黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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今回、色々詰め込みました。





黒騎士と星祭り

 

「またか」

 

 炎が広がる大地。

 

 黒騎士はその大地の中を群れるバーテックスを斬り倒しながら突き進んでいた。

 

 相棒のゴウタウラスも続いていたがその進行は思う様にいっていない。

 

「戦えないか」

 

 ゴウタウラスの悲鳴のような声を聴きながら黒騎士はブルライアットを構える。

 

 彼の前にはそびえたつ三つの巨大な存在が立ちはだかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、外の世界……」

 

 勇者部は東郷美森の存在が消えていることに気付いた。

 

 乃木園子が大赦から返却してもらった勇者アプリを使って彼女達は壁の外、東郷美森が連れ去られた場所まで向かおうとしている。

 

「こんなんで驚いている暇はないぜ?何せ、いろいろとやることがおおいんだからな!」

 

 驚いている勇者部たちに水先案内人として同行している鶴姫が言う。

 

 風太郎と話をしていた勇者部の前に「東郷美森達のいる場所へ案内する」と言って現れた彼女と勇者部たちは目的の場所を目指している。

 

「えっと、鶴姫さん」

 

「鶴姫でいいぜ!同い年だし!」

 

「じゃあ!鶴姫ちゃん!鶴姫ちゃんは神様達とどういう知り合いなの?」

 

「私は知り合いじゃねぇよ。私の師匠が知り合いなんだよ。凄いんだぜ!私の師匠は二万年と三百年生きているんだからな!」

 

「それはそれで、怪しいんだけど」

 

「でも、神様がいるんだし、そういうのもありなんじゃ?」

 

「うだうだ考えていても仕方ないわ。連れ去られた東郷と先走っていた日向を見つけ出すわよ!」

 

 夏凜や樹の話を聞きながら部長の風が先を急ぐ。

 

「頼むわよ!鶴姫!」

 

「了解!行くぜ!ツバサマル!」

 

 勇者部と鶴姫達はツバサマルに乗って炎の世界を進んでいた。

 

 普通に足で進むよりもツバサマルの力を借りた方が先に向かった黒騎士へ早く追いつける可能性があるのだ。

 

「日向さん、どうして、黙って先に行っちゃったのかな?」

 

「私達が東郷さんの記憶を失っちゃったからだと思う…」

 

「大方、巻き込ませないと考えたんでしょ。ホント、私達の考えを聞かないんだから……今度あったらデートとして一日中、拘束してやる!」

 

「犬部長の目が笑っていないわ」

 

 夏凜がやれやれとため息を零す。

 

「部長の言うとおりだよ~。遭遇したらお説教だけじゃすまないんだ!絶対に」

 

 園子が力拳を作った直後、ツバサマルの目の前を黒騎士が通過した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「え!?」」」」

 

「あ、日向さんだ~」

 

「今の……」

 

 直後、巨大な青い影が続けて姿を見せる。

 

「ツバサマル!」

 

 鶴姫の叫びと共に急旋回するツバサマル。

 

 突然の事態に落ちそうになる勇者部メンバー。

 

 風は樹を抱えて、夏凜は友奈と園子を抱きしめるようにしてツバサマルにしがみついた。

 

 目の前の青い巨大な影はツバサマルの姿に気付くと拳を振り下ろそうとする。

 

 ツバサマルは体を起こすとたたむようにして前へ構えたツバサを向けた。

 

 ツバサの先端から無数の光弾が放たれる。

 

 光弾を受けた青い影は地面へ落ちていく。

 

 すぐに翼を広げて燃え盛る大地から離れていくツバサマル。

 

「え、何で地面に離れるのよ!?下の方に黒騎士がいるのよ!?」

 

「下をみればすぐにわかる!」

 

 鶴姫の言葉に風は見下ろす。

 

 直後、赤い光弾が通過した。

 

「あれは」

 

 燃え盛る大地。

 

 そこに佇む赤い巨大な姿とさらに巨大な何か。

 

 あまりに巨大でその姿の全貌が把握できない。

 

「何よ、あれ」

 

「知らない!だから離れる!異変に気付いたバーテックスが集まってくるかもしれない」

 

 鶴姫はツバサマルに指示を出して離れることにした。

 

「あ!お姉ちゃん!あそこ!」

 

 樹は下をみて叫ぶ。

 

 勇者部たちが下をみるとバーテックスを踏みつぶして進むゴウタウラス。

 

 そして、ゴウタウラスの上へ降り立つ黒騎士。

 

「よし!行こう!」

 

「え?」

 

「ちょっと、友奈ぁあああああああああああ!?」

 

 友奈は意を決したような表情になるとツバサマルから飛び降りた。

 

 飛び降りたのだ。

 

 夏凜たちが止める暇もなく友奈は装束を身に纏うと黒騎士とゴウタウラスのいる場所まで落ちていく。

 

「日向さぁああああああああああああん!」

 

「!?」

 

 声に気付いた黒騎士は見上げると同時に友奈をキャッチする。

 

「黒騎士さん!」

 

「なんという無茶をするんだ!勇者とはいえ、落ちたら」

 

「会いたかったです!」

 

 そういうと友奈は黒騎士を抱きしめる。

 

「話はあとだ」

 

 やんわりと友奈を引きはがした黒騎士は目の前を睨む。

 

 音を立てて降り立つ青い影。

 

 それは地面に立っていた赤い影と並んだ。

 

「今はこの場から離れる。安全な場所が近くにあるからな。ゴウタウラス!」

 

 黒騎士の叫びにゴウタウラスは雄叫びを上げて後退していく。

 

 佇む二つの影は追跡することなくその場に立ったまま動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一つ、確認だ」

 

 炎の大地から逃れるように続く洞窟。

 

 その入り口の前で黒騎士は振り返る。

 

「お前達は東郷美森のことを“思い出して”やってきたんだな?」

 

「そうよ!誰かさんが何も言わずに姿を消したから友奈と園子のおかげでね」

 

「そうか」

 

「酷いよぉ~!私達に黙って行っちゃうなんてぇ」

 

「事態は急を要した」

 

「まー、色々と言いたいことはあるけれど……とにかく安全な場所へ行くんでしょ?早く案内しなさいよ。後ろつっかえているし」

 

 夏凜に言われて黒騎士はため息を零して洞窟の中に入る。

 

「ゴウタウラスは?」

 

「別の場所から入る……心配するな」

 

 樹の疑問に短く黒騎士は答える。

 

 黒騎士を先頭に風、園子、夏凜、友奈、樹、そして鶴姫は中へ入った。

 

「なぁ、黒騎士、ここはなんなんだ?」

 

「元は神聖な場所だった。しかし、天の神の策略によって場所だけが残されてしまった……バーテックスも入ることができないために休息地として使っている。お前達も勇者の装束を解除して大丈夫だ」

 

 そういうと黒騎士から日向の姿へ戻る。

 

「日向さぁん!」

 

 園子が嬉しそうに後ろから日向に抱き着いた。

 

 驚くことなく日向は園子を受け止める。

 

 予想出来ていたのだろう。

 

 嬉しそうに日向に抱き着いていた園子を夏凜と風が引きはがす。

 

 ガミガミと話をする横をすり抜けて樹が据わっている日向の上へ腰かける。

 

「えへへ、日向さん」

 

「どんな時でもお前達はマイペースだな」

 

 ため息を吐く日向に樹は嬉しそうにほほ笑む。

 

 そんな彼に友奈は真剣な表情で問いかける。

 

「日向さん、東郷さんは」

 

「まだ無事だ」

 

「そっか、良かった」

 

「状況は最悪の一歩手前だがな」

 

「え?」

 

 戸惑う友奈に日向は伝える。

 

「奉火祭は残り二日の期限で実行に移される」

 

「え!?」

 

「何よ!急がないといけないじゃない!」

 

「俺も急いではいる。だが、厄介な相手がいて目的地一歩手前で阻まれている」

 

「邪魔?」

 

「鋼星獣だな」

 

 鶴姫の言葉に黒騎士は頷いた。

 

「流星から聞いていたな?」

 

「鋼星獣?」

 

「何よ?それ」

 

「お前達が先ほど遭遇した三体の巨大な影の正体。ゴウタウラスと同じ星獣だ」

 

「えぇ!?」

 

「どういうことよ。どうして、ゴウタウラスと同じ存在がアタシ達の邪魔をするわけ?」

 

 日向は話す。

 

「あれは天の神によって奴隷として使役されている。天の神は奉火祭を成功させるための壁役として奴らを用意した……同じ星獣であるからゴウタウラスは本気を出すことができない……ある意味、壁役としては最適だったわけだ」

 

「酷い……」

 

「ゴウタウラスが何度も呼び掛けているが星獣は反応しない。無理矢理、押しとおろうとするが物量的な力によって阻まれていて、一週間、連日連夜攻めているがうまくいっていない」

 

「ウソ、一週間も!?」

 

「食事とかは」

 

「あれ」

 

 日向が指さしたのは綺麗に分別されている缶詰。

 

「うわぁ」

 

「分別しているから余計になんともいえないわね」

 

「ふっふっふ!今こそ、私の女子力を見せるとき!さぁ、料理の時間よ!」

 

 やる気を見せる風。

 

「料理器具は最低限のものしか用意していないぞ」

 

「まっかせなさい!」

 

 突如、鶴姫が立ち上がる。

 

「忍法!料理器具召喚!」

 

 構えて指先を地面へ向けると煙と共に料理器具が現れた。

 

「おぉ!」

 

「流石は忍法!」

 

「………………何か違うだろ」

 

「右に同じく」

 

 喜ぶ勇者たちの中で日向と樹は同じことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い洞窟の中、念のためと日向が用意していた寝袋で彼女達は眠りについた。

 

「お前は寝ないのか?」

 

 日向は自分の傍にいる鶴姫へ問いかける。

 

「守るための番人はいるだろ?」

 

「……それは元勇者としてか?」

 

「いいや、友達を守るためさ」

 

 顔を隠している布を外して鶴姫は微笑む。

 

「お前、三ノ輪銀だな」

 

「……知っていたのか?」

 

「大神から写真を見せられた。その顔に覚えがあっただけだ」

 

「大神、そっか、大神さんかぁ」

 

「…………乃木園子に話さないのか?」

 

「話したいよ。話したいけれど、まだ、やるべきことがあるからさ…………それが終わったら話に行くつもり」

 

「そうか」

 

「言いに行けとか、言わないのかよ?」

 

「そんなことしてどうなる?」

 

 日向は真剣な表情で鶴姫をみる。

 

「自分がいつか話すと言っているなら他人がどうこういうつもりはない。何より、俺は関わる資格を持たない。それだけだ」

 

「アンタ、本当に師匠の話している通りだな。こんな奴のお話を私は聞かせていたと思うとなんともいえないなぁ」

 

「は?」

 

「何でもない!」

 

 そういって鶴姫は離れていった。

 

 日向はそんな彼女の姿を見ながら横になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は何をやっているんだ」

 

 寝ようとしてすぐに衝撃を受けて日向は目を覚ます。

 

「えへへへ~、日向さぁん」

 

 横になっていた日向を襲撃した正体。

 

 それは乃木園子だった。

 

 頬を赤らめながら日向の胸板に顔をすりすりしている。

 

「……寝れないのか?」

 

「眠れるわけないよ」

 

 動きを止めて園子は日向を見上げる。

 

「日向さん、みのさんが生きていることを知っていたんだね」

 

 話を聞いていたのだろう。

 

 園子は普段ののほほんとした表情と異なり真剣な顔をしている。

 

「知っていたわけじゃない。最近、知ったんだ」

 

 園子は俯いて日向の体に手を乗せる。

 

 日向の服を強く握りしめる。

 

「しばらく、俺は耳をふさぐ」

 

「え?」

 

「泣きたいなら泣けばいい。俺は何も聞こえない」

 

 日向の言葉に園子は服に顔をうずめる。

 

 そのまま声を押し殺して涙を零し続けた。

 

「ありがとう、日向さん」

 

「そうか」

 

「本当、日向さんは優しいよね~」

 

「別に」

 

「そんな日向さんだから大好きなんだ~!」

 

 嬉しそうにほほ笑む園子は日向の首元へ腕を回す。

 

 気付いた時、日向の眼前に園子の顔があった。

 

 

――チュ。

 

 

 小さな音が響いた。

 

 幸いにも周りは誰もいなかった。

 

「おやすみ~!」

 

 にこりとほほ笑んで日向の傍で園子は眠りにつく。

 

「…………」

 

 日向は静かにため息を零した。

 

 今のやりとりで眠れなくなってしまったじゃないかと心の中で思いながら抜け出す。

 

 一瞬、園子が目を覚ますかもという心配はあったが疲れていたのだろう。抜け出した際に目を覚ますことはなかった。

 

 日向が立ち上がると離れたところでむくりと起き上がる影があった。

 

「結城友奈」

 

「日向さん……その、お話があります」

 

 お前もかと心の中で思いながら「場所を変えよう」と告げる。

 

「はい!」

 

「静かにしろ」

 

「……すいません」

 

 しゅんとうなだれる友奈の手を引いて日向はある場所へ向かう。

 

「ここは?」

 

「洞窟の奥……とでもいえばいいのだろうか。まだ綺麗な水が流れている場所だ」

 

 友奈と共に日向は綺麗な水が流れている場所へ来ていた。

 

「日向さん」

 

「なんだ?」

 

「私、東郷さんが大変なことに巻き込まれていたのに全然、気付きませんでした」

 

「……」

 

「もっと、もっと早く気付けていたらこういうことにならなかったのかな?」

 

「たらればの話をしても仕方ない……何より、今回の騒動は人間と神が絡んでいたことだ。勇者アプリがなければお前達は何もできない……普通の中学生だ」

 

「でも、大事な友達のことを気付けないなんて、悲しいです。辛いです!」

 

 涙を友奈が零す。

 

「だからって、お前が一人だけ苦しむ必要はない」

 

 日向はそういって友奈の頭を撫でる。

 

「日向さん!」

 

 友奈は涙を零しながら日向に抱き着いた。

 

 強く、とても強い力だが日向は表情を変えずに友奈の頭を撫でる。

 

「お前は助けてくれる仲間がいる。仲間を頼ることを覚えるんだな」

 

「日向さんも、私を助けてくれますか?」

 

「あぁ」

 

「それは、どうして?」

 

「お前達が綺麗だからだ」

 

「え!?」

 

「話はそれだけか?ゆっくり休め……それと」

 

 日向は友奈の顔を覗き込む。

 

「東郷は何があっても助ける。大勢のための小さな犠牲になんか絶対にさせはしない」

 

 そういって日向は今度こそ友奈から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 勇者部一同と黒騎士は炎の大地を進んでいた。

 

「朝なんだろうけれど、この炎の大地のせいで実感わかないわね」

 

「バーテックスに蹂躙されるということはこういうことだ」

 

「絶対、東郷先輩を取り戻しましょう!」

 

 やる気に満ち溢れている勇者に対して黒騎士は思案していた。

 

「日向さん?何を考えているんですか?」

 

「そろそろ出てくるぞ」

 

「え?」

 

 樹が首を傾げた直後、炎の大地から巨大なサメのようなものが姿を見せる。

 

 サメの体から複数の影が飛び出し、二体の鋼星獣が姿を現した。

 

「アイツは俺が相手をする。お前達は急ぎ、東郷が囚われている場所へ」

 

「そうはいかん!」

 

 黒騎士が指示を出そうとしたところで爆発が勇者たちを襲う。

 

 彼女達と黒騎士が離れた直後、友奈目がけてトランザの刃が迫った。

 

 

 振るわれるトランザの刃を夏凜が防いだ。

 

「友奈をやらせはしないわよ!」

 

「小娘め、俺の邪魔をするとは良い度胸だ」

 

 長剣、ボルトランザを構えて夏凜へ狙いをつける。

 

 夏凜は二刀流でトランザとぶつかり合う。

 

「夏凜ちゃん!」

 

「友奈!犬部長たちは先に行って!ここは私が引き受けるから!」

 

「行くわよ!」

 

「俺も残る、先に行け!」

 

 鋼星獣たちと戦いながら黒騎士が叫ぶ。

 

 振るわれる拳を黒騎士は躱す。

 

「夏凜!日向!無茶しないでね!」

 

「「いいから行け!」」

 

 風へ二人は同時に叫びながら目の前の相手と戦い始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏凜はトランザと戦いながら顔をしかめる。

 

「(強い!)」

 

 二刀流で夏凜の攻撃で押しているようにみえるが実際は異なる。

 

 トランザは夏凜で遊んでいた。

 

 夏凜の実力が自分より下であるということを理解しているかのような動きをしている。

 

 そのことに夏凜は苛立ちを覚えながらも冷静に相手の動きを見据えた。

 

「飽きた。ここで終わらせよう」

 

 トランザが不敵にほほ笑み、そのまま夏凜へ一撃を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鋼星獣たちの攻撃に黒騎士は防戦一方だった。

 

 ブルライアットで攻撃を仕掛けるも鋼星獣たちには通用しない。

 

「ブルタウラスで戦おうにも……相手は星獣……戦えないからな」

 

 同じ星獣であるからこそ、天の神の隷属であろうとゴウタウラスは放っておけないのだろう。

 

 しきりに呼び掛けているが相手は何も反応しない。

 

 それどころか攻撃されるばかり。

 

 ゴウタウラスにはギリギリまで戦うなと伝えているが。

 

「やはり、この状態では限界があるか」

 

 黒騎士はブルライアットで赤い鋼星獣の顔を斬る。

 

 相手はのけ反りながらも拳を放つ。

 

 くるりと黒騎士が躱した時、夏凜がトランザの一撃で吹き飛ぶ姿を捉える。

 

「くそっ」

 

 悪態をつきながら青い鋼星獣を踏み台にして夏凜とトランザの間へ割り込む。

 

 ブルライアットでボルトランザの刃と切りあう。

 

「ほう、黒騎士。次はお前が相手か」

 

「トランザ、東郷美森は返してもらう」

 

「それはできない相談だなぁ、ここには鉄壁の守りがある。貴様らの同族ともいえる星獣を壁としてなぁ」

 

「貴様!!」

 

 大振りの一撃をトランザは避ける。

 

「日向……」

 

「どうやらまずは一人、脱落のようだな」

 

 にやりとトランザが笑い、指を鳴らす。

 

 鋼星獣が武器を夏凜へ向ける。

 

「くそっ!」

 

 黒騎士が助けに向かおうとするがボルトランザの一撃を受けて地面に倒れる。

 

 鋼星獣が武器を繰り出そうとした時、ツバサマルが正面から体当たりした。

 

「なに!?」

 

 驚くトランザ。

 

 ツバサマルの上には鶴姫がいた。

 

「まずは獣将ファイター!」

 

 鶴姫は懐から取り出した金色のメダルを投げる。

 

「隠流獣将ファイターの術!」

 

 輝きと共にメダルから白い人型の巨人が現れた。

 

 バトルカーク。

 

 鶴姫が忍術で呼び出した獣将の分身。

 

 スリムな白い巨人は鋼星獣にハイキックを繰り出す。

 

 別の鋼星獣が青いブーメランのような武器を取り出す中、ツバサマルから鶴姫は飛び降りる。

 

 その手の中には巻物が握られていた。

 

「隠流巨大獣将之術!」

 

 くるりと回転しながら巻物を構える鶴姫の背後にバトルカークとは別の獣将が姿を見せる。

 

 獣将ホワイトカーク。

 

 ホワイトカークはブーメランを構えていた鋼星獣へ手を伸ばして動きを封じ込める。

 

「夏凜、立てるか!」

 

「当然!くそっ!なんなのよ、アイツの剣!」

 

「この俺に貴様のようなちゃちな剣が通用するわけがないだろ?」

 

 高笑いしながら現れるトランザ。

 

 夏凜は前に飛び出そうとしたが黒騎士に止められる。

 

「何するのよ!」

 

「今の一撃、体にダメージを受けているだろ。少し離れていろ。ここからは俺達がやる」

 

「え、でも!」

 

「おいおい、黒騎士。貴様の相棒は戦えない筈だ。いくらあの小娘が参戦したとはいえ、限度があるだろう?」

 

「お前もわかっていないな、トランザ」

 

 地面が揺れる。

 

「俺の相棒は確かに同じ星獣と戦うことを拒んだ。だが、戦えないという訳じゃないんだ」

 

 地面が割れてそこからゴウタウラスが姿を見せる。

 

「あの星獣たちも何とかすることもできる」

 

 ゴウタウラスから赤い光を受けて黒騎士が重騎士へ姿を変えた。

 

 二体は合体してゴウタウラスとなる。

 

「さぁ、反撃開始だ!」

 

 ツインブルソードを構えてブルタウラスが動き出す。

 

 二体の鋼星獣たちはそれぞれの武器を放った。

 

 攻撃を受けながらもブルタウラスは突き進んでいき、拳で二体を殴り飛ばす。

 

「バカな!反撃できなかったはずだ。ちぃ!バーテックス!」

 

 トランザが指を鳴らすとサソリ型バーテックスが複数、現れてブルタウラスに襲い掛かる。

 

 バトルカークとホワイトカークがバーテックスを相手にしようとしたが赤い鋼星獣が二体へタックルした。

 

 その攻撃で忍術が解除され、夏凜の傍に鶴姫が落ちてくる。

 

 起き上がった青い鋼星獣が武器でブルタウラスを攻撃する。

 

「そこまでだ!」

 

 直後、上空からガオハンターが降りてくると同時にサソリ型バーテックスを叩き潰す。

 

「黒騎士!遅くなった!」

 

「大遅刻だな」

 

 ガオシルバーに黒騎士は悪態をついた。

 

「遅れた分、ガオゴッドから授かったこれがある」

 

 ガオシルバーは一つの宝珠を取り出す。

 

「百獣召喚!」

 

 呼び出されるのは青緑の鹿の姿をしたパワーアニマル。

 

「ガオディアス!お前の癒しの力であの鋼星獣の呪いを消し去るんだ」

 

 ガオシルバーの叫びにガオディアスは角から光の粒子を放つ。

 

 放たれた光の粒子を受けた三体の鋼星獣は動きを止める。

 

「何だ、この光は!!」

 

 トランザが叫ぶ中、二体の鋼星獣は自らの顔に手を当てた。

 

 輝きと共に凶悪に歪んでいた鋼星獣の顔が変わっていく。

 

 同時に邪悪な気配が失われていった。

 

「バカな!?天の神や俺の施した術が打ち消されたというのか!?」

 

 トランザは怒りで顔を歪めながら姿を消した。

 

「すっごい……」

 

 夏凜と鶴姫は呆然と目の前の光景を見ていた。

 

 その隙を狙う様に小型バーテックスが二人を狙おうとする。

 

 直後、飛来した光弾でバーテックスは粉々になった。

 

「!?」

 

「え、なに!?」

 

 二人が視線を向けると巨大な鋼星獣【ギガバイタス】が銃口をバーテックスへ向けていた。

 

 夏凜と鶴姫を守るように赤い鋼星獣【ギガライノス】、青い鋼星獣【ギガフェニックス】が沸いてきたバーテックスを倒していく。

 

 その直後、輝きと共に遠くの方へ大きな衝撃が起こる。

 

「終わったか…………」

 

 ブルタウラスは小さく友奈達が東郷の救出に成功したことを察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東郷さん!こっちだよ!」

 

「友奈ちゃん!引っ張らないで!歩けるから!」

 

 東郷を助け出した勇者部は勇者の森へ来ていた。

 

 友奈は東郷の手を引いて走る。

 

 倒れそうになりながら東郷はついていく。

 

 少しして、風、樹、夏凜、園子、そして日向の姿があった。

 

「皆さん、どうして?」

 

「遅かったわね、東郷!」

 

「これからお祭りを始めるんです!」

 

「お祭り?」

 

「星祭りらしいわよ」

 

「星獣さん達のお祝いなんだよ~」

 

「え?」

 

 東郷が驚いて見上げるとそこにはゴウタウラス、ギガライノス、ギガフェニックス、そしてギガバイタスにパワーアニマル達の姿がある。

 

「アタシ達もよく知らないんだけど、平和を祈る祭りらしいわよ?ま、料理とかはほとんど日向と大神さんが用意してくれたんだけどね~」

 

 風の言葉に東郷は大神と日向へ視線を向ける。

 

「わっしー、キミが無事でよかったよ」

 

 笑みを浮かべる大神といつもと同じ表情の日向。

 

 しかし、当たり前の日常へ東郷は戻れたのだということを知る。

 

「ありがとうございます!」

 

 嬉しそうに東郷は微笑む。

 

「じゃあ、星祭り、はじめるわよぉ!」

 

 風の言葉を合図に星獣とパワーアニマル達が空に向かって吼える。

 

 ギガバイタスが空に向かって光弾を放った。

 

 それが星祭り開始の合図となる。

 

 樹や園子たちは興味津々という様子でパワーアニマルやギガライノス、ギガフェニックスと接していく。

 

 久しぶりに人間と触れ合えるからかギガライノス達はとても楽しそうに園子達と触れ合っていた。

 

 巨大なギガバイタスと風が写真を撮る。

 

 大神がどこからか取り出した笛で音色を奏でだしたことで樹が歌を唄い、その音色にガオディアスが嬉しそうな声を上げる。

 

 ゴウタウラスはのんびりと周りを見ていた。

 

 皆はジュースや食べ物でわいわいと楽しんでいる中、日向は離れたところで木々にもたれている。

 

「日向さん」

 

 そんな彼に東郷が声をかける。

 

「祭り、楽しんでいますか?」

 

「あぁ、こんなに騒いでいるのは久しぶりだ」

 

「そんな風に見えませんよ」

 

「そうか」

 

 淡々と答える日向に東郷はちらりと見上げる。

 

「日向さん」

 

「なんだ?」

 

「助けてくれてありがとうございます」

 

「助けたのは結城友奈達だ。俺は何もしていない」

 

「いいえ、日向さんが動いてくれなかったら……きっと、私は贄になっていたと思います……そ、その」

 

「無理するな」

 

 言葉を紡ごうとする東郷の手を日向はやんわりと包み込む。

 

「怖いことをすぐに忘れろとはいわない。だが、無理はするな。お前のことを心配している奴がいることを忘れるな」

 

「……日向さんも」

 

「ん?」

 

「日向さんも、私のことを心配してくれますか?大事だと……思ってくれますか?」

 

 見上げてくる東郷の額を日向は小突いた。

 

「痛い……」

 

「当たり前のことを聞くな」

 

 日向は東郷から視線を逸らす。

 

「大事だと思っていなかったら俺は助けようとしない」

 

 その言葉に東郷の頬は赤くなる。

 

「東郷さーん!」

 

「こらぁ!東郷!一人だけ日向といちゃつくなど許さんぞ!お前も来るのじゃー!」

 

「先輩!鶴姫さんが忍術でカラオケマシンをだしたんです!楽しみましょう!」

 

「日向!アンタも来るのよ!一人だけ蚊帳の外なんてなしだからねぇ!」

 

「日向さーん」

 

 わいわい騒いでいる勇者部の姿に東郷は駆け出す。

 

 ぴたりと立ち止まって東郷は振り返る。

 

「日向さん、ありがとうございます」

 

 彼女はそういって駆け出す。

 

 その後ろ姿を見ている中。

 

「気付いたか?」

 

「あぁ」

 

 流星の問いかけに日向は答える。

 

「どうするつもりだ?」

 

「方法はある……」

 

「それをすれば、どうなるかわかっているか?」

 

「当然だ」

 

 迷わずに日向は答える。

 

 その姿にヤミマルはため息を零す。

 

「そうかい、楽しい宴だ。邪魔をするつもりはないが……お前も楽しんでおくことだな」

 

「楽しんでいる」

 

 短く答えていると友奈がやってきて日向の手を引く。

 

「ほら!日向さんも行きましょう」

 

「あぁ、わかった」

 

 綺麗な夜空を見上げながら日向は歩き出す。

 

 




簡単な説明。


ギガバイタス

ギガフェニックス

ギガライノス

星獣戦隊ギンガマンで登場した星獣。宇宙海賊バルバンに滅ぼされた星獣が改造された姿。
元々の星獣としての姿はあったが改造されてからは合体直後くらいしか姿を見せない。
ちなみにギガバイタスは戦艦。
ギガフェニックスは戦闘機、
ギガライノスは陸戦機で構成されている。




獣将ホワイトカーク
獣将バトルカーク

これらは忍者戦隊カクレンジャーの鶴姫ことニンジャホワイトの使うロボ。
ホワイトカークは巻物を使うことで出現、
バトルカークはドロンチェンジャーのメダルを使うことで召喚可能。
バトルカークは自立行動もできるが忍者と一体化することで戦えることも可能。



もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト

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