十人十色   作:monタカ

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津島美紀(つしま みき) この話の主人公。『共感覚』を持つ少女。

桂馬音也(かつらば おとや) 美紀の通う高校に転校してきた転校生。『共感覚』を持つ少年。

坂本千尋(さかもと ちひろ) 美紀の高校での最初の友達。活発な女の子。

愛染 悟 (あいぜん さとる) 美紀たちの担任。普段はだるそうだが熱意を持った良い先生。

誤字脱字その他諸々あると思いますが善処していきますので、よろしくお願いします。



出会い

 高校生活にも大方なれ始め、友人も何人かできた。新しい環境ということで不安は多少なりあった。私は他の人とは違う『共感覚』というものを持っているらしい。それは、文字や言葉、あらゆるものにそれぞれの色を感じるというものだ。小さいころは珍しがられてみんなの人気者だったが、中学に上がってからは、周りと違うということで仲間外れにされることも少なくなかった。そのため、私は極力、このことについて人には言わないようにしていた。周りの友達もそのことを知っている人はほとんどいなくなっていた。

 新しい環境といえど学校という場所はあまり大きな変化はないらしい。初めは、目に映るものが真新しく見えたが、今ではいつもの光景として目に映る。だが、この日は違った。部屋に入った時、いつもとは違う色を感じた。確かにいつもクラス内は明るい色で溢れていたが、ここまで慌ただしさを感じるものではなかった。「どうしたの?何かあった?」私の質問にいち早く反応してくれたのは、高校に入って初めてできた友達の千尋だった。「あ、美紀!おはよう!なんかね転校生が来るらしいよ!高校生で転校って珍しいよね!」確かに、親の事情だったとしても高校生になってからの転校とは珍しいことだ。なるほど、それで教室の雰囲気がいつもと違ったわけか。「へぇ。どんな子なんだろう?」質問を投げかけたものの、特に興味はなかったが、話の流れ的に、ここはこの質問で間違いないだろう。「なんかね、男の子らしいよ!それでさっきから女子が騒いでるの!」「へぇ、そうなんだ」男子か。男子は苦手だ。少しのことで大騒ぎ。しかも群れてはしゃいで大迷惑。出来れば関わりたくない。そのようなことを考えているとホームルーム始業のチャイムが鳴った。クラス内は一瞬静寂に包まれたが、しばらくしないうちにまた話し声が聞こえ始める。「お前ら、チャイムなってるぞー」いつもの気だるそうな声が聞こえてきた。私たちの担任の愛染先生だ。愛染先生はホームルームの時や授業の時は、まだしも全校集会の時でさえ、気だるそうに話をする。かといって仕事をめんどくさがっているという訳ではないらしい。不思議な先生だ。「今日は転校生の紹介をする。さ、自己紹介」「桂馬音也です。よろしくお願いします」無難な挨拶を済ました噂の転校生。みんなのざわざわとした感じが伝わってくる。そして、私もさっきまで興味なんて一つもなかったのに、感情が動くのを感じた。なんだろう、今まで感じた色の中で一番心地良い色だ。暖色や寒色といった言葉では表せられないそれは、私に何かを予感させるのには十分だった。

 

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 やっと学校に慣れてきたと思ったらこれだ。全く親父は何を考えていやがるんだ。てめえ一人で単身赴任でもなんでもすれば良いものを、家族全員で引っ越すことになるとは。まさかこんな短いスパンで受験を受けることになるとは思わなかった。俺はどうやら周りの人にはない『共感覚』というものを持っているらしい。文字や言葉にも色を感じるが、より強く感じるのは音だ。音の色を感じるだけでその色がどんな音なのか分かる。俗にいう、『絶対音感』というやつだ。そういえば一度だけ、聞こえたわけではないけれど音を感じたことがある。自分がまだ小さかったころだ。あまり覚えているわけではないが、なぜか心地よい音だったことだけを覚えている。「おい、そろそろ教室に向かおう。チャイムもそろそろなるしな」不意に声をかけられた。今日から俺の担任になる愛染先生だ。この人から感じる色の基本色となるのは青のようだ。でも冷たいイメージを持つような青じゃない。言葉では表せられないが、根は優しい良い先生なんだろう。そんな思考を妨げるかのようにチャイムの音が響く。いよいよ俺の苦手とする自己紹介の時間がやってくる。考えただけで億劫になる。「さ、行くぞ」先生が扉を開け、教室へと入っていく。その後ろをまるで金魚の糞がごとく連なって教室へと入っていく。自己紹介なんて無難でいい。どうせ質問攻めにあうんだ。名前以外の情報を敢えて言う必要はないだろう。「さ、自己紹介」ついに来た。少し深呼吸をし、自己紹介を始める。「桂馬音也です。よろしくお願いします」周りのざわざわとした感じが伝わってくる。そうだよな、高校生になって転校してくるなんて珍しいよな。思わず下を向いてしまった。早くこの場から去りたい。その時、頭の奥に微かに残っていた音の記憶と同じ音が聞こえた気がした。ふと顔を上げると一人の少女と目が合った。今までで会ってきた人の中で一番暖かい色を感じる。なんだろう不思議な感覚だ。その時、またあの音を感じた気がした。

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