ありふれた職業と荒野の芸術家   作:ふじのん

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むしゃくしゃして続きを投稿してみるテスト。


教団と王国と地下大迷宮と
転生があるのなら異世界送りもまた日常か?


時刻は朝。豪奢な天蓋付きベッドに、技術水準を考えればフカフカの布団。

 

「異世界、トータスねぇ」

 

デザートイーグルのマガジンを抜き、本体そのものを分解。

布で部品を磨きながら整備点検を行う。

 

あの後、変哲もない学校の教室から巨大な壁画が書かれた空間へ一瞬で移動していた。

あまりの事に呆然としてしまったが、すぐにその場に居た法衣を纏った集団が居た。

 

原因もしくはそれに類する存在と判断し、懐に入れてあるきゃた肝を使った無力化から見敵必殺(サーチアンドデストロイ)まで、

様々な手段が頭に浮かぶが周りのクラスメイトを盾にされた場合のリスクを考えて様子見。

 

そうこうしている間に一番偉いと思われるイシュタルと名乗る老人によって煽動が始まる。

 

(タチが悪い)

 

あの老人に関して思った一言はこれである。

彼が語ったエヒト神という存在が魔人族との戦いの為に召喚したのが私達だという。

 

そして魔人族の脅威から人類を救えば元の世界に戻れるかも知れないと天之河君を煽り、そして彼が皆を焚き付ける。

 

私達は帰還という餌を吊された馬車馬。あの老人が手綱を握り、魔人族への尖兵とする。

自分の手を汚すことなく、敵対者を滅ぼし、最後はこちらの事を使い捨てる気だろう。

 

神の存在有無などどうでも良い。そんな物はあの荒廃した世界では糞の役にも立たない。

いや、役に立った瞬間もある。かつての信者が立てた教会や寺は少し手を加えれば暮らすのに困らない立派な設備だった。

 

思考が逸れたが、帰りたければ戦え、殺せという事だ。

 

そうして召喚された場所、神山と呼ばれる場所からその麓にあるハイリヒ王国の王城に私達は移動している。

 

あてがわれた部屋で、思考しながら整備の手は緩めない。

デザートイーグルが終われば次は四連装の拳銃、マグナムガデスを取り出して整備。

次々と思考しながら武器の整備を行う。

 

虚空に手を突っ込み、銃器を取り出す。

 

これが私が死ぬ前の世界から持ち越すことの出来た圧縮空間倉庫である。

正確には死ぬ前と同じ倉庫にそのままアクセスしている。

 

かつて利用していた装備も入っている道具入れだが、使用者権限を施された人間が開け閉め可能という代物らしい。それこそそこが過去の世界でも、だ。

 

彼らの中で一番最後まで生きていたから使っていた武器防具などは私が回収してある。

そこら辺でも簡単に入手できる物は状態の良い物を除いてその辺に売りさばいたが、さすがに大破壊前の超兵器をおいそれと流す事は出来ない。

 

おかげで倉庫内にはそれこそクラス全員を一生養えるレベルで稼いだGがある。現在は使い道のないコレクションだけど。

実際には武器防具売却よりもシャイニングタワー解体ショーの方が儲かった。

 

レナが「解体の練習をしよう」と言ってデスクルスに二ヶ月間滞在して周辺のシャイニングタワー(カネヅル)をひたすら刈り取ったのは良い思い出、いや、悪夢だ。

 

いけない、思考が逸れた。

 

そろそろ訓練の時間だと思いだし、出した装備を一斉に収納してから部屋を出る。

今日は訓練の為の適正を調べるという話だが、一体どんな内容なのだろうか?

 

そんな事を考えながら集合場所である訓練場に着くと、他のクラスメイト共に騎士団と思われる人達が居た。そして騎士団の人から銀色のプレートと小さな針が渡される。

騎士団長であるメルド・ロギンスが声を張り上げながらプレートに関しての説明を始める。

 

「これはステータスプレートと呼ばれる物で、自分のステータスを客観的に把握する為の物だ。最も信頼できる身分証明書でもあるからなくすなよ?」

 

その後の説明から、プレートに血を一滴垂らすと登録が成されると共に、ステータスオープンの言葉で自分の能力が表示されるとのこと。

 

早速血を一滴垂らし、ステータスを開く。

 

 

棗マリアンナ 17歳 女 レベル:???

 

天職:芸術士

筋力:360

体力:395

耐性:398

敏捷:304

魔力:357

魔耐:304

技能:ゲージツ[+死んだふり][+着ぐるみゲージツ][+アドレナリンの歌][+金粉ゲージツ][+砲弾ゲージツ][+復元ゲージツ][+悩殺キック][+爆裂シャウト][+暗黒舞踏][+砲撃演舞][+改造ゲージツ][+爆発ゲージツ]・副職[+魔物狩人][+整備士][+白兵戦士][+看護士][+興行武闘士][+舞闘家][+二輪機兵][+芸術士]・薬学知識・薬品生成・圧縮倉庫・装備制限解除・成長限界突破・言語理解

 

レベルの数字が上手く表示されていない事に関しては、たぶんこっちに転生してすぐにどんな事態にも対応出来るようにとレベルメタフィン飲みまくったのが原因だ。

訓練も欠かしていなかったが、たぶんデルタ・リオに着いたくらいの感覚、全盛期にはほど遠い。

 

副職は一応無いと落ち着かないと潜在能力ヘッドホンでサブジョブに目覚めておいた。

今でこそ役に立ちそうだが、当時そこまでする必要無かったなとは思った事は数度ある。

 

……控えめに言って、これは不味いのではないかと思うの。

いや、もしかするとこれが皆の平均である可能性も否めない!

 

「レベル1の平均能力は大体10位だな」

 

アカン。

是非も無し、能力の偽装を行う。

 

しかし今手持ちの物で何か偽装する手段は……

改造ゲージツは難しい。まだどういう存在の物か分からないのに改造して壊れたとかそんな事が起きたら不味い。

 

こうなったらと少し小細工をする。

 

用意するのはステータスプレートと同じ色合いの金属板とそのほかの材料。

皆の目を盗み、ステータスオープンした際と同じような状態の金属板をでっち上げる。

 

そして出来上がった物をメルド団長に見せる。

 

 

棗マリアンナ 17歳 女 レベル:1

 

天職:芸術士

筋力:22

体力:24

耐性:24

敏捷:30

魔力:16

魔耐:18

技能:ゲージツ[+死んだふり]・薬学知識・装備制限解除・言語理解

 

 

「ふむ、芸術士? 初めて見る職業だな。もしかするとこれから独自の技能を覚えるのかもしれないな。

 装備制限解除というのはよく分からないが様々な武器を使いこなせるという事だろう。

 能力自体も前線向きのステータス比率だから、鍛えれば光るな!」

 

ごまかしにはなんとか成功した模様。後でプレートの構造をしっかり把握した上で偽装機能を取り付けられるようにしよう。

 

 

○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○

 

 

訓練、と言っても初日の今日は簡単な体の動かし方と、各種武器を使ってみるという確認作業が中心だった。

私は装備制限解除の影響だと思われるが、武器を握った瞬間に最適な使用方法が頭にたたき込まれるようになっていた。

 

そのため、選んだポジションは中衛、斥候兼遊撃要員となることにした。

 

何せ天之河君や八重樫さんなど、初期の能力から有望な人たちが軒並み前衛、もしくは護衛が必要な後衛であるため、中衛になる層が非常に薄いのである。

 

かつてはモンスターを狩ってはお金にして、そのお金で武器を強化してモンスターを狩ってという作業が中心。

モンスターをおびき寄せる為の技術などは散々に学んだが、回避する技術は殆ど無い。テキよけスプレーを撒くくらいだ。

 

斥候に関しても大破壊前の遺跡を調べたりトラップをかいくぐったりもしたが、基本は機械式のセキュリティだった。

 

つまり、原始的および魔力を用いたトラップなどの知識は皆無である。

それに新しい事を学んでみたいという道に対する欲求もあったので、斥候を選んだ。

 

こういった事情の為、武器はナイフと弓、防具は軽装を選ぶことにした。

 

そうして皆が大体の武器防具を決め、案内された宝物庫で自分に合った武器防具を選ぶ。

 

ここに眠っている物はアーティファクトと呼ばれ、強力な力を秘めた武具だという。

 

きらびやかな物から禍々しい装飾の物まで、様々な武器防具が並んでいる。

その中からナイフは装飾のないやや大振りな物を、弓は無骨ながらとにかく頑丈な物をチョイス。

特殊な能力や派手な物はないが、全力で振るっても壊れにくい物を選ぶ。

 

そのためどちらもアーティファクトとしては二級品の物になる。

 

軽く使い心地を見る為にジャグリングや素振りを何度か行う。手先に吸い付く感覚は良いナイフだと思う。

これなら普段使いにちょうど良いだろう。

 

「棗さん、そんなナイフで大丈夫なの?」

 

八重樫さんの手には刀とシャムシールの中間のような件が握られている。

おそらく刀が欲しかったが無かったので妥協したのだろう。

 

「うん、問題ないよ? こういうのは能力よりも自分の体の一部として認識出来る物の方がいいんだ」

 

これは前世からずっと思っていること。

手に持って使い方が分かればどんな物だろうと武器であるというのが前世での認識だが、

それでも使いやすい武器、使いにくい武器というのは存在した。

 

たとえばレナのライトソードやワンハンドガリル、ミシカのTNTパラノイアや光粒子スパークがそれだ。

どっちも使おうと思えば使えるけど、二人ほど上手くは扱えなかった。

 

逆に二人は私の使っていたカリョマイクやヴードゥーバレルは使いにくいと言っていた。

 

弓は昔ダイナマイト弓矢という物を遊びで使わせて貰ったことがあるので苦手ではない。

名前通りに矢にダイナマイトをくくりつけた物だったので飛ばすのには苦労したけど。

 

「私も刀があればね……」

「流石に日本刀はないよね」

 

八重樫さんの愚痴に、苦笑しか出ない。

圧縮倉庫内にいくつか刀が眠っているのは秘密。

 

さて、防具の方だが、これもやたらと軽い金属製の胸当てに籠手にグリーブ。

そして下着代わりにミラービキニを着込む。

 

流石にレナやミシカの様におおっぴらに着て歩くことは出来ないけど、下着のようにすれば問題無いはず。

こんなビキニでもサラトガスーツ(最高峰の防具)よりも頑丈だから驚きだ。

一体どんな技術で作られているのかが分からない。

 

後は腰のポーチに支給されたポーションなどと一緒に回復カプセルなどをこっそり入れておく。

ベルトは大きめの物を用意し、飾りのようにカラビナを垂らしておく。

 

手榴弾や武器を吊す為の物だが、今は水筒を二本吊しておく。

皆には水が入っていると説明をしておく必要があるだろう。

 

(実際はガソリンなんだけどね)

 

「なんて言うか棗さんの格好ってレンジャーとかそういう感じだね」

「音もなく忍び寄って仕留めるってイメージかしらね」

 

自分の装備を選び終わった白崎さんがやってくる。

 

治療士が天職の白崎さんは自分の身長ほどの杖に法衣のような装備。

流石学校の二大女神と称されるだけの事はある。非常に様になっていた。

 

だんだん選び終わった人たちが集まってきて、自然と装備の見せ合いや雑談を始める。

 

天野川君の勇者然とした格好や坂上君の拳闘士という風貌だったり、南雲君の少し装備に着せられている感のある感じなど、様々だ。

こうして騒がしく活気に満ちた装備品選択が終わり、それぞれが夜まで自由時間となったので早速部屋に戻ってあることを検証する。

 

「やっぱり使いこなせそう」

 

手に持ったのはライトソード。

 

ライトソードはプラズマ化した重金属粒子を斥力付きのフィールドで覆い、刀身を形成する武器だ。

前世では重さのない棒を振り回す感覚がつかめず、危うく腕を切断寸前にまでなったので使っていなかった。

その時ほどエナジーカプセルに感謝したことはない。

 

まだ試してないけど、TNTパラノイアとかもきっと使いこなせるだろう。

 

振り回した際に出るブォンという音を聞き、スイッチを切って圧縮倉庫に。

また、太ももに装備してあるホルスターからデザートイーグルを抜く。

 

「有効に使えそうだけど、これを抜くときは覚悟が必要かな」

 

一介の学生がこんな危険物を所持している事自体がおかしい。

そのため今の今まで隠してたけど、いざとなったら倉庫の中身も使わないといけないだろう。

 

「結局買って使わなかった物も多いしなぁ」

 

RPG-7の弾頭とかDDパイナップルとかオニヨメボムとか。

フリーズビールとニトロビールもそうか。

 

スイミンDXや濃縮メチルは結構使ったから在庫があまりない。

戦う相手は生物系がメインだろうからこういう薬は用意しておかないと。

 

試しに薬品生成でスイミンDXを作成してみると、あっさり出来上がる。

これは後でしっかり作っておこう。

 

「と、そうだった。図書室図書室」

 

袖口に無針注射器とデリンジャー、腰にナイフを差して図書室に向かう。

 

技能として薬学知識があるんだから、少しこの世界の薬について勉強しておこう。

事前に許可は貰ってるから存分に読書をしよう。

徹夜になっても大丈夫、カフェイン剤が私の味方だ。

 

そうして図書室に辿り着くと、そこには先客がいた。

 

「あ、棗さん」

「南雲君か」

 

実の事を言うと、南雲君との関係はそれなりにある。

 

きっかけは本屋でだ。

息抜きで見たアニメ作品のノベライズを探していたときに親切に教えてくれたのがきっかけだ。

 

その時の縁からおすすめ作品の交換やこちらからアルバイトを頼んだりといろいろだ。

論文の印刷製本作業や郵便物の整理とか、場合によっては実験補助など雑事関連で非常に助かっております。

 

ちなみに扱う物がナノマシンや劇物(危険物)なので、給料はかなり奮発している。

 

「錬成に関する本、かな?」

「能力も技能もパッとしないからせめて知識だけでもって思ったから」

 

南雲君の能力はごく平均的、天職も錬成士というありふれた職業とのこと。

そのことでクラスメイトに笑われたりしたが、正直見る目のない人間だと一人ため息をついていた。

 

「南雲君の天職には私、期待してるんだ」

「え?」

「だって、最低限でも金属加工だよ?」

 

最低限でも戦闘後の装備修繕、精度が高まればもっと細かい部品を作ることも出来るだろう。

 

「そうなれば元の世界の物を再現する事も可能だしね」

 

個人的にはバネやネジの再現が出来れば嬉しい。

圧縮倉庫に在庫はあれど、補充できる目処があるならそちらを使いたい。

 

それに部品があれば機械式の武器、果ては銃器までたどり着けるだろう。

そうなったら血みどろのせん滅船になるだろうが、運河悪かったと思ってあきらめてほしい。

 

いつだって自分が生きるにのに人間必至だ。

 

「まぁ。駄目なら駄目で錬成の力で鍛冶屋でもやれば食いっぱぐれる事もない。戦闘系の天職なんて魔物がいなくなれば戦争(人殺し)の道具だからね」

 

人は手にした力を振るわずには居られない。

転生して殺し合う必要の無い世界に生まれて、人の命の尊さを知った。

そしてそれがいつか分からない未来にあっという間に崩れることも。

 

「ま、どんなに力が合っても奪い取る事の出来ない物が本人の知識だからね。私も少し集中して本を読むから」

「分かった、ありがとう。でも徹夜は駄目だからね?」

 

先に釘を刺されるが、まぁ、眠れなかったと言えば問題無いだろう

 

「今ポケットにカフェイン剤入ってるよね?」

 

鋭すぎる南雲君(助手)に対して降参の意を示し、カフェイン剤をテーブルに置く。

それに満足した南雲君が読書に戻り、私も薬学に関する本を探すのであった。




本編と異なり、実家の仕事ではなく同級生斡旋のアルバイトをする魔王(予定)様です。
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