言えることは一つ、とにかく、詰め込みまくった。
そして、イレギュラー沢山、
一人の心、ズタズタっしてやったりなどなど。
とにかく、読んでください。
「……日向」
大社の手配した病院、その一室で死んだように眠る落合日向の姿がある。
千景はぴくりとも動かない彼の姿を見て泣きそうになるのを堪えていた。
キロスとサソリ型バーテックスの襲撃から五日。
未だに彼は目を覚まさない。
今までにない激闘、本来なら死者でてもおかしくはなかった戦い。幸いといえばいいのか、勇者は大きな負傷はなかった。
そう、勇者は――。
運び込まれた日向はすぐに緊急手術が行われた。
大社の医師によると既に峠は越えたと言われているのだが、目を覚ます気配がなかった。
「……千景」
「千景さん」
呼ばれた千景が振り返るとそこには球子と杏の姿があった。
二人は寝ている日向の姿を見る。
「黒騎士は、まだ、目を覚まさないか?」
「ええ」
球子の問いかけに少し硬い態度で千景は答える。
千景は友奈以外の勇者と仲がいい……わけではなかった。
何より、今の彼女は抱いてはいけない感情をもちかけていて、自分を抑えるのに精いっぱいだった。
二人は花束を置くと日向に声をかけて、そのまま帰る。
千景はため息を零す。
「最低ね。二人にこんな気持ちを抱くなんて……彼が知ったら幻滅するかも」
もし、
もし、という感情が千景の中で沸き上がって止まらない。
――もし、あの子達が死んでいたら日向は傷つかなかった。
こんな最低な気持ちを少しでも抱いているという自分がとても嫌になる。
「貴方がいないと……ここまで揺れるなんて」
七年という人生において短くも、千景にとって長い時間をおいての再会を心の底から喜んでいた。
自分をどん底から救い上げてくれた大切な人。
そんな彼にもう会えなくなる。
最悪の未来を考えただけで弱くなる自分がいた。
その事実に千景は強く拳を握り締めてしまう。
そんな千景へ窓の外から呼ぶ声が聞こえた。
「……ゴウタウラス」
外には彼の身を案じるゴウタウラスの姿があった。
本来なら人のいる近くに来られないゴウタウラスなのだが、ひなたが大社に掛け合い、特例として認められたのである。
「貴方も心配なのね」
窓の外でひたすら相棒の身を案じるゴウタウラスをみて、千景は振り返る。
「早く、目を覚まして、日向」
「はぁ……はぁ……はぁ!」
闇の中を高嶋友奈は走っている。
何か……から逃げる様に、どうして、走っているのかわからないが、友奈はひたすらに逃げていた。
そんな彼女を追いかけるのは白馬に乗った盗賊騎士キロス。
「はぁ……はぁ……」
振り返るとともに友奈は戦装束を纏い、キロスへ拳を振るう。
だが、キロスはにやりとその拳を受け止めた。
「美しい……」
微笑みながらキロスは拳を友奈の鳩尾に叩き込む。
鋭い一撃を受けた友奈は地面に倒れる。
倒れて動けない友奈に近づいていくキロス。
「う、うぅ」
動けない友奈。
そんな彼を守るように現れたのは黒騎士。
「く、黒騎士さん!?」
驚く友奈を余所に黒騎士とキロスは激闘を始める。
加勢したい友奈だが、体が締め付けられているように動かない。
やがて、キロスの一撃が黒騎士を射抜いた。
いつの間にかキロスはサソリ型のバーテックスに姿を変えて、長い尾で黒騎士の体を貫いた。
「あ、だ、ダメ!」
宙づりになった黒騎士にサソリ型バーテックスのハサミが迫る。
「アイツを助ける方法は一つ」
必死に黒騎士へ向かおうとする友奈にキロスが傍に立つ。
「俺のものになることだ」
「い、嫌!」
「じゃあ、あれは死ぬ」
キロスが指を鳴らし、動けない黒騎士の首にサソリ型バーテックスのハサミが伸びていく。
「ああ、ダメ!いや、やめて!やめて!」
友奈の必死の声に止まることなく、サソリ型バーテックスのハサミが黒騎士の首を切り落とす。
ざくんと首が落ちて、友奈の前に転がって来る。
「あ、あぁ」
目の前に転がって来る黒騎士の首。
「い、嫌だ、嫌だよ……黒騎士さん、黒騎士さぁん!」
黒騎士の首に向かって声をかける友奈。
そんな黒騎士の首をキロスは蹴り飛ばす。
「あーぁ、死んじまったなぁ」
転がっていった首へ手を伸ばす友奈にキロスは残酷な言葉を吐く。
「あの時、お前がちゃんと俺と戦えていたらこうならなかったんだろうな。お前が俺を止められなかったからこういうことになったのさ」
「あ、あぁ」
こと切れた黒騎士の遺体。
無残な姿を見せられて、動けない友奈。
「すべてはお前が俺のものにならなかったことが招いた結果だ。俺のものにならなかったことが」
そういって、キロスは闇の中に消えていく。
友奈は最早、立ち上がる気力も戦う勇気すら失われていた。
「うっ、うぅっ…………ぁああああああああああああああああああああ」
夢の中でありながらやけに現実味を帯びた世界の中で、友奈は自分を責め続ける。
千景は部屋を出る。
あれからさらに数日が経過した。
未だに日向が目を覚ます様子がない。
ふと、千景は高嶋友奈の部屋を見る。
日向が目を覚まさなくなってからというものの、友奈の様子もおかしくなっていた。
日に日に元気がなくなっている。
終にはバーテックスと戦う時に戦装束すら纏えなくなった。
「高嶋さん」
部屋の向こうにいる友奈に声をかける。
しかし、反応がない。
嫌な予感がした千景は申し訳ない気持ちを抱きながらドアを開けた。
「!?」
床に置かれている手紙とスマホをみて、千景は限界まで目を見開いた。
千景は勇者全員を友奈の部屋に呼び寄せた。
運よく、全員が寄宿舎にいたことで、数分で友奈のいる場所にやってくる。
呼ばれた全員はいきなりのことに困惑するしかない。
「千景、どうしたんだ?大至急こいというのは」
「これよ」
千景が若葉に差し出したのは友奈が書き残した手紙。
その内容を見た若葉達は目を見開く。
「これは……」
「友奈さん、ここまで思いつめていたなんて」
「一人で背負いすぎだ。友奈の奴!」
「友奈さんを探さないと」
手紙の内容は黒騎士が意識不明になった原因は自分にあるという謝罪、自分がちゃんとキロスやバーテックスと戦えていればという後悔。その内容は最早。懺悔のような内容のものばかり。
「最後に気になることが書いてあるの」
千景の指す内容。
「自分があの人のものになれば、全て解決する?」
「あの人って?」
「おそらく、盗賊騎士と名乗ったキロスだ」
若葉の言葉に千景は思い出す。
キロスは友奈に告白をしていた。
しきりに自分のものになれといっていた。そんな相手の下へ友奈は向かったのだろう。
「友奈の奴!なんで、一人で抱え込むんだよ!タマ達に相談しろよな」
「まず、友奈を探そう。今の友奈は変身も出来ないんだ。本当にキロスのところへ向かったとなれば、危険すぎる」
「若葉ちゃんのいうとおりですね」
捜すために外へ出る若葉達。
千景はスマホを開いて、ある人物達へ連絡を取る。
「……お願いがあるの」
友奈はふらふらとおぼつかない足取りで黒騎士の眠る病院へ来ていた。
どうして、彼の下へ足を運ぶのか。その理由も定まらない中で友奈は死んだように眠る黒騎士の病室にやって来る。
悪夢を見るようになってからというものの、友奈に安息の日々はなかった。
眠れば当然のようにキロスが現れて、戦うために黒騎士が姿を見せて、殺される。
そして、キロスが自分の耳元でささやく。
――自分のものになれ。
――お前は俺のものだ。
耳元で囁かれたところで友奈は目を覚ます。
そんな日々。
悪夢の中で友奈の目の前で死ぬ黒騎士、次第に殺される人が増えていく。
若葉、ひなた、球子、杏、千景。
友奈は食事をすることも、眠ることも満足にできず、いつの間にか戦うことすらできなくなっていた。
そんな友奈は一目、黒騎士の姿をみたくて、ここへやってくる。
「あ、この子じゃないか?」
「そうみたいだ。ねぇ、キミが高嶋友奈ちゃんだよね」
病室のドアを開けようとしたところで二人の男性に呼び止められる。
病人のように顔色が悪い友奈。
「貴方達は……」
「千景ちゃんに頼まれたんだ。キミを探してほしいって」
「俺は伊達健太!こいつは炎力。日向の親友なんだ」
「ひゅうが?」
「ああ、黒騎士のことだよ」
千景から日向の正体を聞かされていた二人が話す。
行方不明になった友奈を探すため、千景は日向の親友だった二人に事情を話すことで協力を仰いだ。
友奈を見つけるために。
「黒騎士さん……会わないと」
健太ち力、そんな二人の話を右から左へ流しながら友奈は歩き出す。
ふらふらと幽霊のようにおぼつかない足取りで友奈は病室のドアを開ける。
その時、樹海化が起こった。
樹海の中。
本来なら友奈だけがその場にとばされるはずだった。
「あれ、なんだ、ここ?」
「病院じゃないのか?」
どういうわけか健太と力の二人も樹海の世界に飛ばされている。
こんなことはありえないはずだった。
「来たか、高嶋友奈」
聞こえた声に友奈は体を震わせる。
近くの岩にもたれるようにして、キロスがそこにいた。
キロスの姿を見て、体を震わせる友奈。
「誰だ、アンタ」
「俺の名前は盗賊騎士キロス。欲しいものは必ず手に入れる男だ。そして、お前達を樹海の世界に招き入れたのは俺の力だ」
「樹海?」
「に、逃げて」
体を震わせながらも友奈は前に立つ。
彼女の様子を見て、健太と力は頷いて前に出る。
「な、何をしているんですか!あの人は危険で――」
「よくわかんえぇけど、怯えている女の子を置いて逃げるわけねぇだろ!」
「健太の言うとおりだ!何ができるわからないけれど、俺達が好き勝手させない!」
「いいねぇ、男前の発言だ。だが、力のない奴がそういうことを言うと、命を落とすっていうことを知れ」
「や、やめて!」
キロスの言葉と共に小型バーテックスが現れる。
足が地面に縫いつかれたように友奈は動けない。
震える手でキロスを止めようとする。
健太と力が身構える中、千景が鎌を振り下ろして、現れたバーテックスを切り裂く。
「ぐんちゃん……!」
「高嶋さん、見つけた……それに!」
怒りで顔を歪めながらキロスの姿を見る。
「お前さえいなければ!」
鎌を向けて千景はキロスへ斬りかかる。
振るわれた鎌を鎖でキロスは防ぐ。
「お前さえいなければ!日向は!高嶋さんは!!」
「俺は欲しいものを手に入れる。それだけだ。邪魔なものはすべて蹴散らしてなぁ!」
叫んでキロスは千景を蹴り飛ばす。
そんな彼女の周りに群がろうとする小型バーテックス。
「……邪魔!」
全てを倒すために千景は精霊を宿す。
七人御先を纏い、鎌を振るう。
「他の勇者も使っていたな。切り札といっていたか?」
キロスは指を鳴らす。
いつの間に用意していたのか合体しているバーテックスが千景を囲む。
「そいつらを倒せたら相手してやる」
キロスはそういうと千景から視線を外して友奈達の方に向かった。
「待て!」
千景がキロスを追いかけようとするも、バーテックスに阻まれてしまう。
友奈を守ろうと力や健太が迎え撃とうとするが、所詮は人。
キロスの起こした衝撃波に吹き飛ばされる。
衝撃波が友奈の傍を通過して、彼女の結っている髪がはらりと解ける。
驚いて後ろ見る友奈。彼らにもバーテックスが迫っていく。
「あいつらを助けたいか?」
動けず、怯えてしまっている友奈にキロスは問いかける。
「ならば、俺のものに、俺の妻になると言え、そうすれば、お前の大事な親友やあの男達も助けてやろう」
「ぇ」
「高嶋さん!駄目よ!そいつが約束を守るとは思えない!」
「俺達なら大丈夫だ!頷いたりししちゃだめだ!」
「そ、そうだぜ!破る可能性だって」
「こいつらの命はお前が握っている。お前の返答次第では」
――どうなるかわかるだろう?
囁くような言葉に友奈のハートは拘束される。
この場でどうすればいいのか。
もっといえば、拒絶したらどうなるか。
その姿を散々、悪夢の中でみせられた友奈に選択肢は一つしかなかった。
もし、いつもの彼女なら違う選択肢も考えただろう。
だが、長い悪夢によって衰弱している今の彼女は、目の前に提示された条件以外を選べない。
選べば、あの悪夢が本当に起こってしまう。
そんなことはあってはいけない。
自分なんかのために大事な人たちが傷ついてしまうくらいなら。
自分を捧げればいい。
「私は……」
にやりとキロスが笑おうとした時。
ポンと後ろから友奈の肩を叩く手があった。
見上げた友奈は目を見開く。
俺はある夢をみていた。
一つの惑星。
地球とは別の、人類と別の種族が住まう場所。
そこを巨大な影が襲った。
巨大な影には宇宙を荒らす海賊が乗っていた。
海賊たちによってその星の人達の命は奪われていく。
星を守るために戦う騎士達も、一人、また一人とその命を散らす。
その中で黒騎士ブルブラックは孤軍奮闘していた。
だが、彼も満身創痍と言える中。
「兄さん!戦って、星を守って!」
彼の大事な弟も戦う。
だが、海賊の手によってその命は奪われ、星は滅びた。
黒騎士ブルブラックは復讐者となり地球へやってくる。
地球で彼は海賊の一人の手によって崖の裂け目に叩き落とされた。
「……アンタも、俺と同じだったんだな」
「そうだ、私は宇宙海賊を滅ぼすためにこの星へやってきた。弟……クランツの仇をとるために」
「……俺と同じ復讐者」
「三千年」
ブルブラックは俺を見る。
「私は三千年、深い闇の中で復讐することだけを考えてきた。だが、その復讐は思いがけない形で果たされた」
「どういうことだ?」
「天の神、天の神がこの星を滅ぼすために行った行動によって、この地に封印されていた宇宙海賊は滅んだ。私の復讐は果たされてしまったのだ」
「つまり、天の神はアンタの復讐を手助けした相手、そんな奴を滅ぼそうとしている俺に力を貸しているのか」
「そうなる」
「なぜ、俺に力を貸してくれる?」
「お前が私と似ているからだろう」
「俺と、黒騎士が」
「元のお前も純粋な存在だった。だが、バーテックスによって弟を殺され、復讐者になった。私と同じ、私も弟を殺された。似ているのだ。どこまでも、私とお前は」
――似ているのだ。
ブルブラックの言葉に俺は何も言えない。
言われてみれば、確かに俺達は似ているのだ。
弟を殺されて、復讐者になったこと。
復讐の炎は止まることがない。
「だが、お前は揺れている」
「俺は……」
「わかっているはずだ。かつての友、そして、お前を慕う者達……お前は復讐とは別の道を選ぼうとしている」
「……俺は」
脳裏を過るのは四国の勇者たち、小さい頃の親友の二人、そして、大好きだった弟の蔵人。
そして、バーテックスに無残にも食いつくされた蔵人の最後。
忘れられない。
忘れてなるものか!
俺は絶対に忘れてはいけないのだ。
「そうだ、その炎を忘れるな。お前は私と契約したことで絶対に逃れることは出来ない。一時の安穏があろうと、最後は復讐の道を歩む」
忘れるな。
お前は復讐者なのだ。
黒騎士ブルブラックの言葉が浸透していく。
そして。
「ああ、そうだ、俺は復讐をする。過程なんか、どうでもいい。必ず果たす!」
「外ではバーテックスと混ぜ合わされた盗賊騎士が勇者を狙っている」
「わかった。バーテックスは滅ぼす……そのついでに勇者を助けても、問題ないだろう」
「貴様の決めたことだ。私は何も言わない。だが、後悔はするだろう」
「いいさ」
薄暗い闇の中が赤く染まっていく。
目を覚ますと、病室だった。
体を起こすと少しばかり激痛が起こる。
腹部をめくると傷は綺麗になくなっていた。
すぐ近くにブルライアットが置かれていた。
ブルライアットを手に取る。
窓を見るとゴウタウラスがこちらをみていた。
「行こう……」
ブルライアットを握り締めて、俺は刃を空へ掲げる。
緑色の光と共に俺は黒騎士の鎧を纏う。
「ゴウタウラス!」
ゴウタウラスが喜びの声を上げる。
俺はゴウタウラスと共に樹海へ突入する。
「黒、騎士さん」
「泣きそうな顔だな」
今にも泣きそうな顔をしている高嶋友奈。
何が彼女を此処まで追い詰めているのかわからない。
だが、
「お前に涙の顔は似合わない、笑顔の方がいい」
「え」
驚いている高嶋友奈を置いて、俺は盗賊騎士キロスと向き合う。
「またきたのか、死に損ない」
「黙れよ。死人」
「気付いたか」
「ああ、貴様は既に死んでいる」
バーテックスと混ざり合っていてはっきりわからなかった。だが、ブルブラックと会話をして、力が増した気がする。
「その通り!俺は死んでいる。だが、天の神と契約したことで力を手にしたのさ。前よりも、さらに、さらに強くなった!そして、俺は欲しいものを手に入れる。高嶋友奈を!」
「そうか」
俺は理解する。
「お前、高嶋友奈に何をした?」
「正しい選択をさせる様にさせた、それだけだ」
何をしたのか想像できない。
周りを見れば、伊達健太や炎力の姿もある。
少し離れたところではバーテックスと戦う千景の姿があった。
高嶋友奈は酷く怯えている。
だが、この少女をここまで追い詰めさせたことで俺の中に怒りと同時にどす黒い炎が沸き上がる。
「俺はバーテックスを滅ぼす。貴様も同じだ!盗賊騎士キロス!」
「やってみろ!貴様を殺して、俺は高嶋友奈を手に入れる」
「や、やめてください!」
前に踏み出した俺の腕を高嶋友奈が掴む。
涙を零しながら必死に彼女は俺を止める。
「私が……私が行けば、皆が傷つくことはないんです。だったら、私が」
「ふざけるな」
拳を握り締める。
「コイツは誰のものでもない。コイツ自身のものだ。ましてや、盗賊騎士キロス、貴様のものでは決してない!」
俺の叫びにキロスは笑みを浮かべて。
「殺す」
ぞっとするほど冷たい声を告げる。
その声に友奈は怯える。
「高嶋友奈、怯えるな!」
俺は後ろへ下がろうとしていた友奈に叫ぶ。
「前を向け、お前は勇者だ」
ブルライアットを抜いて俺はキロスとにらみ合う。
地面を蹴り、俺とキロスは刃をぶつける。
互いにぶつかりあう刃。
「お前は独りで戦っているわけではない!お前には大事な仲間がいる!俺と違う!貴様は独りではない!」
キロスクレセントとブルライアットの刃が斬りあう。
下がることは決して許されない。
俺が下がれば、大事なものが奪われる。
奪われてたまるか。
「貴様、何が!」
キロスが戸惑った声を上げる。
鎖鎌がブルライアットに絡みついて奪われた。
だが、止まらない。
止まるわけにいかない!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
拳を握り締めてキロスへ振るう。
「なっ、貴様の拳は一体!」
戸惑うような声を上げながら吹き飛ぶキロス。
気のせいか、全身が燃えるように熱い。
だが、俺は止まらない。
止まることは絶対にないのだ。
俺は復讐者であり、奪うものを赦さない!
地面に落ちたブルライアットを拾い上げる。
「はははっ」
瓦礫の中からキロスが姿を見せた。
「この鎧は返り血で汚れたことはあっても、埃で汚れたことはない」
キロスはブーツから赤い布を取り出して、鎧についた汚れを拭う。
「黒騎士、貴様は俺を本気にさせたようだ」
人を小馬鹿にしたような笑みを消して、キロスは顔から表情を消す。
吹き飛んだキロスは鎖鎌を振り回す。
「クレセントスクリュー!」
襲い掛かる風の攻撃。
迫る攻撃を前に俺はブルライアットを鞘に納める。
攻撃を受けて吹き飛ぶ。
くるくると回転する中、俺は目を見開く。
「そこだ!」
ブルライアットをショットガンモードにして、狙い撃つ。
狙撃によってキロスの肩を撃ち抜く。
「な!」
撃たれたキロスは信じられないという目で見開きながら後ろへ下がる。
近くの壁を蹴って、俺はブルライアットをセイバーモードにして、一気にキロスへ距離を詰めた。
「覚えておけ」
間合いへ入り込みながら俺はキロスへ、その向こうにいる天の神へ告げる。
「俺の大事なものを潰すなら、何があろうと容赦しない!何であれ、倒す!」
黒の一撃。
放った一撃がキロスの体を切り裂く。
切り裂かれたキロスの体が地面へ落ちた。
「ありえん、この俺が……貴様を潰すぅぅぅ!」
叫びと共にキロスの周りに群がる小型バーテックス。
キロスを中心に魚を模した巨大バーテックスへその姿を変える。
魚型のバーテックスの前に千景がやってきた。
「日向!」
「……ちぃちゃん、彼女達を守ってくれ」
「貴方は?」
「バーテックスを滅ぼす。それが俺の目的だ」
ちぃちゃんに告げて、俺は前を見る。
「ゴウタウラス!!」
やってきたゴウタウラスの光を受けて俺は重騎士に姿を変える。
ブルソードを振るう。
ゴウタウラスに跨って、俺はブルソードを魚型バーテックスとぶつかりあう。
熱を持つゴウタウラスの角によってバーテックスの体の一部が融解した。
そのまま、ゴウタウラスと共に突撃すれば――という瞬間。
魚型バーテックスが変貌する。
魚の姿を模しながらも人に近い姿。
半魚人のような姿に変身したバーテックス。
人の形のような中心、そこに顔の部分が現れた。
「貴様は!」
現れた顔は盗賊騎士キロスのもの。
キロスの刃が俺とゴウタウラスを襲う。
強力な太陽のような熱にゴウタウラスが後ろへ下がっていく。
仕方ない。
奥の手を使おう。
「騎獣合身!」
俺とゴウタウラスの最後手段。
重騎士とゴウタウラスが合体することで至る最強の姿。
赤と黒の巨人。
「合身獣士!ブルタウラス!」
半魚人バーテックスが鋭い爪を振り上げる。
向かい合うブルタウラスはツインブルソードで爪ごと、手を斬り落とす。
襲い掛かる半魚人バーテックスを殴り飛ばす。
距離が開いたところでツインブルソードを構えた。
「野牛鋭断!」
ツインブルソードを構えて、回転しながら敵に突っ込む。
必殺の野牛鋭断を受けて半魚人型バーテックスを切り裂く。
「まさか、俺にも奪えなかったものがあるとは……だが、貴様のいく道は地獄だぜ。何も蘇ったのは俺だけじゃない。他にもいるはずだ。むごたらしく死ねばいい!」
キロスの顔が呪いの言葉を紡いで、体をドロドロに溶かして消滅する。
俺はツインソードを構えたまま、消滅したバーテックスを見続けた。
ブルタウラスから重騎士、そこから黒騎士、本来の姿へ戻る。
全身へ襲い掛かる疲労感にふらつきそうになるのを堪えた。
まだ、やることがある。
ふらふらになりながら俺は茫然とこちらを見ている高嶋友奈の傍に立った。
「あ、黒騎士、さん」
「……」
信じられないという目で見上げてくる少女。
大方、あのキロスに何かされたのだろう。
それが今も彼女を縛っている。
「俺は何があろうと負けない。お前が何を見たのか知らない。だが、これだけははっきり言ってやる」
泣きそうな顔をしている高嶋友奈にはっきりと。
「俺は死なない。バーテックスを、天の神を滅ぼすまで死ぬことはない!何より……」
ポンと頭に手を置く。
「すべてが終わったら俺と話をするんだろう。こんなところで立ち止まるな」
「……ぁ、あああ」
俺の言葉で瞳が潤み、涙をこぼす。
そのまま、俺に抱き着いてきた。
「うわぁぁあああああああああああああああああああ!ごめんなさい、黒騎士さん!ごめんなざぁああああああいい」
「何だよ……全く」
泣く元気はあるのかよ。
ため息を零しながら駆け寄って来るちぃちゃんや力、健太達がやってくるまで、高嶋友奈は泣き続けた。
この時、俺は気づかなかった。
ちぃちゃんが戦装束を解除した時、彼女から何かがブルライアットに入っていくことに。
その後のことを少しだけ話そう。
やってきた乃木若葉達の手によって俺は病院へ戻された。
病院で大社や関係の医師たちに怒られたが、傷が塞がっている腹を見せると大人しくなる。
そして、二日後に退院という約束を取り付けた。
病院内では黒騎士の姿にならないでくれという条件の下、医療費は不要ということで、俺は今日、退院する。
腰に下げているブルライアットをみながら、病院の出口へ向かう。
「待っていたぞ!」
「よう!日向」
外に出たところで待ち構えていたように力と健太がやっていた。
「なんだ?二人とも」
「何って、決まっているだろ?」
「退院祝いだよ!退院祝い!ほら、勇者の子達も待っているぞ!」
力と健太に手を引かれて俺はある場所に連れていかれる。
桜が満開している木の下。
そこに勇者たちがいた。
ブルーシートを敷いて、様々な食事の入った重箱、お菓子、飲み物などを用意して笑顔を浮かべて、待っている。
少し離れた場所ではゴウタウラスがこっちをみていた。
「なんだ、これは?」
「花見だ!」
「勇者主催の花見だぜ!」
笑顔で言う力と健太の言葉に俺はますます困惑する。
どういうことだと思っていると俺の前に勇者たちがやってきた。
「鎧のない状態でちゃんと話をするのははじめてだな。私は乃木若葉。礼を言わせてくれ。球子や杏、そして、友奈を助けてくれてありがとう」
「上里ひなたです。ありがとうございます。みんなを守ってくれて、本当に」
乃木若葉と上里ひなたが俺に感謝の言葉を告げる。
「黒騎士」
「黒騎士さん」
俺の傍に土居球子と伊予島杏がやってくる。
「「ありがとう」」
二人は俺に頭を下げる。
「杏を助けてくれて感謝する」
「タマっち先輩を守ってくれて、ありがとうございます」
「……別に、偶然だ」
感謝の言葉がくすぐったくて、俺は視線を逸らす。
視線を外したらぐぃっとちぃちゃんに顔を掴まれる。
「今度、無茶したら……許さない」
「は、はい」
本気で怒っている目にガチでびびってしまった。
間近で見ていた力や健太も引いている。
「おかえりなさい」
最後に微笑んで、離れる。
そうして、俺の前にやって来るのは高嶋友奈。
「……顔色、よくなっているな」
「は、はい!」
目を左右に動かしながら高嶋友奈は答える。
それから、手で髪を触り、前を向く。
「わ、私!高嶋友奈っていいます!黒騎士さん、貴方の本当の名前を教えてください!」
「……もう、過去のものだ」
「バーカ」
横から健太が小突く。
「なぁに、変なこといってんだよ。お前はお前だ」
「健太の言うとおり。お前は俺達の大事な親友なんだからな」
続く力に言われて、俺は肩をすくめる。
そうして、じっと、こっちを待っている高嶋友奈と向き合う。
「落合日向、それが俺の名前だ」
「騒ぎすぎだ」
「そんなことありません!だって、黒騎士……日向さんの退院祝いなんですから!」
「わかったから、そんなに近づくな」
力説するように距離を詰めてくる高嶋友奈に俺は躱す。
なんというか、前よりも距離感を縮められている気がするぞ。
ため息を吐きながら俺は高嶋友奈と夜道を歩いていた。
少し、話をしたいと言われて、こうしているのだが。
「(ちぃちゃんの目が怖かったな)」
去り際にこっちをみているちぃちゃんの目、あれはヤる目だ。
阿呆な考えをしていることに気付いてため息を漏らす。
「どうしたんですか?溜息を吐いて」
「別に」
「溜息を吐くと幸せが逃げますよ?」
「逃げ出すような幸せもない」
「なんといいますか、黒騎士さんの時よりも口調に親しみが持てます」
「そうか?」
「はい!できれば、ずっと、その姿でいてほしいです」
友奈の視線から目を逸らす。
「明日も学校があるだろ。そろそろ、帰れ」
「はい!高嶋友奈!帰ります」
敬礼して、高嶋友奈は寄宿舎の方へ向かう。
俺はブルライアットを抜く。
夜空の光で輝くブルライアットを握り締める。
「俺は必ず、復讐を果たすぞ。蔵人」
緑色の光と共に黒騎士の鎧を身に纏う。
「黒騎士、落合日向さん」
日向と別れた筈の友奈。
彼女は黒騎士の姿になった彼を遠くから見ていた。
「好き……大好き」
気付かれないように電柱の影に隠れるようにしながら真っ直ぐに、面と向かっていえなかった言葉を紡ぐ。
「黒騎士さん、日向さん、好き、こんな私を守ってくれて、ありがとう」
潤んだ瞳で空を見上げている黒騎士の姿を見続ける。
彼が居なければ、自分がどうなっていたのかわからない。
IFはわからない。
今の彼女は自分を救ってくれた大事で、愛しい、とても大切な人のために戦う。
「いつか、この気持ちを正面から伝えるから……私が死んでも、永遠に、ずっと、大好きです」
そう言って、彼女は黒騎士が動くまで後姿を見続けた。
これ、病んでいるといっていいのか、怪しいなぁ。
後二人ほどの話をやって、過去は終わりかなぁ?
おそらく、知っているだろうと思ったけれど、結構昔だからキャラ紹介。
炎力
高速戦隊ターボレンジャー、レッドターボ。
高校三年生、野球部所属でピッチャー四番。
魔球を使える人物。
リーダーシップもあり、どんな敵であれ、話し合えるのならそれで解決できることを望む人物。
ターボレンジャーではないけれど、原作のような人物。
幼いころに黒騎士になる前の日向と親友だった。
伊達健太
電磁戦隊メガレンジャー、メガレッド。
高校三年生、大好きなのは焼肉、得意なのはゲーム、ちなみに得意なゲームは「メガレンジャー」である。
能天気だけれど、仲間を大事にしている人物。
彼もメガレンジャーではないけれど、仲間や人を大事に思えるところは変わらない。
黒騎士になる前の日向と親友であり、今もそう思っている。
もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?
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パワーレンジャー
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リュウソウジャー
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ルパパト