石造りの街の中を、馬車が音を立てながら進んでいってる。バシャバシャって。つまんないか? ごめんなさい。
「うーーーーーん・・・・・・ファンタジー異世界の空気は美味しいなーっ! ホントにもーっ!!」
レンガの家々が立ち並んでる街の大通りのど真ん中で、ファンタジー愛を叫んだボクに『ビクっ!』って、なりながらも何人かの町人さんが目をボクからそらして、そそくさと逃げ出してく。
う~ん、これだけ不審者臭100パーセントのボクを見ても目を逸らすだけで通報しないなんて、いい人たちが住んでる街だな~♪ 是非ともお近づきになりた~い!
ーーあ!そうだ! その手があったんだった!!
「おーい、そこのオバちゃーん! ちょっと聞いてみてもいいですかー? ボク、盗賊になれる場所を探してるんですけどご存じないでしょーか?
相手の体に触れることなくパンツを盗めるようになりたいんです☆」
「・・・あんたさぁ・・・見た感じからして冒険者志望だって分かるからいいけども、台詞だけ聞いたらギルドの場所を教えていいのか、牢獄の場所へ案内した方がいいのか判断するのに迷いかけちまうじゃないか。女の子なんだから、もう少し言動に気を使うってこともだねぇー・・・」
おばちゃんが心配顔でボクの心配をしてくれている! いい人♪
でも、今回は平気。大丈夫。問題ナッシンGOO~♪
「大丈夫だよ、おばちゃん! ボクは牢屋もギルドも大好物だからね!R-18的に!」
「・・・ああ、そう・・・・・・」
オッパイオッパイ、ぶるんぶるん♪ おっきな胸を揺らしまくれるようにジャンプして、元気いっぱい!ダイジョブダイジョブであることを全身使ってアピール! これぞ肉体言語です!
参考にしたのはオーバーロードのゴブリンリーダーさん! ふん!ふん!(デッカいおっぱい強調ポーズを練習してます)
「ま、いいか。気を取り直して仕事仕事、と。ーー駆け出し冒険者の街、アクセルへようこそ。ここの通りを真っ直ぐ行って右に曲がればギルドの看板が見えてくるわ」
「おばちゃん、案内役がお仕事だったの?」
「内緒だよ? 街から小銭もらって副業として、ね。変な場所行かれるとギルドはともかく街の行政が迷惑かけさせられるからね」
どこの世界でも役所の人は大変そうです。
ーー冒険者ギルドーー
最近ではゲーム以外にも色々な作品世界に引っ張りだこになってる人気者組織。作品によって扱い方は様々で、癒着していることもあれば、対モンスター用の傭兵ギルドになっている場合もある。時には主人公が登録している割に物語には一切絡んでこない事例まであるなど、書き手が抱く冒険者感が一番よく現されてる組織と言えるのかもしれない。
では、この異世界のおける冒険者ギルドはどういう立ち位置にあるかと言えばーー実に“ふつう”の冒険者の集うギルドである。
依頼したり受けたり紹介したりといった、超正統派を地で行く冒険者ギルドらしい冒険者ギルド。それがこの素晴らしい世界における冒険者たちが登録しなければならない組織の有り様。
王道の中の王道をいく「このすば」世界の冒険者ギルドに今、我らがクリスが立ち入らんとしている・・・・・・!!!
「ほえー。これがゲームのグラフィックじゃなくて、本物の冒険者ギルドなのかー。なんて言うか、なんて言うべきなのか・・・・・・ぶっちゃけビミョー」
・・・この銀髪巨乳、意外と容赦ない・・・。
が、しかし。いってること自体は正しい。当然だ。
なにしろアクセルの街にある冒険者ギルドは異世界に生きる駆け出し冒険者にとっての、文字通りハロワ的な存在で建物内に酒場をかねた大食堂があるからこそ比較的デカいだけで、何かしらの特別性を有している部分など欠片も存在しない至極まっとうな支部であるからだ。
後にどこかの大悪魔が一部スペースを間借りして怪しげな商売を始めたりするようにはなるが、それとて本人(本悪魔?)の趣味趣向性格が善良すぎるあまり怪しいだけで仕事内容は至ってマトモ。
良くも悪くも普通にまじめなアクセルの街の良心的な存在、アクセルの街支部・冒険者ギルドを今後ともよろしく!
「ま、いいや。とりあえず入ってみよーっと。
お邪魔しま~す♪ たーのもーっ!!!!」
わざわざ同じ意味を持つ別の言葉を二つ繋げた意味なんてないよ? いちいち物事に意味なんて求めちゃダメなのさ!
ドラゴンボールで何度も何度も地球を壊すバトルをする理由が『誰よりも強くなりたいからって変じゃね?』とか言い出したら面白くなくなっちゃうでしょ!? それと同じ理屈で物事には意味なんてなくていいんだよ!
ただ「やりたくなったからやってみた」それだけで十分すぎるのがファンタジー世界での生き方ってものなんだよ!たぶん。
「あ、いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いているお席へどうぞ!」
「キミを食べたいから空いている部屋へ連れてってもいーい?」
「・・・ふぇっ!?」
短髪赤髪のウェイトレスのお姉さんが愛想よく出迎えてくれたから、とりあえずナンパしてみたよ。
たとえ女の子に生まれ変わろうとも、元男の子として可愛い女の子を見つけたら振れられる振られないは度外視して一度はナンパする義務があるのです。
見た目は巨乳! 中身は変態! その名はーーーーっ!! ・・・って、女の子としての名前まだ考えてなかったよ。どうしよっかな~?
「あう、あう、あう・・・」
「あー、ごめんごめん。落ち着いて? 別にボク、キミのこと取って食べたりしないから。食べるとしたら雰囲気ある場所でイチャコラしてからだから。
今はともかく冒険者登録する場所教えてもらっていいかなー? ホテル借りるにもエッチな下着を買うのにも元手がなくて困ってるんだよね。だからさ、お願い☆チュッ♪」
「♪♪♪♪♪♪♪」
おおぅ、まさかホントにキッスで魅了できちゃうとは・・・・・・クロノ・トリガーのラミアが使ってた『♡♡♡』攻撃をマネしてみただけなんだけどなー。もしくはマヨネーの「トキメキ熱視線」。あるいはエイラちゃんの「色仕掛け」。
人類を滅ぼそうとしている魔族にも通用しちゃうお色気ポーズは最強だよね! エッチなのはいい事だと思います!
ーーそれはともかく、オススメされた受付さんのいるカウンターへ~。
「はい、今日はどうされましたか?」
受付の女の人は巨乳で、ウェーブのかかった髪をした大人の雰囲気を醸し出してる女の人で、おっとりしてた。あと巨乳だった。大事なことなので二度言います。巨乳な人でした。・・・あ、いま三度言っちゃってたなボク。
「えっと、オッパイ揉ませてもらってもいいですか?」
「あははー、ダメですねー」
「ダメですかー?」
「ダメです」
うん、残念。バスケットボールみたいにドリブルできたら気持ちよさそうだったのに。
仕方がないから当初の予定通り、冒険者登録させてもらっちゃおっと。
「じゃあ、冒険者登録をお願いします。田舎から来たばかりで何も分からない不束者ですけど、今後とも末永くよろしくお願いいたします」
「はい、お願いされました。あなたも末永くお付き合いしていけるよう頑張っていってくださいね?」
うーん・・・この華麗なスルー性能は、さすがです巨乳様。略してさすパイ。この巨乳は一味違う。普乳とは違うのだよ!普乳とは!(ちっぱいな貧乳も好きだから、バカにしたくないボクです)
「では、冒険者登録ですね。登録手数料が掛かりますが大丈夫ですか?」
「?? お金取られるの?」
「はい、そういう規則ですから」
あー、そっか。忘れてた。最近の異世界転生物では冒険者登録にお金が掛かるのがデフォルト化してたんだった。
ーーと言うか、今思い出してみるとあんまりないよね、登録費無料の冒険者ギルドが出てくる作品って。
たいていの場合はお金が掛かって、旅でたばかりで足りなくて困ってるところに「なんなら俺/私が支払ってあげようか? 代わりと言っては何だけど・・・」ってな感じでヒロインとかに出会っているのが多い気がする。
無料で登録できた冒険者ギルドって言うと・・・・・・『ルイーダの酒場』? ギルドじゃな~い。
「お値段、いくらか聞いてみてもいいですか?」
「いいですよ、もちろん。お一人様での登録ですので千エリスとなります」
千エリス・・・・・・『エリス』って何? お金の単位か何かなのかな? ドルとかポンドとかジンバブエ・ドルとかみたいに。
「千エリスって、何かに分かり易くたとえた場合、どれくらいの値段なんですか?」
「・・・知らないんですか? 世界共通の貨幣単位なんですけど・・・」
当たり前のことを知らないボクは、当然のように怪しまれます。
そして知らないボクは知ったかぶりません! 堂々と知らないことを自慢します!
「知りませんとも! モチのロンです!!」
「そ、そうですか・・・・・・」
若干というか、大いに引きまくってる受付の巨乳なお姉さん。巨乳美人さんに不審者を怪しむ眼で見つめられるのって気持ちイ~♪
周りから「変な人扱い」されるのなんて前世の時点で慣れっ子になってるボク。年期が違うのだよ年期が! 二十四時間バカやれますか!?の精神で生きてるボクの変態性能をなめるな!
「えーと、ですね・・・千エリスの単位を身近にある物でたとえた場合・・・・・・」
慣れない相手だろうと誠心誠意まじめに対応してくれる受付の鏡のようなお姉さん。
そんなお姉さんの話を聞きながら一瞬たりとも揺れる巨乳から目を離さない、人の風上にも置けない巨乳美少女になったボク。プライスです。
なるほど。1エリスはだいたい1円ぐらいなのか。だとするなら千エリス千円・・・・・・うん、いける。この額なら“アレ”を売れば賄える。
「わかりました、これからお金を工面してきます。その為にも道具屋の場所ってどこにあるか、お姉さん分かってたりしますのん?」
「はい、大丈夫ですよ。教えられますし、地図も書けます」
おお、イッツ万能ウケツケさ~ん。HAHAHAHAッ!!
「何かをお売りになるか、抵当に入れて借りてくるかされるつもりなんですか? だとしたら腰に差してるダガー以外の物をお売りになった方がいいでしょうね。
見たところ他に武器を持っていないようですし、うちの支部では討伐以外の依頼が0になる時期とかぶる恐れが出てきますから」
おお、ナイスアドバイス。さすがは巨乳。さすパイ。
・・・でも違うんだな~。売るつもりではあるけど、ダガーじゃないんだよね~。
ーーて言うか、今のボクってダガーなんて差してたんだ。今はじめて教えられて気づいたよ。半ズボンでお尻がキュッ♪ ・・・としている身体になったのを実感したら、後はどうでもよくなって流しちゃって来たからなぁー。
「ノンノン、違いまーす。売るのはダガーじゃありませーん。もっと別の役に立たない代物でーす」
「ダガー以外で・・・・・・“役立たない”? あの、すいませんが千エリスといえども一応はお金ですし、あんまり役立たない物と交換してくれるほどには安くないと思うんですけども・・・」
心配顔の受付さん。や~さしいー☆
「大丈夫だよ! 人によっては高い価値がある物だから! きっと大丈夫! なんとかなるよ! 絶対大丈夫だよ!」
「そ、そうですか? それならまぁ、別にいいんですけども・・・・・・念のためにお聞きしますけど、何を売るのか教えてもらっても・・・?」
少しだけ不審そうに受付さんが確認してくる。
きっと違法な品物とか、麻薬とかを売るんじゃないかって疑ってるんだねまったく! 失礼しちゃうよ!
ボクにはそんなイカガワシい物を売るつもりなんか、一分たりとも存在していない!
ボクが売りに行くのは、そう! 人によっては人類のお宝レベルの“アレ”です!
「道具屋さんにボクが穿いてるパンツを売りに行ってきます! その場で脱いで、その場で売った生パンなら千エリスぐらいにはなるでしょ多分!?」
「ダメーーーーーーーッッ!!!!!
絶対に、絶対に、そんなの売っちゃダメーーーーーーっ!!!!」
受付さん絶叫。ガチで怒ってます。
でもボクだって負けてはいられない。
元男の股間・・・じゃなかった、沽券にかけて負けてはいけない戦いがここにはある!
「どうしてなの!? 別にいいじゃん自分が穿いてるパンツぐらい売ったって!
お金ないときに道具屋さんから商談持ちかけられて、専用の覗き部屋で脱いだパンツを売ってお金に換えるのはロマンでしょー!?」
「どこの世界のロマンなんですかそれは!? とにかくダメです! 絶対にダメです! 女の子がそんなハシタナい事してお金稼いじゃいけません! お姉さんは許しませんからね!?」
ギャースカ。ギャースカ。巨乳美人なお姉さんと、元男で今巨乳美少女なボクとでおこなう細やかすぎるキャットファイト。
最終的に受付嬢のルナさんが立て替えておいてくれる事に落ち着いたボクは、晴れて冒険者になることができました。選んだ職業はもちろん「盗賊」。半ズボンで銀髪ショートカットの巨乳な女の子・・・・・・いいね! グッジョブ! ベリーグッドジョブ!!
「それでは、こちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入をお願いしまーー」
「全部わかりません!」
「・・・・・・・・・」
「あ、一つだけ分かるのがありました。身体的特徴は巨乳の銀髪美少女です」
「わかりました・・・もう、わかりましたから私が後で適当にやっておきます。ですからせめて名前だけでも記入して、とっとと帰ってください。さすがに今日はもう疲れてヘトヘトになってますので・・・・・・」
急に老け込んで、仕事に疲れたOL状態になっちゃった巨乳さん。美人巨乳OL物も結構好みで楽しいよね♪
「んと、じゃあ・・・名前はこれで。それじゃあ後はよろしく! バッハハ~イ♪ バイバイキーン♪」
「・・・・・・はぁ。嵐のような人でしたわね・・・。それでえっと名前は・・・・・・よし、登録作業終了。今日は残業しなくても帰れるよう支部長に相談に行かないと・・・はぁ~、どっこいしょっと」
アクセルの街支部、冒険者ギルド新規冒険者加入申請書。
登録者の職業および氏名――――『盗賊』の『クリス』。
つづく
その後しばらくしての余談
「はー、毎日毎日アクア先輩のフォローばっかりで疲れるからなぁー。たまには息抜きぐらいしても罰は当たりませんよね☆ だって私は女神様ですから。うふふふ♪
ーーでは適当に街を選んで降り立ってみて・・・・・・って、ええええぇぇぇぇぇぇっ!?
私が! 私が二人いる!?」