黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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遅くなりました。

別の話の構想を練っているのと、仕事が急に忙しくなってしまいました。

今回は番外編、

次回は勇者の章、その次は個別番外編を予定しています。


番外編:赤嶺友奈はしばりつける

 

「日向さん!本当に日向さんだ!」

 

「えぇ、友奈ちゃん!夢ではないわ。ああ、本当に素晴らしいことだわ。これでようやく私と友奈ちゃんによる幸せの未来を進めることができるわ。さて、書類はどこにいったかしら」

 

「まったく!心配かけさせるんじゃないわよ!本当にもう!これから鍛錬とかいろいろと付き合ってもらうからね!いい?今度はアタシが勝つから!」

 

「えっと、その……お、おかえりなさい!えへへへ」

 

「えへへへ。へへへへ、でゅへへへへ」

 

 神世紀の勇者部に出会った日向は速攻で回れ右をしたかった。

 

 しかし、左右を古波蔵棗と乃木園子に掴まれて逃げられない。

 

「ダメ、逃げちゃ、これ以上、ひどくなる」

 

「えへへへ~、本当は私が独り占めしたいけれど、仕方ないのだ~」

 

「……そうか」

 

 どこか疲れた表情で勇者部の面々と話をする日向。

 

 その彼の両手は包帯が少しまかれている。

 

 先日の乃木若葉と赤嶺友奈のぶつかり合いの際のケガだ。

 

「まだ、気にしているんですか?」

 

 顔をしかめている若葉へひなたが話しかける。

 

「助けるつもりが、その相手を傷つけた。まだ、私は未熟だ」

 

「仕方ありませんよ。あんな事態です」

 

 若葉の手を上か包み込むひなた。

 

 その笑顔に若葉は少し救われた気がする。

 

「そうだ!今日は私と東郷さんの二人と一緒に寝ませんか!いつもみたいに!」

 

「ええ、それは素敵な提案だわ!友奈ちゃん!」

 

「ちょっと待ちなさいよ!コイツの面倒は私が見るからアンタたちはおとなしくしていなさい!」

 

「えへへへ、ふへへへ」

 

「お姉ちゃん!早く帰ってきて!日向さんを取られちゃうよ!」

 

「日向さん、今度、私とデートして」

 

「えへへへ、このぬくもりを手放したくないんだぁ~」

 

「むむ!こら!そこまでにしろ!日向が困っているだろう!」

 

 始まった争奪戦に気づいた若葉がその中に飛び込む。

 

「日向は私と共にいるんだ!すぐに離れろ」

 

 火に油、もとい爆弾を投下しにいった。

 

「あらあら、若葉ちゃんったら」

 

 苦笑しながらもひなたは別のことを思案していた。

 

「(赤嶺友奈さんがこのままおとなしく引き下がるでしょうか?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁあああああああああ!くそっくそっくそっくそっ!」

 

 四国の一角。

 

 ある一室で赤嶺友奈は荒ぶる。

 

 日向の写真が沢山貼られている部屋の中。

 

 大好きな抱き枕を握り締めながら、女の子がしてはいけない声を吐き出している。

 

「私の日向、私の日向、私の日向を取り戻さないと取り戻さないと、どうやって取り戻そう」

 

 ぶつぶつと言いながら赤嶺友奈は考える。

 

 しかし、案は浮かばない。

 

 出てくるのは拉致、誘拐、監禁、洗脳、そんなものばかりだ。

 

「それじゃあ、意味がない。彼には自分の意思で戻ってもらうんだ。そうしないと意味がない」

 

 ぶつぶついいながら愛しの抱き枕を腕で包み込んでもいつものように癒されない。

 

 心の中にぽっかりできた虚無感が赤嶺友奈を包み込んでいく。

 

「どうしょうどうしょう、今頃、西暦、神世紀の人たちといろいろとやっているだろうし、何より……」

 

 赤嶺友奈の脳裏をよぎるのは誰かと彼が契りを交わすこと。

 

 ありえはしない。

 

 しかし、絶対はないのだ。

 

「あぁ、いやだいやだいやだいやだいやだ!」

 

 頭を抱えて叫ぶ。

 

 ひたすら叫んで嫌な想像を振り払おうとする。

 

 ふと、名案が差し込む。

 

 それはそれはとても素敵な考え。

 

「ああ、そうかぁ」

 

 赤嶺友奈は笑みを浮かべる。

 

 しかし、その笑みを見たものは腰を抜かすだろう。

 

 少女が浮かべるにしては妖艶すぎて、そして、見るものを凍てつかせるほどの冷たい瞳をしているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しばらく日向さんはここで生活してください。何かあれば、西暦組や神世紀組の人たちがすぐに駆け付けますから」

 

「ああ、すまない」

 

 日向は上里ひなたと共に用意された部屋に来ていた。

 

「本当なら誰かと一緒にいるべきなんでしょうけれど、いろいろありましたから、ゆっくり休んでください」

 

「すまない、上里」

 

「ひなたで構いません。あなたにはそう呼んでもらいたいですから」

 

「わかった、ひなた」

 

 にっこりとほほ笑むひなたに日向は感謝して部屋の中に入る。

 

「上里さん」

 

 隠れて様子をうかがっていた千景が声をかける。

 

「では、千景さん、交代で彼の警護を……あの赤嶺さんが簡単にあきらめるとは思えませんので」

 

「任せて」

 

 頷く千景。

 

 交代で西暦、神世紀の勇者たちが交代で日向の護衛をする。

 

 誰も反対をしなかった。むしろ、賛成しかいない。

 

「もう、奪わせはしませんから」

 

 ひなたはこぶしを握り締める千景をみる。

 

 ふと、嫌な予感がした。

 

 それを気のせいと判断したひなたは後に後悔することとなる。

 

「うふふ、みぃつけた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、千景は気配を感じて立ち上がる。

 

「でてきらたどう?」

 

「あぁーあ、ばれていたかぁ」

 

 暗闇の中から姿を見せるのは赤嶺友奈。

 

 ニコニコと笑みを浮かべているがその目は冷たい。

 

「あなたがいることはわかっていたわ」

 

「さすがは西暦の勇者様……いや、勇者だけど存在を抹消された人のほうがいいのかなぁ?」

 

「……動揺をもたらそうとしても無駄よ。あなたは倒す。私のためにも、彼のためにも」

 

 鎌を取り出して構える千景に赤嶺友奈は肩をすくめる。

 

「ちぇ~、動揺してほしかったのになぁ。あーぁ、やっぱり、貴方と高嶋先輩が障害になりそうだなぁ……西暦だと」

 

 魔剣ヘルフリードを取り出した赤嶺友奈は千景の目の前に現れる。

 

 既に準備していた千景はその一撃を受けとめた。

 

「あなたに日向は渡さない!」

 

「渡してもらわなくていいよ!奪うから!」

 

 笑みと共に繰り出される拳を千景は躱して腹部へ蹴りを入れる。

 

 蹴られた友奈は空中で態勢を整えて再度、接近した。

 

 千景の振るう鎌が友奈の体を切り刻んでいく。

 

 ヘルフリードの斬撃を千景はギリギリのところで躱す。

 

「(何か、おかしい)」

 

「それにしても、哀れだよねぇ?」

 

 千景へささやくように赤嶺友奈は告げる。

 

「あなたの思いは本物、それはもう三百年であろうと決して消えないような強い思い、でも、それは絶対に届くことはない。だって、彼はあなたたちのことなんて興味がないもの」

 

 突然の言葉に千景は少し驚きながらも鎌を握る手を緩めない。

 

「動揺を誘ってばかりね。もしかして、勝てないと思っているのかしら?」

 

「そんなことないよ。ただ、できれば無傷で日向のところにはいきたいと思っているかなぁ、ほら、傷だらけだと心配されちゃうし」

 

「あなたの居場所はないわ。彼の両手はすでに予約済みよ」

 

「もしかしたら彼が取り消すかもよ?ほら、年寄りよりも若い方が好みかも」

 

「……そんな挑発、どうってことないわ。お子様」

 

「冷静な振りするのもほどほどにしなよ。ところどころ剥がれてきているよ?お・ば・さ・ん」

 

「高嶋さんと同じ顔をしているけれど、あなたは徹底的に叩き潰す」

 

「いいよ!私もあなたが一番邪魔だから!」

 

 先ほどよりも激しい攻防が起こる。

 

 そのために周囲に衝撃が広がり、千景の衣服や友奈の体は傷だらけになっていく。

 

「(やはり、おかしいわ)」

 

 攻撃の手を緩めることなく千景は冷静な部分で考える。

 

「(ここは彼女にとって敵地、だというのに余裕がありすぎる。まるで時間が過ぎれば過ぎるほど、彼女の思い通りに進んでいるような気がする)」

 

 本来であれば、このまま時間が経過すれば異変を察知して高嶋友奈や仲間たちがやってくる。

 

 そうなれば、不利になるのは赤嶺友奈のはずなのにそれらしき様子が全くない。

 

 むしろ、時間が過ぎれば過ぎるほど、彼女にとって有利な動きだ。

 

「(それに)」

 

 何より千景が気になったのは自分と彼女の状態。

 

 勇者としての戦闘だというのに千景のほうは衣服が破けている程度。

 

 対して赤嶺友奈は傍からみれば傷だらけにみえる。

 

 まるで千景が有利のように思われるがそれは違う。

 

 互いに本気を出していない。

 

 赤嶺友奈はヘルフリードを使っているが臨気を使用していない。

 

 かくいう千景も切り札を発動していないのだ。

 

 この状態で赤嶺友奈が傷だらけになることに何の意味があるのか。

 

「ニタァ」

 

「!?」

 

 突如、赤嶺友奈が口の端を広げる。

 

 その不気味な笑みの真意を考えようとした時、千景の背後で人の気配がした。

 

「いやぁあああああああああああああああ!」

 

 振り返ろうとした時、目の前で赤嶺友奈が自分の体を抱きしめて悲鳴をあげる。

 

 ぽろぽろと涙をこぼして座り込んでしまう。

 

「何を」

 

「いや、来ないで!殺さないで!」

 

 先ほどまでの表情が嘘のように涙をこぼして千景から遠ざかろうとする赤嶺友奈。

 

 訳が分からず困惑する千景の後ろから彼が駆け出す。

 

「友奈!」

 

 飛び出したのは落合日向。

 

 彼は驚いて傷だらけの友奈へ駆け寄った。

 

「何が、あったんだ」

 

「助けて日向!私、私はあなたを一目みようとしただけなのに、あそこにいる郡千景さんが鎌で私をずたずたにしたの!」

 

「なっ!ちがっ……」

 

 千景は否定しようとする。

 

「怖いの!」

 

 そんな彼女の言葉を遮るように赤嶺友奈は日向の体に抱き着いた。

 

「怖い、助けて!このままだと、私、殺されちゃう」

 

 おびえた少女のようにブルブルと抱き着いて離れない赤嶺友奈。その姿に日向は何を言えばいいのか探っている様子だった。

 

 やがて。

 

「郡、さん」

 

「日向?」

 

「俺は彼女を連れて、一度、ここを離れる」

 

「ダメよ!」

 

 千景は叫ぶも日向は首を振る。

 

「この場で何が起こったのか、俺はわからない。どっちが正しいのかも……でも、このままの友奈を放っておくことはできない。だから、離れる」

 

「ま、待って!」

 

 追いかけようとする千景だったが日向はブルライアットで地面を撃つ。

 

 周囲に広がる土煙の後、そこに日向と赤嶺友奈の姿はなかった。

 

「あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 罠に嵌められたことに気づいた千景は空に向かって叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「友奈、ケガはないか?」

 

「痛い、寒い。お願いだから離れないで」

 

 弱弱しい友奈の声に日向は困った表情をしながら抱えたまま街中を歩く。

 

 いつもの明るい表情と異なる弱弱しい姿。

 

 そんな彼女をどうすればいいのか日向はわからない。

 

「戻ったら手当をしよう、それから」

 

「お願い、離れないで」

 

 弱弱しく、彼女は日向の手を掴む。

 

 その手は小さく震えていた。

 

 日向は優しくその手を握り締める。

 

「わかった、俺はお前から離れない」

 

「うれしい……」

 

 友奈はそういって日向の胸元に顔をうずめた。

 

「(俺は、どうすればいいのだろうか?)」

 

 赤嶺友奈のぬくもりを感じながら日向は苦悶していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(やった!やった!やったやったやったやった!戻ってきた!自分の意思で!私から離れないって言ってくれた!)」

 

 日向の胸元に顔をうずめながら赤嶺友奈は笑みを深める。

 

 自作自演でうまくいくか心配だったが結果は大成功。

 

 彼は自らの意思で自分のところへ戻ってきてくれた。

 

 記憶が完全に戻っていたならどうなっていたかわからないが、これで彼女たちから遠ざけることは成功したのだ。

 

 あとはじわじわと自分色に染め上げていけばいい。

 

 今しばらくは大人しくするしかないだろうけれど、彼との時間を過ごせるのなら悪くはなかった。

 

「(手に入れた、私の一番!……欲しかったもの、もう手放さないよ。あぁ)」

 

 薄暗い夜空に赤嶺友奈は笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「………………幸せぇ」

 

 




次回は本編です。

その次は個別番外編、相手は神世紀の人間を予定しています。

仕事が忙しくて更新がしばらく乱れるかと思います。

もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト
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