Fate Grand Order ~歴史を紡ぐ者~ 作:牧弥潤巳
龍斗達一行が砦に向かうと、そこには負傷している兵達が治療されている光景が目に映る。しかし、その砦はあまりにも劣化していた。
マシュ「これは・・・酷い、ですね・・・」
香奈「中がボロボロ・・・」
ロマニ「外壁はそこそこ無事だけど、砦とは呼べないぞ、これ。」
穂乃花「怪我してる人がいっぱいいる・・・」
龍斗「おかしい。戦争中ではないはずだがな。1431年にフランス側のシャルル七世がイギリス側についてフィリップ三世と休戦条約を結んだはず。」
カルマ「小競り合いはあったかもしれないけど、ここまで行くもの?」
兵士「ひぃっ!?ま、また来たぞ。」
怯えながら兵士は武器を構える。
穂乃花「ま、また戦うのかな?」
龍斗「任せろ、んんっ!・・・ボンジュール。俺達は旅の者だ。あなた方に危害を加える者ではない。どうか武器をおいて欲しい。」
なんと龍斗はネイティブレベルのフランス語で、自分達は敵ではないと話し、情報をとろうと試みた。
穂乃花「フランス語・・・かな?」
マシュ「先輩外国語が話せるのですか?」
龍斗「まぁ、色々あってな。」
本当にこの男のスキルはとんでもないと、龍斗意外のメンバーが思った。
兵士「敵では・・・ないのか・・・?」
ロマニ「む。案外簡単に信用するね。理性を取り戻したのかな。それとも、戦う気力がないほど、萎えきっているとか・・・?」
マシュ「シャルル七世は休戦条約を結ばなかったのですか?」
兵士「シャルル王・・・?知らんのか、アンタ。王なら死んだよ。魔女の炎に焼かれた。」
マシュ「死んだ・・・?魔女の炎に・・・ですか?」
兵士「ジャンヌダルクだ。あの方は竜の魔女となって蘇ったんだ。イングランドはとうの昔に撤退した。だが、俺達はどこに逃げればいい?ここが故郷なのに、畜生、どうすることもできないんだ。」
本来ならば、ジャンヌ・ダルクは既に火刑に処されたはずだが、この特異点では蘇っていることになっている。
龍斗「(聖杯による影響か。本来の歴史とは違う道を行っている)」
カルマ「ジャンヌダルクが魔女・・・?」
穂乃花「クイックイッ」
龍斗「ん?」
穂乃花「龍君、その、誰?ジャンヌダルクって。」
あまり歴史に詳しくない穂乃花は龍斗に恐る恐る尋ねた。
龍斗「救国の聖女、ジャンヌダルク、世界的にも有名な英雄だ。百年戦争後期、征服されかかっていたフランスを救うために立ち上がった女性だ。十七才でフランスを救うために立ち上がり、わずか一年でオルレアン奪回を果たしたが、イングランド軍に捕縛され、異端審問の末に、火刑に処された。有名な話だ。」
カルマ「彼女か投獄されてこら火刑に至るまでの日々は、あまりにも惨ち拷問と屈辱の日々だったそうだよ。イングランド側は彼女を聖人としてではなく、異端者として発表したかった。その為に、あらゆる責め苦で彼女自身の口から私は主の声を聞いてはいないといわせたかった。」
ロマニ「でも、彼女は最期まで心を折らなかった。火にくべられた時でさえ祈りを放さなかった。その後に名誉回復が行われ、四百年後には正式な聖人として認定された。無力な少女の想いが世界を変えた。その例で言うなら、ジャンヌダルクは最高級の英霊だよ。」
兵士「・・・!来た!奴等がきたぞ!」
カルマ「・・・!魔力反応?」
説明が終わった直後に大量の骸骨たちが押し寄せてきた。
ロマニ「少量の魔力による人体を用いた使い魔・・・骸骨兵だな。今度はさっきと違う。思う存分暴れていいぞ、三人とも!」
龍斗「・・・炎属性付加。」
再び姿を変え戦闘態勢に入る龍斗達。因みに補足しておくと、この姿は仮面ライダーウィザードに寄せてます。
穂乃花「またエンチャントって魔術・・・」
香奈「・・・」
穂乃花「香奈ちゃん?」
香奈「え!?いや、なんでもない!」
ぼんやり、いや無力感が香奈を襲っていた。
香奈「(こんなに龍斗君達が頑張ってるのに、私は見てるだけなんて・・・)」
龍斗の戦闘スタイルは基本的に、自身が今まで鍛えてきた足を使って敵との間合いに入り込み、急所を狙って斬り付けるといったもの。これまでの経験を活かし、どこに急所があるのかを予測して行動していた。だが、
龍斗「なっ!しまった!」
彼が取り漏らした骸骨兵が香奈に向かって槍を突き出す。
マシュ「香奈先輩!」
香奈「・・・っ!」
瞬間、香奈の周りから冷気が発生し、骸骨兵達が後ろに下がっていく。
カルマ「これは・・・?」
穂乃花「寒い!・・・これもしかして。」
マシュ「冷気・・・」
香奈「これ・・・もしかして!」
全員が香奈を見る。そして香奈の腕や足には回路のような物が浮かび上がっていた。
龍斗「魔術回路が起動したのか・・・」
ロマニ「うっそ!このタイミングで魔術師としての才能を開花させたのか!」
香奈「これなら!」
骸骨兵達が香奈に襲いかかる。
香奈「はぁっ!」
一方向に冷気を放ち、兵達を怯ませる。そこを龍斗が兵達を斬り伏せる。
ダヴィンチ「ほーう?即席にしてはいいチームワークだ。それにしても香奈の力って。」
ロマニ「あぁ。氷属性の力。だけど・・・」
龍斗「・・・なんか、感じが違う。」
穂乃花「違う・・・?」
カルマ「氷属性の魔術は一般的に凍結系統のはずなんだけど、その割には・・・」
香奈「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
体がふらつき、地面に膝をつく香奈。そこを骸骨兵が襲いかかった。
龍斗「・・・!」
香奈「龍斗君・・・」
龍斗「とりあえず下がっとけ。後は俺がやる。」
マシュ「先輩!危ないです!」
龍斗「
龍斗が突きの構えを取り聖剣を突くと、そこからはとてつもない風が起き、骸骨兵達を吹き飛ばしてく。気がつくともう骸骨兵達は消え去っていた。
マシュ「今のは・・・?」
龍斗「
穂乃花「あれ見て・・・」
香奈「森が一部消えてる・・・」
龍斗が技を発動させた周囲の森が、骸骨兵と共に消えており、二人は愕然としていた。
龍斗「まぁ見ての通り、今の俺じゃロクにコントロールができない。結構抑えたはずなんだが。」
兵士「アンタ達、あいつら相手によくやるなぁ。」
マシュ「慣れです。それより申し訳ありませんが、一から事情をお聞かせください。ジャンヌ・ダルクが蘇ったというのは本当ですか?」
兵士「あぁ。俺はオルレアン包囲戦と式典に参加したかれよく覚えている。髪や肌の色が異なるが、あれは紛れもなくかつての聖女様だ。イングランドに捕らえられ、火刑に処されたと聞いて俺たちは憤りに震えたものさ。だが・・・彼女は蘇った。しかも、悪魔と取引して!」
カルマ「悪魔ねぇ・・・今の骸骨兵みたいなものか。」
香奈「違うと思う。」
穂乃花「香奈ちゃん?」
香奈「ちょっと戦って思ったけど、あの敵くらいなら、兵士の皆さんでもなんとかなるんじゃないかな。初めてやった私でも互角くらいだったし。」
兵士「そこのお嬢さんの言う通りだ。」
消えた森の方から咆哮が聞こえると、兵士達は顔を青ざめた。
兵士「くそ!やっぱりだ!来たぞ!迎え討て!ほらほら立て立て!ドラゴンが来たぞ!抵抗しなきゃ食われちまうぞ!」
龍斗「ドラゴン?」
ロマニ「君達の周囲に大型の生体反応!しかも速い・・・!」
マシュ「目視しました!あれは、まさか!」
カルマ「竜の亜種体・・・ワイバーンだ!」
竜の姿をした怪物ワイバーン。本来ならこの時代には存在はしないが、聖杯の影響により、この時代に出現している。
穂乃花「あんなのがこの時代にいたの!?」
龍斗「いや、この時代にワイバーンは存在していない。おそらくは・・・」
ロマニ「考えるのはあとだ!来るぞ!」
龍斗「カルマ、俺たちでやるぞ。さっきの骨共とはわけがちがう。」
カルマ「オーケー!」
再び龍斗達は武器を構える。すると
???「兵達よ、水を被りなさい!彼らの炎を一瞬ですが防げます!」
兵士「え・・・!?」
突然、少女の声が戦場に響いた。
???「そこの御方!どうか、武器を取って戦ってください!私と共に!続いてください!」
マシュ「彼女は・・・」
龍斗「サーヴァント?・・・の割には魔力量がそこまでだな。」
???「説明は後程!行きましょう!」
兵士達は少女の言う通りに水を被りワイバーンに立ち向かう。
龍斗はというと、一瞬でワイバーンとの間合いに入りこみ、胴体に一撃加えてワイバーンを倒していた。カルマは槍に炎を纏わせ一気にワイバーンの群れを薙ぎ払った。
龍斗「よし、これで一通り終わったか。」
ロマニ「ようし、よくやったぞ諸君!いやぁ、手に汗とゴマ饅頭を握って見入っちゃったな!」
マシュ「ドクター。それはわたしが用意したゴマ饅頭ですね。」
ロマニ「え?あれ?そうなの?管制室にお茶と一緒にあったから、てっきり・・・」
マシュ「このオーダーから帰還できた時を想定し、ささやかな労いとして用意していたのです。もちろんドクター用ではなく、現地で活躍したであろう先輩達ように。」
ロマニ「マシュ・・・なんて気の利く子に育って・・・もしゃもしゃ。うん。それにしても美味しいね、この饅頭。これなら龍斗君達も大喜びだろう!」
マシュ「・・・マスター。カルデアに帰る時、一回分の戦闘リソースを残しておいてください。もう一人、峰打ちを見舞わせたいエネミーを登録しましたので。」
香奈「マシュちゃんシャレになってないからやめよ?ね?」
カルデアトークの最中に、兵士達がまた怯え始める。
兵士「そんな、貴女は・・・いや、お前は!逃げろ!魔女が出たぞ!」
穂乃花「魔女?え!?ウソ、この人が!?」
龍斗「ジャンヌ・ダルク。」
この鎧を纏い、旗を掲げる少女こそが、ジャンヌ・ダルクだった。
はい。というわけで、いよいよ香奈が魔術を使い始めます。ですが予告しておくと、氷を主体に戦いません。フェニックスが色々と使い方を教えて行きます。投稿ペースは相変わらず不定期ですが、今後とも宜しくお願いします。それでは、また!