黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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番外編:赤嶺友奈は愛されたい

「やめろ、友奈」

 

 心臓を掴んでいた手を日向は無理やり引きはがす。

 

「あれ、なんで?」

 

 戸惑った声を漏らす赤嶺友奈。

 

「なんで、効果がないの」

 

「気持ち悪いし、頭がぐちゃぐちゃする。だが、それ以上に」

 

 友奈を助けないといけない。

 

 そういう気持ちに日向は突き動かされていた。

 

 どうして、そうなのかわからない。

 

 だが、放っておけない何かが日向の中にあったのだ。

 

「っ!!」

 

 赤嶺友奈は日向を突き飛ばす。

 

 そのまま、部屋を飛び出していった。

 

「友奈……」

 

 激痛に襲われた日向はそのまま意識がもうろうとし始める。

 

 その時、手の中に金色の鍵が現れた。

 

 鍵をみた、日向は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日向と会ったのか!?」

 

「あぁ、記憶は戻っていなかったけど、俺達の知る日向に近かった」

 

 力は健太に日向と出会ったことを話す。

 

 驚きながらも日向に戦う意思はないと聞いて安心する健太。

 

「あとは記憶を取り戻すだけだな!」

 

「それだけ、なんだろうか?」

 

「どういうことだよ?」

 

「いや、わからないんだ」

 

「何が!?」

 

「日向に、赤嶺友奈ちゃんはどうして執着するのかなって」

 

「そんなの……なんでだ?」

 

「多分だけど、そこがわからないと根本的な解決にはならないんじゃ」

 

「見つけましたぞ」

 

「「うわっ!?」」

 

 突如、彼らの前に巨大な魔神が現れる。

 

「なんだ、お前!?」

 

「拙者はガンマジン、ご主人様の命でお二人を連れていく」

 

 巨大な手が抵抗する暇もないまま、力と健太を捕まえてどこかへ連れていく。

 

 しばらくして、二人はある家の中にいた。

 

「いや、どこだ、ここ!?」

 

「ご主人様、お連れしましたぞ」

 

「日向!」

 

 力は驚いて駆け寄る。

 

 家の床。

 

 そこで倒れている日向の姿があった。

 

「おい、どういうことだ?」

 

「ご主人様のなかに渦巻いていた邪悪な力は取り除きました。しかし、疲労なのか目を覚ましません」

 

 健太がガンマジンへ詰め寄る。

 

「くそっ、とにかく部屋で休ませよう」

 

「俺、なんか、探してくるわ!」

力に日向を任せて部屋の中を調べる健太。

そして、あの部屋に入ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、彼女達を倒さないとダメなんだ」

 

 失敗した。

 

 失敗した、失敗した、失敗した、失敗した。

 

 赤嶺友奈はぶつぶつと体育座りしながら考える。

 

 どうすれば、彼だけを自分のものにできるか。

 

 彼に自分だけをみてもらえるか。

 

 その結果。

 

「やっぱり、私しかいないってことを理解してもらうしかないよね」

 

 パンパンと土を落としながら赤嶺友奈は笑みを浮かべる。

 

「邪魔な西暦と神世紀の勇者はすべて倒しちゃおうっと」

 

 暗い笑みを浮かべながら赤嶺友奈は立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は……」

 

「日向!目を覚ましたか!?」

 

「力、健太?」

 

「お前、思い出したのか?」

 

「……俺は」

 

 体を起こす日向。

 

 少しして彼は思い出す。

 

「俺は、ここは?」

 

「四国だ…、えっと、神樹の中のっていう意味だけど」

 

「それより、本当に日向なんだよな!?」

 

「あぁ、俺だ」

 

「よぉし!思い出したんだな!?友奈ちゃん達が喜ぶぞ?」

 

「友奈?」

 

「あぁ!これで、元通りだよな!」

 

「いや、行かないといけない」

 

 日向は立ち上がる。

 

「どこへいくんだ?」

 

 力が問いかける。

 

「赤嶺友奈を助ける」

 

「何でだよ!相手は敵だぞ!お前をこんなことにした相手だ。それに」

 

 健太は言いよどんだが、告げる事にした。

 

「あんな歪んだ執着をしている相手だぞ!それでも助けるのかよ」

 

「俺は助ける相手を選ぶつもりはない……それに、思い出したんだ。俺は一度、たった短い時間だが赤嶺友奈と共に行動をしていた」

 

 神世紀になったばかりのころ、赤嶺友奈は家の倉庫に閉じ込められていた。

 

 勇者の資格がなかった彼女は虐待同然のことを受けている。

 

 そのことを知った、日向は六大神の反対を押し切り蘇りつつあった力を用いて、彼女を支えた。

 

 結果として神世紀の時代に覚醒した際に記憶が混濁して、ブルブラックが表に出る事態になる。

 

「俺は助けた相手を見捨てない。どれだけ、相手が歪んでいようと、いや、違う」

 

 日向は首を振る。

 

「赤嶺友奈はただ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海。

 

 そこで赤嶺友奈と結城友奈、高嶋友奈の二人はぶつかっていた。

 

 友奈同士の決闘という名の殺し合い。

 

 結城、高嶋の二人は殺し合いを望んでいない。しかし、赤嶺は異なる。

 

 彼女達を殺そうとしていた。

 

「日向は私のものだよ!貴方達はいらないんだ!」

 

 叫びと共に振るわれるヘルフリード。

 

 それをギンガの光を纏った結城友奈が受け止める。

 

「赤嶺ちゃん!どうして、こんなことしないといけないの!?」

 

「うるさい、うるさいよ!お前らがいなければいいんだ!だから」

 

 片方の拳に黒いエネルギーが集まる。

 

「怒臨気!!」

 

 叫びと共に放たれた一撃が結城友奈を吹き飛ばす。

 

「高嶋さん、貴方も邪魔なんだ。私の日向を」

 

「ねぇ、どうして、赤嶺ちゃんは日向さんと居たいの?」

 

「え?」

 

 ぽかんとする赤嶺友奈。

 

 高嶋友奈は静かに問いかける。

 

「私は日向さんに救われた。絶望の中から救い上げてもらったんだ。だから、日向さんに恩返ししたいし日向さんに幸せになってもらいたいから一緒にいたい。私にできることなんて限られているかもしれないけれど」

 

――貴方は?

 

 そう問われたとき、赤嶺友奈は笑みを浮かべる。

 

「私が日向さんと一緒に居たいからだよ!私とずっと!永遠に!邪魔をするなら誰だろうと容赦しない!たとえ、西暦の友奈だろうと!」

 

 ヘルフリードと臨気を纏いながら赤嶺友奈は走り出そうとした。

 

 高嶋友奈は正面から拳を受け止める。

 

 彼女の拳は激気を放っていた。

 

「違うよ。確かに、そうなのかもしれないけれど、赤嶺ちゃん、違うよ!そんなんじゃ、赤嶺ちゃんは幸せになれない!絶対、ダメだよ!」

 

「うるさい!消えちゃえ!お前らなんか消えちゃえよ!」

 

 怒臨気が放たれて高嶋友奈を押していく。

 

「負けないよ。私は間違っていると知っているから!」

 

 高嶋の体からさらに強い激気、過激気が放たれる。

 

 二つの力がぶつかりあい、そのまま均衡が保たれようとしていた時。

 

「やめろ」

 

 上空から黒騎士が二人の間に割り込んだ。

 

 衝撃によってエネルギーが消失する。

 

「黒騎士、さん」

 

 呆然とする高嶋と結城。

 

 黒騎士から日向の姿に戻って赤嶺友奈の前に立つ。

 

「思い出したよ。赤嶺友奈。俺はキミと会っていたってことを」

 

「え?」

 

 驚いた声を漏らす赤嶺友奈の頭を日向は撫でる。

 

「すまなかった。キミと最後までいてあげられなくて」

 

「違う、違うよ」

 

「すまなかった。俺はキミを救うことができなかった」

 

「そんなこと」

 

「俺が天の神を倒しきれなかったからキミみたいな子が生まれてしまった。そんな罪悪感が俺の中にあったんだと思う。だから、キミが少しでも生きられるようにすることしかできなかった」

 

 日向は優しく赤嶺友奈を抱きしめる。

 

「ごめんな、最後まで愛してあげられなくて」

 

 抱きしめられた赤嶺友奈はぽろぽろと涙をこぼす。

 

「違う、違うよぉ!私は愛されたよ……日向に、貴方に愛してもらえたんだ。だから、だから、もう一度、逢えるって聞いて、逢いたいって望んで……周りの目的とか関係ない。ただ、貴方と」

 

 ぽろぽろと涙をこぼす赤嶺友奈。

 

 彼女の手の中にあったヘルフリードが地面へ落ちる。

 

 落ちたヘルフリードは砂になって消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日向さん、大丈夫?」

 

「どうだろう、な」

 

 高嶋友奈に問いかけられて日向は首を振る。

 

 あの後、敵対はしないとって赤嶺友奈は姿を消した。

 

 おそらく、今後、バーテックスを操るという勇者達との敵対行動はとらないだろう。

 

「少なくとも、俺は彼女を探すよ」

 

「どうして、ですか?」

 

 結城友奈が問いかけた。

 

「俺の償い、いや、会いたいからだろう」

 

 そういう日向の脳裏には赤嶺友奈の笑顔が過ぎる。

 

 憑き物が落ちたようなもの。

 

 あの顔の彼女ともう一度、あって話をしたい。

 

 日向はそう考えていた。

 

 

――大好きだよ!私の日向!

 

 

 

 「むぅ」

 

 「赤嶺ちゃん、羨ましい」

 

 

 




これにて本作は完結です。

長い間、お付き合いいただいてありがとうございます。

もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト

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