アンケートの結果、赤嶺友奈ちゃんの話になります。
「そういえば、日向」
何でも屋を営んでいる三人は横一列に並んで剥がれかけている壁のペンキを塗っていた。
ペンキを塗っていた力は隣にいる日向へ尋ねる。
「なんだ?」
「いや、西暦の勇者たちがこの時代に生きていることは良いんだけど……神樹の世界にいた赤嶺友奈ちゃんってどうなったんだ?」
「あー、そういえば、全く姿を見ないなぁ」
日向の隣でペンキを塗っていた健太も気づいたような声を上げる。
「……」
「あれ、日向?」
「おーい?どうした?」
左右から反応のない日向の顔を見る二人。
目を見開きながら日向は気絶していた。
「「日向ぁああああああああああああああああ!?」」
作業中の場所で二人の叫びが響いた。
「うふふ」
「はぁ……」
翌朝、日向は三人で利用しているアパートの一室で目を覚ます。
自分にのしかかるものに気付いて目をうっすらと開ける。
「おはよう、日向様ぁ~」
「……家族にさまはやめろ」
「はーい!」
笑顔でこちらをみている赤嶺友奈の姿がそこにあった。
「はぁ……友奈」
「なぁに?もしやお目覚めのキスを所望!?」
「そんなものは望んでいない。お前、いつになったらみんなの前に顔を出すんだ?」
「うーん、日向成分を十分に得たら?」
「そんなものはない、ってか、乃木園子みたいなことぉ」
「うーん?」
続きを言う前に唇をふさがれてしまう。
抵抗しようにも両手を抑え込まれていて動くことができない。
日向にできるのは彼女が満足するまで無駄に体力を消耗しないようにすることである。
しばらくして満足したのか赤嶺友奈は離れる。
「私がいる前で他の雌の話は嫌だなぁ」
その目は真っ黒。
不用意な発言をすれば、今のキスよりも更に過激なことを彼女はするだろう。
神樹の世界において中学生だった姿の彼女は西暦組と同様に19歳の容姿になっている。
ボンキュッボンという姿はある意味、幼い姿を知るものからすれば当然のものと思うだろう。
「ところで友奈」
「なにかな?」
「どうして、お前は俺のシャツの中にいる?」
「当然だよ!もっと日向の温もりを感じたいから、ほら、私のドキドキ、聞こえるでしょ?」
ふふふと妖艶な笑みを浮かべながら赤嶺友奈は体を動かす。
寝る前に来ていなかった大きなシャツを日向は来ていた。
そして、その中に赤嶺友奈は入り込んでいる。
体に伝わる温もりからしておそらく彼女は服の類を纏っていない。
「寝る前に来ていた俺の服は」
「回収――ごほん、洗濯に出しているよ」
「本当だろうな?」
「ひっどぉい、家族を疑うの?」
「お前が今までにしてきたことを考えたら当然のことだろう?」
「今まで?」
きょとんと首をかしげる赤嶺友奈。
「(風呂場へ突撃してくる、既成事実を作ろうと痺れ薬を盛る、終いに……やめよう、赤ん坊のぬいぐるみを抱きかかえてあんなことを言われるなんて、頭がクラクラしてきた)」
頭痛がしてきて顔をしかめる日向。
気のせいか体の血が沸騰してきているような気がする。
「どうしたの?」
「いや、それよりも起きたいからどいてくれ」
「いーやーだー、まだ、成分が満喫できていない」
「知るか、起きる」
「誰と出かけるつもり?」
「そんな予定はない」
疑う様に半眼でみてくる彼女に日向はどうしたものかと考えていた時。
「隙あり!」
両手を伸ばして日向とゼロ距離になる。
彼女は――。
「ちゅっ、はむ、あむ!ちゅうう~~~~~」
ディープキスというものを実行に移した。
あまりに体験したことのない突然のことに目を白黒する日向。
体を少し起こしたことでシャツの中にある赤嶺友奈という存在が嫌というほど視界に広がる。
鼻孔をくすぐるのは女性の香り。
少女だった彼女が女性へと成長していることを証明する明石めいたもの。
それが嫌というほど理解させられて日向の思考がマヒしていく。
マヒしていく思考と一緒に。
「友奈」
「ふぅ、なぁに?」
「すまん、限界だ」
「ふぇ?」
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥと音を立てて鼻血が噴き出した。
「日向ぁああああああああああああああああああああああ!?」
早朝から赤嶺友奈の悲鳴が響いた。
「だっはっはっはっはっはっ!」
「おい、わ、笑ってやるなよ」
「そういう力だってぇ」
大笑いする健太、力は苦笑する程度だが、予想をしていたものだった。
「笑い過ぎだ、あの後、大変だったんだぞ」
皺を寄せながらあの日のことを思い出していた日向。
涙を零しながら看病をしてくれた赤嶺友奈を残していったことは心配だが、仕事があるために日向は部屋を出た。
「しかし、彼女もこの時代に来ていたんだな」
「なんとなーく、予想はしていたけどな!ダッハッハッ!」
「健太、お前は笑い過ぎて痛い目をみたほうがいい。特に友奈辺りに殴られて」
「物騒なことをいうんじゃねぇよ!?実際に起こりそうで怖いわ!」
青ざめながら健太は周りを見る。
誰の姿もないことを確認して安堵の息を吐く。
「過剰な反応だな」
「お前なぁ!お前は知らないだろうけれど、俺と力は大神の騒動に巻き込まれてひどい目にあったんだからなぁ!?」
「騒動?」
「大神が鶴姫ちゃんの求愛から逃げるために四国から出ようとしたんだよ。そのことを察知した鶴姫ちゃんが……まぁ、大暴れして」
「その騒動に神世紀組の勇者の美森ちゃんと園子ちゃんが参加して……」
「とにかく凄惨な光景だったよ」
最後は縛られた大神と鶴姫こと三ノ輪銀がキスをしてめでたくハッピーエンドだった。
「俺も四国を」
「やめろ!」
「お前が無言ででていったら大神の比じゃないからな!?確実に地球崩壊規模の何かが起こるから!」
「……やめておく。寒気がしてきた」
正解だという二人の言葉に日向は反論できなかった。
「というわけで今日は日向と一緒に寝ます」
「ベッドを用意してあるからそっちへいけ!」
「嫌だ!」
夜。
当然のことながら赤嶺友奈はいて、今は赤色のパジャマを着ている。
着ているのだが。
「お前、何で胸元全開なんだ」
「興奮する?」
「……」
「沈黙は肯定だよねぇ~」
「想像に任せる」
「じゃ、肯定ということで!」
否定しない方向でいくと無理やり肯定させられる。
とにかく赤嶺友奈が優勢だった。
「どーん」
後ろからタックルを受けて日向はベッドの上に倒れこむ。
碌な抵抗もできないままベッドの上の日向へ覆いかぶさる赤嶺友奈。
「ねぇ」
「ん?」
「迷惑かな?やっぱり」
こちらを覗き込む赤嶺友奈の表情は暗い。
何かを怖がるように尋ねた。
「私みたいな勇者の成りそこないがいても、やっぱり」
「俺は勇者としての赤嶺友奈と一緒に居たいと思ったわけじゃない」
沈黙する赤嶺友奈を日向は抱き寄せる。
これが良いことなのかはわからない。
だが、日向は彼女を助けたいと望み、行動に移した。
その結果が今の時間。
「目の前にいる少女、赤嶺友奈と俺はいることを望んだ。だから、お前が望んで俺から離れるというのなら――」
最後まで言う前に彼女に口をふさがれてしまう。
ソフトなキスは短い時間で終わる。
離れた赤嶺友奈は頬を赤らめて瞳を潤ませていた。
あ、ヤバイ。
自分のしでかしたことを理解した日向が離れようとした瞬間、赤嶺友奈が顔を近づける。
「もう、ダメ……私、日向から離れられない。ずぅぅぅぅっと一緒だからね?」
唇へキスを落としながら赤嶺友奈はパジャマのボタンをすべて外す。
中から覗く女性らしい肌に日向はごくりと唾を飲み込んでしまう。
その動きをみた赤嶺友奈は笑みを浮かべる。
自分を見てくれる。
日向が反応してくれた事実に彼女は笑みを浮かべた。
そのままゴールインを狙おうとした時。
「そこまでだよ!」
「御用だよ!赤嶺ちゃん!」
窓と天井から結城友奈と高嶋友奈が姿を現す。
彼女達は拳を握り締めている。
気のせいか背後に牛鬼など精霊の姿がみえた気がした。
「結城ちゃんに高嶋ちゃん、邪魔はさせないよ!これから日向と一緒になるんだから!」
「そんな素敵なこと!先にさせないよ!」
「当然!日向さんはわ、私の、か、かれ――」
「お前ら、迷惑だから外でやれ」
最終的に妥協案ということで三人の友奈と川の字で寝るということで本日の騒動は終結した。
尚、赤嶺友奈については西暦側の勇者が建造させたマンションで生活することになる。
こうして、日向の生活の保障はされた。
あくまで一時だけであるが。
次回は投票数が次点で多くの投票があった結城友奈ちゃんの話になります。
ちなみに選ばれなかったヒロイン達が多かった場合、こんな話を用意していました。
乃木園子 呪いの人形!?
乃木若葉 乃木若葉の日記
古波蔵棗 日向と海水浴
みたいな感じになっていました。
神世紀アフター、次は誰がいい?
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結城友奈
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乃木園子
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乃木若葉
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古波蔵棗
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赤嶺友奈