漆黒が仕える! ー親衛隊 異界の地で斯く国防せりー 作:YJSN
ーアルヌスの丘から五キロ離れた道沿いー
スーッ ハッ スーッ ハッ スーッ ハッ
同志 親衛隊員のガスマスク越しの呼吸音が響く。
「ぐぅぅう...帰るのに何日かかるのやら...。」
そう愚痴を垂れながら渋々と歩き続けるぼく...と同志達が道沿いに歩き続けていた。
実を言うとあの気持ち悪い黒の霧はだいぶ吐きそうになる。
例えればスイカとうどんとハンバーグを一気に口の中で混ぜられた感じ。
要は物凄く気分が悪くなる。負担が大きい。だから普段はあまり使わない。
よって今こうして歩いてるわけだけども...。
「だぁぁるぅぅぃぃぃ...あぅ...。」
項垂れているのである
門の向こう側 元の世界が...確か ジエイタイ とかいう日本軍...?によって制圧され、軍が壊滅、敗走していたのを目の当たりにし、ぼくはお早く情報をある程度集めたら門に戻り、アルヌスから出ようと思った。
被害は六万の将兵 下士官 兵士ら。酷いものだった。
帝国兵から、小王国軍の援軍が二、三日後には到着すると伝令で伝えられたが、待ってもいられない。
その間に彼らは塹壕を掘り、陣地を建てているだろう。
そうなれば帝国軍の唯一の距離無し戦闘のゲリラ戦は困難となり、彼らでは勝てないであろう。...まぁ友邦が勝ってくれるのは嬉しいけど。
そんなこんなで出発したのだが...
こうも長い道のりだとは思わなかった。
行きは馬車に乗せてもらい仮眠を取っていたのでそこまで長くは感じなかった。
けど歩きではもう酷いのなんの。めんどくさがりなのも合間ってますます暇になって来る。
「あついぃぃーーー...ぐがぁーーー...。」
日中の気温もぐんぐん上がってくるし、真っ黒の服装だしで最悪だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さてと、あれから少し経って、最寄りの村 コダ村まで辿り着いた。
アルヌスから一番近い集落と言えばここくらいだし。
しばらくここでちょっと遊ぶのもいいかな。
村の人は最初はこの真っ黒の服装に尚且つ後ろに控えている同志達の様子を鑑みて、あまりよい顔はしなかったけど、徐々に馴染んできたりした。
それにすごく親切だ。帝国国内とは全く違う。
今では鬼ごっこもしてるくらい。
ぴょん ぴょん
「ニャーゴ。ニャーゴ。」
黒い野良猫がぼくの肩に飛び乗って来る。
「...にゃ、にゃーご...。」
ぼくも合わせて共鳴してみるけど、
バシッ
寧ろパンチをくらった。
「む、むぅ...。」
こ、こいつ...
「クスクス」
「なぐられたー!あはは!」
「何やってるの兄ちゃん」
そう周りの取り巻きの子供に笑われる。
こんの猫野郎 ちょっとばかし可愛いからって...。
こんな風に村の人たちとじゃれ合ったりして、ぼくは暇を紛らわすのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで一晩お世話になった。
寝場所は木の上という最悪の居心地だったけど...ガクッ。
けど、楽しいといえば楽しいし、充実している。ちなみにまだ親衛隊ってゆうのはバレてない。服装がちょっと変なだけのいい人って呼ばれてる。帝都からは離れてる田舎だから、親衛隊がどんなものなのかはあまりよく知らないのであろう。
もうここで一生暮らしたいなぁ...欲望が出て来る出て来る...。
あと一日くらい...
スーッ ハッ スーッ ハッ
と、一人の同志が村の外側の木と木を四つ足で物凄いスピードでジャンプしながら目の前まで来た。
諜報のためにアルヌスの丘を監視させていた同志だ。
... ... ...
ぼくの前に膝をついて平伏している。無言で。
ぼくらは同志だ。だからこそ何ら言葉は必要ない。喋れなくても、言いたいことはわかる。もう彼ら自身には人間的な個性の魂はないけど。
任務に忠実な解答が渡されるだけ。主従関係 契約でしか働かないモノ。それだけ。
内容はアルヌスの丘に派遣された小王国軍が壊滅、撤退。敗残兵として残りは散り散りとなった模様とのことだった。
被害はまたも計6万
帝国はこれで12万もの兵を失ったことになる
「皇帝陛下は何をしているのか...。」
呟きながらぼくは同志には下がらせ、子供達とじゃれ合わせたり、輪に入らせたりしておいた。
こうやって少しでも人間の時の感覚を取り戻して欲しいのだけれど...望みは薄そう。
冗談や戯言を言っていた頃が懐かしいよ...。
胸がキュンッてなってくる
いかんいかん...そんなことでは親衛隊は務まらない...
気を入れなおしてぼくは村の手伝いをしにいく
ーーーーーーーーーーーーーーー
村の手伝いもある程度進み、昼過ぎになり再び子供達とじゃれ合ってた時、村の人たちが一斉に家に隠れ出した。
じゃれていた子供達を母親が家に匿っていく。
...?
「何かあったんですか?」
そうぶっきら棒に聞くと、
「緑の人たちが来たのよ。アルヌスの軍勢を打ち破ったっていうじゃない。恐ろしくて堪らないわ。」
そう母親の一人が答えてくれた。アルヌスにおける敗退の報せは各地に届いてる様だ
「そう...ですか...。」
ぼくの立場を考えると、緑の人たち...いわゆる ジエイタイ は本来ならば敵兵だ。ここにいるのは危ない。
けれど、この先道のりはちょっと長め。もう少し暇潰しをしておきたいという欲望がぼくをここに引きとどめる。
「あなたもどこか隠れなさい。...隠れるなら、村はずれのカトー老師にお世話になればいいと思うわ。」
と、ご親切に忠告と勧めをしてくれた。
「ありがとです。ではぼくはこれで。」
「えぇ、気をつけなさい。」
そう言って彼女とは別れた。
老師...魔法使い...なのかな
まぁどちらにしろ、ここにいればいずれ見つかる
森に同志達を隠れさせて、自分もカトー老師にジエイタイが居なくなるまでお世話になろう
今後の方針を決め、少し安堵しながらぼくはカトー老師の家にいくのであった