Fate Grand Order ~歴史を紡ぐ者~ 作:牧弥潤巳
穂乃花「うぅ・・・龍君。ちゃんと着いたら連絡してね・・・」
龍斗「いや、お前そんなに泣くことか。」
穂乃花「だってぇ・・・」
香菜「まぁまぁ穂乃花。終われば会えるんだから、ね?」
この自分が行くわけでもないのに大泣きする少女は松原穂乃花。そして、それを宥めているのは日暮香奈である。一応俺と同い年の15だ。
彼女達は俺の・・・なんだろう。友達、と言うべきなのか。俺が地元を出て、親戚の家に引き取られた時からの知り合いである。
・・・当然彼女達は俺の正体に気づいてない。
だが・・・それで良いのだと思う。【あれ】は人に伝えるようなものじゃない。
龍斗「じゃあ、行ってくる。」
穂乃花「うん・・・行ってらっしゃい・・・」
香菜「あぁもう。穂乃花泣かないの。」
穂乃花「うぅ・・・」
龍斗「まだ泣いてやがる。」
そんな泣かれると躊躇いが出るだろうが。
人理継続保障機関カルデア
そこは名の通り、人類の未来を保障するための機関である。
龍斗「・・・」
俺はそこに立っていた。
・・・俺が記憶にあったのはそこまでだった。
フォウフォーウ!
あ?動物?こんな鳴き声の動物なんて・・・
重い瞼を開ける。するとそこにいたのは
???「あの、朝でも夜でもないので、そろそろ起きて下さい先輩。」
・・・なぜか俺を先輩呼びする、少女だった。
龍斗「・・・誰?」
???「そうですね。・・・名乗る程の者ではない。」
龍斗「は?」
???「いえ、名前はあるんです。あるんです、ちゃんと。でも、あまり口にする機会がなかったので・・・印象的な自己紹介ができないというか・・・」
・・・こいつ、どこかあいつと似てる。が下手なくせしてこうやって人と話そうとする。
???「こほん。」
???「どうあれ、質問よろしいでしょうか。先輩。」
・・・結局俺はお前の先輩設定なのか。
???「お休みのようでしたが、通路で眠る理由がちょっと。硬い床でないと眠れない性質なのですか?」
龍斗「そういうわけじゃ、ここで寝てたのか俺。」
フォウフォーウ
???「失念していました。あなたの紹介がまだでしたね、フォウさん。」
???「こちらのリスっぽい方はフォウ。カルデアを自由に散歩する特権生物です。私はフォウさんにここまで誘導され、お休み中の先輩を発見したんです。」
フォウ、ンキュ、フォーウ!
???「またどこかに行ってしまいました。あのように、特に法則性もなく散歩しています。」
龍斗「ホントになんだ。あの生き物。」
???「私以外にはあまり近寄らないのですが、先輩は気に入られたようです。おめでとうございます。カルデアで二人目の、フォウのお世話係の誕生です。」
龍斗「んな大袈裟な。」
???「あぁ、そこにいたのかマシュ。ダメだぞ。断りもなしに移動するのはよくないと・・・」
・・・!なんだ。こいつからどこか【俺と同じもの】を感じる。
???「おっと、先客がいたんだな。君は・・・そうか。今日から配属された新人さんだね。」
レフ「私はレフ・ライノール。ここで働かせてもらっている技師の一人だ。」
・・・レフ・ライノール。こいつには警戒しておくか。
多少の警戒心を漂わせながら、俺はレフと会話をしていた。
レフ「君の名前は?」
龍斗「剱崎龍斗だ。」
レフ「ふむ。剱崎龍斗君と。招集された48人の適性者、その最後の一人というわけか。ようこそカルデアへ。歓迎するよ。」
レフ「一般公募のようだけど、訓練期間はどれくらいだい?一年?半年?それとも最短の三ヶ月?」
龍斗「・・・訓練はしていない。」
レフ「ほう?ということは全くの素人なのかい?あぁ、そう言えば、数合わせに採用した一般枠があるんだっけ。君はそのひとりだったのか。申し訳ない。配慮に欠けた質問だった。」
レフ「けど一般枠だからって悲観しないでほしい。今回のミッションは君たち全員が必要なんだ。」
レフ「魔術の名門から38人、才能ある一般人から10人・・・なんとか48人のマスター候補を集められた。」
・・・やはり、マスター関連か。
レフ「これは喜ばしいことだ。この2015年において、霊子ダイブが可能な適性者すべてをカルデアに集められたのだから。わからないことがあったら私やマシュに声をかけてくれ。」
龍斗「つか、こいつマシュって言うのか。」
レフ「あぁ。そう言えば、彼と何を話していたんだいマシュ?らしくないじゃないか。以前から面識があったとか?」
マシュ「いえ、先輩とは初対面です。この区画で熟睡していらしてたので、つい。」
レフ「熟睡していた?彼が、ここで?なるほど入館時のシミュレートか。霊子ダイブは慣れてないと脳にくる。」
レフ「シミュレート後、表層意識が覚醒しないままゲートから開放され、ここまで歩いて来たんだろう。一種の夢遊状態だ。彼が倒れたところで、ちょうどマシュが声をかけたのさ。見たところ異常はないが、万が一ということもある。医務室まで送ってあげたいところなんだが。」
レフ「すまないね。もう少し我慢してくれ。じき所長の説明会が始まる。君も急いで出席しないと。」
龍斗「・・・説明会?」
マシュ「はい。龍斗さんと同じく、本日付で配属されたマスター適性者の方達へのご挨拶です。」
レフ「ようは組織のボスから、浮わついた新人たちへのはじめのしつけってやつさ。所長は佐々井なミスも許容できないタイプだからね。ここで遅刻したら一年は睨まれるぞ。」
レフ「五分後に中央管制室で説明会がはじまる。この通路をまっすぐ行けばいい。いそぎなさい。」
マシュ「レフ教授。私も説明会への参加が許されるでしょうか?」
レフ「うん?まぁ、隅っこで立っているくらいなら大目に見てもらえるだろうけど、なんでだい?」
マシュ「先輩を管制室まで案内するべきだと思ったのです。途中でまた熟睡される可能性があります。」
レフ「君をひとりにすると所長に叱られるからなぁ。結果的に私も同席する、という事か。まあ、マシュがそうしたいなら好きにしなさい。剱崎君もそれでいいかい?」
龍斗「まぁ、それでもいい。」
レフ「他に質問がなければ管制室へ向かうけど、今のうちに訊いておく事はある?」
龍斗「どうでもいいことだが、何故こいつは俺を先輩とよぶ。」
マシュ「・・・!」
レフ「ああ、気にしないで。彼女にとって、君くらいの年頃の人間はみんな先輩なんだ。でもはっきりと口にするのは珍しいな。いや、もしかして初めてかな。」
レフ「私も気になってきたな。ねぇマシュ。なんだって彼が先輩なんだい?」
マシュ「理由ですか?龍斗さんは今まで出会ってきた人の中で一番人間らしいです。」
レフ「ふむ。それはつまり?」
マシュ「まったく脅威を感じません。ですので、敵対する理由が皆無です。」
逆に敵意剥き出しにしたら立場が危ういだろうが。
レフ「なるほど。それは重要だ!カルデアにいる人間は一癖も二癖もあるからね!私もマシュの意見には賛成だな。剱崎君とはいい関係が築けそうだ。」
マシュ「レフ教授が気に入るということは、所長がいちばん嫌うタイプ。・・・あの、このままトイレにこもって説明会をボイコットするというのはどうでしょうか。」
さっき案内するとか言ってたやつの言葉じゃない。
レフ「それじゃあますます所長に目をつけられる。ここは運に任せて出たとこ勝負だ。虎口に飛び込むとしようか剱崎君。なに、慣れてしまえば愛嬌のある人だよ。」
マシュ「ここが中央管制室です。先輩の番号は・・・一桁台、最前列ですね。」
マシュ「先輩?大丈夫です・・・」
そこから先の記憶がない。というよりはいつの間にか管制室から出ていたというほうが正しかった。
第二話終了です。剱崎君がレフに疑問を持ちました。まぁ、いずれ分かる伏線です。それではまた!