漆黒が仕える! ー親衛隊 異界の地で斯く国防せりー 作:YJSN
「ふわぁぁ...やっと帰ってこれた...。」
そう項垂れながらぼくと後ろの数名の親衛隊員は帝都内に門をくぐって入る。
途中門の警備兵に敬礼されながらあの霧の呪詛による移動によって滲み出た気怠さで倒れそうになりながらも何とか踏ん張って自分も返礼する。
一般兵の中にも国家社会主義信奉者は増えており、同志がいることは既に承知済みだ。
我々はあらゆる人種 民族 種族の壁を超えて集産主義理論化をはかる。
これは我々の生態系であり、最善の生存方法なのだ。
...ただし、ユダヤは許さないけどね
そう思案しながらぼくは護衛の親衛隊員を別の任務に就かせて、執務室で軽く報告書の整理を行う。
皇帝に指令された任務の報告だ。
そうやってぼくは暫くの間執務室でペンを走り続けさせるのだった。
数枚の書類を書き終わり、目を通して、謁見の間に赴こうと準備する。
一週間前までの何ら変わらないものが改めて少しだけ新鮮に感じる。
すぐ慣れるだろうけど
そう思いながら謁見の間の前の扉が横の近衛兵によって開けられていく。
それを見ながらぼくも中に入って行き、暫く会っていなかった契約者とご対面する。
そしてぼくは右腕を大きくあげて
「 Heil. 」
そう我らへの忠誠を確認し合う。
「...楽にして良い。」
渋い声でそう返ってきた通り、いつも通りの自分に戻る。
この敬礼はもう10年以上させられてきたから、体に染み付いて取れない。
こっちの方がイギリス兵よりも見た目も良いしね。
そんな風に考えていると不意に皇帝の方から話を切り出す。
「久しぶりではないか、親衛隊長官。届いた手紙から事情は察する。」
コダ村から部下によって運ばれた手紙は皇帝に通達されていたようで少し安堵する。
「えぇ...門の向こう側も、そしてあの緑の人達や奴らの活動区域についても大凡のマークが付きました。
それと、奴らの諜報活動についてなのですが...如何しましょうか。」
そう簡易的に報告をしていき、数々の敵工作員による諜報活動がここに来る道中の帝都内でも見受けられた奴らへの対処を請う。
皇帝は少し思案する。
すると、
「...泳がせておけ。」
「...帝都から叩き出すことも可能ですが。」
そう聞くと、
「...ならん。最初期の傀儡國の10万の軍勢が一瞬にして死屍累々となってしまったのだ。
これ以上奴らとの殺し合いにおける勝利は余も見込んでおらん。
今はこの戦争を早期に好条件で集結させることが最善手であろう。」
皇帝はそう今後の外交を述べる。
「そう...ぼくとしても彼らは元は旧友...余り殺し合いたくはありません。」
そう自分の見解も示すと、皇帝は怪訝な顔をして
「...旧友...前々から気になっていたのだが、お主は門の向こう側の人間と何か関係があったのか。」
ぼくは少しだけ考えてから
「えぇ、少しだけ。私は彼らの、元は門の向こう側の人間でした。
その時に、彼らと共に殺し合ったのですよ。ユダヤ人とそれらを匿う人間相手に、ね。
それだけです。
それにぼくの知る彼らと今の彼らは随分とかけ離れているし、
恐らく向こう側では長い年月が経っている。
わたしの持ち得る彼らの情報ではなんら役に立たないでしょう。」
そう話を区切ると皇帝は納得したような顔をして
「...そうか。もう下がってよいぞ。」
皇帝は口角を上げながらぼくの報告を終わらせる。
「...Heil。」
ぼくも右手を上げてから、謁見の間から出る。
今後の任務は彼らの諜報活動の内容の調査ってとこかな。
予め帝都には親衛隊員を広範囲に配置しており、内部の監視状態は完璧だ。
あと、それとは別にやることがあるな...。
「次は党本部での演説...だったかな。」
手に持つファイルを見ながら今後の予定を決め、ある場所にぼくは向かうのだった。
ある帝都内の一角へと足を運んで十数分経つと、目的の場所が見えてきた。
その場所の看板には大きく " 帝国労働者党 " という文字が描かれ、そこを出入りする人間は多かった。
ぼくも周りから右手を上げて敬礼されるのを軽く返礼で返しながら扉を開け中に入っていく。
すると受付嬢であろう1人の若娘がぼくを視界に入れると、
「 Heil. 」
と右手を上げて綺麗な敬礼をしてきた。
ぼくも軽く右手を上げて返礼をしてから
「やぁ同志。久しぶりだね。宣伝省長官は今どこかな。」
そう聞くと彼女は強張ったその美貌を引き立てる顔で、
「お久しぶりです Mein Füluer。
彼はそちらの事務室で今後の予定の打ち合わせ中であります。」
そう丁寧に言葉を紡いでくる。
「そうか、ありがとう。Heil。」
「Heil。」
そんなやり取りを経てからぼくは事務室の扉の前まで行き、
コン コン コン
とノックをする。
「お入りください。」
そう返ってくると、ぼくは扉を開けて、会議室のような殺風景な場所を視界に入れる。
「か、閣下でしたか。」
そう慌てながら中にいた数名の党員が右手を上げて我らへの忠誠を確認し合う。
ぼくも返礼をしながら、前に進んで行き、お目当の人間を見つける。
「やぁ、久しぶりだね。宣伝省長官 リービヒア。」
そう言うと彼は上げていた右手を下げ、
「久しぶりです総統閣下。今日は演説の件でこちらへ?」
そう言いながら彼は手元の予定の書かれたファイルを読む。
「そうだよリービヒア。今はえっと... 」
「午後四時半ですね閣下。演説予定は五時、集会場の前です。もうすぐですし、ご一緒して行きましょうか。」
そう、今日はぼくがこの世界に来てから、国家社会主義帝国労働者党の立ち上げた日でもある。
党大会が開かれ、ぼくが演説台に立つ時だった。
普段は宣伝省に丸投げなんだけど、親衛隊長官=総統閣下みたいな等式が出来ているみたいで、今年はぼくが担うことになった。
「そうだね。じゃぁ、ご一緒してもらうとしよう。」
ぼくもそう言いながら、集会場の予定地に彼が出かける準備をするのを待つのであった。
次回は演説
ユダヤを排斥せよ。