暁切歌と、その兄貴   作:カエル帽子

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XDでマルチを頑張っているのですが、真の結晶全然でないー。最大レベルの上限突破がいないとアリーナもマルチのハードも厳しくて困る。

今回、後半ちょっと真面目な内容となっております。



暁剪理は振り返る

「よいしょーっと。すまんな切歌、せっかくの休みなのに掃除手伝ってもらっちまって。」

 

「いいんデスよ剪兄ぃ。それに二人でやれば早く終わるデース!」

 

 

 

今日はS.O.N.Gの仕事がお休みの日。調と何処かへでかけようと思ったのデスが、調は用事があるみたいなので、一人で剪兄ぃの家に遊びに行ったのデス。でも剪兄ぃはちょうど家事を始めたところだったらしく、ゲームでもしていてくれとは言われたデスが、剪兄ぃが一人掃除している前でゲームも落ち着かないので、お手伝いを申し出た、という次第デース。ふふふ、今まで培ってきたアタシのお掃除力を見せてやるデース!

 

「あ、転ばないように気をつけてなー。特にコードとか。」

 

「うっ、って何で剪兄ぃがコードで転んだこと知ってるデスか!?」

 

「...前に自分で転んだって言ってたぞ?覚えてないのか?」

 

「あれ、そうだったデスか?うーん...?」

 

少し返事が遅かったけど考え事でもしてたデスかね。でもアタシ調にもコードで転んだなんて言ってないはずデスけど...まぁいいか。

 

「じ、じゃあ俺は風呂場を片付けてくるから、ある程度片したら寛いでていいからなー。」

 

「了解デース!」

 

こっちを見ずにスタスタとお風呂場に向かう剪兄ぃに元気よく返事をして、剪兄ぃがお風呂場に入ったことを確認。さて、それじゃ掃除の続きを...ん?

 

「今なら剪兄ぃの部屋に入れるのでは?」

 

普段は調と二人でよく遊びに来てるデスが、剪兄ぃの部屋には一度たりとも入ったことがない。部屋には入っちゃダメと剪兄ぃに止められているから入らないようにしていたデスが。

 

「やっぱり気になるデース!」

 

 

 

 

 

というわけで、やって来ました剪兄ぃの部屋。勉強机の教材、本棚にたくさん入ってる料理本や、何か大事な物を保管してるのか金庫みたいな物?を見れば普通デスね...それだけ見ればデスが。

本棚の上の方に飾ってあるフィギュアってアタシの記憶が確かなら前にクリス先輩が店頭で欲しがってた「うたずきん」の限定フィギュアだったよーな?(本人は否定したデスが)

そんでもってその隣に何故かあるミニモアイ像×3にマトリョーシカが中身全部並べられてたり、壁には魚拓とかいうんデスかね?が飾ってあり、その横には日の丸の国旗。さらに横にはいつか見た「うたずきん」のコスプレ衣装が。あれ?衣装はクリス先輩が持ってるハズなのに何でここに?

机の上にも何か見たことあるような無いような小物が何点か、もういいや。一つ一つ見てたらキリが無いデース。

 

「とりあえず剪兄ぃが普段読んでる本でも漁ってみるデスか。」

 

そうして本棚を見て、写真が飾ってあることに気づいたので手に取ってみる。これはたぶん剪兄ぃの大学の旅行の時の集合写真デスかね。でも集合写真って普通カメラにピースしてたり笑顔だったりするデスよね?なんで鼻血でた時みたいに鼻にティッシュ突っ込んでる人がいたり、取っ組み合いしてる人がいたり、フード被って水晶玉覗きこんでる人がいたり、コスプレして漫画本読んでる人がいたり、ショック受けたのかorzしている人がいたりするんデスか。記念写真なのに記念って感じが一ミリも感じられない写真なんてこの世にあるんデスね。

 

あ、orzしてる人、剪兄ぃだったデス。

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直して本を漁り始めてみるデスよ!んー料理本がたくさんでてくるデスね、特にお菓子の本については沢山あるデス。七割ぐらいはそうなんじゃないデスかね。

 

「あれ、これ料理本じゃないデス?」

 

料理本に紛れて、表紙も何も書いてないノートみたいなのを見つけたデス。ちょっと中身を読んでみるデース!

 

「さてさて、何が書いてあるデスかね~...」

 

 

 

 

 

 

△△△△ねん◯がつ◯にち

 

おとーさんから、のーとをもらいました。にほんごのべんきょうにもなるといわれたので、これからまいにちにっきをかいていこうとおもいます。

 

 

 

 

 

「これ剪兄ぃの日記デスか...?」

 

よくみたら日付が何年も前のデス。剪兄ぃは確か日本に来たとき記憶喪失だったと言ってたデス。もしかしてその時の日記?そしたら、これを読んでいけばアタシがF.I.Sにいる間の剪兄ぃのことがわかる...?

 

「...み~た~なぁ~?」

 

「ぴぎゃあああああ!?って剪兄ぃ!脅かさないでほしいデース!」

 

日記のことに集中しすぎて、剪兄ぃの気配に気づかなかったデース。心臓が飛び出るかと思ったデスよ!

 

「だいぶ集中してたみたいだから、ちょっとやってみたくなった。とりあえずは~っと。」

 

「ほえ?」

 

そう言いながら両の手をグーにしてアタシのこめかみに当ててくる。あ、これもしかしなくてもやばいやつデス!?

 

「言い付けを守らない悪い子にはオシオキだ♪」

 

「ま、待つデス謝るデスちゃんとごめんなさいするデスから待ってぎゃああああああああああああ!!!!!!?????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...おうふ。」

 

「まったく、部屋には入るなとあれほど言ったろうに。あと女の子のだしちゃいけない声だぞ。」

 

「それならもう少し加減してほしいデースっ!」

 

うぅ~まだ頭がじんじんするデスよ~。剪兄ぃのアイアンクローは孤児院にいた時よりも、さらに強力だったデス。

 

「んでまぁ、この部屋を見た感想は?」

 

「混沌としてるデース!」

 

「だよなぁ。自分でもそう思うわ。」

 

「なんでこんなカオスな部屋なんデスか?」

 

「それはだな...。」

 

聞いてみると、この部屋の飾り物のほとんどは写真に写っていた剪兄ぃのクラスメイトからのプレゼントということ。あの写真だけ見るとちょっと怖い印象デスが、なんだかんだで仲はいいみたいデス。ちなみに「うたずきん」のコスプレ衣装はクリス先輩のではなく剪兄ぃ用の衣装で、一度だけ着たことがあるらしいデース。

 

「見てみたいデス!」

 

「ダメだぜっ!」

 

むぅ、剪兄ぃのけちんぼデース。

 

「まぁ俺のクラスメイトのことはいいんだ。切歌が気になってるのは日記の方だろう?とりあえずリビングに行こうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事用のテーブルの上を片付けて、いつもの俺の席に着く。そして、さも当然のごとく切歌が俺の上に座る。

 

「えっと、切歌さーん?その、この体勢だと、ちょっと読みづらいんだけども。」

 

「読むのはアタシがするデース!だから剪兄はアタシの質問に答えてくれればいいデスよ!」

 

そう言われてもなぁ、切歌の柔らかい感触や髪の香りに俺の理性が揺さぶられるんですが!だがここは我慢だ俺。こんなとこで発情してみろ、「剪兄ぃなんて嫌い!」とか言われて俺の人生ジ.エンドである。

 

「...あ、もしかして嫌だったデスか?」

 

「絶対にそれはない。」

 

「そ、そうデスか。よかった。」

 

不安げにこちらを見てきた切歌に即答してやった。確かに社会的に抹殺されそうな絵面ではあるが、昔から絵本を読んだりするときは決まって俺の膝の上に乗ってきていたので、切歌としては、昔のように甘えたかっただけなんだろう。だからまぁ髪をわしゃわしゃするのは間違ってないハズ。

 

「わっ!?剪兄ぃ日記読めないデスよぉ♪」

 

ほらね。読めないとか言ってても抵抗は全然しないし。

むしろ楽しんでる節が見えるぐらいだし。背格好が多少変わっても、この笑顔は昔と変わってないなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺こと暁剪理は、ちょっとした小国のちょっとした街のちょっとしたいいとこの子供として産まれた。小さい頃の記憶は生憎とそんなに覚えてはいないけど、父さんと母さんはとっても優しい人だったのは覚えてる。俺が転んだりして大泣きしたときも、悪いことして怒った時も、最後には必ず笑顔で頭を撫でてくれた。父さんはちょっと力強くて、母さんは柔らかくて、でも二人ともとっても暖かくて、だから切歌が生まれてきた時には俺が同じ事をしてあげるんだ!なんて思ったりしてたんだ。

この時の俺は4歳。この後に起こる悲劇を知る前の、俺がまだ純粋な子供だった頃のこと。

 

 

 

 

切歌が生まれてから一年が経つ。支えが必要ではあったものの切歌はちょっとずつ歩けるようになった。

その日もまた、切歌を可愛がっているときに、とつぜん奴等は現れた。

後に認定特異災害‘ノイズ’と呼ばれる化け物達が突如として街を襲ってきた。

俺と切歌は父さんと母さんに連れられて逃げ出したけれど、その途中で父さんはノイズに刺されて目の前で灰になった。そして母さんもまた、逃げ込んだ建物の中で俺に切歌を託して灰になった。

けれど、託されたとはいえノイズに囲まれた状態でどうやって生き残れというのか。諦めかけていたその時、ノイズ達は突然体が崩れ去り、その場から消え去ってしまった。

後から聞いた話でわかったけれど、ノイズは時間で消滅するらしい。つまりは、あのタイミングで街に現れたノイズは時間切れとなり、一斉に消え去ったということだ。

何が起きたのか全くわからず暫く呆然としていた俺。何の音も聞こえなくなった建物の中で切歌の泣き声だけが響いていた。

あの日あの時、あの瞬間のことを俺は一日たりとも忘れたことはないし、忘れることは絶対にないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノイズが消え去った後、俺達はすぐに国の人間に保護され、孤児院へ預けられることになった。子供の数は俺達を入れて二十人で、先生は三人だった。

始めこそギクシャクしていたけれど、打ち解けてからは本当の家族のような仲となり、皆で力を合わせながら日々を過ごすようになった。

月に一度、健康診断と称して別の施設に連れてかれるのだけは不思議に思ったけど、当時の俺はそこまで気にしなかった。

実際は聖遺物の研究のためのモルモットにされていたわけだが。聖遺物に対しての適正チェック及び適合者ならば適合係数をあげるためのリンカーの投与。他にもいろいろと、俺達が気づいていないレベルで実験されていた。時々先生が暗い顔をしてることがあったのはこういうことだったんだな、と今更ながらに理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親はいなくなっちゃったけれど、俺達は幸せだった。けれど、幸せは長く続かない。奴等はまた俺達の前に現れた。

 

「みんな!早くにげ!?」

 

先生が最初に灰になる。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!???」

 

子供達も次々とノイズに灰にさせられ、気づいた時は一人で港町を走っていた。とにかくノイズから逃げる一心で。絶対にここで死ぬわけにはいかない、ここで死んだら今度こそ切歌は一人になってしまう。

幸か不幸か、この時、切歌は健康診断で別の施設に移っていた。だからこそ諦めるという言葉は俺の頭には無かった。足が動く限り走り続けろ、もっともっと速く!そして気づいた時には右側からの突然の衝撃にぶっ飛ばされ、何かに叩きつけられ、そこで俺の意識はなくなった。

 

何が起きたのかは今じゃ推測でしかないが、建物のガスか何かが爆発、その余波でぶっ飛ばされて、港にあった船の一隻に突っ込んだっぽいのだ。

海を漂流していた俺を乗せた船を漁師の人が見つけて保護したって言ってたし。

 

そして何処とも知らない病院のベッドの上で目覚めた俺は記憶喪失状態で、国籍も何もかもわからない俺を引き取ってくれたのが日本人の人、つまりは今の俺の親父だ。だれ?って聞いたらボランティア団体の人だ、なんてはぐらかされたけど、悪い人ではないなって思った。

だって週に三日ぐらい必ず顔を見せにくるんだもの。暇なんだねって言ったら困ったような笑顔が返ってきたし。

だから、行く宛がないのなら日本に来ないか?と言われた時に、この人なら信用してもいいって思った俺は日本へ行くことになり、今の親父と母さんの家族として迎えられることになった。この時俺は十二歳。そしてこの三年後にツヴァイウィングの悲劇が起こるのだが、それは別の話か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「剪兄ぃってば!!!」

 

「おおう!?どうした切歌?」

 

俺を下から見上げるような形で頬を膨らませている切歌の顔があった。あらかわいい。

 

「どーしたじゃないデスよ!何度も呼んでるのに返事が無かったデス!」

 

「すまんすまん、考え事してたわ。」

 

「もー!しっかりするデスよ剪兄ぃ。」

 

そういえば日記のことを聞かれていたんだった。もう一度、切歌の髪をわしゃわしゃしながら、当時のことを振り返る。

 

「確か、この時に響と未来に合ってだな...。」

 

お父さんお母さん、先生、皆も。ノイズと戦ったりしてるけど、俺達は今、幸せだよ。

 

 

 


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