黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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詰め込み過ぎた。

次に最終回を乗せる予定です。


黒騎士と集う勇者達

――日向さんの様子がおかしい。

 

 東郷はここのところの日向の態度に疑問を抱いていた。

 

 理由はわからない。

 

 強いていうなら愛しい人への思いの強さ故の直感だろう。

 

 彼女は発信機を確認する。

 

「勇者の森にいるようね……ほぼ、毎日いるみたい」

 

 東郷は端末の機能をみてため息を零す。

 

 勇者の森で彼は何かをしている。

 

 東郷は彼が何をしているのかが気になった。

 

 もしかしたら天の神との戦いに向けての準備かもしれない。

 

「日向さん」

 

 東郷美森にとって落合日向は初恋の相手だ。

 

 出会いは特筆するようなものもない、普通のもの。

 

 風の家族ということで顔合わせをして、それから何度かお話をする程度。

 

 その時に彼が記憶喪失ということで奇妙な親近感を覚えたほどだ。

 

 だが、何度も接していくうちにいつの間にか彼へも好意を寄せてしまっていた。

 

 彼が黒騎士としての記憶を取り戻してからは少し距離を置いていたが、あの時、贄として奉火祭へ連れていかれた時、東郷は絶望よりも仕方ないのだと諦めていた。

 

 だが、そんな考えを彼は破壊する。

 

 結果として助けてくれたのは友奈だ。

 

 しかし、彼が動いていてくれたからこそ友奈や大切な仲間達はかけつけてくれたのである。

 

 彼の深い優しさに東郷の恋心に炎がついた。

 

 止まらない。

 

 もう、トマレないのだ。

 

 だからこそ東郷は決意する。

 

「彼の隠し事を調べよう、そして」

 

 今度は自分が力になるのだ。

 

 東郷は赤龍軒へ向かう。

 

 勇者装束になると二階から侵入する。

 

 幸いにも大神たちは階下で働いていた。

 

 その間に東郷は部屋を物色した。

 

「何も……ない」

 

 宝物も手に入ったが彼の隠し事については見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気のせいか?」

 

 疲れて部屋に戻った日向。

 

 ナイトアックスを使いこなせるようになり、今はヤミマルと日夜、戦いのような訓練。

 

 すぐに部屋で寝ようとした日向は下着や衣類が少しばかり減っているような気がした。

 

 首を傾げながら彼は横になる。

 

「グッ!」

 

 襲い掛かる激痛に日向は顔をしかめた。

 

「……もう、限界、か」

 

 痛みが引いた後、倒れる様に日向は眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その痛みは決して消えることはない。お前が呪いを手放さない限り」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、手放せばその呪いは持ち主へ返される。それを俺が選択しないことはわかっているはずだ、ブルブラック」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからこそ、お前は最後の戦いへ赴く」

 

「そうだ」

 

 夢の中、彼はブルブラックと語り合う。

 

「一人でいくつもりか?」

 

「これは俺が始め戦いだ。終わりも俺一人で終わらせる。すべてに決着をつける。天の神に思い知らせてやる。蔵人の痛みを……俺の怒りを!」

 

「三百年消えることのなかった炎か、ただの人間が抱くにしては大きなものだ」

 

「そうだな」

 

「私はもう見守るしかできない。貴様の行く末を」

 

「そうしてくれ、友よ。俺はそういう人がいてくれるだけ幸せだ」

 

「愚か者め、お前は周りをみれていない」

 

 呆れながら告げるブルブラックの言葉に日向は苦笑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

 勇者部の部室。

 

 友奈は端末にメッセージが入っていることに気付いた。

 

 内容を見ようとした時、部室のドアが開かれる。

 

「邪魔するぞ」

 

 ドアの向こうから現れたのは流星光だった。

 

「アンタ……」

 

「日向さんの友達さん」

 

「やめろ、蕁麻疹が出る。俺とアイツは友達ではない。さすらい転校生、流星光だ」

 

 顔をしかめながら流星は学帽を深くかぶる。

 

「そのさすらい転校生が何の用よ?」

 

「話をしたいところだが、まだ全員、そろっていない。少し待て」

 

「は?」

 

 勇者部が戸惑う中、窓からニンジャマン、鶴姫、拉致された大神、そして、風太郎とニンジャマン。

 

「あのぉ、貴方はどちら様で?」

 

 風太郎と共にやってきたのは髭を生やした恰幅の良い男性。科学者なのか白衣を纏っている。

 

「はじめまして、というわけではないがこの姿で会うのは初めてだね。勇者部の諸君、私はゴセイアルティメット、六大神の一人だ」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 恰幅の良い男性、ゴセイアルティメットの言葉に勇者部のメンバーは言葉を失う。

 

「さて、全員、そろったようだな。話を始めよう」

 

 流星は周りを見渡してある冊子を取り出す。

 

「それは?」

 

「落合日向の奴が残していった日記だ」

 

「日記?そんなものを日向さんは書いていたの?」

 

 部屋を探した(物色した)東郷は驚きの声を漏らす。

 

 日記の存在を知らなかった風や樹も驚いている。

 

「ただの日記じゃないよ。日向の体を蝕んでいる呪いが刻まれている。読めば皆、呪われる」

 

「呪い!?」

 

「どういうことよ!!」

 

 風太郎の言葉に樹や風が驚く。

 

「そのことについて、話をしよう」

 

 ゴセイアルティメットは話を始める。

 

「彼が受けている呪いは奉火祭を妨害したことによって発生した呪い、呪いを生み出した元は天の神だ」

 

「天の神の呪いは僕達や精霊の力をもってしても防ぐことは出来ない。全身を襲うような激痛が日を増すごとに強くなっていく。そして、厄介なことに、この呪いは他人へ話せばその人へ感染する力をもっているんだ」

 

 ゴセイアルティメットと風太郎の言葉に勇者部は戸惑う。

 

「まってくれ!落合はいつからそんな呪いを受けたんだ!?奉火祭を壊したのなら、俺達全員が」

 

「もしかして……私のせい?」

 

 大神の疑問に友奈が言葉を漏らした。

 

 沈黙した室内で友奈は風太郎たちへ問いかける。

 

「私が東郷さんを助けた時に受けた呪いを、日向さんは受けたんですか?」

 

「そんなこと、あるわけ!」

 

「事実だ」

 

 友奈の疑問を流星は肯定した。

 

「あのお節介は本来ならお前が受けるはずだった呪いをすべて受け止めた。おっと、理由は俺達に聞くなよ?その理由など知らんからな。呪いを受けたアイツは痛みをこらえながら天の神と戦うための準備をしていた。そして」

 

「彼は天の神と戦うために結界の外へ出てしまった……呪いを、いいや、違うだろう。彼は三百年を超える自らの復讐を果たすために天の神へもう一度、挑みに向かったのだ」

 

「何でよ!」

 

 夏凜は叫ぶ。

 

「何で、アイツはそんなこと、黙って……自分が滅茶苦茶苦しいはずなのに、アタシ達のことを、何だと、思って」

 

「ニボッシー」

 

 園子や風が泣き始めた夏凜の頭を撫でる。

 

「教えてください。ゴセイアルティメット様、ガオゴッド様、私達はどうすれば」

 

「どうすればいいか、その答えを僕達は出せない」

 

「わかっているはずだ、その答えは誰が出さなければならないのか……」

 

「行こう!」

 

 友奈が拳を握り締めて叫ぶ。

 

「行こう!日向さんのところへ!私のために呪いを受けているなら、私は助けたい!日向さんのこと、大好きだもん!このまま見捨てるなんてしたら後悔する!私は行く!」

 

「友奈ちゃん、友奈ちゃんの言うとおりだわ。私も行きます。日向さんがいたから今もみんなといられるんだから!」

 

「アイツをボコボコにして、謝らせてやる!それから、アタシ達がどれだけアイツのことを大事に思っているかわからせてやる!」

 

「そうだね~、日向さんのこと大好きだもん!行くよ!」

 

「日向さんは私とお姉ちゃんの大事な家族だよ。独りぼっちになんかさせない!」

 

「もう!部長は私なのに、大事なこと全部言われちゃったじゃない。よぉし!勇者部一同!あの鈍感で私達の大事な人を助けに行くわよ!」

 

 おー!と叫ぶ勇者部。

 

 その光景に大神と鶴姫は笑みを浮かべる。

 

 答えを解っていたのか風太郎とゴセイアルティメットは頷いた。

 

「さて、お前達がそういう答えを出すのはわかっていた。ニンジャマンやそこのガオシルバー達も行くだろうと思って、鋼星獣が待機している……あと、あの大馬鹿野郎のことは心配するな。援軍が既に向かっている」

 

 ニヤリと流星は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この程度か?」

 

 ナイトアックスを担ぎながら俺は問いかける。

 

 後ろにはトランザがけしかけた怪物とバーテックスの死骸が山のように積み上げられていた。

 

 戦闘から四時間程度のことだ。

 

 周りの死骸に視線を外して目の前のトランザを睨む。

 

 トランザは余裕の表情を浮かべている。

 

「流石は黒騎士ということか」

 

「お前の遊びに付き合っている暇はないんだが?」

 

「つれないことをいうな、これからが本番だ!」

 

 指を鳴らすトランザ。

 

 直後、目の前に轟音を立てて現れる怪物がいた。

 

「何だ、コイツは?」

 

 全体的に青い姿で赤い瞳、不気味な唸り声を立てている。

 

 俺の疑問へ答える様にトランザが手を広げた。

 

「コイツは隕石ベム!貴様を倒すために用意した強力な駒だ」

 

「そうか」

 

 地面をける。

 

 隕石ベムは口のような部分から火炎放射を放つ。

 

 横へ跳びながら炎を回避する。

 

 ナイトアックスを構えなおして横薙ぎに振るった。

 

 放った一撃は隕石ベムの体にめり込む。

 

 しかし、体を切り裂くには至らなかった。

 

 隕石ベムの拳が俺を打ち抜いた。

 

 殴られた俺は数メートルほど、地面を転がる。

 

「チッ、面倒だな」

 

 ナイトアックスを隕石ベムは放り投げた。

 

「どうだ?隕石ベムの硬さは?本来よりもさらに強化している。貴様が天の神を倒すためにさらなる力を手に入れると予想してなぁ!」

 

「そうか、なら」

 

――斬れるまで相手するだけだ。

 

 ブルライアットを抜いて、構える。

 

 直後、地面からバーテックスが現れて俺の左右に抑えにかかった。

 

 すぐに抜け出そうとしたが上から隕石ベムが圧し掛かる。

 

 体に襲い掛かる重圧に動きが鈍った。

 

「特性のバーテックス。自爆システム搭載だ」

 

 トランザが告げる。

 

「吹き飛ぶがいい、黒騎士ぃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一閃緋那汰ぁあああああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上空から降り立つような音と共に体を拘束していたバーテックスが切り裂かれた。

 

 体が自由になると同時に近距離でブルライアットのショットガンモードで撃つ。

 

 少しのけ反る程度のダメージだったが、離れることができた。

 

「大丈夫か?」

 

 聞こえた声に俺は振り返らない。

 

「こっちを向け」

 

 横から手が伸びて、無理やり彼女の方を向かせる。

 

「変身を解除したらどうだ?久しぶりの再会だぞ?」

 

「……乃木若葉、だよな?」

 

「そうだぞ」

 

「……成長している?」

 

 俺の前にいたのは乃木若葉だった。

 

 しかし、西暦の時より少しばかり成長しているようにみえた。

 

「あぁ、そのことか、当時のお前の年齢まで成長したところで、神々に頼んで眠りにつかせてもらった!お前が再び天の神に挑む時、目覚めるようにな!」

 

「……なぜ」

 

「お前のことが大事だからさ、日向」

 

「……若葉……」

 

「ちょっと待ったぁああああああああああああ!」

 

「意義あり!意義ありぃぃぃぃい!」

 

 周りのバーテックスを蹴散らして複数の少女が現れた。

 

「タマ達を無視するなんて許されると思うなよ!」

 

「タマっち先輩の言うとおり!若葉ちゃんだけずるいよ!」

 

「友奈さんの言うとおりです!せっかく、タマっち先輩の可愛い姿を先にみせたかったのにぃ!」

 

「杏!そこは違う!」

 

「グダグダね……」

 

「球子、杏、友奈、ちぃちゃん」

 

「えぇ、貴方のちぃちゃんよ」

 

 呆然としている間にちぃちゃんが若葉から奪い取るように俺の頬を掴む。

 

「あぁ、また貴方に会えたわ」

 

 にこりとほほ笑むちぃちゃんの姿。

 

 彼女もやはりというべきか成長している。

 

 少女だったが女性の手前という風に感じた。

 

 それは杏や友奈も同じ。

 

「しかし、お前はあまり変わっていないようにみえるな」

 

「失礼な!タマだって成長しているんだ!驚きタマえ!」

 

「確かに」

 

 怒って胸を張る球子。

 

 すこーし成長している様子である。

 

「ちょっとぉ!ミーのこと、忘れないでよぉ!」

 

「いたのか?歌野」

 

「酷い!」

 

 最後に姿を見せたのは緑色のシャツに「六人目!By農業王」と書かれた謎シャツを着た白鳥歌野だ。

 

 腰には獣奏剣がぶら下がっている。

 

「久しぶりね!日向!また会えて、とぉってもハッピーよ!」

 

「募るも話もあるが、終わらせるために目の前の敵を倒すとしよう」

 

 若葉の言葉に五人は頷いた。

 

 俺の横で西暦の勇者だった彼女達がトランザと隕石ベムを睨む。

 

「俺も……」

 

「日向、貴様は少し休め。ここは我々が引き受けよう」

 

「若葉の言うとおり!ここはタマ達に任せタマえ!」

 

「タマっち先輩の言うとおりです!日向さん、貴方とゴウタウラスは単独で六千ものバーテックスを滅ぼしています。少し休んでください」

 

「しかし……」

 

「大丈夫です!日向さんの前だからって無茶はしません。全力全開で戦い、生き残ります!」

 

「私達は貴方と幸せの時間を築くためにこの時を待っていたの。命を落とすなんて、無駄なことはしないわ」

 

 にこりとほほ笑む西暦の勇者達。

 

 その姿にトランザが笑う。

 

「ほう、西暦の時代の勇者か、まさか、こんなところで遺物と遭遇するとは思っていなかったぞ。だが、貴様らでもこの隕石ベムには勝てまい。貴様らの所持する勇者装束や力では勝てんぞ」

 

「それは、どうかな?」

 

 若葉が不敵に笑った瞬間、背後から小型バーテックスが襲い掛かる。

 

「無駄だ!」

 

 振り向くと同時に繰り出した大太刀がバーテックスを両断した。

 

「トランザとやら、一つ警告しておこう」

 

 大太刀を鞘へ戻しながら若葉は目の前のトランザを睨む。

 

「我々を遺物と思っていると足元をすくわれるぞ?小僧」

 

「貴様ぁ!」

 

 叫ぶトランザ。

 

 しかし、その足元に矢が刺さる。

 

「ほら、油断大敵です」

 

 にこりとほほ笑みながら周りの勇者を襲おうとするバーテックスを射抜く杏。

 

 それだけでトランザの額に血管が浮き上がる。

 

「隕石ベム!そこの小娘たちを殺せぇええええ!」

 

 唸り声を上げながら迫る隕石ベム。

 

 隕石ベムが正面から爪を振り下ろそうとする。

 

「フンス!」

 

 その攻撃を真っ向から受けたのは球子。

 

 彼女は回旋刃で鋭い爪を防ぐ。

 

「杏ぅ!」

 

 球子の叫びで後ろにいた杏が顔を携帯電話のようなものを構える。

 

【ジー・マジカ】

 

 隕石ベムの足元から水柱が発生してバランスを崩した。

 

 球子と入れ替わるようにして友奈と千景の拳と鎌が隕石ベムにダメージを与える。

 

「勇者パァンチ!」

 

「食らいなさい」

 

 攻撃を受けるが隕石ベムの体に傷はつかない。

 

「「からの!」」

 

 二人は同時に構えをとる。

 

「激気技!咆咆弾!」

 

「気力!天風星・一文字竜巻!」

 

 友奈の背後からタイガーのような獣の姿が、千景は複数の竜巻を起こす。

 

 その攻撃に隕石ベムの体が宙へ浮きあがる。

 

 さらなる追撃を阻むように隕石ベムの口から火炎放射が放たれた。

 

 歌野は獣奏剣を奏でる。

 

 音色によって巨大な壁が土によって作り出されて炎を阻む。

 

「タマっちぃ!」

 

「オーケー!」

 

 歌野が獣奏剣で地面をえぐり取る。

 

 抉り取った部分を球子は掴んで投げ飛ばす。

 

「必殺!」

 

「岩石投げぇえええええ!」

 

 投げ飛ばした岩の塊が何かをしようとしていたトランザへ投げられる。

 

 トランザは咄嗟に回避する。

 

 その間に浮きあがった隕石ベムへ若葉が大太刀を繰り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一閃緋那汰ぁあああああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その一閃が隕石ベムを切り裂いた。

 

 だが、そこで終わらない。

 

 大太刀を持ち直しながら若葉の拳が金色に輝く。

 

「ゴッドハンド!」

 

 必殺の拳が隕石ベムを捉えた。

 

 その拳は強固な隕石ベムの体を貫き、コアである部分を握りつぶす。

 

 隕石ベムが地面へ落下して巨大なクレーターを作り上げる。

 

「フッ」

 

 若葉は仲間の傍へ降り立つ。

 

 直後、隕石ベムは大爆発を起こした。

 

「ば、バカな!?」

 

 驚くトランザに若葉は剣先を向ける。

 

「私達、人間を舐めるなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トランザは驚きを隠せなかった。

 

 勇者が、人間に少し毛が生えった程度の相手に切り札として用意しておいた隕石ベムが倒されてしまう。

 

 黒騎士ではない、格下だとみていた人間によって。

 

 何より自分を下とみているような相手にトランザは怒りで顔を歪める。

 

「人間、許さんぞ!」

 

 叫びながらトランザが若葉へ迫る。

 

 振るわれる刃を若葉は受け流す。

 

 そのまま反撃しようとしたところでトランザは腕に装着されているメタルトランサーを操作した。

 

 メタルトランサーの能力によって若葉の大太刀が手を離れて宙を舞う。

 

「卑怯だぞ!」

 

「戦略のうちだ」

 

 叫ぶ球子に対してトランザは平然と刃を振るう。

 

 若葉は冷静に動きを見切りながら後ろへ下がる。

 

「愚かな!」

 

 トランザは雷撃を放つ。

 

 それを前に若葉は拳を前に繰り出す。

 

「ゴッドハンド!」

 

 放った一撃は雷撃を切り裂き、真っ直ぐにトランザの武器、メタルトランサーを破壊した。

 

「なっ!?」

 

 力の根源ともいわれるメタルトランサーの破壊にトランザは動揺してしまう。

 

 その隙に若葉は奪われた大太刀を回収して踏み込む。

 

「若葉さん!」

 

 同時に歌野が獣奏剣を投げる。

 

 トランザは魔剣ボルトランザを構えようとした。

 

 しかし、若葉の方が速い。

 

「一閃緋那汰!」

 

 叫びと共に繰り出される二つの斬撃。

 

 西暦の勇者として戦っていたころよりも鋭い刃。

 

 神業ともいうべき速度で放たれた技によってトランザの首が斬り落とされる。

 

 ボトリとトランザの首が地面へ落ちた。

 

 本来なら斬られた個所から血が流れ出すのだが、そこから出てきたのは泥。

 

 泥だった。

 

「何だ、これは、どういうことだぁ!?」

 

 首だけになったトランザは自分の体から流れだしたものをみて叫んだ。

 

「泥人形」

 

 トランザの正体に察しがついた若葉が言葉を漏らす。

 

「ど、泥人形だと!?」

 

「見た目は限りなく人だが、ダメージを受け過ぎる。用済みになれば本来の泥へ戻るという……貴様が泥人形だったとはな」

 

「バカな!俺は帝王トランザだ!この俺が泥だと!?信じられるものかぁ!」

 

 叫ぶトランザだが、既に肉体は泥になって崩れ落ち、眼球の方も溶け始めていた。

 

「ウソだ、ウソ――」

 

 最後まで否定しながらトランザは消滅した。

 

「哀れだな」

 

 大太刀を鞘へ戻しながら若葉は呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程、流石は勇者ということか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、まばゆい光が勇者と黒騎士を照らす。

 

 彼らが視線を上げるとそこに降り立ったのは天使のような異形。

 

 青と金色の混ざったその姿はどこか神々しいものを感じられた。

 

「初めまして、滅びるべき人間ども、私は天の神だ。こうして貴様らと言葉を交わすことに激しい嫌悪を覚えるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 最後の戦いがはじまろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、私達、天の神とかいう奴について知らないけれど、どういう奴なの?」

 

 ギガバイタスの機内。

 

 そこで神世紀の友奈達が目的地を目指していた。

 

 来る最後の戦いに向けて準備をしている中で風が疑問をぶつける。

 

 ストレッチしていた大神や鶴姫もその正体は知らない。

 

「天の神っていうけれど、元は護星天使という存在だった」

 

「護星天使?」

 

「星獣などのように星を守る役目を負った者達だ」

 

「元々は、この星を守る存在であったんだけど、いつからか存在が歪み、人間を滅ぼそうという思考を持つようになったんだ」

 

 答えたのは風太郎とゴセイアルティメット。

 

 人の姿になれる彼らが説明をはじめる。

 

「どうして、そうなったんですか?」

 

「私の知っている限り、もともと、彼は護星天使として優秀な力と素質があった。実際、その力で多くの魔から地球を守り、大宇宙が生み出したとされる大神龍と戦えるとも言われていた……それゆえだろう」

 

「彼は力におぼれた。ある存在を倒すために仲間の護星天使の力を奪うばかりか命を食らった。その頃から、彼は護星天使ではなくなり、人間を嫌悪、滅ぼそうとするべく、眷属を生み出し、自らを天の神と名乗るようになった」

 

「我々は彼を阻止しようとした。しかし、あまりに強大な力と星を壊しかねない戦いになるということを予見した我々は万全で挑めなかった」

 

「そこで悲劇が起きた」

 

 天の神による人間を滅ぼすために生み出された眷属、バーテックス。

 

 バーテックスは人間を滅ぼすために活動を起こし、落合日向の弟を殺した。

 

 そして、深手の日向はブルブラックと契約して黒騎士として覚醒する。

 

 黒騎士の力は天の神の力を弱体化させるまでに至った。

 

「だからこそ、奴は今度こそ、黒騎士を滅ぼすだろう……日向さえ、いなくなれば止める者はいないと考えている」

 

「そんなこと、させないよ!」

 

 友奈が叫ぶ。

 

「日向さんは私のためにボロボロになったんだ……今度こそ、恩返しだけじゃない。私達の想いを伝えるんだ」

 

「友奈ちゃん、そうね。あの人は放っておくとどこまでもいってしまうもの」

 

「絶対~、逃がさないよぉ~」

 

「ま、アタシも負けたままっていうのは癪だからね!」

 

「お姉ちゃんとまた一緒に食事したいもん!」

 

「部長として、最後に言うわよ!勇者部は黒騎士を手助けする。そして、天の神を倒すわよ!」

 

 彼らの姿を見て、風太郎とゴセイアルティメットは微笑む。

 

「やはり、キミ達なら任せられそうだ」

 

「え?」

 

「ごめんね。僕達はやらなければならないことがあるんだ」

 

「どういうことですか?」

 

 東郷が尋ねる。

 

「この地球に大神龍が近づいている」

 

「大神龍?」

 

「大宇宙が生み出したとされる秩序を守る番人だよ」

 

「秩序を乱す者がいれば、正義の側であろうと悪の側であろうと滅ぼす。バランスをもたらす者……それがこの地球へ迫っている」

 

「最悪、この星が無くなるかもしれない。だから、僕達がいく」

 

「我々は大神龍の接近を阻止する。その間に決着をつけてほしい」

 

「信じているよ!人間の可能性を」

 

 風太郎はそういって大神や友奈達へ手を振る。

 

 そして、ガオゴッドへ姿を変えた。

 

「我々は人間を信じている。滅びるべき存在ではないと、キミ達なら……きっと、天の神に勝てる」

 

 ゴセイアルティメットに姿を変えて、外にいた他の神々と合流して、彼らは宇宙へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒騎士の前に現れた天の神。

 

 彼は金色に輝く剣を手にゆっくりと近づいていく。

 

「させん!」

 

 若葉が大太刀を振り下ろす。

 

「邪魔だ」

 

 パチンと指で若葉を弾く。

 

 衝撃で若葉は空高く舞いあがり落ちる。

 

 地面に落下する寸前で千景と友奈がキャッチした。

 

「人間風情が俺の邪魔をするな」

 

「天の神ぃぃいい!」

 

「黒騎士、貴様のことは覚えているぞ。俺の体に傷をつけた存在!今も覚えている。あぁ、原形をとどめられないくらい叩き潰してやろう」

 

 言うや否や天の神の一撃が黒騎士へ突き刺さる。

 

 攻撃を受けて吹き飛んだ黒騎士へ天の神が光弾を放つ。

 

「させっかぁ!」

 

 球子が回旋刃で防ぐもあまりの威力に吹き飛んだ。

 

「タマっち先輩!」

 

 杏が弓を射ようとすると小型バーテックスが襲撃してくる。

 

「伊予島さん!」

 

 千景が鎌で小型バーテックスを切り裂く。

 

「獣拳」

 

 友奈が構えを取るよりも早く天の神が前に立つ。

 

「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 天の神が動くよりも早くナイトアックスでその体を切り裂いた。

 

 しかし。

 

「手ごたえが、ない!」

 

「どうやら俺の対策をしてきたようだが、何もかも無意味だ」

 

 衝撃波によって勇者も黒騎士も吹き飛ばされる。

 

「絶望だ。貴様ら人間に生きている資格などない。滅べ、そして、この星は俺のものになる」

 

 そういって天の神は笑う。

 

 天の神の姿を見て日向の中に激しい憎悪の炎が噴き出す。

 

「ふざけるな……」

 

 ナイトアックスを杖代わりにして立ち上がる。

 

 長時間の戦闘によって体はボロボロ。

 

 しかし、日向の目の闘志は消えていなかった。

 

「まずは貴様から消してやろう」

 

 天の神が日向へ剣を振り上げる。

 

「GTソード!」

 

「ドリルセイバー!」

 

 日向を守るように二つの斬撃が天の神を押し戻す。

 

「久しぶりの再会だっていうのに、無茶苦茶しすぎだろ」

 

「まぁ、それが日向らしいよな」

 

 目の前に現れたのはメガレッドとレッドターボの二人。

 

 その声は日向の知る二人。

 

「力?健太?」

 

「よ!三百年ぶりだな!」

 

「助けに来たぞ!」

 

「どうして……」

 

「お前一人で辛い戦いに行かせるなんてもうしない」

 

「覚悟はできているぜ!無事に帰ったら焼肉奢れよな!」

 

「……わかった」

 

 二人の言葉に頷きながら日向は天の神を睨む。

 

「まだ抗うか、ならば、より巨大な絶望を貴様らに与えるとしよう」

 

 天の神の後ろにレオ、スコーピオンといった多数のバーテックスが姿を見せる。

 

「今のお前達にできることはない」

 

 

 

「そんなことない!」

 

 

「今の、声は」

 

 直後、無数の光弾によってバーテックス達が消滅していく。

 

 西暦の勇者達、力や健太、日向は振り返るとギガバイタスが姿をみせる。

 

 その上、ギガバイタスの頭部に一人の少女がいた。

 

「勇者パンチ!」

 

 一言と共に繰り出される一撃が弱っていたバーテックスを倒した。

 

「日向さん!」

 

 そのまま一直線に少女は日向に近づいて。

 

「パンチ!」

 

 軽く日向を殴る。

 

 しかし、今の結城友奈は勇者である。

 

 その一撃によって日向は数メートルほど転がっていく。

 

「「えぇ~!?」」

 

 突然の事態にレッドターボとメガレッドが叫ぶ。

 

「何を、する」

 

「すっきりしました!」

 

 対して友奈はニコニコしている。

 

「日向さん!今度から私を守るために自分を犠牲にするなんてことしないでください!そんなことしたら私、もっと怒りますから」

 

「は、はい」

 

 友奈の言葉に自然と日向は頷いた。

 

「あーぁ、先ばしちゃって」

 

「友奈!アンタねぇ!」

 

「友奈先輩らしいですね」

 

「日向さんの頬が腫れていないといいけれど」

 

「ふわぁわ、眠いから日向さん成分を」

 

「そのっち、そこでステイな」

 

「ぎ……鶴姫もそれ以上近づくんじゃない」

 

 勇者部と鶴姫、そして、大神がやってくる。

 

「お前も無茶をするな」

 

「別にそんなつもりはない」

 

「だとしても心配させたのは事実だ」

 

「そう、だな」

 

 大神が手を差し伸べる。

 

「落合、早く終わらせるぞ」

 

「あぁ」

 

 その手を掴んで日向は立ち上がる。

 

「全く、タマ達を差し置いて、盛り上がるなよな!」

 

「まさか、このタイミングで神世紀の勇者達と顔合わせか」

 

「前に神樹様の中で出会ってはいますけれど」

 

「日向に彼女?認められないわ」

 

「そうだね!ぐんちゃん!結城ちゃんでも負けないからね!」

 

 西暦の勇者が日向の隣に立つ。

 

「天の神、決着をつけよう」

 

 ナイトアックスを構えなおして日向は剣先を天の神へ突きつけた。

 




乃木若葉

西暦の時代の勇者。最後まで生き抜いて、六大神に頼み込んで日向の年齢となる同時に眠りについた。
眠りにつくまでの間に、自らの剣技と技術を磨き続けて、オーラパワーを会得、ゴッドハンドをマスターする。


郡千景

西暦の時代の勇者。原作と異なり最後まで生き抜いた。日向への愛は三百年分詰まってより増している模様。若葉と同様に日向と同い年になり眠りについた。
修練の結果、気力を会得。

高嶋友奈

西暦の時代の勇者、原作と異なり最後まで生き抜いた。
修練の結果、獣拳を会得。激獣タイガー拳を使いこなす。


伊予島杏

西暦時代の勇者、原作と異なり最後まで生き抜く、タマっち先輩と日向の三人で幸せな日々を送るべく、未来の決戦に向けて修練を積む。その結果、六大神の協力で魔法を会得する。

土居球子

西暦時代の勇者、原作と異なり最後まで行く抜いた。原作よりも女子力を磨いているらしく、未来で日向と共に幸せになるべく奮闘、偶然にもバードニックウェーブを浴びる。


白鳥歌野

西暦時代の勇者、原作と異なり最後まで生き抜く。力の戦士ブライから獣奏剣と力のメダル、そしてドラゴンシーザーを継承する。
農業王になるべく未来の決戦のために、眠りについた。


上里ひなた

西暦時代の巫女。乃木若葉の親友。
若葉達と異なり生涯を全うした後に六大神に頼み込んで年齢を若返えらせてもらい、眠りについた。

藤森水都

西暦時代の巫女。諏訪の元巫女。
ひなたと同様に生涯を全うした後、六大神によって年齢を若返らせてもらう。




恰幅の良い髭男性(ゴセイアルティメット)
元ネタは天装戦隊に出てきた展望台の博士をモデル。


大神龍

五星戦隊ダイレンジャーに出てきた存在。
かなりの巨大な存在でダイレンジャーと敵対組織に休戦協定を結ばせるほどのパワーを持つ。
最終回で地球から飛び去る。

泥人形
五星戦隊ダイレンジャーから。
泥で作られた人形。意思を与えられた者達は自身が泥人形という自覚を持っていない。
死ぬ間際に自らの正体を知るという。ちなみに製作者の正体は不明。

もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト

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