漆黒が仕える! ー親衛隊 異界の地で斯く国防せりー 作:YJSN
原作をど忘れしたアニメ見ながら描いてます。
「...んっくううぅぅ...ふぅ...。」
そう高く背伸びをして眠気を覚ます。
寝間着はカッターと下着を着てるだけの軽いもの。
ネクタイはしたままにしてる。めんどくさいし。
そんな寝間着なんて存在がないぼくは鳥の囀りと共に訪れた朝を迎え入れ、
早速普段着の親衛隊将校の制服に着替えていく。
そしてそのまま執務室に繋がる扉を開けて、
執務机君にご挨拶をしながら紅茶を淹れる。
イギリス野郎じゃないけど、この味は暖かみがあっていい。
少し肌寒いこの朝にはピッタリだ。
そしてそんな湯けむりを立てる紅茶を眺めながら今日も仕事だ仕事だとせっせと書類に目を通していく。
その繰り返しだ。
それと親衛隊の配属や配置、日本の工作員の動向も。
昨日、演説による精神的な疲労が少し来ていた。
ナニカに操られる感覚に陥ると、
ぼくはそれに赴くままに忠誠を誓い、
操られる。
気分は悪いがそれから離れることはできなかった。
そんなひと時の苦渋に眉を曲げながら思い老け、ぼくは時間を執務机と共に過ごした。
そうして優雅な時間を過ごしていたが、
急に回廊に繋がる扉からドタドタという荒々しい音と共に執務室の扉が開かれた。
「長官!親衛隊長官殿!!」
そう若娘の声が響き渡る。
入って来た失敬者は2人のようだ。
1人は銀髪のショートヘア。もう1人は金髪のロングヘア。
...第二皇女のピニャ殿下の騎士団の連中か...。
そう思いながら適当にあしらうために口を開く。
「...うるっさいなぁ...まだ昼前だぞ...。」
そう欠伸をしながら書類の片付けを再開する。
「そんな呑気にしている場合ではありません!」
そう銀髪の女が言う。
「なんだなんだー。まーた面倒事ならお断りだゾ〜。」
そうあしらっていると、彼女は鬼のような形相で
「早馬が来たんです!
つい先程、報告によるとピニャ殿下一行がその...門の向こう側の軍勢の調査のために出ていたのですが、
フォルマル伯爵領のイタリカにおいて門の内外における敗北により出た敗残兵が集団で攻勢をかけており、
戦況は劣悪になりかねないとのことなんです!」
そう息切れ切れに話す金髪の女が言う。
前までぼくが調査のために出てたからもういいって言うのに、姫様は好奇心旺盛で困るよ。
そう思いながらぼくは溜め息を大きくついて、
「...で、おおよそここからじゃ馬では3日かかるからぼくらにも行って欲しい、ってことでしょ?」
「そ、その通りです。姫様がいつまで持つかわかりません。
早く支度をしてください!」
荒っぽく言われ、投げやりになったぼくは親衛隊の役割を果たすために仕方なく
「はいはい、わーりましたよーだ。百合百合部隊が...(小声)。」
そう文句を垂れながら支度をする。
「なんですって...?」
銀髪の女の頭にイライラマークが出るが、
それもつかぬまに、彼女達は愛する姫様のために自分達も準備をし始めようと出て行った。
はた迷惑な奴だあの皇女様は。
そう思いながらぼくは親衛隊を6人1分隊の構成で編成し、召集する。
残りの隊員は帝都の防衛任務に就かせ、用意をする。
帝都は広く防衛に向いてるため、
ここの守備を固めて置かねばいざという時
そして隊員の装備を決めるにあたって恐らく敗残兵ということで接近戦くらいしか仕掛けてこないであろう。
しかも数は多い。
だからこそ火炎放射器兵を2人ほど入れてある。
射程も短く耐久性もないが、近接集団戦においては絶大的な火力であり、銃火器による射殺よりも死体が腐臭しなくて済む。
ちょっとしたクッキングだ。
残りの4名はStg44やMG42を装備している。
万全な状態になったら、あのウザったらしい騎士団に出発の報告をせずにさっさとぼくの黒霧で移動する。
気分は悪いが、任務には変えられない、仕方ないと割り切った。
そうしてぼくはイタリカに向かうのだった。
そうして3時間後.........
「ぅっ...ぅぉぇぇ...げほっ...。」
城壁に手をつけながら嘔吐を繰り返すぼくの姿がイタリカにあった。
「よ、ようやく到着したぁ...。」
そう思いながらぼくら親衛隊ぼく含め7名はイタリカに着いた...
がしかし、壁を四つ足で登り、見てみるが誰もいない。
「...えぇ...お出迎えはなしですか...。」
フラフラな気分の中、
視界にふと入った人集りができている北門を見て恐らく向こう側で戦闘が起きたのだろうと推測し、向かう。
少し距離があるがその強靭な生物兵器としての足がぼくらを風の如く目的地へと運ぶ。
「うっ...またきそう...。」
嘔吐がまた来るか来るかと焦りながら向かい、やっとこさ人混みの中...民兵達の背後へと少し荒々しく降りた。
「な、なんだお前は!」
そう急に驚かれ、武装を向けられるが、
「...その真っ黒な服...噂では聞いていたが...あんたら親衛隊の者か...?」
と、民兵の1人がつぶやく。
ここイタリカはそこそこな商業街であり、交易のあるここでは情報の流通も激しい。
親衛隊の見かけや情報は伝わっていたようだ。
「あ、あぁー、そうだね...所で姫様はいまどこ?」
そう民兵にぶっきらぼうに聞くと
「そ、そこだよ...。」
と、気まずそうな顔をしながら指を指す。
民兵の間を掻き分けながらぼくらは進み、南門の方は近づいて行くと
「...な、なんだこれ...。」
そう呟いてしまうほどの状況だった。
姫様が南門の扉を開けて、そしてその先にはコダ村で見た魔法少女レレイと神官のロウリィが佇んでいたんだから。
「...げぇっ...。」
そして更に問題だったのが...
「緑野郎...なぜここに...。」
そう項垂れながら目の前にいる日本軍...ジエイタイの野戦服を着た床にぶっ倒れた男を見据える。
そして当の本人 ピニャ皇女は気まずい顔で苦笑いだった。
新しいことが起きすぎてよくわからない混乱した頭を抱えながらぼくは事を成り行きに任せるのであった...。
「あなた何のつもり!?」
そう怒りっぽいこれもまた若娘のエルフの声でぼくは脳を再起させた。
「扉の前に誰かいると思わなかったの?
ドワーフだってコモノートだって気をつけるわ。
確認しないなんてゴブリン以下よ。」
荒々しい声とともに、
先程の扉によって気絶させられたジエイタイの隊員が持っていた水筒の水を隊員にぶっかけ、叩き起こそうとしていた。
当の姫様はどうしたらいいのか困惑している。
そして神官様はと言うと、その男の顔を覗き込んでいた。
すると
ガバッ
「...わぁっ...んぅ...ん...?」
ジエイタイの男が突然起き出した。
ぼくはこのよくわからない状況の中、姫様に到着の報告をしようとタイミングを計らう。
「ここは...門の中なのか...?」
そう男が言うと、
『隊長、送れ。
隊長 応答してください!』
そう彼の身につけていた無線機がいきなり作動する。
それを確認した彼は無線機を手に取り、
「伊丹だ。」
そう日本語で返答した。
彼の名前は伊丹というのか...しかも隊長といったな...恐らく大尉辺りのの階級かな...。
そう推測するが、それよりも姫様...。
「ぁ、あのぉー...。」
そう丁寧に声をかけるが、反応は返ってこない。
萎えながら事が収まるのをぼくはまったのだった...。
その後、ぼくはピニャ殿下に無事到着の報告を行い、
炎龍を迎撃した時見かけたこの伊丹とかいう隊員と共に
イタリカについての説明をピニャ殿下からご教授していた。
この時、ジエイタイの連中からあからさまな視線を感じた。
(...なぜ旧友と殺し合わねばならないのか。)
そればかりを考えながら、ピニャ殿下のいうことを軽く整理していく。
異世界への出兵による徴兵で、イタリカの治安は低下、防衛すらままならなくなったこと。
ここの現当主のユイがまだ11歳の幼き領主であることから、ピニャ殿下自ら指揮を執っていること。
で、今絶賛この陸自の男 伊丹とコダ村の避難民である少女たちが竜の鱗を売却に来たが、
それどころじゃないということで助太刀してくれるそうだ。
今は戦闘計画立案をピニャ殿下が行っている。
具体的には配置先だ。
「いいだろう。お前達には南門の守備を任せよう。」
そうして緑の人達 ジエイタイの配置先が決まった。
「...で、親衛隊長官...お前の力量はどれほどなのか妾は知らんが、
できるならば緑の人達と同じく南門の城壁の護衛を務めてくれ。」
ぼくは右手を上げて
「 Heil 」
そう親衛隊として任務を全うするべく返礼するのだった。
そして、その後ピニャ殿下がフォルマル伯爵家の部屋から退出すると、少女たちや伊丹が改めて口を開く。
「えっと...君。」
そう伊丹に名指しされ、
「あの時、炎龍を追い払ってくれた奴だよな。」
そう問われ、あまり関係を持ちたくないがために、
「ぃ、いやぁ何のことですかな...。」
そうあしらうが、
「惚けないでくれよー...あん時は助かったんだから...。なに、お礼を言いたいだけさ。
えっと...名前は?」
親切に話してくれてはいるものの、彼は自分を信頼しきっていない目だ。
つまり情報を聞き出そうとしている。
「...名前は...無いや。」
「え?」
そう少し驚いた顔をされた。
だからぼくはとりあえずの仮名を適当に考えて、
「...エルでいいよ。エルって呼んで。
それと、勝手に話を進めないで。」
そう少し語気を強めて伝える。
「わ、わかった。エル...階級は?身長的に年下だとは思うけど、
もし少佐クラス以上ならヤバイ話し方だからね、ははは...。」
イタミ...といったか 苦笑いしながら情報交換を求めてくる。
「...。」
ニコッとしながら諜報任務の一環として進める日本軍に対してぼくは顔を伏せながら沈黙する。
自分の階級は親衛隊長官 全国指導者に任命されている。
つまり親衛隊上級大将かそれ以上の階級だけど、これは親衛隊内のことでしかなく軍部とは一切関わりがない。
だから階級は特別関係ないのだ。
あまり伊丹を驚かせたくないためおし黙る。
「...あー、答えたくないなら別にいいんだ、気にしないでくれ。
それに、その服装 まるで、というか正に、というか...ナチス...みたいで...
あーいや、ここの世界の人らにしては変だなと思ったり色々思うことがあってな...。
...ま、とりあえず今はやれることをやろうぜ、親衛隊長官殿。」
ぼくらの服装を怪訝に思いながらもニカッと笑いながら共同作戦となることからある程度の信頼性を保持しようと試みてくる。
彼らはまだここが異世界で、僕らがナチスだという確証は得れてないらしい。
まだ異世界にドイツ軍と似た親衛隊と呼ばれる部隊がいる、ということしか知らない...好都合だ。
「...うん。よろしくね。」
握手を求めると、伊丹も喜んで手を取ってくれる。
案外優しい人なのかもしれない。
けれど、懸念もあった。
(あぁ...ピニャ殿下は彼らを一応は信用して共同体を組織しているけれど、
今は戦時中...いつ殺されても何も言えないんだよな...。)
質問責めにあうのはいやだったし、死ぬことはない体にしろ彼らの我々より進歩した重装備が裏切る可能性を考えると相当痛みを味わうことになる。
厳密に言えば我々は敵同士だ 仲良く停戦だなんて皇帝陛下があれば別だができん
それにきっと、向こうの門の内側では、我々が敗者として掲げられ、
批判と憎悪の的になっている。
そんなことすぐに推測できる。
戦犯裁判にでもかけるつもりだろう。
そんなことは御免だ。絶対に。
世界に蔓延るユダヤ人共を殺し尽くすまでは。
奴らは、我々を殺すこともせず、生かすこともしない。
経済を通して略奪する、そしてそれを護衛し、金というものを釣り餌にする。
貧困は生まれ、誰もが我が身可愛さに溺れ、我が生存しか考えない。
そんなドイツは 祖国はもうごめんだ。
ぼくはこの世界で、ユダヤ人のいない潔白な世界を夢見る。
そう強い意志でぼくは準備を行うのだった。
次回はイタリカ攻防戦