「こら、親潮。何を呑気に寝ているのですか?起きなさい」
親潮と呼ばれた艦娘は、赤髪の青年に首を絞められ、砂浜で気を失っていた。
訓練からの帰りが遅い親潮を心配し、彼女をとある少女が小橋海岸に探しにやってきた。
彼女を発見したのは良いのであるが、なぜか砂浜で寝ていたのである。
「う~ん、あと五時間。。。むにゃむにゃ」
「…」
親潮の寝言に対し、少女の眉間に皺が入った。
その少女は、ピンク色の髪にスカイブルーの瞳、
ほぼ無表情なので、クールな印象が強い。
服装は親潮とあまり変わらないブレザー型。
その模範的な服装で唯一特徴なのは、
胸の紐リボンが赤いという事ぐらいだろう。
「親潮…」
少女は、何を思ったのか、親潮の頬を力を入れて平手で叩く。
「ひでぶッ?!」
クラッカーを鳴らしたような盛大な音が辺り一帯に響くと、
同時に親潮から情けない声が漏れた。
その後、自身に起こった衝撃に吃驚したせいか、親潮が慌てて体勢を起こす。
「何? 敵襲かしら?!」
「何を寝ぼけているのです。早く起きなさい」
更に少女は裏拳で親潮の反対側の頬を殴った。
「ぶべら!」
首から顔が捥げそうな程の衝動が親潮を襲い、彼女を覚醒へと導く。
「起きましたか?」
渾身の力で親潮の頬を殴った少女は全くの無表情であった。
「え?あれ?不知火姉さん?」
ようやく親潮は目が覚めたようだ。自身の姉が目の前に居るのを改めて認識する。
「し、不知火姉さん。なぜここに?」
「貴女が訓練より帰ってくるのが遅かったので、心配したのです」
「そ!そうでしたか!すみません」
親潮は自分の姉に謝罪した。
不知火と言われた少女は、困惑した様子で腕を組みながら、親潮に尋ねる。
「で、貴女はなぜここで呑気に寝ていたのですか?」
そう不知火から問われると、親潮は困った表情で答えた。
「ええと…訓練の最中に民間人が倒れていたので、救助しようと思ったのですが…」
「それで?」
不知火は、無表情で親潮を追及する。
「あ、はい。その後その民間人はいきなり起き上がって、首を絞められ気絶してしまいました」
親潮は、その民間人があまりにも端正な顔であったので、
見とれていたという、不要な報告は。しないずる賢さはあった。
しかし、不知火の眉間には更に皺が増えた。
「そうですか」
不知火は、親潮の顎付近に威力の有る掌底打を放つ。
「あべし!」
あまりにの衝撃に親潮の顔全体が激しく揺ぐ。
「愚か者。軍人が民間人に気絶させられてどうするのです」
不知火は鬼軍曹であった。
(しかし、未熟者とはいえ、親潮を気絶させるとは…一体その民間人とやらは何者ですか?)
不知火が考えに耽っている間、親潮の意識は
不知火の強烈な一撃によって雲の彼方に駆け上がり、
再び砂浜に体を預ける形となった。
その後、不知火は気絶した親潮を見ると、深い溜息をついた。
(また、やってしまいました…)