3.世界への侵入
この場所は最も世界が綻んでいる。嘗て大聖杯が存在していた地下空洞の真上であり、山中全てが異次元へと半ば重なり合っている。この空間こそ転移に相応しい異空間であり、開門の簡易魔術儀式に適した場所だった。
今いるのは、たったの四名。
錬鉄の魔術師――衛宮士郎。
抑止力の化身――美綴綾子。
死灰の代行者――言峰士人。
そして、現代に甦った聖剣の騎士王――アルトリア・ペンドラゴン。いや、彼女だけはもう、肩書に価値はないかもしれない。セイバーのサーヴァントとして甦った現世にて、更に死して魂を破壊された身故に、ただのアルトリアと言うべき剣士だった。もはや何者でもなく、英雄でもない人間だった。亜神以上の桁外れに強大な魂を持つだけの少女であった。
神秘が薄れた現代にて、最高位の“人間”である。
冬木と言う異常地帯が生み出した異端の頂点とでも言うべき魔人であり、超人。その中でも美綴綾子は誰よりも普通だからこそ、特別な異端者でもあった。
「では皆―――行こうか。アイツが作った世界にさ」
自分以外の三人は言葉もなく、ただただ静かに頷いた。そして彼女は己の右腕を、魔術礼装と成り果てた魔腕を優しく撫でた。既に埋め込まれた左目の義眼は空間と空間の境を目視し、異界に通じる異次元を認識している。となれば話は容易く、後は万象の門を抉じ開ける黄金鍵である左腕で以って、異次元の扉を開くだけで良い。
この身は既に、そう言う境地に辿り着いてしまった。
概念が、神秘が、魔術理論が、進化を止めずに限界を超えて、際限なく成長する。
師匠である言峰士人が与えた鍵は綾子の魔術回路を神代のソレに等しい異端に生み変え、聖剣の鞘による影響を受けた衛宮士郎の魔術回路も、聖杯の泥と融合した言峰士人の魔術回路も―――そして、宮廷魔術師に改造されたアルトリアの魔力炉心も間違いなく、神が生きた世界の産物に並ぶ異端なのだろう。
「―――
瞬間―――まるで固有結界を発動したかのように、世界が反転した。魔力反応も薄く、簡単な一工程を踏むだけで綾子は隣り合う異空間に転移可能な技量に辿り着いてしまっていた。魔術師と呼ぶには余りに化け物であり、神代の魔術師にも不可能な怪物的所業。
だが得てして、現代の魔術師は何かしらの、誰よりも特化した分野を持つと言うもの。
美綴綾子は英霊の座に登録された宝具と同等の奇跡を獲得し、
「ほう。瞬きする間もなかったな」
「実に同意する。いやはや、流石は協会と教会に魔女と恐れられる盗賊だ」
「うるさいな、言峰。アンタはこの魔術の事は良く知ってるだろ。そもそも専用魔術理論開発したのアンタだし。
それと衛宮、皮肉ぶるのは良いけど似合わないから。誰の物真似してるのか知らんけど、全然これっぽっちも似合ってないから」
「綾子に同意します、シロウ」
「おまえらな……」
綾子とアルトリアによる攻撃で素に戻る士郎であったが、即座に魔術師としての自分に立ち戻る。冷徹な皮肉屋を演じるのは自分なりのケジメであり、エミヤに在るべきと考えているからだ。何よりも、転移して未だに異常がない事が異常事態。
しかして其処は、既に―――冬木ではなかった。
新都があった場所には現代文明では絶対にあり得ない巨塔が君臨し、人間以外の知的生命体が築き上げた神都に変貌していた。しかし、人間が生きている気配が全くない廃都に成り果て、人外の者が生を謳歌する魔都に堕落している。なのに世界は穏やかで、現世と同じ平和な昼時を演じている。そして、環境は現世と全く同じと言う矛盾。空は蒼く、川は碧く、海は青い。太陽も何一つ変わることなく中天に位置し、雲は緩やかに漂い、突風もなければ嵐もなく、静かな古い街並みが広がっている。
世界はただただ平穏で、争いがない穏やかな空間。
だが此処は――――天蓋巨塔都市バベル。
都市部は全て混凝土造り。古風でありながら現代的でもあり、滅び去った古代文明の形で作成されている。
バベルの塔は混凝土製と伝説には記されている。
しかし、あの姿は見れば正しくはない事が分かるだろう。確かにセメントによって建造されてはいるのだろうが、魔術的な科学素材の粘土による建造物だった。神によるモノではなく、悪魔によるモノでさえなく、人間が学習した叡智による惑星外の技術か、あるいは絶対に辿り着けない筈の遥か未来で得られる可能性の技術か、あるいは―――それら全てを吸収した文明技術なのか。
だが確定している事は唯一つ―――あれらは全て、ニムロド個人が生み出したモノ。宝具として、魔術としてではなく、バベルの叡智そのものがニムロドが何も無い零から創作した文明であり、文明技術自体がニムロドの技術力である。
そして―――バベルとは、現代と同じくコンクリート製の古代都市。
たった一人の魔術師が、個体の生命体に過ぎない人間の王が、西暦二千年の現代文明を凌駕すると言う有り得ない業を証明してしまっていた。
神を超えて、神の不要を証明する都こそ、
「ここが凛の―――バベルの塔」
周囲を見渡すアルトリアは茫然と呟いた。転移により侵入して来た場所は
それを見て、アルトリアは異界に入り込んだ事を実感した。
まず視界に入るのは天に届き、それを超える巨塔。そして、転移する前は柳洞寺があったこの場所にあるのは、何故か分からないがコンクリート製の建物だった。寺では決してなく、神聖さなど欠片も無いが、人間の建築物として造られた文明らしさであり、宗教や異界などの雰囲気はない。しかし、魔力は多分に含まれており、物質と霊子が混ざったような不可思議さに満ちた建造物でもあった。
「まぁ、周りの風景からして、無事に転移成功だね。どうやら全員無事みたいだし、誰も次元の狭間に堕ちてなくて良かったさ。
うーん、しかしねぇ……ここが、アタシらの
え、なにあれ。うわぁ、此処やっぱりこの世の世界じゃないよ。なんであんな生き物が自然に生きて、いやいやいや……マジでか。あんな化け物が飛んでるの?」
「だろうな。なんか、天使が空を飛んでいるようだしな」
「やっぱり、アタシの見間違いじゃないよね。しかも神に滅ぼされたバベルなのに、よりにもよって天使か」
バベルの宙を浮遊する人外の生物。天使と言う確証はないが、鳥の羽を生やした人型生命体となれば、やはり天使と呼ぶのが相応しい幻想種、あるいは亜神と呼ぶべき精霊種であろう。現代の魔物である死徒が可哀想に思える濃密な神秘を遠く離れたこの場所からでも感じ取れ、一体一体がサーヴァントと同じ亜神の領域であると魔術回路で察知出来た。
神罰を司る天使―――ニムロドに仕える
「ああ、あれは確かに天使と呼べるな。アルトリア、君はここを如何見るかね?」
「このバベルで天使となりましたら、やはり神話通りの存在―――天罰の執行者だと思われます。そして、このバベルに対する天罰ではないとしましたら、その対象は恐らくは……」
「……ふむ。やはりお前もそう思うか」
「ええ、神父。あのニムロド王であるのならば、私達敵対者を殺す兵器なのでしょう」
士人の言葉にアルトリアは頷きながら、自分の予想を口にし―――
「AaAaaaaaAAAAAAaaaaaa!!」
―――その言葉を掻き消すように、天使は都市部の何処かに向けて砲撃を行った。
自分を中心にして魔法陣を無造作に造り出し、其処から刀身3mは超える巨大剣を“投影”し、音速を超えて射出。バベル都市部の建物を破壊し、空に向けて粉塵を巻き上げ続けている。更に空中を舞っていた天使共が同じ場所に集合し、ある者は魔力砲撃を、ある者は火炎砲撃を、ある者は氷結砲撃を、ある者は雷電砲撃を撃ち放っていた。
「……ふむ。あの襲撃を見るに、俺ら以外にもバベルに対する敵対者がいると見える。しかし、あれは本当に天使なのか?」
叫び声を上げながら遠距離攻撃を行う天使の姿は、化け物以外の何者にも見えない。人間の言葉ではなく、人間が放てる声量でもない。十数kmは離れていると言うのに、空気を揺るがす絶叫がバベル中に響き渡っていた。これが異界化している冬木ではなく、現実の冬木ならば一発で神秘が暴露される光景であり、だからこそこの異界特有の異常な日常風景なのだろうと言うことは来たばかりの四人でも理解し、瞬間―――天使は皆殺しにされた。
―――狂える死の滅光と、怒れる魔の劫火。
そう例えるべき地上からの反撃であり、エクスカリバーに匹敵する魔力の本流を感じられた。
「ほぅ、これまたあっさり。感知した存在規模はサーヴァント並なのだが、あの程度か。取り敢えず、宝具を使えば空を飛ばれても殺せるようだな」
「―――いやいや馬鹿神父!
まずは襲撃されているヤツを確認しないと……―――ほら、衛宮!」
「……君も義眼を使えば見えるだろうに」
「アンタに比べれば節穴アイだもの。一番眼が良い奴が見た方が情報が正確さ。ほら、早く」
「もう見ているとも」
「それで、どんな人物なのですか。シロウ?」
「分かり易い格好をした連中だ。特徴を言えば一目で分かるだろうな」
そこで士郎は一瞬だけだが思考回路の沼底に落ちてしまった。アルトリアの問いに答えられはするも、見覚えのない天使と対峙する人物―――二人組の男の外見的特徴は、説明し易い程に分かり易かった。一人は黒いサーコートを身に纏う全身巨人甲冑の巨躯であり、もう一人は全身を仙人のような僧侶服で身を包む大男。言わば、巨人鎧と大仙人。
だが――
「しかし、あれはディートリッヒとアシュヴァッターマンか」
「知ってんのかよ、言峰」
「ああ、間違いないだろうよ。見た目とても分かり易いし」
――コレである。
人に千里眼で確認しろと言っておいて、この扱いである。
「君らは本当に、私に優しくないのだな」
「衛宮士郎。俺はお前に対し、優しいと呼べる程に温情を与えてると思うのだがな」
「ハーレム野郎に慈悲はない。アタシは気の多い男を軽蔑していてね……いや、まぁ、アンタが一途な男って言うのは知ってるんだけどさ。
うーん。やっぱ、無自覚だろうとも、罪は其処にあるんだよね」
「……なんでさ」
高校時代からの友人だからこその悪態なのは分かっている。分かっているが、これはあんまりじゃないだろうか、と考える事が多い士郎だった。確かに魔性菩薩殺生院祈荒に精神を汚濁塗れにされ、酒びたりになって寝込んでいたのは情けないかもしれないが、仮にも数か月前は魔術で心をボロボロにされた精神病患者。ほんの少しは建前に過ぎないにしても気遣うのがまともな社会人だろうと思いつつ、どいつもこいつもまともな社会適合者ではないこと思い出した。
自分も含めて社会不適合者。
なんだかんだで似た物同士と思い、自分も言峰や美綴が弱っていたら皮肉を言うので辞めろとは言わない士郎であった。
「あれは……また違う殺し合いですか」
そんな事をしている内に、遠い新都の方での戦いは激化している。アルトリアが呟いた通り、連鎖的に殺し合いが行われているようで、空を舞う天使は違う相手に殺されていた。此方の方も過激な殺戮行為が凶行され、人外の美しさを誇る綺麗な天使が死に続けている。
細切れにされ、蜂の巣にされる哀れな姿。
本当なら天からの神罰として民を鏖殺する殺戮の天使なのだろうが、今このバベルでは逆に地上からの殺意によって処刑される獲物に過ぎない。
「切除の魔眼ですか、あれは。しかし、あの化け物は私が殺した筈……―――」
唐突に、何の前触れもなく切り刻まれる天使の群れ。銃殺刑にされる彼女らもおぞましい死に様だが、死因も分からず死ぬ姿はよりおぞましい。そして、アルトリアはその虐殺手段に見覚えがある。いやむしろ、今の彼女がペンドラゴン足り得ないただのアルトリアに成り果て、剣に狂った原因でもある剣の獣。
―――何故、あの死がこのバベルで具現しているのか?
答えそのものは理解出来る。だがこの偶然は偶然と呼ぶには狂っており、彼女をして背筋がゾクリと凍るような狂気を自分自身の身の内から感じ取れた。
魂が、傷痕がとても疼く。アルトリアは破損した霊体で生き延び、感染したあの騎士の衝動を取り込み、黒化した原因である聖杯の呪いさえも斬撃の中に消えてしまった。だから、疼くのだ―――斬りたいと。殺したいのではなく、ただただ斬ってみたいと、夢のような斬り合いがしてみたいと、魂に残った斬り傷が蠢き始めている。
「―――……ふふ。面白いですね、バベル」
人として生きる資格など、考える事も今は無い。
救えれば、理想に殉じれば―――まこと、それで良い。
「死亡した聖騎士メランドリの魔眼に似ているな。そう言う能力を持つサーヴァントがいるのか、はたまた―――座から彷徨い出たか?」
「あの男も守護者化したっていうのね」
「可能性の話だよ。衛宮はあれを如何見る?」
「知人が阿頼耶識と契約を結び、その守護者が召喚される。有り得ない話ではないが、可能性は限りなく低いだろうな。
……しかし、実例もある。
頭ごなしに否定するのは現実が見えない証拠となろう」
「ははははは。それは確かに――――……ほう。また違う所で殺し合いが始まったな。成る程、この異界はそう言う世界か」
「そのようですね、神父」
「ふ。愉しそうだな、アルトリア」
「まさか。しかし、誰かを斬れば凛を救えるのでしたら、ただただその誰かの命を切り捨てるのみ」
火の手が上がり、煙が街を覆い、粉塵が舞い始め―――断末魔が生まれ出る。天使の叫びが、街中で響き渡った。
―――……此処は地獄なのだ。
士人がそう言う世界と断じ、アルトリアが肯定した通り、死に溢れる虐殺の都市。抑止力によって召喚されたサーヴァントが殺され続ける異界で在りながらも、そのサーヴァント共の手でバベルが生み出した天使も殺され続ける異界でもある。
故に、この異界は―――地獄と呼ばれるに相応しい。
嘗て神の名の下に天罰を執行する殺戮者だった成れの果てを、歴史に名を刻んだ人間の成れの果てが殺し、その天使殺しの守護者達を召喚されたバベルの怪物が処刑する。この循環を、地獄と呼ばずに何と呼ぶのか。四人はまだこのバベルの詳細をまだ知らないが、この異界がどんな場所なのか直感で分かりつつあった。
「まるで蟲毒のような……いや、逆か。誰も残さず、何も残さず、髄まで消化する肉食獣の胃袋だな」
そうして、最初の殺し合いを切欠に其処ら中で殺戮の宴が繰り広げられる。天使らは地面に落ち続け、街の建物は粉砕され、死んで死んで、殺し、殺され、目に付く命全てが魔力に“消化”されていく。恐らくは、あの天使達さえもこの街を維持する為のエネルギー源であり、この異界は存在するだけで無尽蔵に魔力とエーテルを貯え続けている。
そして、倒壊した建物も自動的に復元されていく。このバベルのコンクリートはエーテルと同様の材質であり、予測だがバベルの塔が復元術式の核となっていると見える。即ち、塔の破壊こそ異界消滅に繋がる一歩となる。幾ら街を壊そうとも無意味であると。
「―――仕方がないね。まぁさ、皆、まずは山降りようか」
「そうですね……」
異界冬木を取り敢えずは俯瞰し、目的を決める必要がある。塔を目指すのは決まっているが、果たしてそのまま侵入出来るかどうかと言えば疑問にせざるを得ない。とは言え、此方には鍵の魔女であるミツヅリがいる。言峰士人が零から育てた
故に士人は、綾子を連れて行けば侵入は可能と踏んでいる。
英雄王ギルガメッシュの宝具「
「―――ム……」
現世において柳洞寺に繋がる階段だった場所を四人は降り、それと同時にアルトリアは違和感を感じた。この中で一番優れた類い稀なる第六感を持ち、Aランクの直感スキルにまで至っているが、他の五感も人間以上に優れた
「……抜かりましたね。爆音と魔力の波で、ここまで近づかれるまで気が付きませんでした。殺気も脅威もなく、姿を隠しもしないと逆に分かり難いですね。
しかし、この音―――」
「この音?」
「――ええ。こんな音です」
―――ぱらりらぱらりら~♪ ぷっぷーぱらりら~♪―――
バベルの戦慄を一切合切全てぶった切って、変な音楽とエンジン音を鳴らし――何か、来た。高笑いを上げながら、凄まじい気迫を纏いながら、誰かが来た。
「はーはっはっはっははははははははは!!!」
自動三輪駆動車、所謂三輪バイクに跨って道路を走行する―――
確かに騎馬になら似合うかもしれない。しかし、三輪バイクには死ぬほど似合わない。
しかも三輪自動車には何故か
……そんな、良く分からないモノがブレーキ音を上げながら四人の前で停車した。
だが、その騎士は派手な登場をした割りにはとても安全運転で、バイクから下りる時も教習所で教えるような丁寧さ。むしろその姿は優雅にさえ感じ、このバイクを大切に扱っている事が誰からも理解出来てしまう程だ。そして、四人が唖然としている内に、騎士はガッシャンガッシャンと鎧の金属音を上げながら、目の前にまで歩いて近づいていた。四人は様子見で第一住人を警戒し、その警戒心を無視して接近してくるあたり、騎士が普通の人間ではない事は簡単に察せられた。
中でも、一番警戒心を発しているアルトリアは、皆を代表して最初に口を開いた。何かしらの問答で魔術を発動させるタイプの術者であっても、彼女ならばその呪詛を楽に無効化する、
「貴様、一体何も―――」
「―――皆様ようこそ。ようこそ、この我らが国家へ!」
オーバーリアクションを取った騎士の台詞に、アルトリアの言葉は被せられた。
「……で。貴様、何者だ?」
胡乱気な瞳で彼女は青いサーコートの騎士を睨んだ。その殺意と視線を受け、騎士はとても嬉しそうに、且つ優雅に一礼。貴族として欠片も恥ずかしくなく、武を頂点まで極めた超人のように滑らかに、男は余りに美しい御辞宜を見せた。
ただの御辞宜で技巧を示す当たり、自己顕示欲が強いのか、むしろ謙虚なのか分からないが、動きそのものは神域に間違いなかった。
「これはこれは。美しく可憐で、麗しくは儚げな、鋭い美貌をお持ちのお嬢様。
私こそバベルの騎士。巨塔の剣士。
そして我がクラスはぁぁああ―――七騎士で最も優れたセイバーのサーヴァント!!」
くるり、と一回転し、また御辞宜を決める騎士甲冑の男。
「おぉ、格好良いな、お前」
「「「―――え?」」」
「ありがとうございます、神父!!」
ぱちぱち、と拍手をする神父を一斉に見る他三人と、嬉しそうにまた御辞宜をする騎士。周囲はまだ天使たちが戦う破壊音が響き渡る戦場の真っただ中だと言うのに、ここだけ凄まじく混沌としていた。
「言峰神父、貴方はもう黙りなさい―――で、そこの道化の物真似をする男。臭い芝居はもう良い。阿保の振りも、過ぎれば逆に油断も慢心も消え去ると知れ」
「……ほうほう。やはり良い剣士のようでありますな―――アルトリア・ペンドラゴン。
ですが、嗚呼ですが!
これは好きでやっている事ですので、ええ!!
人は馬鹿で阿保で、頭の中が空っぽになればなる程ぉお―――無へと、始まりの極致へと、至れますのでね」
殺気もなく、脅威もなく、自分はお前達四人よりも強いのだと、まるで宮廷で王族を楽しませる道化師のように騎士は宣告した。
「ふん。ディナダンを思い浮かばせる道化の仕草だが、貴様―――騎士ではあるまい。己の為だけに剣を振って人を斬る求道者に見えるぞ」
「勿論。人の為に人殺しをする等、我が騎士道に反すること。全ての咎は殺人者本人が背負い、何時か己が生死で以って償い、
ならば騎士道とは、人間として、人間のまま、人間を斬り殺す為の心得でありますれば―――ああ、これ即ち、私は騎士道を重んじるだけの、ただの剣術家に過ぎない其処らにいる剣士に過ぎません!」
そしてとても外道な事に、自然と三人は対応をアルトリアに任せていた。彼女にばれないよう、とても静かに一歩下がり、ハイテンションな騎士を押し付けている。
尤も、技量的にも彼女が最適なのも事実。
綾子ならば接近戦でもある程度は騎士と殺し合えるのだろうが、士郎と士人は敵の技量を正確に測っていた。自分よりも遥かに巧く、剣が強いと、これまでの経験から見ただけで理解してしまった。
「そうか。理解出来ない事もないが、理解する必要もない。騎士でない者の騎士道など。所詮、今の私と同じ、外法者の殺人論理だろう」
「ははっははははははははは! まことその通りで、可憐なお嬢様!」
「それと貴様、私はお嬢様ではない。アルトリア、ただのアルトリアだ。死ぬまでの短い間だが、貴様はそう呼べ」
「成る程……―――成る程!」
とても、不気味なほど非常にご機嫌になる青衣の騎士。全身甲冑で兜も被っている為、表情は全く分からないが、気配だけで大喜びしているのが容易く分かってしまう。
何だか、嫌な予感がするなぁ……と内心で思いながらも、此方から不意打ちするのも危険と身構えた。
「ではでは、此方も自己紹介を。
―――我が真名はヨハンネス・リヒテナウアー。神聖ローマ帝国最強の無敵剣士!!」
「……え?」
突然、アルトリアに騎士は真名をばらした。茫然としてしまっても無理はなく、思わず聞き返した彼女に罪はない。
「何と、聞こえませんでしたか。では仕方がない、実に仕方がないですね。
ではもう一度!
―――我が真名はヨハンネス・リヒテナウアー。神聖ローマ帝国最強の無敵剣士!!」
仲良し四人組とセイバー・バベルの登場でした。セイバーの元ネタは多分知っている人はとても分かり易いと思います。天使のイメージはマルチバッドエンドで有名な某ドラゴンゲームの、妹エンドに近い姿にしています。
そしてロックマンDASH3がしたいこの頃ですが兎も角、今はレッドアッシュの発売を待ち続けています。自分の中ですと、冒険ゲームと言えばロックマン何ですけどね。後、冒険ファンタジーアニメと言えばスレイヤーズだったりします。