ふたりはVSプリキュア!   作:カードは慎重に選ぶ男

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第十一話:Let's! 幸せのカタチ!

――もしも、滅んだのが『黄昏の園』ではなくて地球だったら

――ビクトリーは地球を救うために『黄昏の園』の人間を犠牲にしてでも戦えていた?

 

 

朝加ショーコは、夢を見ていた。

夢の中でビクトリーは、トノサ=マッスルに負けた。

地球は滅んだ。

 

ショーコは、『黄昏の園』に逃げ延びた。

逃げ延びた先で、ショーコは現地人を犠牲にして『不幸の果実』を集めた。

地球のみんなを、復活させるために。

 

激しい戦いの最中。

キュアビクトリーは、キュアサレイントを死なせてしまう。

サイレントの変身が解けて、初めて見えた素顔は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ショーコ。起きなさい」

「ぐはっ……? お、おはよー……シズちゃん」

 

気が付くと、ショーコの自室に東日が差し込んでいた。

いつものように、自宅のベッドから蹴り落されたのだ。

毎日見ているクール系美少女の顔が、呆れたように寝坊助ショーコを見下ろしていた。

 

 

……夢の中の死に顔は、一体どんな顔だったか。

朝加ショーコは、思い出せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふたりはVSプリキュア!』

第十一話:Let's! Let's! 幸せのカタチ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いただきまーす。はぐん。テストが終わると一気に気が楽になるねぇ」

「……いただきます。三瓶さんも、臨時日程でテストが受けられることになったみたいで、不幸中の幸いね」

「ニャーゴ」

 

いつもの朝ご飯を頬張るショーコの幸せそうな顔を見ながら。

シズエは、先週のカナシミーナの素体だった三瓶ノゾミのことを思い出していた。

結局、ノゾミは1週間の昏睡ののちに復帰を果たしたのであった。

 

その後、ノゾミは巨大ヘビの被害者であるという事情を考慮されて、臨時日程でテストを受けることが出来たそうだ。

ショーコとシズエが手分けしてテスト対策を仕込んだ結果、ノゾミは赤点を一つも出さずに試験を切り抜けた模様。

 

 

「あれ? 味噌変えた?」

 

ふと、味噌汁をすすっていたショーコが些細な変化に気付いたようだ。

なんだか昨日までと味が違う、と。

心なしか、以前より少し甘味が強いような気がするらしい。

朝は味覚が敏感になりやすい時間帯なので、小さな変化も気になりやすいのだろう。

 

 

「……いつもの八百屋さんが閉店したのよ」

「ゴルゴムの仕業か!」

 

ショーコが適当なことを言うのは頻繁にあることなので、シズエも逐一聞き返したりしない。

この類のボケは、大体「いぬいたくみ」か「ディケイド」か「ゴルゴム」のせいにされるものなのだ。

割とパターン化されたボケなので、シズエも手慣れたものである。

 

 

「ショーコは、前の味噌の方が良かった?」

「前のヤツも美味しかったけど、これはこれで美味い」

 

実は、今回の味噌は四葉町商店街の乾物屋で買ってきたものだったりする。

どのみち、ショーコとしては特に拘りがある訳では無かった模様なので、雑談のタネという程度だったのだろう。

そもそも前の味噌の方が好きだったとしても、八百屋が閉店しているんだから手の打ちようが無いし。

 

この時……シズエとショーコは、特に大きな変化の予兆を感じることは出来なかった。

まぁ、八百屋の閉店というネタから「ゴルゴムの仕業だ!」並の直観力を働かせるのは流石に無理だろうけれど……。

 

 

 

 

 

で、お待ちかねの放課後まで時間を飛ばすのはお約束として。

果たして、本日のトラブルの持ち込み役は誰なのか?

ぶっちゃけ、大きいお友達の経験則から言って、サブタイからフレプリと分かってしまう訳だが。(メタメタ)

 

 

「ラブちゃん。ぶっちゃけて聞くけど、何悩んでんの?」

「ちょっと待って色々過程を端折り過ぎて意味わかんない!」

(……今週はこういうノリなのね)

 

ショーコが放課後に向かった先は、同じクラスの沖田ラブのところであった。

若干キラキラネームの疑惑があると噂の、沖田ラブさんである。

今日一日、ラブが上の空だったのを、ショーコは目聡く発見していたのであった。

 

 

「や、見るからにラブちゃんが悩んでるモンだからさ。胸がおっきくなりすぎてブラがきついとか、そーいうことじゃないでしょ?」

「それもあるんだけどね……」

(……当たっていたの?)

 

さらっとセクハラ発言をするショーコは、そういう事ばっかり言っているから男子扱いされるのである。

というか、本物の男子が言っていたら多分殴られていただろう。

なお、ショーコは年齢相応の体系だ。シズエは……由緒正しきプリキュア体系である。(何度も消して書き直した跡がある)

 

 

「実は、四葉町商店街のあるところに大型ショッピングモールの建設計画が持ち上がってて……」

(……何だか急に社会問題の匂いが出てきたけれど、大丈夫なの?)

 

なんでも、四葉駅の近くに大型ショッピングモールが出来るかもしれないらしい。

そして、地上げが着々と進んでいて、商店街の一部の店が既に閉店しているということだった。

沖田ラブとしては、小さいころから慣れ親しんだ四葉町商店街が無くなるのは、非常に悲しいのだそうだ。

 

 

「セツナがね。大型ショッピングモール経営グループ『ラビリンス』のスパイだったんだ」

(……迷子センターが常に満員になっていそうな名前のショッピングモールね)

 

セツナというのは、ラブの親友の小松セツナのことである。

中学生になってから転校してきたセツナは、色々なトラブルを経て沖田ラブと交友関係を築いてきた子だった。

そんな小松セツナと一緒に、沖田ラブは商店街に行くことが多かったのだが……。

 

 

「私がちょっと間違えて、セツナの携帯を見ちゃったんだ。そしたら、商店街の人達の家族構成やらお金の入用やらの情報がビシっと並んでて……」

 

すぐさまセツナは携帯電話の画面を閉じたのだが、その時のセツナの気まずそうな顔が、ラブに確信を与えた。

すなわち、小松セツナは経営グループ『ラビリンス』の回し者だ、と。

携帯端末を落として身バレしたことがある夜野シズエとしては、あまり笑えない話だった。

 

ショーコは、腕を組んで考えをまとめているようだ。

ぶっちゃけ、巨大資本による敵対的買収に対しては、単なる中学生の力でできることは無さそうである。

今回の地上げは恐喝や汚い手を一切使わない穏便な買収交渉のもとに行われているらしいので、『ラビリンス』が悪の組織という訳でも無さそうだ。

 

 

「ラブちゃんは、どう思ってる?」

「えっ?」

 

結局、こう聞くしかないのだ。

一介の中学生に解決出来る事柄には限度があって、巨大資本『ラビリンス』の進出を止めるのは難しい。

だから、沖田ラブをどう納得させるか、という方向でしか落としどころを設けられないのである。

 

 

「セツナちゃんを許せない? 恨んでる?」

「そんなこと……! ううん、ちょっとだけ、それは思ってるかも……」

 

少し意地悪な質問ね、とシズエは思った。

それでもショーコは飾らない言葉でラブへと問いかけた。

ラブは、一瞬感情的になりそうだったが……一応冷静に心中を吐き出してくれた。

やはり、地元の四葉町商店街に関して、並々ならぬ愛着がある模様。

 

 

「じゃあ、ラブちゃんはセツナちゃんのことを、まだ友達だって思ってる?」

「思ってる」

(……そこは即答なの?)

 

なるほど。

ショーコとシズエは、大まかに沖田ラブの心境を理解した。

ラブは、四葉町商店街が無くなるのは嫌だが、巨大資本『ラビリンス』を止める大義名分も手段も無い。

だからこそ、親友の小松セツナが『ラビリンス』に協力していると知って嫌な気持ちになっても、セツナにかける言葉が無い。

 

 

「ラブちゃんが今思ってること、全部セツナちゃんに伝えればいいと思うよ」

 

セツナが四葉町商店街の解体に手を貸していることに、ラブがモヤモヤした感情を抱いていることも。

今でもセツナのことを友達だと思っていることも。

全部伝えた方が良いとショーコは思った。

 

 

「例えば例の巨大ヘビとかに襲われたらさ。『セツナにアレを言えばよかったー』って思いながら死ぬ羽目になるかもよ? 言えるうちに言っておいた方が良いよ」

 

もちろんショーコもシズエも、被害者が廃人になる前に助けるつもりではある。

なので、どちらかというと沖田ラブへ発破をかける意図からの発言であった。

一応、プリキュアがカナシミーナに負けるなんて事態を想定しての発言でもあったりして。

 

 

「万が一その路線で拗れたら、あたしが胸を貸してやるから思う存分泣いて良いぞ」

「それは別にいいかなぁ。でもちょっと元気出たよ、ありがとね! 今度、近所のドーナツ屋台に一緒に行こう!」

 

どうやら、沖田ラブは自分が為すべきことを理解したようだった。

小さく手を振っている朝加ショーコと終始地蔵だった夜野シズエに背中を見せて、沖田ラブは走り去っていった。

 

その後の沖田ラブと小松セツナがどうなるのか、ショーコもシズエも分からなかった。

今まで通りに友達として笑いあえるようになるのか、もしくは疎遠になるのか。

ただ、前者であってほしいとシズエ達は思ったのであった……。

 

 

 

 

「……ショーコ」

「どうしたの? ドーナツ食べたくなった?」

 

クール系美少女ロールを貫いていた夜野シズエは、沖田ラブが去ったタイミングでショーコへ声をかけてみた。

先程のラブの相談を聞いて、シズエも何か思うところがあったのだ。

 

ヒーローが大好きなショーコならキュアサイレントの行いを許さないだろう、とシズエは思っていた。

地球人の未来を軽んじるサイレントの正体がバレたら、ショーコとの幸せな時間が失われるかもしれない、と。

だが……ひょっとすると、バレてもショーコは受け入れてくれるのではないか?

そんな細い光が見えた気がしたのだ。

 

 

「…………やっぱり、何でもないわ」

「うん? まぁ、話したくなったらで良いよ?」

 

もっとも、シズエは言葉を詰まらせてしまったが。

やはり、怖いものは怖いのである。

ショーコに嫌われたら、と思うだけでシズエは二の足を踏んでしまっていた。

 

 

「そういえば思い出したけど、菊池さんのトコの八百屋が閉店したのって、もしかして何か経緯を聞いてたりする?」

「……フルーツキクチは、元々後継ぎが居なかったわ。だから、そもそもあの店長の代で閉める予定だったそうよ」

 

あの店長の一人娘が声優だか俳優だかになったという話を、シズエは聞いた覚えがあった。

娘が夢を持つようになって嬉しい、なんて言っていたような気がする。

最近会っていない菊池店長だが、特に娘が独立したことで後継者が居なくなる心配をしていた様子ではなかった。

それよりも、むしろ娘の幸せを喜んでいたような……。

だからこそ、八百屋の店長は土地の買収に応じたのだろう。

 

 

「娘は夢を追えて幸せ、店長は娘を見守りつつ最後の財産を残せて幸せ、ってか」

「……商店街の他の人達も、何らかの『幸せ』を対価に土地を引き渡しているみたいね」

 

決して、悪い話ではない。

当人たちが納得して『幸せ』を選択しているのだから、素直に見ればハッピーエンドの連続だ。

 

巨大資本『ラビリンス』は決して悪ではない。

だからこそ、沖田ラブはモヤモヤを胸に抱えつつも、小松セツナが悪いのだと思えないのだろう。

小さい頃から慣れ親しんだ商店街が徐々にシャッター街になっていくのを、沖田ラブはどんな気持ちで見ているのだろうか。

 

……『幸せ』って何だろう?

 

 

「……そういえば、『二兎を追う者は二兎とも獲れ』って、沖田さんには言わなかったわね」

「それを言うと、倒れるまで無理をしちゃう人も偶に居るって、最近思い知らされたからね……」

 

ショーコに言われるまで忘れていたが、そういえば沖田ラブは趣味のダンスに熱を入れすぎてオーバーワークで倒れたことがあったはずだ。

まぁ、ショーコとて万人に適切なアドバイスができるわけではないのである。

シズエとしては、かなり腑に落ちた回答であった……。

 

 

 

 

 

 

 

ところがどっこい。

ショーコと一緒に帰路についていたシズエは、不穏な気配を感じていた。

具体的に言うと、巨大ヘビか巨大ナメクジが作ったカナシミーナの気配である。

シズエの持つ『静寂の輝石』は、カナシミーナの気配を探知する能力を持っているのだ。

 

忘れ物をしたわ、なんて嘘をつきながら。

踵をかえして、シズエが四葉町商店街へと足を運んだのであった。

人目のない場所で変身を負えて、キュアサイレントが四葉町商店街で見たものは……?

 

 

「カナシミ・パッションッ!」

「セツナ、目を覚ましてっ!」

 

いつもの3メートルほどのマネキン人形もといカナシミーナが商店街を破壊していて。

沖田ラブが、決死の説得を敢行している模様であった。

サイレントが確認したところ、カナシミーナの頭の植物は、頭にツボミをつけていた。

もう少し待てば、花が咲くことだろう。

ビクトリーも来るかもしれないし、少し様子見に回った方が良さそうである。

 

 

「あっ! そこのあなた、見るからにプリキュアだよね!?」

「…………静寂の光。キュアサイレント」

 

……不覚にも沖田ラブに見つかってしまった。

サイレントは適当な建物の陰に隠れていたのだが、カナシミーナの無差別攻撃のせいで瓦礫が落ちてきそうだったのだ。

そして、隠れる場所を変えようとしたサイレントは、沖田ラブに発見されてしまったのであった。

 

沖田ラブに対して一応名乗ってみたサイレントであったが、大分テンションは低い。

まぁ、ビクトリーと違って元々サイレントは決めポーズなど持っていないので、いつものクール系美少女ロールといえばその通りなのだが。

 

 

「私の友達が、私を庇って変な種を植えられて、怪物になっちゃったの! お願い、セツナを助けて!!」

(……不幸の果実が実るまで待ちたいのだけれど)

 

なんだか、それは言いたくない雰囲気であった。

先程のショーコへと話していた相談の内容と、現在の沖田ラブの様子から察するに、おそらく沖田ラブと小松セツナは和解したのだろう。

となれば、サイレントがNOと言った場合、おそらく沖田ラブは現場に残ってカナシミーナの説得を続ける。

……そうなると、現場に肉の花が咲くのは時間の問題だろう。

 

 

「……ここは私に任せて、貴女は避難しなさい」

「ありがとう! 絶対に、セツナを助け出してね!!」

 

どの口が言っているんだ、とキュアサイレント自身でも思ってしまうようなセリフであった。

幸いにして、沖田ラブはキュアサイレントのスタンスを知らない模様で、サイレントの言葉を鵜呑みにしてしまったようだ。

2度ほど背中を振り返りながら、沖田ラブは現場を走り去ったのであった。

 

 

「カナシミ・パッションッ!」

 

そして、背後から殴りかかってきたカナシミーナの拳を、宙返りで回避しながら。

サイレントは、周辺に注意を配っていた。

いつビクトリーが乱入してくるか分からないので、カナシミーナ以外にも気をつかう必要があるのだ。

 

……と思っていたら。

ふと、カナシミーナがサイレントの視界から消えた。

思わず目を凝らしてしまったサイレントは、背後からの突然の打撃に弾き飛ばされ、付近の電柱を背中で折る羽目になった。

 

 

「……っ!」

 

サイレントは衝撃に逆らわずに吹き飛ばされながら、大分距離をあけたであろうカナシミーナの姿を確認しようとした。

拳を振りぬいた体勢のカナシミーナを、視認することができた。

カナシミーナは、すぐさまサイレントへと肉薄してきた。

正面から突撃してくるカナシミーナの拳を、影の槍で串刺しにしようとしたサイレントは、

 

 

「……!!?」

 

またしても、予期せぬ方向からの攻撃に、サイレントはボールのようにブッ飛ばされた。

サイレントは、左手方向からの打撃で弾き飛ばされて、地を這うこととなったのだ。

 

まずカナシミーナが超スピードで動いたのかと疑ったサイレントだが、そうでは無さそうだ。

プリキュアの動体視力から逃れるレベルの高速移動を行えば、足音や空気の流れに痕跡が残るはずなのに、それが無い。

ということは?

 

 

「……時間停止か、瞬間移動?」

 

十中八九、瞬間移動の方だろう。

時間停止だったら、もっとエグい使い方が幾らでも出来るだろうし。

 

それでも、瞬間移動も相当に厄介な能力には違いない。

幸い、カナシミーナが遠距離攻撃を見せていないのが救いだろうか。

近距離攻撃だけのカナシミーナが相手ならば、最悪でも相打ち覚悟のカウンター戦法が通じるからだ。

 

だが、出来ればもう少しだけ勝利を確実なものにしたいわけで。

……そういえば、もしかしてキュアビクトリーは付近で様子見をしていたりするのだろうか?

 

 

「カナシミィ!」

「……きゃー」

 

再び瞬間移動を駆使して殴りかかってきたカナシミーナの攻撃を受けて。

キュアサイレントは、わざと大げさに弾き飛ばされて、瓦礫の山へと埋もれてみた。

慣れない悲鳴が若干棒読みになってしまった感は否めないが、その辺りは御愛嬌である。

 

 

「プリキュア・パンチッ!」

「カナッ!?」

 

案の定、両腕に金環を纏った桜色のプリキュアが、待っていましたと言わんばかりに戦場へと飛び込んできた。

ガードが間に合わなかったらしいカナシミーナは、脇腹を多少抉られてしまったものの、まだ戦える様子で。

その様子を見て、サイレントは今回のカナシミーナへの対策を固めていた。

 

そもそも、カナシミーナのエネルギーは無限ではない。

強すぎる能力を連発することは難しく、無理に連発すればガス欠を起こすものなのである。

最近だと、福圓ミユキのカナシミーナが必殺技級のロケットパンチと殺人光線を放った後にガス欠を起こしていたはずだ。

 

となれば、今回のカナシミーナの瞬間移動にも、おそらくインターバルが存在する。

もしくは、連発すれば代償としてガス欠を起こす可能性はある。

 

ならば、キュアサレイントがするべきことは、機をうかがうことだ。

倒壊寸前の家屋の陰に隠れて、キュアサイレントは身の丈ほどもある三日月状の影刃を練り上げた。

ビクトリーを囮に使いつつ、瞬間移動直後のタイミングでカナシミーナを大技で仕留めるのがベストだろう。

幸い、カナシミーナは近接戦闘しか攻撃手段が無いようなので、端から見ている分には転移後の位置は読みやすかった。

 

 

「でりゃあっ!」

「カナシミ・パッションッ!」

 

乱打戦を繰り広げているビクトリーとカナシミーナは、おそらくパワーだけならビクトリーが若干有利と見える。

だが、カナシミーナが時々使う瞬間移動戦法のせいで、ビクトリーも攻めきれない模様であった。

そんな二人の殴り合いを観察しながら、サイレントは待った。

カナシミーナがサイレントから視線を外した状態で、瞬間移動戦法を使うタイミングを。

 

 

チャンスは……サイレントが思ったよりも、ずっと早く来た。

まだ、カナシミーナの頭の植物は花の段階だった。

 

――私の友達が、私を庇って変な種を植えられて、怪物になっちゃったの! お願い、セツナを助けて!!

 

頭の中に蘇った余裕のない声が、キュアサイレントの身体を突き動かした。

 

 

「……プリキュア・サイレント・リッパー!」

 

瞬間移動を駆使してビクトリーの側面に回り込んでいたカナシミーナは……特大の影刃によって背中から両断されてしまった。

直後、カナシミーナの巨大が爆発四散して。

中から、小松セツナと思われる素体が姿を現したのであった。

 

 

 

 

 

「サイレント……。どうして?」

 

不幸の果実を完成させるまえにカナシミーナを倒してしまったサイレントへと。

ビクトリーが、困惑の目を向けていた。

確かに、不幸の果実を集めて『黄昏の園』を復活させるのがサイレントの目標ではあるのだが。

 

 

「……カナシミーナは、成長によって能力を増やすことがある。手に負えなくなる危険があったから倒しただけよ」

 

例の大学生のカナシミーナは、黄色の粘土に加えて火炎放射の能力を使用していたわけだし。

あの瞬間移動に加えて遠距離攻撃を習得されたら、瞬間移動後の位置を予測するのも困難になるので、倒せなくなる危険が割とあったのだ。

……と、今とっさに考えた理由であった。

 

 

「そういうことにしといてあげる」

 

にひひ、なんて雰囲気で笑うビクトリーに、何だかイラっとしたサイレントであった。

あたしは分かってるから、みたいな副音声が聞こえた気がしたのである。

どうせならサイレント・リッパーで一緒に真っ二つになれば良かったのに。

……今からでも遅くないのでは?

 

 

「じゃ、あたしは被害者を病院に送るから! シー・ユー!」

 

残念ながら、脱兎のごとく現場を去っていくビクトリーの背中を眺めることとなる訳だが。

基礎身体能力に差があるので、一度走り出したビクトリーに追いつく手段が無いのが、実に遺憾である……。

 

 

――ラブちゃんはセツナちゃんのことを、まだ友達だって思ってる?

――思ってる

 

……私がやってきたことがバレても、ショーコはまだ友達だと思ってくれるのかな。

何となく、サイレントは胸の前で拳を握りしめてしまっていた。

今日のショーコの言葉を聞いた感じだと、もしかしたらバレても多少気まずくなるぐらいで済むのでは?

もちろん、バレずに墓まで持っていくのが一番なのだが。

 

 

「……いつまでもここに居ても仕方ないわね」

 

四葉町商店街は、その一部が壊れてしまったものの、まだまだ健在で。

いつまでの付き合いになるか分からないけれど、今日は夕食の買い足しを四葉町商店街で済ませよう。

そう、夜野シズエは思ったのであった……。

 

 

 

 







・今回のNG大賞

ビクトリー「まさかカナシミーナの転移が他人にも効くなんて……! ここって何処だ……?」

見知らぬ世界に飛ばされてしまったビクトリーを待ち受けるのは、果たして?

??「逃げルルォ!!」

やがて星が降るかもしれない。降らないかもしれない。



・次回予告!

学校医のアキラ先生への再三のアプローチに失敗した美山イチカは、ひょんなことから朝加ショーコに惚れちゃったんだって!

美山イチカは料理部ならではのスイーツ攻撃で朝加ショーコに迫るが、そんなイチカの前に夜野シズエが立ちはだかった!

少女たちの意地をかけた料理対決が、今始まる!

「SHINE!! スイーツでみんなに笑顔を……!」ホイップ・ステップ・ジャーンプっ!!
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