ありふれた職業と荒野の芸術家   作:ふじのん

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なんかストレス溜まりすぎて毎日更新になってます。


唐突な用語解説。

きゃた肝
賞金首きゃたツらーのドロップアイテム。
ガス属性かつスイミンの状態異常付与が魅力のバイオ生物キラー。
作者はこれでテッド様が眠った時、我が眼を疑った。


私はこの副職で一生遊んで暮らせるほど稼ぎました。

○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○

 

 

現在二十階層。その中間点にある広間。

あれから一気に下に降りて、休息の為キャンプキットを広げ、周囲にクレイモアを仕掛けて鳴子代わりにしている。

 

今は暖めたスープを二人で飲みながら、私の事を話していた。

無論、大破壊後の事も、圧縮倉庫含めて。

 

「そっか、未来ではそんな事が……」

「直接つながる未来かは不明だけどね」

 

平行世界の過去という可能性もあるので、未来でノアが作られない可能性もある。

 

「嘘だとは思わないんだね?」

「実物があるから……時々見えてた拳銃も本物だったんだ……」

 

これは持ってないと落ち着かないからやむを得ずだ。

 

「じゃ、寝るまでに少し練習しようか」

 

広間の端に的を設置する。

香織の手には象牙細工のピストル。

 

これからは二人でこの迷宮を潜るのだ。最低限援護くらいは出来ないと困るので銃を渡してある。

 

撃つ感覚に慣れる為、マガジン分全て撃ち尽くし、マガジン交換して撃つを繰り返す。

命中精度は後からでも養えるので、今は撃つこととリロードの感覚に慣れて貰う。

 

最初こそ的に当たるのが数発程度だったのに、だんだんと精度が上がり、マガジン分全て当てられるようになり、そして今、

 

「やった、全部中心に寄せられた!」

 

このように、中心五センチ部分に十二の弾痕が収まった。

 

「大体一グロス分撃ってこれとか、成長早すぎ」

 

上位世界の人間だから、下位世界で何かをするときに補正が入るのかもしれない。

 

「そうか、これがトータスブートキャンプ……!」

「ええと、そろそろ寝よう?」

 

こうして、迷宮の夜は更ける。

 

 

○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○

 

 

「今、連絡があった。オルクス大迷宮の入り口に馬のない馬車みたいな物が突っ込んできて、爆発炎上したそうだ」

 

メルド団長の言葉に、私は頭を抱えた。

 

「どんなテロリストよ、マリー……」

 

爆発炎上に紛れて迷宮内に入り込み、今頃かなりの階層を進んでいるだろう。

そしてそれに便乗している香織について気がかりだ。

 

(それにしても、馬のない馬車……車かしら?)

 

そう考えれば僅か半日で王都からオルクス大迷宮まで移動するなんてわけないだろう。

 

「ところで、それは?」

「マリーからのお詫びの品って所ね」

 

浅く反りの入った片刃の剣、いや、刀だ。

 

私のベッドの枕元に、リボンでデコレーションされた状態で置いてあった。

 

鑑定して貰ったが、今使っているシャムシールより切れ味が鋭く、頑丈。

その上、よく分からない機構が付いている、アーティファクトとは似て異なる物とのこと。

 

「妖刀・はらきりソードって名前なんだけど、縁起悪いわね」

 

名前はともかく性能は一級品で、本来刀とは砂鉄から作られた鋼にのみその名前を認められるのだが、これはおそらくそれ以外の金属で出来ている。

よく分からない機構とは、切った相手の血肉を取り込み、それを材料に回復用ナノマシンを製造して持ち主に与えるというもの。

刀と一緒に置いてあったメモにはより細かい理屈も書いてあったが、

 

「つまり、切れば切るほど自分の傷が回復するという事ね」

「それは呪われているかもしれないな」

 

なにせ、戦う事を強要するような刀だ。メルド団長の言葉も頷ける。

 

「棗と香織、何処まで進んでいると思う?」

「最低限一日では追いつけない位の深度、たぶん今頃二十階層くらいで野営中、かしら」

 

自分のこの読みは外れていないと思う。

 

おそらくだけどマリーはあの時でもまだ底が知れないくらいの力を持っていた。

同時に動きの鈍りの様なものも感じたので、まだまだ全力では無い。

もしくは現時点での全力で、全盛はもっと凄いのかもしれない。

 

「明日あたりでもう二十層あたりまで降りて、一日ほど慣らしてから更に下へ、というところね」

「二人とも無茶しなければ良いのだが……」

 

おそらく、いつになるかわからないが私達に追跡の命令が下されるだろう。

私には二人、いや、南雲君の無事も含めて三人の生存を祈るのだった。

 

 

○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○

 

 

食う、激痛、変貌。

 

二尾狼を食い、弾け飛びそうな体を神水が強制的に癒やす。

その繰り返しで体が一気に作り替えられる。

 

死んだ方がマシな痛みが前進を駆け巡り、それでも死んでなるものかという生存欲求がそれらをねじ伏せる。

そうして痛みが収まった頃には、自分の体が大きく変貌していた。

 

「魔物の肉は、人間が食うと体がボロボロになって死ぬんだったか……アホか俺は、そんな事も忘れて肉食って死にかけるとか……」

 

もう一度肉を食べてみるが、痛みは訪れない。

 

ステータスプレートを確認すると、ステータスが大きく上昇していた。ついでに魔力操作と二尾狼が使っていたと思われる纏雷という技能が増えていた。

しかし、それ以上に見慣れない項目も出ていた。

 

「副職?」

 

なんだ? 少し引っかかる。

生きる為に切り捨てた記憶の何かが叫んでいる。

 

『職業は全部で6種類に分類されます。

 ハンター、メカニック、ソルジャー、ナース、レスラー、アーチストです。

 職業によって、成長の仕方が変わり、覚える特技や、装備できる武器や防具も異なります。

 サブジョブとは、本来の職業とは別に習得できるふたつめの職業。

 サブジョブも、本来の職業と同様に6種類あります。

 サブジョブが成長すると、それに伴った特技を覚えます』

 

頭の中に駆け巡る情報の痛みに歯を食いしばって耐える。

しばらくそうしていると、情報が馴染んだのか、痛みが消える。

 

「なるほど、天職とは別に一つ設定できる後付け職業か」

 

しかも意識すれば切り替えも出来る様子。

 

「しかし、アーチスト? どうしてこんな物が職業に?」

 

そこまで口にして、ベヒモスが音だけで吹き飛ばされた光景を思い出す。

 

「芸術士……」

 

そうなるといろいろと謎が出てくるが、そんな物はどうでもいい。

重要なのは、どれがどう使えるか、ということだ。

 

しばし、どの職業を優先で鍛えるかを思案するのだった。

 

 

○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○

 

 

「これが、サブジョブ?」

 

香織に潜在能力ヘッドホンを聞かせ、サブジョブに目覚めさせる。

ちなみに今現在の香織は、背中に杖をくくり付け、肩にRPG-7を抱え、腰にはホルスターがつってあり、象牙細工のピストルが収まっている。

 

「ええと、ハンターは車の運転技術、メカニックは車の整備と機械全般に強くて、ソルジャーが武器全般の取り扱いが基本……」

「ナースが治療系技術と生物系に強く、レスラーが格闘攻撃、アーチストは多彩な特技が特徴だね」

 

自由に選択出来るから一通り使ってからどれをメインで鍛えるかを考えて欲しい。

 

「ちなみにマリーちゃんはなんのサブジョブにしてるの?」

「今はレスラーかな?」

 

ソルジャーと悩んだが、近接能力欲しいし緊急時のブーストがあるからレスラーにしている。

それに、このあたりの魔物なら銃で撃つより殴った方が早い。弾薬だって無限じゃない。

圧縮倉庫には億以上のストックはあるけど。

 

「でも、どれにしようかな?」

 

悩む気持ちは分かる。私も最初は悩んだものだ。

しかし、一部の選択肢は除外できる。

 

「うーん、ハンターとメカニックは今のところ無いかな」

「車もメカもないしね」

 

せめて一両でもクルマかバイクがあれば選べるんだけど、メカも車両もないのなら今無理に取る必要がない。

 

「レスラーは、たぶん合わないし、アーチストもあそこまでの声出そうにないし……」

「あれはああいう技術だよ?」

 

お腹の底から声を出す技術を少し極めるだけだから、いくらでも覚えられる。

 

「大丈夫、最初はマイクを使って練習すればいいから」

「その領域に辿り着くのにどれだけ掛かるか分からないから!」

 

その後も何度か協議を実施、最終的に実戦練習という名の勝負を行った結果、

 

「じゃ、じゃあナースで決定って事で……」

「い、異議無し……」

 

四十階層の敵をひたすら狩り続けて、キャンプ地点に戻って来てから結論を出した。

おかげで私も香織も全身ボロボロだ。ステータスは上がったが。

 

香織のサブジョブがアーチストでないのが残念だが、選択としてはかなり有益だ。

 

「でも、この注射器ってどうやって使えば良いんだろう?」

「刺して、注入」

 

そんな白崎さんに渡したのは巨大注射器。

外見こそレトロな注射器だが、しっかりとした武器だ。

 

針の様だが刃状になっており、槍に近い扱いが出来る。

無論先端には薬剤を注入する為の穴が空いている。

 

「中身の薬剤は私が準備するね」

「な、中身ってなに?」

「毒薬だけど詳しくは聞かない方がいいよ?」

 

何せ遺伝子操作されたモンスター相手にも通じるくらいの物だ。技能の毒無効でもないと無効化出来ないだろう。

技能で用意したフラスコに謹製の毒薬を生成して、香織に渡す。

 

「これが……?」

「私の知り合いが配合した毒薬」

 

バルコニー、いやオリビア調合の毒薬。

何度か作るのを手伝ったから、配分は覚えている。

結構面倒な手順あるけど、薬品生成の技能があればこの通り。

 

「あ、臭いだけでハエが落ちるレベルだから嗅がないようにね」

「どれだけ危険な薬品なの!?」

 

一滴指先に付いただけで指から煙を上げて溶けるくらいには。

じゃ、先の見張り番よろしく、と香織に任せて眠るのだった。

 

 

○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○

 

 

翌日、私達は六十階層あたりまで降りてきていた。

シグナルは快調、目標地点はまだまだ下の様子。

 

「えい!」

 

香織が巨大注射器を振り回し、名称不明な二足歩行豚怪人を切り捨てる。

その側面からもう一匹、骨でできた棍棒を振り回して突進してくるが、冷静に右手で象牙細工のピストルを抜いて四連射。

着弾個所は頭と胸元に二発ずつ。

 

「うんうん、順調に仕上がって来てる」

 

しかし、さらにその後ろから来たもう一体が突撃してくるのを予期しきれず、注射器で棍棒を受け止める。

注射器自体は戦車が降って来ても壊れないほど頑丈だけど、両手ではなく左手だけで保持していたので、受け止めきれず左肩に直撃。

 

「かはっ!? ―――っ!」

 

ゴキリと鈍い音が聞こえ、香織の表情が苦痛に染まる、がそこで怯まず頭部に向かってピストルをマガジン分すべて叩き込む。

 

そのまま豚怪人が倒れ、香織が周辺を警戒を行った後、その場にへたり込む。

 

「大丈夫?」

「だ、大丈夫……天恵よ、彼の者に今一度力を"焦天"」

 

光の中級魔法での治療を行い、傷を回復させる香織。

しかし、まだ軽く引きつるような感覚がするらしく、少し顔をしかめていた。

 

「節約出来るところは節約しないと」

「それでも回復しきってないでしょ? はいカプセル」

 

回復カプセルを口に放り込んで飲み込ませると、すぐに落ち着いた様子。

 

「よし、こうやって一人でも戦う技術をちゃんと覚えること」

「うん、分かった!」

 

恋とは偉大な物だと思う。

ほんの少し前まで素人だった香織が、血反吐を吐くようにしながら戦う事を覚えている。

これも南雲君に向ける感情の重さか。

 

利き手に注射器、左手で拳銃。威力が必要な時は手榴弾やRPG-7を叩き込む。

本人曰くもう少し遠距離の火力がほしいとのこと。

 

「うーん、バズーカ砲かな?」

「RPGと被っちゃうからできればもう少し違うもの無いかな?」

 

どうも一番のお気に入りはRPGのようで、両肩に担いでバンデラス撃ちとか練習していた。

実際に火力あるからいいんだけど、だんだん過激になってきている。

 

そうなると広範囲攻撃も可能な援護用途の武器がいいだろう。

 

「じゃあ、これ」

 

あんまりいいイメージの武器ではないけど、これが最適解だろう。

渡すのは、小手状になった噴射口とそれにつながるバックパック。

 

「これ、火炎放射機?」

「そう、ブロイラーボンベっていう武器」

 

あのテッドブロイラーが使っていた武器だ。

グラップラー残党に回収されないように、貰っておいた。

 

ちなみに、レナには内緒でだ。

本人が知っていたら死ぬ気で破壊していただろう。

 

「……うん、使えそうだけど、なんか怖いね。これ」

「香織ちゃんなら、それをむやみやたらと振るわないだろうから預けるね」

 

試しに火炎を出してみて、その火力に少し引きながらも香織の武器が決定するのだった。




亀と輝く塔はやり込みには必須。


唐突な用語解説。

はらきりソード
スペックだけ見るとかなり高性能な近接武器。
バイオ系に与えたダメージの1/8を回復するブラッドソード。

ただ、どうにもゲーム中ではメインのダメージ自体にかなりマイナス補正が掛かっている様子で、これに武器一枠使うかと言われればノー。

晴れて一番数のある刀は雫の手に渡ったのでした。
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