漆黒が仕える! ー親衛隊 異界の地で斯く国防せりー 作:YJSN
只今ぼくの頭の中は絶賛混乱中であった。
「主よ...突然ですまぬが、我は皇帝 モルトだ。此度の帰還、誠に嬉しきことである。」
そう目の前の威厳ある君主の権化は言う。
それに反応できずに睨みつけるような形となっていることに気づき、改めて体勢を立て直す。近衛兵も恐怖に顔を歪めて腰を引かしてる者もいる。
一応なりとも戦闘の心構えをしてる者も多くいるようで感心である。
「えっと...その前に、ここはどこなのだろうか...。」
ぼくはここがどこなのか全く覚えていない。
あるのは終戦直前に親衛隊残党の現場における最高司令官である親衛隊長官の地位を授けられたこと。
そして然るべき行動 闘争 を行なったこと。
総統閣下への忠実なる兵士として、ぼくの指揮下であり、戦友である師団 SS waffen .1-2bc division が我が命とともに散ったこと。
それだけだ。
「意外と素直であるのだなお主は...ここは我が帝国領内の巨大遺跡跡地だ。
主はここに置いて先程の邪悪なる呪詛によって、封印されていたと見受けられとうあるのだよ。」
...まさか自分がそんなことになってるとは思いもしなかった。
最期、友人や同僚の事を心残りにして、華々しく散れたと思ったのだが...。
「ということは...ぼくは亡者とでもいうの...?」
「大まかなることはそうなるな。だが、お主は今先程、我の兵を無断で吸収したであろう?
貴君の肉体は復活を遂げ、その全貌を露わにした。
つまるとこ、貴君は人間の肉体は取り戻したのだ。
見た目については何らヒトとは変わり得ない。...周りのお主の私兵は無理そうだがな。」
そう言ってモルト皇帝はぼくの後ろを見据える。
ぼくもそれにつられて後ろを振り返る。
そこにはかつて死んだであろう何人もの顔見知りの同志達 戦友 部下が507名がぼくに忠誠を誓うかのように右手を掲げ、Stg44を肩に掛けている。
なぜ人数が分かるのかは不思議だけど、何となく全ての隊員を覚えている。知っている。そんな気がした。
今はもう生気が感じられないまるでミイラのような肉体となっている。が、それでも、死してなお忠誠を誓う様子は、なにか胸が締まるような魅力を感じた。
そうやってぼくが大隊に目を取られていると不意に
「その者達と何があったかは知らぬ。余は貴君と契約を結びにきた。この死者の書と共にな。」
そう真剣な声で皇帝は言う。
...契約?
そうとぼけたような顔になってぼくは首を傾げた。
「なに、難しい話ではない。貴君らに 我が私兵 近衛兵となって欲しいのだ。帝国軍とは独立した指揮系統の中で、な。」
「...いきなりですね...。」
内心、出会って早々なにを言っているのだと思った。
僕らが総統命令でもないのに、見も知らずの帝国の指揮下に入るだと。
笑わせるなと、失笑してやりたいくらいだった。
「...帝国では 門 というものがあるのだ。門は常に聖地 アルヌスというところに数百年 数千年置きに開き、こことは異界の地へと繋がっておる。
帝国はこの門との関わりが深いのだ。
近いうちに門が開くと言う予見が出ておる...魔法師が言うには、あと1年もしないうちに新たなる門が開かれるというのだ。
門が開かれる度に怯えるなどとは帝国の威厳を示せんのでな。だからこそ貴君が必要なのだ...。」
「要は用心棒として、僕らを雇うと...?」
「無論、タダとは言わん。
必要なものがあればこちらに要請すれば何だって出すぞ。
余は貴君の、呪われた兵の、古の軍を信じておるのだ。この死者の書、ここにはこう書かれておる。
この書開く者 亡者の扉開くこと覚悟せよ。
この書開く者 汝は下界から全てを還らせようとしているのだ。
この書開く者 我が契約者となる。
...余の勝手な推測ではあるが、貴様は何処ぞの誰かも知らぬ奴にこの死者の書と共に売られたようだな。」
嘲笑うかのように言われ、若干イラっとした。
「なんて野郎だよ、Shïschun...。」
そう少しの苛立ちを加え入れて言い捨てる。
勝手に人の駒として契約者とさせるなど、親衛隊への不敬にも甚だしい。
「それもいいが、まずは余の契約者となるのだ。よいな。」
了承を求められる。
一瞬、後ろめたいむず痒い気持ちとなり、後ろの同志達を見返すが、何ら魂がこもってないかのような、そんな感じがする。
まるでぼくに機械のように従うような、主従関係に感じれた。
昂ぶる...
何故かまた闘争を同志達と行えると思うと、気分が抑えきれなかった。
祖国の心配もあったが、どうせあの世界での役割は果たしたんだから、少しくらい好きに生きてもいいよねと思っちゃったりした。
ぼくは頷き、
「...わかったから、それを。」
そう言うと陛下は死者の書を放り出した。明後日の方向に。
嫌がらせするなよなぁ...ふんっ。
不機嫌になりながらぼくは若干囚われの身になったような状態の代償として得た生物兵器としての役割を再起させる。
本当ならば宙へと投げ捨てられた死者の書は物理法則に従って落ちていく...はずだった。
ぼくは右手をクィっと手前に引き、漆黒の悍ましい ナニカ でそれを引き寄せる
「ほぃっと。」
ぼくはそう言い、死者の書を手に取った。
「...この先も、期待しておるぞ...。」
そんな期待されても困るよ...(焦)
死者の書を開きながら、そう内心呟く。
して、三ページ目を開き、
「Amshutem Augusta der turesz pusutidzh....。(契約は受諾された。)」
サァーーッ...
すると禍々しい黒の砂が死者の書から吹き出し、皇帝とぼくを包み込む。
不思議なことに呼吸は苦しくないし、むしろ心地よいとまでいえる。
...サァーーッ...
サァーーッ...
サァーーッ...
数分、それが続いた後、黒砂はやがて死者の書へと帰っていった。
「ふぅ...で、突然のことだらけでまっっったくこの世界についてわかんないから、教えてよね。
あ、あと食事は要らないよ?
それに親衛隊といっても帝国領内で国防のために活動するだけだから、
積極的攻勢とか、諜報とかは相手を見てからにするからね。
それからあとはーーーーー 」
そう追加条件をダラダラと垂れているぼくを、皇帝は呆れながら聞いていくのであった。