黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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更新が遅くなって申し訳ありません。

次回は本編の予定。




番外編:赤嶺友奈は閉じ込める

「日向さんが~いない~~」

 

「友奈ちゃん!そっちは壁よ!」

 

「日向、日向、日向ぁぁぁ」

 

「お姉ちゃん!それは黒騎士くんぬいぐるみだよ!綿がでちゃうよぉ!」

 

 勇者部の面々、またも精神崩壊。

 

 既に耐性がついていたのか古波蔵棗はなんともいえない表情をしている。

 

 しかし、彼女自身も大事そうに写真を握り締めていた。

 

「もしかしてと思っていましたが赤嶺友奈さん、やはり油断なりませんね」

 

 ひなたは赤嶺友奈が何かを企むだろうとは思っていた。

 

 しかし、こんな早く行動に移すとは思っていなかったようだ。

 

「やれやれ、お前たちは本当にわかっていないようだな」

 

 ひなたと若葉の前に現れた流星光は溜息をこぼす。

 

「てか、ソイツ誰よ!」

 

「ひと呼んでさすらい転校生、流星光だ」

 

「さすらい転校生ってなに!?」

 

「あぁ、落ち着いてください」

 

 暴れそうになる夏凜をひなたがやんわりと制する。

 

 西暦組のほとんどは流星と面識があるから警戒はしていない。しかし、神世紀組は面識がないことから少しばかり警戒していた。

 

「みんな、警戒することはない。流星光は我々の味方だ」

 

「まぁ、仲良くしてくれ。さて、話を戻すか」

 

 流星は全員を見渡す。

 

「まずは黒騎士のことだが、奴の記憶をもと通りにする方法がある」

 

「本当か?」

 

「ああ、そのためにはパワーアニマルを探さなければならないけれどな」

 

「パワーアニマル、大神さんと一緒に戦っている精霊さんだよね?」

 

「ガオシルバーと戦っている精霊ではある。だが、お前たちが探さなければならないのは癒しの力を持つ精霊だ」

 

「癒しの力?」

 

「神樹の中に呼ばれた黒騎士は西暦、神世紀の多くの戦いを経た結果、根幹というべき魂が邪気によって汚れてしまっている。穢れともいうべきその状態を取り除かない限りお前たちの知る黒騎士には戻らない」

 

「じゃあ、すぐに探そう!」

 

 立ち上がる高嶋友奈に千景も頷いた。

 

「高嶋さんの言うとおりね。早くあの赤嶺友奈から日向を取り戻さないと……こうしている間にも……」

 

「それと、赤嶺友奈についてだが、お前たちはまだまだ警戒が甘いぞ」

 

「どういうことですか?」

 

 ひなたが流星へ問いかける。

 

「赤嶺友奈の黒騎士……いや、落合日向に対する執着はお前たちの想像以上に根強いということだ。お前たちの思いよりも強いかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ、日向―」

 

「こら、まだ傷はいえていないんだ。無理に起き上がろうとするな」

 

「ぶー!じゃあ、もっとこっちに来てよ~~」

 

「そうしたら食べさせられないだろ」

 

 赤嶺友奈の拠点。

 

 そこで日向の看病を赤嶺友奈は受けていた。

 

 包帯が巻かれて痛々しい姿の彼女は日向による看病を受けて幸せそうな笑顔を浮かべていた。

 

「(まぁ、傷は既に治っているんだけどねぇ、こういう看病とかしてもらうっていうのも悪くないよねぇ)」

 

 郡千景から受けていた傷は既に治っていた。

 

 しかし、赤嶺友奈の傷が治ったと知ったら。

 

「(すぐに離れちゃうかもしれない。あぁ、そんなの嫌だ。絶対、嫌だ!そうならないように私は縛り付けるんだ。どこまでも、今度は邪魔が入らないようにしっかり閉じ込めておかないとねぇ)」

 

 今いる部屋は日向用に拵えた部屋である。

 

 いつかはあの部屋で自分と一緒に過ごすのだ。

 

 そのための計画も考えてある。

 

「(はぁ、楽しみだなぁ。でもでも、今はこの時間を満喫しよう~っと)」

 

 彼が差し出す食事を雛が親鳥から求めるように口に含んでいく。

 

 今の時間は赤嶺友奈にとって幸せでしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流星光の言葉通りにパワーアニマルを探すために奮闘する勇者たち。

 

 四国奪還も行っているがバーテックスとリンシーの力押しで拮抗していた。

 

 しかし、勇者たちも負けてはいなかった。

 

「っ!!」

 

 結城友奈の体から獣のようなオーラが放たれる。

 

 繰り出した一撃によって吹き飛ぶリンシー。

 

 ほんの少しだが結城友奈や古波蔵棗など、一部の勇者たちが激獣拳を開眼し始めていた。

 

「見つからないね~。パワーアニマル」

 

「そもそも、パワーアニマルってどうやって探すのかしら?」

 

 神世紀組の友奈と東郷は元の世界に戻って考えていた。

 

 どうすれば、探しているパワーアニマルに出会えるのか。

 

 そもそも、どうすれば出会えるのかについてはわかっていなかった。

 

「うーん、大神さんに相談してみる?」

 

「いえ、それよりかは」

 

「やっほ~。結城ちゃん、東郷ちゃん」

 

 ひらひらと何の前触れもなく赤嶺友奈が現れた。

 

「赤嶺友奈ちゃん!?」

 

「どうしてここに!」

 

「うーん、警告かなぁ?」

 

「警告ですって?」

 

 警戒する彼女達に赤嶺友奈は笑顔を浮かべる。

 

「そうそう!いい加減、日向のことを諦めてって」

 

「そんなことできないよ!」

 

「友奈ちゃんの言うとおりよ。赤嶺友奈さん、貴方に日向さんは渡さないわ!」

 

 身構える二人の姿を見て赤嶺友奈は溜息をこぼす。

 

「はぁーぁ、折角、警告してあげたというのにぃ、まぁいいや。どうせ、日向は私のものだし、貴方たちが取り戻すことは永遠にないんだけどねぇ。伝えることは伝えたから帰るね!」

 

「待って!赤嶺友奈ちゃん!」

 

 結城友奈が赤嶺友奈を呼び止める。

 

「なにかな?」

 

「教えて、どうして、貴方は日向さんに執着するの?」

 

「…………………あなたたちは知らないだろうね」

 

 赤嶺友奈はぽつりとつぶやく。

 

「深い闇の中から差し伸べられる手、その手を絶対に離したくないっていう気持ち……誰だっていいわけじゃないよ?私は日向だから手を掴んだ。彼の優しさ、何もかもに救われたんだ」

 

「それは……」

 

「私の思いは貴方たちよりも深いよ?今のままならあきらめたほうが幸せかもねぇ」

 

 ひらひらと手を振って赤嶺友奈は去ろうとした。

 

「………そんなことないよ。私だって」

 

 赤嶺友奈に張り合うように結城友奈は拳を作る。

 

 その瞳に強い光を宿して。

 

「私だって、日向さんに救われたんだ。日向さんがいたから私は迷いなく戦うことができた……だから、選ばれたのかもしれない」

 

 友奈は拳を開く。

 

 彼女の腕はギンガの獣装光が部分的に纏われていた。

 

「ギンガの光、神樹の命を長らえさせていた力……うん、凄い力だね。私と真逆の力だ」

 

 小さな笑みを浮かべて赤嶺友奈は臨気を体に纏う。

 

「ここで決着をつけようかな?」

 

「!」

 

 身構える結城友奈。

 

 しかし、赤嶺友奈はすぐに構えを解いた。

 

「やーめた。日向が待っているし、帰るね?」

 

 ニコリと赤嶺友奈は微笑んで去っていった。

 

 突然のことに結城友奈達は呆然としていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あ」」

 

 四国の町中。

 

 当たり前のように存在している人のいる薬局の外。

 

 そこで日向は炎力とばったり出会う。

 

「お前は、確か、炎力だったか?」

 

「ああ、そうだ」

 

「その様子だと無事だったようだな」

 

「まぁね。彼女が手加減してくれたからだし」

 

 炎力は頬をぽりぽりと指でかく。

 

「それより、日向は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫というのは記憶のことか?」

 

「ああ、その、まだ思い出せていないんだろう」

 

「その通りだ」

 

 力の問いかけに日向は答える。

 

「その荷物は?」

 

「赤嶺友奈の手当てに使ったものを補充するためにな」

 

「……日向は、その、赤嶺友奈とどういう関係なんだ?」

 

「わからない」

 

 炎力は戸惑いの表情を浮かべる。

 

 てっきり彼女の味方だと答えると思っていた力は驚きを隠せない。

 

「じゃあ」

 

「俺と赤嶺友奈の関係がどういうものなのか、俺自身もわかっていない。ただ」

 

「……ただ?」

 

 日向は自分の手を握る。

 

 記憶は全く蘇らない。

 

 だが、どこかで訴えている声がいる。

 

 その声がなんなのかはわからない。

 

 日向は不思議とその声に従っていた。

 

 

――赤嶺友奈を放ってはいけない。

 

 

 何故という疑問すら浮かばずに日向は彼女を助ける。

 

「じゃあ、勇者部の皆と敵なのか?」

 

「できるなら、敵対はしたくないと思っている……だが、お前達が友奈を、赤嶺友奈を傷つけるというのなら俺は戦うだろう。どちらが敵、味方と問わず」

 

 日向はブルライアットを取り出す。

 

「そっか」

 

 炎力は頷いた。

 

 そして。

 

「じゃあ、赤嶺友奈と勇者部の皆が戦わないで済む道を探そう」

 

「お前は勇者部の仲間なのだろ?」

 

「確かに、俺は神樹によって勇者たちの手助けをするため……ここへやってきた。けれど、俺は、日向……お前と争いたくないんだ」

 

「…なぜだ?」

 

「友達だから、大事な親友と戦うなんて嫌じゃないか」

 

「お前……」

 

「炎力」

 

「なに?」

 

「俺の名前だ。炎力。西暦の時代、お前と友達だった男だ!」

 

「覚えておく。俺の名前は落合日向だ」

 

 そういって二人は握手を交わす。

 

 日向は不思議と懐かしい気持ちになる。

 

「願わくば樹海で敵として出会わないことを祈ろう」

 

「あぁ、俺もそう望むよ」

 

 二人はそういって離れる。

 

 敵として戦いたくない。

 

 日向も自然と力と同じ気持ちになっていた。

 

 だからこそ、二人は望む。

 

 敵として戦わない道を探す。

 

 しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこいっていたの?」

 

「友奈、戻ってきていたのか」

 

 落合日向が赤嶺友奈の家へ戻ると彼女が待っていた。

 

 しかし、表情は前髪に隠れていてみえない。

 

「ねぇ、どこにいっていたの?」

 

「包帯がきれていたからな。そのための買い出しを」

 

「――勝手に出ていかないで!」

 

 叫びと共に赤嶺友奈は日向を抱きしめた。

 

「友奈?一体」

 

 手の中のものを落としながら彼女を受け止める日向は戸惑う。

 

「どうして?なんで、勝手に出ていったの?もしかして、西暦か神世紀の勇者の誰かと出会うつもりだったの?そんなこと、そんなことあっちゃダメだよ。日向は私と一緒にいないといけない。今更、他の人に奪われるなんてあってはいけない。郡さんも、高嶋さんにも、乃木さん、結城ちゃん、犬吠埼ちゃんだろうと、炎力や伊達健太でもない!貴方の傍にいるべき人は私だけなんだよ?そのことを忘れちゃ駄目、絶対に離れるなんてあってはいけないんだから」

 

「……いきなり何を」

 

「本当はじわじわとやるつもりだったんだけれど、仕方ないよね。うん、仕方ない」

 

 ぶつぶつと何かを呟いている友奈の様子を伺おうとした日向。

 

 直後、胸部に衝撃を受けた。

 

「友奈、何を……」

 

 赤嶺友奈によって日向は心臓を掴まれていた。

 

「大丈夫だよ。少しだけ痛いかもしれないけれど、日向がずっと、ずぅっと、ずぅぅぅっと!私といられるために必要なことなんだ。膨大な闇だけれど、日向は耐えられる。私と一緒に居られるから」

 

 にこりとほほ笑む赤嶺友奈。

 

 しかし、その瞳にはどす黒い何かを抱えている。

 

 何かは日向を捕えて離さない。

 

「ずぅっと一緒だからね」

 

 愛の言葉を聞きながら日向の意識は闇の中に消える。

 

もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト

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