弾に何度も吹き飛ばされ、服もボロボロになった頃、俺は完全に飽きられていた。
弾幕ごっこを教えてくれるはずだったチルノやルーミアはどこかへ飛んで行ってしまい、現在ご丁寧に教えてくれているのは大妖精とリグル、ミスティアのみである。
「弾幕を撃つときは自分の中にある"力"に集中して形や動きをイメージしてから体の外に出す感覚です」
大妖精に言われた通り、自分の中に神経を尖らせてみる。説明を聞いた時こそ、何千年という修行が必要な気がしたが、そんな心配は無用だった。なんとなく目を瞑って集中してみれば、自分の中にあるどんよりとした"力"らしきものを感じ取ることができる。これに意識を向けつつ、今まで見てきた弾を思い浮かべ、木に撃ち放つイメージを思い描く。こうして出来上がった想像の風船を外に思いっきり押し出す。
バキッと木のへし折れる音を聞き、ゆっくり目を開く。
「零さん!成功です!」
大妖精の歓声で改めて成功を認識するが、体が弾を撃つ前より重くなった。
力を消費したせいだろうか?あまり連発は出来そうにないな...。
「あっ!零、弾幕撃てたんだ!」
空から聞こえてくる不吉な声。一着しかない服をボロボロにした元凶、チルノだ。その横に黒い球体が浮いている。ルーミアだろう。
服をボロボロにしたのはミスティアも共犯ではあるが、彼女の場合、弾の避け方のポイントを教えてくれたのでまだ許せる。しかし、チルノは吹き飛ばすだけ吹き飛ばしておいて、『飽きた』と捨て台詞を吐いて飛び去ってしまったのだ。…いや、相手は子供。ここは寛大な心をもって、
「零!あたいと弾幕ごっこしようよ!被弾は三回まで!じゃあ、いくよ!!」
話は勝手に進み、氷柱の弾の群れが一気に襲い掛かってくる。
無論、避けられる筈もなく、俺の顔面に見事命中した。
「やっぱ、あたいったら最強ね!零、おまえ弱いからあたいが子分にして守ってあげる」鼻高々に言うチルノ。
「はい。被弾一回目ー」ノリノリなミスティア。
「チルノちゃん!零さん始めたばっかりなんだから弱くて当たり前でしょう!やめてあげてよ!」大妖精…。その通り。その通りだけども...。
「あわわ…」戸惑うリグル。俺もだよ。
「ワハー」笑うルーミア。良い笑顔ですこと...。
やればいいんだろう...。やれば...。
こうして幕を開けたチルノとの戦い。
今度は意識し始めたこともあってか、何とかチルノの弾を避けることができる。しかし、それも本当にギリギリで弾を避ける度、ヒュンっと耳元で弾の通り過ぎる音を聞かされる。
「もう!避けてばっかりいないで少しはやり返してきたらどうなのさ!!」
少々苛立ちが見えてきたチルノ。やり返したいのは山々だが、撃ってしまえば体力がもつ自信がない。どうせ負け戦。せめて、一発は確実に当てたい。
何か策はないものかと避けながら思索していると、ある一つの案が思いつく。
…いや、しかしな。少しだけ思い留まるが、視界に入ってきたボロ服で実行に移すことを決断する。
弾を避けたタイミングで屈みこみ、地面を掴む。そして、服の仇敵に向かって思いっきり投げつける。
「うわ。目に入った!何これ?」
「砂じゃ!」疑問に対する答えと共に弾をお返しする。弾は真っすぐチルノがいる方向に飛んで行きそのまま命中した。
「痛ッ!ねぇ!今のズルじゃない!?」
チルノは俺に指をさし、大妖精たちに向かってそう叫ぶ。
「ルール上問題ないよー!」
大妖精にそう叫び返されたチルノは悔しそうに俺を睨む。
してやったり。緑巫女に使った手法を試してみたが、上手くいった。俺自身もズルいとは思ったが、服の代償にしてみれば安いものだろう。
そして、互いに被弾一回ずつの状態から勝負は続行されたが、チルノの弾を上手く避けきれず、そのままチルノの勝利に終わった。
*
「ってことで、零は今日からあたいの子分ね」
一発弾を当てることが出来、満足していたのだが、今の台詞を聞き一気に冷めた。やはり、悔しいものである。一番の敗因は弾を大量に撃ち出せないことだろうか?大妖精やミスティア、リグル、ルーミアも大量に弾を撃ちだすことが出来ていたし、鍛え方で変わるものなのだろうか?
考えにふけりつつ、空を仰ぐと、もうすっかり朱色に染め上がっていた。
もう、こんな時間か。帰らなければ。
大妖精たちに別れを告げ、ボロ屋に向かって歩き出す。
弾幕ごっこについてずっと考えていたが、道中ルーミアのことを思い出す。振り返ってみるが、そこにはただ夜の闇が広がっているだけだった。
リグルの扱いが難しいです(´・ω・`)