何か、エンジンが入りました。
とりあえず、気が向けば、誰かの話を乗せることになると思います。
姉だって甘えたい
「ごめんなさい!遅れました!」
「別に、気にしていない」
四国にあるショッピングモール。
そこで落合日向と犬吠埼風は待ち合わせをしていた。
上下を黒の上着とズボンで統一している日向に対して風は女子力をこれでもかと詰め込んだ格好をしている。
本気モードの風。
つまるところ、彼とのデートを心から楽しみにしていた。
どうして二人がデートをすることになったのか?
話は二日ほど前に遡る。
「風とデートをしてほしい?」
「お願いします!」
全ての戦いが終わった後、日向は力と健太の三人で生活をしているアパート。
そこにやってきた樹の言葉を繰り返す。
樹は真剣な表情で頷く。
「はい!あの、その……お姉ちゃん、最近、元気がなくて……」
「元気がない?」
「はい、そのぉ……日向さんが西暦の勇者さん達の相手ばかりをしていて」
「あぁ」
おずおずと告げられた樹の言葉に日向は理解する。
天の神と戦うために力を蓄えてきた西暦の勇者たちは長い眠りから目覚めると同時に日向への深い愛を躊躇うことなくぶつけてきた。
中学生だった彼女達は最早19歳。
日向と(外見は)同い年になったことで熱烈なアプローチを繰り広げている。
例えば乃木若葉。
彼女は鍛錬と称して毎日のように彼とランニング、そして木刀に模擬戦を行っている。
天の神を倒したと言っていつ、いかなる脅威が現れるかわからないという建前で彼と毎日のようにスキンシップ(意味深)をひなたと共に行っていた。
高嶋友奈は彼の空いている時間を狙っての如く郡千景と共に各地のゲーセンを荒らす等をしている。尚、各地でプリクラやケーキを仲良く食べている。
土居球子と伊予島杏はキャンプやバーベキューなどをしようと誘ってきた。
しかも狙って日向が予定のない日を狙う。
そんなことが続いて既に一カ月。
神世紀の勇者部の面々は精神的に大ダメージを負い始めていた。
友奈と東郷は互いに抱き合い、ぶつぶつと何かを話し合う。
夏凜は八つ当たりするように何かを模したサンドバックに拳を叩き込んでいる。
園子は誰かを模した人形を抱きしめたり、髪の中へうずめるといった奇行を繰り返していた。
「私も辛いですけれど、お姉ちゃんの元気がないのはもっと嫌なんです!だから、お願いです!日向さん」
今にも泣きそうな顔の樹をみて日向は手を伸ばす。
樹の頭を日向は優しく撫でる。
「日向さん?」
「そんな泣きそうな顔を俺はみたくない」
撫でながら日向は言う。
「平和を掴んだんだ。こんなことで悲しむお前達を見たくない。俺にどこまでできるかはわからないけれど、デート、するよ」
「ありがとうございます!」
「あぁ」
「あ、あの……できれば、しばらく頭を撫でてくれませんか」
樹だって年頃の女の子、好きな人に撫でてもらえてうれしくないわけがない。
久しぶりのスキンシップ、十分に満喫したかった。
「わかった」
力が帰って来るまで日向は樹の頭を撫で続けた。
樹が帰った後、シンプルに「デートしよう」というメールを風へ送る。
「(日向とのデート、これは夢じゃあないかしら?夢なら覚めるな、いいや違う!ゴールインして子供を産んで幸せな家庭を築いて老衰するまで冷めることは決して許さんぞぉ!)」
と、近所迷惑を考えずに叫んだという。
「(見せるぞ、女子力!まずは手をつなぐ!臆していてはいけない!勇者になるのだ!今こそ!)」
女子力という言葉を銀河へボッシュートしたような思考回路でグルグルと目が渦巻きながら隣をあるく日向へ視線を向けようとした時。
ぴとっと風の手に日向の手が触れた。
「ひゃい!?」
「人が多い。迷子になったら困るからな……迷惑だったか?」
「滅相もありません!むしろ御馳走様です!」
まともに思考できない中で夢と現実の区別もつかなくなってきた風は満面の笑顔で答える。
日向は気にしていないのか風の手を握って人ごみの中を歩いていく。
そんな二人を尾行する者達がいた。
「日向さん……」
「友奈ちゃん、なんてことかしら先輩と日向さんが一緒に歩いているわ!私達とではなくて、風先輩と」
離れたところで互いを抱きしめあいながら尾行を続けるのは結城友奈と東郷美森。
二人は偶然にも買い物へ来ていて、彼らの姿を見つける。
まさかの二人がデートをしていることに思考がフリーズしてしまうもすぐに尾行を開始した。
「いけないことじゃないよね?日向さんに被害がいかないように見守るだけだもん、ほら、温かい目(ハイライトオフ)」
「友奈ちゃんの言うとおりよ。日向さんへ危害を加えようとするなら容赦なく先輩であろうと叩き……コホン、温かい目よ(ハイライトオフ)」
温かい目(ハイライトオフ!)で見守っているために周りから人が離れていく中で二人は一定の距離で追いかけていく。
追跡されていることなんて知らない二人は楽しそうに買い物やフードコート、さらにはゲームセンターを満喫する。
「あ、あの、こういう服ってどうかな?」
「似合っているが、こっちのフリルのついたものでもいいんじゃないか?」
「え、似合うかなぁ」
「俺はそう思うけれど?」
「買います!」
日向のチョイスした服を即決して選んだり。
「はい、あーん」
「アーン!おいちぃ!」
日向の差し出すフォークのケーキをおいしく頬ぼり(この時、どうしょうもない寒気を感じ取るもエアコンが強いだけと判断する)満喫した。
そんな幸せの時間も夕方になれば終わりを告げる。
「はぁ、楽しい時間も終わりかぁ。しばらく日向さんとも会えないし」
「どういうことだ?」
「だって、日向さんの周りには色々な人がいるし」
風は西暦組の勇者のことを思い出す。
これから高校生になるにしても彼女達は色々な意味で規格外すぎる。
そんな彼女達と自分は天と地の差があった。
風は嫌というほど理解させられる。
「色々な人がいるからって、お前が遠慮する理由はないぞ」
「え?」
言われた意味が理解できなくて風は顔を上げる。
「確かに俺の周りには色々な奴がいる。だからって、お前が遠慮をする理由はない……甘えたいときは甘えていいんだよ」
突然のことに風は戸惑う。
「え、なんの」
「お姉ちゃんだって甘えていいんだよ……我慢するな」
「い、いいの?ほら、私、面倒だよ?女子力磨くし、うどん大好きだし、これから高校生だし」
「気にしない」
「あ、あ、その」
「今日は風のところで夕飯を食べようかな、たまには三人でさ」
笑みを浮かべて日向は風の手を引く。
もつれそうになりながら日向に引っ張られながら風は歩き出す。
「もう!」
風は顔を赤くしながら勢いよく日向に抱き着いた。
「今の言葉、取り消しは効かないからね!」
「男に二言はありません」
「よろしい!じゃあ―」
――遠慮せず、甘えるからね!
風はそういって強く日向を抱きしめた。
尚、一部始終を録画して取得したデータは神世紀の勇者の面々へ拡散されてしまい、風はしばらく真っ赤な顔で勇者部へ足を運んでいたという。
神世紀アフター、次は誰がいい?
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結城友奈
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乃木園子
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乃木若葉
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古波蔵棗
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赤嶺友奈