神父と聖杯戦争2   作:サイトー

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6.出口など無かった

 守護者が贄として殺される地獄。天罰天使が抑止の守護者を狙い、バベルの使徒が殺戮を行う天蓋巨塔都市を生き延びたサーヴァント。

 ―――黒い鴉(レイブン)の魔剣使い。

 正体は―――獅子の騎士、あるいは獅子を連れた騎士。

 七騎士の中でも、英傑殺しとしてブリテンの騎士を仲間と共に殺し回った破壊王(バーサーカー)は、自分が取り逃した獲物が目の前に現れた事に歓喜した。

 

「邪魔なり、獅子の騎士―――!!」

 

 狂戦士は殺し損ねたキャメロットの勇者―――獅子を連れた騎士(サー・ユーウェイン)を一目で理解し、そのそっ首を斬り落とす為に疾走した。黒い刃鴉に鎧を貫かれ、肉体を啄ばまれていると言うのに、バーサーカーは狂った戦士らしく戦うのみ。

 

「―――ほざけ、海の藻屑が。()ってやるさ、蛮族海賊!」

 

 三百羽が舞う刃鴉の群れから二十羽ほど手元に戻し、本来の姿である刃の形へ変化させた。七騎士を抑える為に必要な戦力であるが、二十羽程度ならば刃鴉を剣化する余地が存在しているとユーウェインは判断し―――迫る破壊王(バーサーカー)を独特な型を持つ剣術で迎撃。

 ガギィイン……ッ―――と言う鈍い金属音。

 殺戮技巧のまま人体と生命を破壊する効率的殺人剣と、まるで狼や獅子を模した肉食獣が如き獰猛さを合理的に術理に組み込んだ殺人剣が激突。破壊王の一撃を容易く受け流し、そのまま回転しながら逆にユーウェインは斬首を狙う。それを受け止められようとも、更に騎士は勢いを増して、流れを加速させ、上空から回転しながら一刀を振り下した。だが、その剣技を好機と見たバーサーカーが敵が空中で身動きが出来ない内に体勢を整え、視覚外に回り込もうと画策した刹那、あろうことかユーウェインは鴉の一匹を足場にして、更なる加速で以って斬撃を繰り広げる。その一刀で以って破壊王と渡り合い、獅子の騎士は臨死を潜り抜けた。

 後先考えぬ全力疾走―――いや、文字通りの死力である。

 バーサーカーを取り囲む鴉を瞬間瞬間に剣化させ、あるいは剣を鴉に変えて的確に動きを妨害。動物的でありながら合理的な獅子剣術は、殺戮に慣れたこのバーサーカーからしても慣れる事が不可能な不可思議な技術。無窮の武錬を持つ英霊よりも、剣士として優れた兵法家よりも、このユーウェインは異端でありながら王道的で、奇怪でありながらも堅牢な剣の術理を保有していた。実に殺し難く、獣のように生存能力が優れている。だが、その剣技の獣性をより際立たせるのが彼の持つ黒鴉の剣。

 ―――遺産の群刃鴉(ケンヴェルヒン)

 能力は見た目通り、刃鴉と魔剣の交互変化。三百羽の鴉の集合体であり、真名解放によって一気に剣から鴉の使い魔へ変貌させる。あるいは、数羽だけの変化も可能だが、その場合は剣が持つ神秘は薄まってしまう欠点を持つ。そして、この魔剣は鴉の魔物に転生したとある魔術師(死徒)が作り上げた概念武装であり、それを生前のユーウェインが遺産として引き継いだ事で宝具となった物。

 故に鴉の魔剣(ケンヴェルヒン)を持つユーウェインは三百の鴉と、三百の剣を自由自在に操る騎士。

 だが―――彼こそは獅子の騎士。

 その名の通り、鴉と剣だけではなく、宝具の真髄もまた別の所に存在する。

 

「ウゥゥオオオオオオオオオオオオオ―――ンッ!!」

 

 ―――白獅子。正体は、伝承にて竜殺しを為したライオン。

 雄叫び一つで太源を爆散させ、膨大な魔力の本流が幻獣(獅子)より溢れ出す。獅子は勢いそのままバーサーカーを吹き飛ばし、他の敵に向かって爪と牙を向ける為に疾走する。だが、アーチャーは巧みに鴉と獅子の視界から外れ、ユーウェインの前にまで躍り出た。

 

「―――カカカカカカカカカカ!

 獅子を連れた鴉使いか。まだ死んでいない円卓がいるとは喜ばしい!」

 

 アーチャーも幾人かの円卓を射殺し、斬殺したが、全員が強かった。しかし、唯一バベルを生き延びている騎士がいた。円卓に属してはおらずとも、共にアーサー王へ仕えた友として、円卓の騎士と肩を並べた超常の騎士がいた。

 そして、バベルには抑止力として召喚された騎士王もいた。だから、騎士を嗤うアーチャーはあのユーウェイン卿の“勘違い(思い込み)”にも気が付いていた。

 既に―――あの“騎士王”は死んでいる。

 ユーウェインが死んだ所を見ていたのか、見ていなかったのかは、アーチャーには分からない。トリスタンを射殺し、片腕になったガレスを斬り刻み―――ニムロドの狙撃で負傷したアーサー王を、確かに殺した。身を呈して王を守ったガウェインごと貫き殺したが、その場にあの騎士が居たのかは知らない。

 だが―――確かにもう死んでいるのだ。

 アーチャーは殺した騎士王と、このバベルに侵入して来た騎士王が別人だと気が付いている。塔より随時念話で送信され、新たに更新された情報からも知っている。

 

「―――アーチャー……貴様、貴様は……ッ」

 

「落ち着きなさい、ユーウェイン卿」

 

「………――ハッ!」

 

「そして、我々を助けて頂いた貴方に言わねばならない事があります」

 

 そして、アルトリアも薄々分かっている事だ。ユーウェインの必死な顔は、偶然出会った生前の王に会った者が浮かべるものではない。例えるならば、死んだと思った人が生きていて、その奇跡を喜んでいる身内であろうか。

 王は人の心は分からない、と誰かに言われた事は覚えている。

 しかし、他人の心情を察知するのと、自分が人間性を得ていないのは別の話。

 死後の自分として、生前の自分を分析すれば分かる事。理想の王で在ろうとしたのは否定しないが、自分自身を理想の王と思った事はない。言うなれば、理想の王を演じる機械人形であろう。人間としての感情も封じていただけで、消滅させた訳ではない。

 ならば、真実を言うのが正しいか、虚偽を通すのが正しいか。

 

「私は―――アーサー王ではありません。ただのアルトリアです」

 

「――――――――……そう、でありましたか」

 

 その一言でユーウェインは全てを悟った。この人を守る事が出来ず、仲間が皆殺しにされてしまった事も、自分が誰も守る事が出来なかった事も、全て理解した。

 そして、これから自分がすべきことも―――悟ったのだ。

 

「ですが、王。それでもやはり、アーサー王はアーサー王でなされましょう。私が守ろうと決めた心に、嘘はないのです。

 もう―――そう決めたのです」

 

 一刀で邪魔な鴉を斬り捨て、その騎士の言葉を聞いた剣術家はたった一歩踏み込んだだけで、刃鴉の結界を踏破した。この程度の傷害、戦術さえ必要とせず斬り進めば良い。

 この敵は、素晴しい。

 仲間の内で誰もが殺さないと言うのであれば、自分が斬り殺したい強敵であると実感した。だが、このままでは駄目だった。斬り合っても楽しくなりそうにないが、やはり素晴しい事に間違いはないのが剣術家にとって不愉快だった。

 

「嗚呼、とてもとても、貴方は美しい決意をする方でありますな!!」

 

「貴様は引っ込んでろ、ピエロ剣士!!」

 

「何故!? ここで斬り合わず逃げるなど、剣術兵法家は名乗れませんね!!」

 

「そうか。なら―――焼かれて死ね」

 

 死ねと言葉を吐き捨てた騎士は、巧みに鴉を使うことで既に戦地から半ば退避に成功しつつある。背後に王とその連れを守りながら、鴉を移動させて獅子の通り道を作る。既に七騎士から距離を作り出し、近場にいるのは異次元の技量を誇る剣術家(リヒテナウアー)のみ。

 ……それも、今はもう考える必要もないのだが。

 

「―――おやおや。まぁ、これは……?」

 

「やぁ、バベルの糞ダニども。派手にやり過ぎだ。それも七匹全員揃っているとは……ははははは、実に僥倖だ。実に幸運だ。

 だから――――死ねよ。

 肥え太った家畜みたいに死ね。燃える藁のように死ね。

 それでも自害して死にたくないと言うのなら―――俺がお前らを、俺の友と共に皆殺しにしてやる」

 

 口調が荒くれ者(チンピラ)のように悪い戦士。いや、戦士と言うには気配がおぞましい領域で強大で、王者と呼ぶには余りに存在感が獣に寄り過ぎている。そんな見知らぬサーヴァントが一柱、士郎達の背後から悠然と死地である此処まで歩き進む。

 手に持つ武器は、炭化したかのような漆黒の剛剣。それ一本。

 他に宝具となる武装は持っておらず、剣一本で戦う剣士のサーヴァントなのか、それともまだ何かを隠し持っているのか。だが、その疑問も直ぐに晴れた。

 

「だろう―――ムラデン?」

 

 そして、余りにも強大な“何か”が召喚された。遥か数億年前に星を支配していた“霊長《恐竜》”を思わせる爬虫類のような姿であり、四肢が揃っており、背中からは両翼が雄大に伸びている。

 ―――竜種、またはドラゴン。

 指示を受けるまでもなく、召喚された“龍”は息吹を溜め込み、英霊の宝具が玩具に見える程の膨大なエネルギーが凝縮・加速されている。され続けていて、まだその火力を解き放とうともしていない。

 

「……遅いぞ、ストイシャ」

 

「すまねぇな、ユーウェイン。前に殺してた時よりも天使が強くなっていてな。どうも戦闘能力が成長していると言うか、戦術が更新されていると言うか、何でもいいが殺すに時間が掛かってしまった……――で。この四人が、新しい御同輩って言ったところか。

 うむ……うむ――む?

 抑止のサーヴァントって訳じゃなそうだけど、まぁ、力があるならそれで良い。半端な気力と気概しかない英霊だと、このバベルでは直ぐ死ぬからな。その点、根性がありそうで何より」

 

 英霊と竜。見た雰囲気からして、ライダークラス。それもかなり稀少なドラゴンライダー。

 

「いやはや、貴公がこのタイミングで出て来ましたか―――竜殺しのストイシャ」

 

「相も変わらず苛立つ口調で話す野郎だ、リヒテナウアー」

 

「これでも、これから殺す死合相手を最大限尊重しているつもりなのですよ。ほら、どうせなら完敗したって実感しながら死んで頂きたいですし、気分が良い敵の方が斬り応えがあって楽しいですので。

 まぁその点、貴方には期待はしているのですよ。

 殺さずに三頭もの竜を屈服させた絶対性に、竜の帝王と引き分けに持ち込める戦闘能力。うーむ、素晴しいとしか言えない特上英霊でありますねぇ……」

 

「―――で、それが何だ?」

 

「……戯けが―――死にに来たか?」

 

 刹那、剣術家の意識が切り替わった。ヨハンネス・リヒテナウアーは憤怒の気配を纏い―――剣気ではなく、怨念で以って剣を握っていた。直剣と円盾を仕舞い込み、余りに自然な動作で背中の鞘から抜いた両手大剣(ツヴァイヘンダー)を構えていた。

 狂ったような、弾けたような、世界が数段違う―――存在感。

 明らかに先程以上に強くなっている。斬り合うまでもなく、技の鋭さが上がっているであろう事が肌で感じ取れる。

 

「既に霊核へ罅を入れ込んでいる筈なのですが、それが癒える前に此処へ来ましたね。ユーウェイン卿も、ストイシャ王も、ライダーのクラスでありまして、その能力の真髄を出す為には愛すべき相棒もまた完全でなくてはなりません。それなのに、宝具のご友人の傷さえ癒えていない状態で、態々こんな混沌に参加しましたね。

 ……私は、死兵は嫌いなのですよ。

 勝つつもりがなく、敵を殺す気概のない相手は斬っても面白くないのです。

 どうやらこの者達を助ける為に命を捨てて、我々を足止めする為に時間稼ぎを行い、意味のある死を得る為に殺されようと言う気分であるみたいですので」

 

 ―――獅子の騎士と、白い獅子。

 ―――竜殺しの王と、竜の帝王。

 この二人と二体を前にしながらも、ヨハンネス・リヒテナウアーは何一つ怯む事なく歩くだけ。自身の独逸流剣術の真価である大剣を持ち、一秒後の絶殺と絶死を空想しながら死を纏い続けているだけ。

 死ぬ―――全員、死ぬ。

 この剣術家は誰も彼もを斬り殺し、己が剣術が人類史最強なのだと証明し続けた。

 

「―――行って下さいませ、王!!」

 

「ほら、こっちも派手に死にたいんでな。それにどうせ死ぬなら、目的を持って前のめりってのが英雄だ。後、何だ、そっちのアンタはアーサー王だったか?」

 

「……ええ」

 

 背後からの肯定の返事にストイシャは頷き、強く剣の柄を握り締める。

 

「ユーウェインの決意、汲んでやりなよ。ま、赤の他人のオレが言えた事じゃねぇが、こいつとは同じ死線を潜った戦友だ。気持ち程度は分かってると思うんでな。

 そんで生き残れれば、新参さんたちも此処がこうゆう世界だって事も分かったと思うし、まずは生き足掻いて戦略を立て直すと良いさ。その為だったら、まぁ、あれだな―――オレは別に死んでも良いと思っている。

 ……無駄死にだけは、やっぱ無念が残ってしたくない訳さ」

 

 最初から、ユーウェインもストイシャも死に体だ。天使の襲撃も度重なり、傷の回復も時間が掛かるのがバベルでの戦争だ。そして、この二人が見て来たバベルの戦争において、尤も殺し合いたくないのがリヒテナウアーである。

 理由は単純、白兵戦で勝てないから。

 だからと言って宝具を使った所で、宝具の発動を許すような剣士ではない。真名解放される瞬間を好機に捕え、刹那で踏み込んで斬り捨てる真名殺しが可能な剣技を持つサーヴァント。

 

「―――さようなら、ユーウェイン」

 

「ええ―――おさらばです。我らの王よ」

 

 ならば、もう遠慮はいらない。何故なら、自分達が死ねばバベルの塔を破壊する戦力が足りないが、生きていても必要な数値にまで足りない現状を―――アーサー王と、他の三人が生きていればクリア出来る。その事をユーウェインは悟り、ストイシャはこのバベルで意気投合した戦友の特攻に付き合った。

 どうせ最期なら、派手に死ぬのも一興か。

 ユーウェインの仕事を手伝うのもストイシャからすれば、召喚されたこの今生の価値を得る為に必要なこと。渡りに船だった。

 

「……あぁ―――我ら騎士の王よ。行ってしまわれましたか」

 

 この場から遠ざかる四人の足音を聞き、安心したかのように獅子の騎士(ユーウェイン)は目を瞑った。このバベルでは死ばかりを見て、英霊らが殺され尽くされ、出会えないと思って死んだ嘗ての友も死に絶え、それでも残るモノがあるのだとすれば、今のこの感傷なのだろう。

 助けられた人など誰もなく、折角出来たこの友人(ストイシャ)にも死を強要してしまった。

 

「おう、バベルの糞ダニ共。御別れの間ずっと黙ってる何て、空気を読んで貰って悪いな!」

 

 と言いつつ、騎士王と共に居た魔術師共も、空気を読んでいたのもストイシャは分かっていた。此方の作戦を一目で把握し、常に動けるようにしていたのも彼は察しており、こうして最初の目的通り、全員を逃がす事が出来た。

 

「良く言う口さ。心にもない言葉を喋る王様だよ、貴方は。そこの竜王で威嚇し続けてた癖にね」

 

「―――ふふふ。クク、あははははははははは!

 全く、だから貴様らは胸糞悪い。特に意味もなく悪役三段嗤いをしないと、こっちの戦意も萎えてしまうねぇ……―――っち、クソが。

 やっぱ、邪魔臭いのは火で燻るに限るか。なぁアンタもそう思ってんだろう、アサシン」

 

「つれない男だ。真名で呼んでくれても良いんだよ」

 

「ほざけ、救世主殺し。見た目は兎も角、テメェの性格はオレに似ていて好みに遠過ぎるんだよ」

 

「ふぅん。やっぱり、つれない男だね」

 

 鮮血色の殺意を隠さず、救世主殺しのアサシンはストイシャに微笑み返した。竜殺しの戦士にして、竜王と契約を結んだ御伽話のドラゴンライダー。

 さて―――殺すべきか、否か。

 本当に自分は世界を守ろうと足掻く英霊を殺したいのか、否か。

 しかし、間違いなく、殺すのは楽しい。呪いは確かに、この地獄を愉しんでいる。だがバベルの完成は人類史の完結であり、アサシンもまた狩猟王の大望成就に心血を注ぐ一兵である。

 それならば、やはり殺すしかないのだと――救世主殺しは、救世主の首を撥ねた処刑刀を敵に向けた

 

「―――おい。そろそろ殺すぞ」

 

 鴉が全て魔剣に戻り、風景が元通りとなった。外法王(キャスター)は忌々しいと言う感情を隠さず、仲間の六騎に自身の殺意を伝播させた。無論、彼の中で常に蠢く呪詛も大気へ溶け出し、垂れ流しになった思念で地面全てが一瞬で黒い泥沼に侵食された。とある魔術師がケイオスダイトと命名した現象であり、神も魔も人も含めたこの世全ての呪いを熟知するキャスターだからこそ可能な大魔術。そして、この呪泥は一瞬でサーヴァントの霊体を溶かすが、他のバベルの六騎からすれば、そもそも受肉した自分自身の霊体と同じ原理で運営される魔術である。抵抗しようと気を張る必要さえなく、キャスターの呪いを防いでいる。

 だが、ユーウェインとストイシャは違う。

 触れた瞬間、発狂するのが当たり前。霊体が崩れるのが自然。

 

「―――……ふん。これで呪いのつもりか」

 

「おいおいおい、もっと気合い入れて恨めよ。こんなんで死ねるか、雑魚」

 

 避けるまでもないと、二人は呪泥を踏み潰した。何ら障害にもならないと笑い、その二人に付き合わされて獅子と竜王も呪泥の沼を同じ様に踏み躙った。自分の相棒が耐えていると言うのに、自分が耐えられない訳がないと平然としていた。

 

「安心しろ。まだまだ魂に染みるだろう。罅割れた霊核ならば、特にな―――」

 

 被ったフードの中でキャスターはほくそ笑む。あの二人と二体が味わっている激痛は魂が弾け飛んでも可笑しくなく、精神耐性のない意志薄弱な人間なら物理的に脳味噌が爆散している程。

 

「―――だが、侮っていたのは私の方だ。それは認めよう。

 この呪いを気合いで飲み干し、霊核を一時的に補強するとはな。精神論にも程がある根性だ。それこそ英雄だと褒め称えよう。

 しかし、その行いは間違いだとも断じよう。私の呪いで霊核を補うなど、爆弾の導火線に火を付けるのと同じことだ。必ず死ぬと言うことだ」

 

 ならばこそ、敵が此処を死地と決めたのならば―――そうしてやれば良いだけだ。

 


















 ユーウェインとストイシャの詳しい話は次回にでも。


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