日向」

 

「……そうだな、風太郎。いや――」

 

 鋭い瞳で日向は告げる。

 

「ガオゴッドと呼ぶべきか?」

 

「ううん、風太郎って呼んで!日向とは風太郎として接したいから」

 

「そうか……何の用だ?」

 

「会いたかったから……それと、警告だよ」

 

「警告?」

 

「日向…………ううん、黒騎士ブルブラックに」

 

「私だと?」

 

「警告する。ギンガの光に手を出すな。あれに手を出すということは人が滅びるということにつながる」

 

「フッ」

 

 一瞬で日向は深層意識へ沈み、ブルブラックが体を支配する。

 

 日向が消えたことで子供だった風太郎から神格が放たれた。

 

 普通の人なら吐き気を催して気絶してしまうほどの神格を前にしてブルブラックは臆することがない。

 

 それどころか風太郎へブルライアットを突き付ける。

 

「私はお前達のように人間に可能性を見出してなどいない。人間は醜い、私は私の目的のために行動する。そのためにギンガの光は必要だ」

 

 風太郎を前にブルブラックは揺るがない。

 

 日向を通してブルブラックの瞳を見た風太郎ことガオゴッドは理解してしまう。

 

 彼の信念は揺らがない。

 

 決して彼は諦めない。

 

 ブルブラックはギンガの光を手に入れるためなら手段を択ばない。その気になれば人間を滅ぼしてしまう。

 

 黒騎士ブルブラックは決して止まらない。

 

 理解してしまった。

 

「私はクランツを生き返らせる。そのためにギンガの光を求める」

 

 風太郎は去っていくブルブラックを追いかけることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犬吠埼家。

 

「お姉ちゃん……」

 

 樹は部屋に閉じこもっている風の身を案じる。

 

 日向とデートをしてからというものの様子がおかしい。

 

 友奈や夏凜、皆が心配しているが風は部屋から出てこなかった。

 

「お姉ちゃん……どうしたら」

 

 彼女の脳裏を過ったのは“彼”のこと。

 

「日向さんなら……」

 

「今、なんていった?」

 

 ガラリと扉が開かれる。

 

 ドアの向こうから顔を出したのは風だった。

 

 彼女は瞳孔を広げた状態で樹に歩み寄る。

 

「お、お姉ちゃん?」

 

 いつもと違う風の様子に樹は後退る。

 

「樹、今、なんていったの?」

 

 ゆらゆらと体を揺らしながら風は樹へ近づいていく。

 

 その姿に樹は恐怖してしまう。

 

 

――大好きなお姉ちゃんと何かが違う。

 

 

 ジリジリと下がって行って樹は壁へ追い込まれた。

 

 バンと風は樹のすぐそばに手を叩く。

 

 びくぅ!と樹は体を縮こませた。

 

「樹……彼はどこ?」

 

「ぇ?」

 

「彼がいない……いないの、どこにも、私は、独り」

 

「お、お姉ちゃん?」

 

 風の様子に樹はどう、声をかけていいのかわからない。

 

 その時、風の後ろから黒いモヤモヤした何かがみえた。

 

「え?」

 

 その正体を確認しようとした時、俯いていた風が顔を上げた。

 

 瞳から光は消えて、その顔は幽鬼を連想させる。

 

 怯えてしまった樹を前に風の姿が変わった。

 

 黒い鬼のような姿に樹は息をのむ。

 

「フッフッフッ」

 

 不気味に笑いながら外へ飛び出す。

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

 樹は慌てて外へ飛び出す。

 

 目的地は赤龍軒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、美森と友奈達はニンジャマンと大神と共に六大神に会うためにある場所へ訪れていた。

 

「……ニンジャマンさん、ここは?」

 

 四国の中に樹海のように広がる森があったことに彼女は驚いていた。

 

「勇者の森だ!」

 

「勇者の森?」

 

『そうだ』

 

『ここは西暦の時代、バーテックス、そして、天の神と戦った者達が眠る場所』

 

『神樹がいる場所と同じくらい神聖とされる場所である』

 

「お師匠様!!」

 

 友奈と美森達の前に無敵将軍、ツバサマル、隠大将軍が現れる。

 

 幻影のように揺らいでいるが彼らの放つ神格に友奈達は驚く。

 

 ニンジャマンは彼らに頭を下げる。

 

『怯えることはない。神世紀の勇者よ』

 

『我々はキミ達、それより前の勇者や巫女たちを見守ってきた……』

 

「お願いがあります」

 

 車椅子を押して美森が前に出る。

 

「私の失われている記憶、それを取り戻す方法を教えてください」

 

「東郷さん!?」

 

 驚く友奈を余所に美森は叫ぶ。

 

 少し離れたところで様子を見ていた大神は顔をしかめていた。

 

『大神よ』

 

 拳を握り締めていた大神へ現れたガオゴッドが問いかける。

 

『今こそ、話すべきだ』

 

「ガオゴッド……」

 

『東郷美森よ。お前の隠された真実を知るべき時だ』

 

「私の……隠された真実?」

 

 ガオゴッドの言葉に美森は戸惑った声を上げる。

 

 周りを見て、彼女は大神へ視線を向けた。

 

 その目は震えている。

 

 大神は少し考えて。

 

 

「東郷美森……キミは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴウタウラス、時はきた」

 

 ブルブラックは樹海の中にいた。

 

 彼を見下ろすゴウタウラス。

 

「今こそ、ギンガの光を手に入れる!そのためにこの大地を破壊する!」

 

「!!」

 

 ゴウタウラスは体を左右に揺らす。

 

「なにを躊躇う?誓ったはずだ!復讐を果たすと、そしてギンガの光の力でクランツを蘇らせると!」

 

 ブルブラックにゴウタウラスは吼える。

 

「昔に戻りたい?何を言う!昔に戻ってどうする?昔へ戻ったとしても私の周りには誰もいない!わかるか?復讐を果たせなかった現在!私にはもう、クランツを取り戻すことしか意味がないのだ!」

 

 黒騎士ブルブラックの慟哭ともいえる叫びにゴウタウラスは何も言えなくなる。

 

 三百年、それ以上の長い時間を黒騎士ブルブラックは思い続けた。

 

 弟のクランツを生き返らせること。

 

 復讐の相手である宇宙海賊が天の神、バーテックスによって滅ぼされてしまった今、彼はたった一つの願いを果たすために行動を移す。

 

 全ては愛しい者との再会を願って。

 

「ゴウタウラス!行くぞ!」

 

 その願いと思いを知っているからこそ、ゴウタウラスは否定することはできなかった。

 

 ゴウタウラスは赤い光を放つ。

 

 光を浴びたブルブラックは重騎士へ姿を変えるとともにゴウタウラスと合身して、合身獣士ブルタウラスとなった。

 

「今こそ、手に入れる!ギンガの光!そのために消えてもらうぞ!神樹!」

 

 樹海の中、ブルタウラスが叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東郷美森……いや、キミは乃木園子と同じ先代の勇者の一人なんだ」

 

 大神は覚悟を決めて話す。

 

 数年前、神樹によって勇者を集めることになった大赦は適性検査の末、三人の勇者を呼び集めた。

 

 乃木園子、

 

 三ノ輪銀、

 

 そして、鷲尾須美。

 

 小学生という幼い彼女達は大赦からの特訓を受けながらお役目を果たすための準備をつづけた。

 

 そして、来るバーテックスの戦い。

 

 突然でありながらも三人の勇者はバーテックスに挑み、追い払うことに成功した。

 

 しかし、犠牲もあった。

 

 勇者の一人、三ノ輪銀。

 

 彼女は戦いの最中に行方不明になった。

 

 大赦は彼女を死亡として処理する。

 

 残り二人という事態になりながらも勇者はバーテックスに挑んだ。

 

「俺は二人を死なせないために闇狼の面を使うことにした。闇狼の面はかつて、奇跡を呼び起こしたといわれる者達の力をたった一度だけ使えるアイテムだと俺は聞いていた。結果的に俺はガオウルフ、ガオリゲーター、ガオハンマーヘッドという精霊の力を借りてバーテックスを倒すことに成功した……代償として人としての記憶を失い、狼鬼として俺は姿を変えてしまったのだが」

 

『そして、勇者の二人も無理な満開をつづけた結果、乃木園子は大赦によってご神体とあがめられた。もう一人の勇者……鷲尾須美は名前を変えて別の人間として生活を送ることに』

 

『しかし、バーテックスの再びの襲来により勇者として選ばれてしまった。つまり』

 

「私の失われた記憶というのは勇者として満開を使ったためによる後遺症?」

 

 究極大獣神の言おうとしたことを美森は先に言う。

 

『その通りだ』

 

 頷く究極大獣神。

 

『戦いはまだ終わりではない』

 

 ガオゴッドの言葉に友奈と美森、大神の視線が向けられる。

 

『バーテックスはあくまで先兵、真に倒すべき敵がいる』

 

 六大神は告げる。

 

 人を滅ぼすことを決めた神を名乗るもの。

 

 バーテックスを生み出し、人を消し去ろうとする悪意。

 

 その名を――天の神。

 

「ウソ……」

 

 美森は俯く。

 

「そんなことが」

 

「……えっと、東郷、さん」

 

 友奈は言葉を詰まらせる。

 

 目の前の美森は美森ではない。

 

 何より戦いがまだ終わっていないというダブルパンチに友奈自身もダメージを受けていたのだ。

 

『自分がどういう存在であるかは自分で決めることができる』

 

 沈黙していたゴセイアルティメットの言葉に美森や友奈が顔を上げる。

 

『キミ達がどうありたいか、それが重要なのだ』

 

『キミ達は大赦に選ばれた。しかし、今までの行動、覚悟、全ては決められたものではないはずだ』

 

『決められた運命だとしても、最後まで決められているわけではない。すべては自分の選択が全てなのだ』

 

 無敵将軍、ツバサマル、隠大将軍が友奈達を見下ろす。

 

「そんなこと……あるわけがない」

 

 ぽつりと美森が言葉を漏らす。

 

 顔を上げた彼女の顔は蒼白になっている。

 

 

絶望、

 

 

 その一色に東郷美森の顔は支配されつつあった。

 

「こんなことなら……みんな、何もかも、消えてしまえば」

 

「と、東郷さん」

 

 友奈は彼女に違うと叫びたかった。

 

 しかし、その言葉が出てこない。

 

『可能性はある』

 

 究極大獣神が二人を見下ろす。

 

「か、可能性?」

 

『そう』

 

『終わりの見えない戦い。だが、その戦いを終わらせられる可能性が存在している』

 

『人でありながら神を殺す禁断の領域、神殺しに至れる可能性を秘めたもの』

 

『だから、我々は彼を未来へつなぐことを決めた』

 

「何を、何を言っているの!?」

 

 叫ぶ美森。

 六大神の言いたいことがわからず錯乱したように顔を振って叫ぶ。

 

『黒騎士、落合日向』

 

 ガオゴッドがその名を告げる。

 

「日向、さん?」

 

 ピタッと美森が動きを止めた。

 

 友奈も信じられないという表情で六大神をみる。

 

『かつて、落合日向は天の神を傷つけた。その時、わずかながら神殺しとしての力を得た』

 

『だが、天の神は落合日向を恐れて永遠の呪いを与えようとした』

 

『我々は後の未来、人を守る者、そして、落合日向を守るために永い眠りにつかせた……だが、そのために落合日向の人格は不安定になり、深層意識に沈んでいたもう一人の存在が表に出始めている』

 

『今のままでは、人類を滅ぼす脅威となるだろう』

 

「もう一人の存在だと?」

 

「お、お師匠様!それは一体、どういうことなんだ!」

 

 大神とニンジャマンが真意を問いかけようとした時。

 

 友奈と美森の端末が警報を鳴らす。

 

「え、なに、これ?」

 

 突然のことに友奈と美森が戸惑いの声を漏らす。

 

『起こってしまったか』

 

 ゴセイアルティメットが悲しむように見上げる。

 

 同じように無敵将軍、カクレマル、隠大将軍、ガオゴッド、究極大獣神も似たような反応をしていた。

 

「お師匠様!どうしたんだ!」

 

 問いかけようとした時、地震が起こる。

 

 直下型だったために全員の体が少しばかり揺れた。

 

「な、何が?」

 

『これを見るのだ』

 

 無敵将軍が四人の前に映像を見せる。

 

 樹海の中。

 

 四国と外の世界を囲んでいる壁を壊し、ブルタウラスが地面へ雷撃を放っている。

 

「ブルタウラス?」

 

「何をやっているの?」

 

『外と四国の境界を壊してバーテックスを呼び寄せ、神樹を滅ぼすつもりだ』

 

「神樹様を!?そんなことをしたら大勢の人が!」

 

「何だって、そんなことを!」

 

『ギンガの光』

 

 隠大将軍が告げる。

 

『ブルブラックはバーテックスと重星獣の力を借りて神樹の中に宿っているギンガの光を取り出すつもりだ。その代償として今の人々は滅びてしまう』

 

「そんなこと!させるわけにいかない!」

 

 拳を握り締めて大神は叫ぶ。

 

 大神は外へ出るために走り出そうとして立ち止まる。

 

 ちらりと美森と友奈をみた。

 

「俺は狼鬼として勇者を傷つけようとした過去がある……過去を変えることは出来ないのだろう」

 

 でも、と大神は言う。

 

「俺は戦う……勇者を、キミ達を守りたかったという気持ちを“なかった”ことになんてしたくはないから!」

 

 森の中を大神は走る。

 

「東郷さん」

 

 彼の姿を見て友奈は思い出す。

 

 友奈は東郷の前に立って彼女の手を握り締める。

 

「友奈ちゃん?」

 

「東郷さん、私、戦うよ?」

 

「どうして!そんなことをしたら友奈ちゃんが!傷ついちゃう!」

 

「だけど、困っている人を見捨てるなんてできない」

 

 叫ぶ美森を前に友奈はにこりとほほ笑む。

 

「勇者部五ヶ条!一つ!なるべく諦めない!」

 

「おわっ!?」

 

 ニンジャマンが驚きの声を上げる。

 

「勇者部五ヶ条!一つ!よく寝て!よく食べる!」

 

「ゆ、友奈ちゃん?」

 

「勇者部五ヶ条!一つ!悩んだら!相談!」

 

「え?」

 

「勇者部五ヶ条!なせば大抵!なんとかなる!」

 

 戸惑う美森の前で友奈は叫ぶ。

 

 一通り叫んだ友奈は笑顔で美森を抱きしめる。

 

「私は犠牲になるために戦う訳じゃない。私は東郷さんや風先輩、樹ちゃん、夏凜ちゃん、みんなを守りたい。普通に暮らしている人達を守りたいから勇者として戦うんだ!」

 

「でも、戦えばまた記憶を失うかもしれない!嫌なの!大事な人、大好きな人を忘れるのが!」

 

「私は忘れない!」

 

「ウソよ!」

 

「ウソじゃないよ!」

 

「ウソよ!」

 

「ウソじゃない!!」

 

 美森より大きな声で友奈は叫ぶ。

 

「絶対!何があっても私は東郷さんを忘れない!そして、皆を守るんだ!」

 

「……本当に?」

 

「うん、勿論!」

 

「友奈ちゃん……」

 

 二人は互いを抱きしめあう。

 

 その姿を見てニンジャマンは涙をこぼしていた。

 

「くぅぅぅ!なんて感動的な光景なんだ!」

 

 バン!とニンジャマンは拳を叩く。

 

「友奈!美森!俺がお前達を樹海へ連れていく!」

 

「ありがとうございます!」

 

「……ありがとう、ございます」

 

 三人の姿がみえなくなってから六大神は互いをみる。

 

『可能性は一つではない』

 

『人間それぞれが可能性を秘めている』

 

『悪意ある者もいるだろう、しかし、そうでない者もいる』

 

『黒騎士ブルブラックの願いが全てを滅ぼすか、人の可能性、否、互いを思いやる気持ちが勝るか……』

 

『だが、このままではすべてが滅びてしまう』

 

『天の神の使いが動き出している』

 

 六大神は樹海の方をみる。

 

 瘴気を放つ存在が彼らに向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落合!!」

 

 バーテックスを踏みつぶしながら目的地を目指すブルタウラスの前にガオハンターが現れる。

 

 ガオハンターにバーテックスが襲い掛かろうとするが踏みつぶされていく。

 

「どういうつもりだ!なぜ、壁を壊した!」

 

「邪魔をするな」

 

 近づこうとするガオハンターをブルタウラスは殴り飛ばす。

 

「私はギンガの光を取り戻す。邪魔をするならガオシルバー、貴様も倒すぞ!」

 

「なぜ、なぜなんだ!」

 

 ガオシルバーは叫ぶ。

 

 しかし、ブルタウラスは攻撃してくるだけで答えはしない。

 

「戦う、しかないのか!」

 

 ガオシルバーはガオハンターを操り武器を取り出す。

 

「そうか、邪魔をするか、ならば、貴様は敵だ!」

 

 ツインブルソードを構えるブルタウラス。

 

 同じようにガオハンターもリゲーターブレードを構えた。

 

「ど、どうなってんのよ」

 

「黒騎士さんとガオシルバーさんが、どうして?」

 

 少し離れたところで樹と夏凜はその光景を見ている。

 

 二体が戦う光景を見て二人は戸惑いの声を上げるしかない。

 

「夏凜ちゃーん!樹ちゃーん!」

 

「友奈!」

 

「友奈先輩!?東郷先輩!」

 

 彼女達の前にニンジャマン、友奈、東郷が姿を見せた。

 

 雲から降りた三人に夏凜と樹が問いかける。

 

「何が一体、どうなってんのよ!?バーテックスが大量にいて、ブルタウラスとガオハンターがどうしてやりあっているの!?」

 

「実は」

 

 友奈は二人へ話す。

 

 天の神のこと、戦いのこと。

 

 そして、黒騎士の目的。

 

「そんなこと!したら普通の人が死んじゃうじゃない!」

 

 叫ぶ夏凜。

 

 その顔は裏切られたという表情をしている。

 

「だから、ガオシルバーさんが止めようとしているんだ」

 

「ようし!俺も」

 

「見てください!」

 

 ニンジャマンも加勢しようとした時、異変が起きる。

 

 樹の言葉に全員が視線を向けるとブルタウラスがバチバチと火花を散らすと爆発を起こす。

 

 爆風と共に合身獣士からゴウタウラスと黒騎士へ分離する。

 

「何が」

 

 戦っていたガオシルバーも戸惑いの声を上げた。

 

 地面へ落ちたブルブラック。

 

「ゴウタウラス!どういうつもりだ!」

 

 起き上がったブルブラックへゴウタウラスは一鳴きするとそのまま破壊した壁の方へバーテックスを蹴散らしながら向かう。

 

 ゴウタウラスの叫びに何かを感じたのかガオハンターも歩き出した。

 

「なぜだ!誓ったはずだ!復讐を果たすと!」

 

 叫ぶブルブラックにゴウタウラスは振り返ることなく去っていった。

 

「ならば、私一人でも!」

 

「黒騎士ぃぃぃいいいいいい!」

 

 振り返りながらブルブラックは距離をとる。

 

 彼の前に風を除く勇者部が現れた。

 

「今すぐ立ち去りなさい!」

 

「日向さん!どうして、こんなことを!」

 

「……なんだ、まだ気づいていないのか?」

 

 樹の言葉にブルブラックは笑う。

 

「何が、おかしいの!?」

 

 東郷の叫びに笑うことをやめてブルブラックは告げる。

 

「日向の意識は奥底に眠っている。契約を果たしてもらうためにな!」

 

「え!?」

 

「じゃあ、貴方は」

 

「私はブルブラック、落合日向に力を与えた者でありギンガの光を手に入れる者だ!」

 

 ブルライアットを抜いて勇者達へ斬りかかる。

 

 ガオハンターから飛び降りたガオシルバーがその刃を受け止めた。

 

「大神さん!」

 

「やめろ!彼女達を傷つけるつもりか!?」

 

「ギンガの光を手にするために邪魔をするなら斬る!」

 

 振るわれるブルライアットの一撃がガオシルバーに炸裂する。

 

 攻撃を受けたガオシルバーが倒れた。

 

「やめて!」

 

 東郷が銃口をブルブラックへ向ける。

 

「ブルブラックさん!どうして、どうして、ギンガの光を手にしようとするんですか!?」

 

「ギンガの光は元々、この私が地球へ持ち込んだ。本来の持ち主が取り戻そうとして何が悪い?」

 

「じゃあ、どうして、アンタの手元にないのよ!」

 

「三千年と三百、遠い昔、私はギンガの光をこの星へ持ち込んだ。だが、それを狙ってやってきた宇宙海賊に深手を負わされて一時的に手放す他なかった。そして」

 

――私も地割れの中で深い眠りについた。

 

「三百年前、私はある青年と契約を結んだ」

 

「契約?」

 

 夏凜の問いかけにブルブラックは小さく笑う。

 

「バーテックスに殺された弟の復讐を果たすこと、その契約が果たされた際にその肉体を私に与える事、私は奴の体を手にしてギンガの光を取り戻す」

 

「ち、ちょっと待ちなさいよ!アンタ、落合日向の体を奪っていることじゃない!?」

 

「そういう見方もある。だが、私の力を与えたことで落合日向という人間は再び生きる意味を得た……といってもお前達に理解はできないだろうな」

 

 ブルブラックは剣先を勇者達へ向ける。

 

「勇者よ。俺はお前達にとっての魔王だ。邪魔をするというのなら斬る。どうする?」

 

「上等!アンタを、ブルブラックを倒すわ!」

 

「夏凜ちゃん!」

 

 友奈の呼ぶ声に応えず夏凜は二つの刃でブルブラックへ挑む。

 

 振るわれた斬撃を受け止めてブルライアットで弾き飛ばす。

 

「何なのよ。アンタは」

 

「既に名乗っている」

 

「そういう意味じゃない!アタシ達を助けたと思ったら今度は敵になって、何が目的なのよ!」

 

「……それをやってきたのは落合日向に過ぎない、私は力を貸していたのみ。目的のために時を待っていたに過ぎない」

 

「じゃあ、今までアタシ達と接してきたわけじゃないの」

 

「そうだ。どうだ?迷いは晴れたか?」

 

 ブルブラックの問いかけに夏凜はちらりと後ろを見る。

 

「夏凜ちゃん?」

 

 友奈と目が合う。

 

「ええ、迷いが晴れたわよ。私は大赦から派遣された勇者、ただ、お役目を果たすため……そう思っていた。でも、勇者部と、友奈達と知り合って触れ合い。わかった!私が戦うのは大赦のためじゃない!私の守りたいもののだめだ!」

 

 夏凜は叫ぶと同時に満開する。

 

 満開の力は黒騎士を圧し始めた。

 

「満開、神樹の加護か…………確かに、その力なら私を倒せただろう。だが!」

 

 とどめをさそうと夏凜が一撃を繰り出そうとした時、ブルブラックの掌から火焔が放たれた。

 

「!?」

 

 繰り出された一撃を防いだ。

 

 しかし、既にブルブラックは夏凜の背後に回り込んでいる。

 

「黒の一撃」

 

 ブルライアットの一撃が満開していた夏凜の体を斬る。

 

「夏凜ちゃん!」

 

「やめてください!」

 

 我慢できず樹が飛び出す。

 

 彼女の力をブルブラックは弾き飛ばしてブルライアットをショットガンモードにする。

銃口を彼女へ向けようとした時。

 

 

――やめろ!

 

 

 ブルブラックの動きが止まり、樹を気絶させるにとどまった。

 

「夏凜ちゃん!樹ちゃん!」

 

「殺しはしていない……チッ、日向め、未練があるというか」

 

「ブルブラックさん!」

 

 一歩、友奈が前に出る。

 

 拳を握り締めていた友奈。

 

「憎いか?」

 

 彼女へブルブラックが問いかける。

 

「お前の友を、仲間を傷つけたこの私が憎いか?ならば、戦え、そうすることでしか憎しみは止まらない。私のこの願い、阻むものは何があろうと許しはしない、叩き伏せる!」

 

「私は――戦いません」

 

「―――なに?」

 

 ブルブラックが問いかけようとした時、背後から刃が貫いた。

 

「!?」

 

 後ろで東郷が悲鳴を漏らす。

 

「ブルブラックさん!?」

 

 驚いて友奈が叫ぶ。

 

「貴様……」

 

 ブルブラックは襲撃した相手をみる。

 

 黒い鎧に体を包み込んだ風の姿がそこにあった。

 

「風先輩!?」

 

「違う……貴様は!」

 

 刃を抜きながら襲撃した風は笑みを浮かべる。

 

「愚かなり、黒騎士」

 

 笑いながらさらに一撃、ブルブラックに繰り出す。

 

 攻撃を受けて倒れるブルブラック。

 

「そうか、貴様……ジンバだな」

 

「いかにも、暗闇暴魔ジンバ……だ」

 

 風の体が完全に鎧に包まれて、三百年前、四国の勇者と戦った天の神の配下、暗闇暴魔ジンバに姿を変える。

 

「貴様、勇者の娘を依り代に」

 

「三百年、黒騎士、貴様への憎しみのみで俺は生きてきた。精神だけとなり、恨みのみ!丁度いいところに貴様への憎しみを抱く小娘がいた。体のいい依り代になったぞ」

 

 とどめをさそうとジンバが刃を振り上げる。

 

「待て待てぇえい!」

 

 ニンジャマンが刀でジンバの攻撃を受け止めた。

 

「貴様の相手はこの俺が相手だ!」

 

「邪魔立て、無用!」

 

「ブルブラックさん!」

 

 戦い始める二人を余所に友奈がブルブラックを抱えて歩き出す。

 

 しかし、そこにバーテックスが近づこうとしていた。

 

「友奈ちゃん!」

 

 銃を構えた東郷がバーテックスを射抜く。

 

「東郷さん!」

 

「ここは私に任せて!」

 

「俺も、残る!」

 

 起き上がったガオシルバーが東郷を狙っていたバーテックスを切り伏せる。

 

 友奈は傷ついたブルブラックを抱えて離れた場所へ向かう。

 

「なぜ、私を助ける」

 

「前に私を助けてくれましたから!」

 

「それは落合日向がやったことだ。私ではない」

 

「でも、貴方の力があったから日向さんは私達を助けてくれたんです!」

 

「……」

 

 友奈の言葉にブルブラックは沈黙する。

 

「お前は私のやることを肯定するのか?」

 

「それは」

 

「ギンガの光は神樹の中にある。私が神樹からギンガの光を奪えば神樹は弱まり、この四国は滅びるだろう。それでも肯定するのか?」

 

「……私はわかりません、でも間違っているなら止めないといけないと思います」

 

「フッ」

 

 ブルブラックは座り込む。

 

「私、行きます」

 

「結城友奈よ。貴様は何のために戦う?」

 

「皆を、大勢の人たちを守るため、私は勇者ですから!」

 

 そういって友奈は戦いに向かう。

 

 彼女の姿を見てブルブラックは近くの岩場にもたれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニンジャマンは吹き飛ばされる。

 

 彼の周りに無数のバーテックスがいた。

 

 少し離れたところでジンバが笑う。

 

「青二才、貴様も終わりだ」

 

「今、なんといったぁ!俺のことを青二才といったなぁあああああああああああああああああああああああ!」

 

 ニンジャマンは叫びと共に変身する。

 

「サムライマン!」

 

 肩や脚部などを展開して変身したサムライマンは目の前のバーテックスを切り裂いてジンバへ迫った。

 

「俺を殺せば、中の女は死ぬぞ?」

 

 ジンバの言葉にサムライマンは動きを止める。

 

 その隙をついてジンバの一撃がサムライマンを蹴散らした。

 

「風先輩を返せぇえええええええええええええ!」

 

 直後、バーテックスの群れを蹴散らして友奈が満開した状態でジンバとぶつかる。

 

 ジンバと共にいくつかの樹海の壁を壊しながら友奈は拳を振るう。

 

「返せ!風先輩を!」

 

「断る。依り代、手放すつもりなし」

 

 振るわれる斬撃が友奈の体を傷つける。

 

「勇者パァアアンチ!」

 

 振るわれた一撃がジンバの体を傷つけていく。

 

 そのままジンバの中へ手を伸ばして風を取り戻そうとする。

 

「お前も、我が一部になれ!」

 

 ジンバの体からどす黒い手のようなものが噴き出して友奈を飲み込もうと迫る。

 

「グッ!」

 

 阻もうとする友奈だが、伸びてくる無数の手は友奈の手足を拘束する。

 

「諦めろ。お前も我が一部に」

 

「諦めない!勇者部、五ヶ条!一つ!なるべく、諦めなぁああああああああああい!だから、諦めるもんかぁあああああああああああああああ」

 

 眩い光が友奈の中から噴き出す。

 

 その輝きにジンバは苦しみの声を上げる。

 

 輝きが増して友奈は風の手を掴んで離れた。

 

「え?何、これ?」

 

 離れた友奈は自分が金色の光に包まれていることに気付く。

 

 しばらくして、友奈の腕には緑色の宝石が埋め込まれた金色の腕輪――獣装光輪、籠手には赤い爪のようなもの――獣装の爪が装備されている。

 

「これは…」

 

「その輝き、貴様、ギンガの光を!なぜだ!」

 

 ジンバが驚きの声を上げる。

 

 友奈はギンガの光によって獣装光を纏っていた。

 




次回、ゆゆゆ一期完結。


補足を一つ。

今回、友奈はギンガの光の恩恵を受けましたが、これは勇者が神樹の恩恵を受けているからということと、ギンガの光が友奈を選んだからであります。

もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト

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