ナラティブガンダムの作成などによってここまで時間がかかりました。
東郷美森の存在が四国から抹消された。
バカみたいな話だと思うだろう。
だが、俺以外の誰も東郷美森のことを覚えていない。
「……乃木園子へ問いかけることはまずいだろうな」
大赦に深いかかわりのある乃木家だ。
もしかしたら今回の騒動もわかっている可能性がある、だが、同時に俺が乃木家へ接触すれば園子へ危険が及ぶ可能性もある。
「そう考えると」
「落合日向だな」
考え事をしていた俺に問いかけるものがいた。
「誰だ?」
姿かたちは見えない。
しかし、そこにいることは確かにわかる。
「大事な話がある。今すぐ勇者の森へ来い」
「……貴様は何者だ?」
「少なくともアンタの敵じゃない」
「……わかった」
頷いたら気配が消えた。
俺は警戒しながら歩き出す。
念のため、赤龍軒に書置きを残す。
大神はガオゴッドのところへ向かっている。明日くらいには帰ってくるだろう。
勇者の森。
誰が名付けたのかは知らない。
だが、四国の端にあるその森は大赦の人間すら立ち入ることがない魔の森という噂もあった。
そんな場所へ踏み込む。
中に入ると感じる神聖なもの。
「そうか、ここは」
警戒を俺はやめる。
目の前に広がるのは田畑。
規模は小さいが目の前にある柱をみて笑みを深める。
【白鳥歌野の畑!】
字は少し薄れているが見覚えはあった。
「そうか、ここはまだあったのか」
「そう、存在している。流れ流れて三百年の月日が経過しているが覚えている者はいる」
「お前……」
振り返る。
そこにいたのは黒い詰襟制服の男。
帽子をかぶっているが鋭い目で俺を見ていた。
「流星、光」
「三百年ぶりだな。落合日向」
笑みを浮かべると同時に俺たちは同時に拳をぶつけ合う。
拳をいなし、蹴りを躱す。
しばし組み合い、距離を取る。
「腕は衰えて……いや、前よりも強くなっているようだな」
「そういうお前は、老けたな」
「おいおい、三百年程度でそんなこというな」
「普通の人なら三百年で骨だ」
互いに笑いあう。
「師匠~?」
「師匠というな」
顔をしかめながら流星は振り返る。
目の前に現れたのは白い忍装束姿の少女。
「三百年見ない間に弟子をとるようになったのか」
「…………弟子ではない。ただ、面倒をみているだけだ。おい、鶴姫、挨拶をしろ」
「はい!」
ビシッと手をあげて相手は俺を見る。
「隠流25代目当主、鶴姫だ!よろしくな!」
「……なんだって?」
「遠い昔に存在していた忍者の一族だ。バーテックスによって血筋は絶たれたが技術は残っていた。気まぐれに俺がソイツに与えたらスポンジのように吸収してしまった。それだけのことだ」
「師匠!そろそろ話を」
「わかっている。落合日向。東郷美森の件についてだ」
「何か知っているのか?」
「知っている……まったく二万年と三百年も時が過ぎても人間は愚かなことを繰り返すもんだ」
「愚痴を聞くためにきたわけじゃない」
「相変わらずつれない奴だ」
「わかっているはずだ。俺はバーテックスと天の神を滅ぼすことにしか興味はない」
「三百年過ぎても変わらないか」
互いににらみ合う。
「惚れた女たちがかわいそうだな」
「うるさいな」
視線をそらす。
「奉火祭」
「それは……」
「東郷美森は奉火祭の贄として壁の向こうへ連れていかれた」
「あ、おい」
鶴姫が俺に声をかける。
視線を向けると俺の手は血が出るほどに握り締めていた。
「人は繰り返すようだな。過ちを」
「大赦の連中は今になってアレをやるというのか……東郷を贄として」
「どうする?」
「決まっている。東郷美森を助ける」
迷わずに俺は答える。
勇者部の彼女たちには借りがあった。
あの子たちの誰かが犠牲になってひと時の平和を確立するなどあってはならない。
「まぁ、好きにするといいさ。だが、外はお前のいた時と大きく異なっている。それはわかっているだろう?」
「どのような状況であれ、俺は行く」
「相変わらず、勇者に甘い奴だ。だが、そんな奴だからこそ、歌野や水都はお前たちのことを信頼したのだろう……な」
「……情報を感謝している。貴様とまた会えてよかった」
「やめろ、蕁麻疹がでる……死んだら墓くらいは作ってやろう」
「そうなるつもりはない」
「次来るときは花束を持ってこい。そうすれば、あいつらも喜ぶだろう」
「どうだろうな。枕もとで文句を言われるに決まっている」
――どうして、自分たちを置いていったのかってな。
苦笑しながら俺は勇者の森を後にする。
最低限の準備と書置きを残す。
天火星と天童にやることがあるということも伝えた。
懐からブルライアットを取り出す。
「ブルブラック、力を借りる」
ブルライアットを上空へ掲げる。
「騎士転生」
俺は黒騎士の鎧を身にまとう。
黒騎士の気配を感じ取ったのか、ゴウタウラスが現れる。
「ゴウタウラス……」
ゴウタウラスは俺に向かって吠える。
「ともに来るというのか?」
俺の言葉にゴウタウラスは頷く。
「すまない、友よ。俺と共に来てくれ!」
俺の訴えにゴウタウラスは強く吠えた。
「行こう、外の世界へ……」
壁を越えて外に出る。
「東郷、お前を生贄になど絶対にさせない」
ブルライアットを握り締めて俺はゴウタウラスと共に外へ出る。
「天の神、バーテックス、すべて、お前たちの思い通りにはさせないぞ」
「気になるか?」
壁の傍で去っていくゴウタウラス達の姿を見ている鶴姫へヤミマルが声をかけた。
「師匠」
「師匠というな……心配か?」
「そりゃ、そうだよ。大事な親友が生贄にされそうになっているんだから」
鶴姫は顔を覆っていた布を取る。
その中から現れたのは生死不明となっている三ノ輪銀だった。
「しかし、神樹の力が弱まっているときに人間というのは本当に愚かなことばかりを繰り返す」
ヤミマルは呆れていた。
もし、西暦の時代に助けがなければ人間を滅ぼしていただろう。
それほどまでに今の人間は愚かな選択ばかりしている。
「おい」
「はい?」
「お前はお前でやることがあるだろう」
「わかっています!後輩たちに事実を伝えて、目を覚ましてもらいます!」
「黒騎士だけではおそらく限界がある。あの勇者たちの力も必要になるぞ」
「師匠って、何でも詳しいですよね?」
「バカ野郎、俺は詳しくない。ただ、予想しているだけさ。二万年と三百年ほどの経験を使ってな」
にやりとヤミマルは笑った。
かるーいキャラ紹介
25代目 鶴姫
原典は忍者戦隊カクレンジャー、24代目 鶴姫をモデルとしている。
見た目は中学生くらいの女の子、原典の鶴姫と同じ忍者装束を纏っており、隠流の忍術を使える。
もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?
-
パワーレンジャー
-
リュウソウジャー
-
ルパパト