鏡影鬼太郎   作:殺六縁起

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妖怪と人間は分かりあうことは出来ない・・・当たり前だ。人間と俺ら妖怪は違う
なのに、なんで兄さんは人間を守ろうとする?幽霊族は人間にどんな目に遭ったか・・・・
知らない訳が無いだろう?

俺はそう思い歩き出す。背後に転がる人間たちの死体を無視して

今日の魂は美味しかったな・・・悪人の魂はやはり美味しい



闇の鬼太郎

 

 

 

近年、強盗殺人を犯して指名手配だった悪党たちの謎の死が世間を騒がせた

その死体は外部にも内部にも一切の怪我もなくまるで魂を抜かれたように死んでいたらしい

目撃者によると高校生くらいの古びた服を着た白髪の男性が事件現場で目撃されている

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わりとある路地裏で不良に青年が絡まれていた

 

「おい、金出せよ」

「いや、持ってないですって僕は何も・・・」

 

 

どうやらいちゃもんつけられた青年がお金をゆすられているらしい

 

「おら、お前に当たって全身バキバキなんだから慰謝料払えや!!」

 

 

「へえー・・じゃあもっとバキバキにしてやろうか?」

そこへ現れた一人の男

 

「あ?誰だてめー?」

 

「大怪我したわりには元気そうだからもっと大怪我させようと思ってね・・・」

 

そう言うとその男は髪を伸ばし不良たちに襲い掛かった

 

不良たちは路地に響くくらい絶叫した。

 

その後、路地裏から血だらけの不良たちがダッシュで逃げ出した。顔は青ざめていて死を体験したようだった

 

 

「あ・・ありがとうございます」

不良に絡まれていた青年はその男に礼を言った。絶対人間でないと分かっていながら

 

 

「ああ、怪我が無くて良かったね」

そう言うと男は手を差し伸べた

 

「はい握手」

 

「え?あ。はい」

 

青年はその男が差し伸べた手を握って握手した

だがその時、男はにやりと笑うと青年の握った手を思いっきり握り青年は握られた痛みで苦しんだ

 

「い、いたた!」

 

何とか手が男の手から離すことができた青年は恐怖し慌てて逃げ出した。青年の手は赤く腫れていた

 

 

「さあ、今夜絞め殺してやるよ」

 

そう言うと男は今さっき逃げた青年・・ではなく血だらけになって逃げていた不良たちの血痕を追った

 

その後、数名の不良の変死体が見つかったそうだ

 

 

 

 

 

夜になり青年は家で机に座っていた。体は小刻みに震え頭には不良たちがあの男の髪で首を絞められたり、体を刺されたりととても髪では出来ないような攻撃で不良たちが痛め付けられた様子が記憶に残っていた

 

「あんなのありえない・・・もしかしたらあの男は・・・」

 

怯えながら青年は手に残った腫れを見た。手には人の手で思いっきり握られた跡がついており治る気配がない

 

「俺の手・・・どうなったんだ?」

 

と、不安がっていると最近噂になっている妖怪ポストの事を思い出した

 

「そうだ!妖怪ポストに手紙を入れて、鬼太郎を呼ぼう!」

 

そう言うと青年は鉛筆と紙を取り出すとさっき体験したことや現在の自分の状況を書こうとした。だが手が動かない。いくら腫れているからとはいえ文字が書けないはずがない・・だが手が動かない

 

「え?なんで?」

 

動かない手は鉛筆を勝手に放し鉛筆を落とした。そして青年の首を掴みだした

 

「ぐふっ・・・が・・」

 

青年の手は青年の首をまるで誰かに操られているかのように絞めだした

自分で自分の首の絞めている状態になっているがその絞めつけは青年の腕力を超えており青年は死ぬ寸前だった

 

その様子を遠くから見ている男がいたその男は別の家の屋根の上で右手を思いっきり握って笑っていた

 

「ハハハッ絞め殺してやる」

 

と、その時男の髪の毛がアンテナのように立った

男は何かを察知しその場からジャンプして離れると、さっきまでいた場所に無数の髪でできた針が刺さった。

 

 

「思ったより早かったな・・・ゲゲゲの鬼太郎」

 

男を攻撃したのはゲゲゲの鬼太郎だった

 

「お前は誰だ!?」

 

鬼太郎がその男に問いかける。現在真夜中、暗闇で男の顔は見えなかったが月の光がその男の姿を照らした

 

「俺は鬼太郎だよ。兄さん」

 

『鏡影鬼太郎』

 

「な!?」

 

鬼太郎は驚いた。それもそのはず、鬼太郎と名乗るその男は髪が白髪で自分と左右非対称。背はまなより少し高いくらいだがそれ以外は自分とほとんど同じだったからだ

 

「兄さんだと!?」

「そう。反影鏡により生み出された・・・と言えば分かるかな?俺は兄さんと雲外鏡が戦った時に生まれた。だから・・鏡影鬼太郎かな。兄さんと区別するならな。そして俺の目的は人間共を滅ぼすことだ」

「お前は僕と成り代わるのが目的じゃ無いのか」

 

反影鏡に映った人間は反影鏡から生み出された自分そっくりの存在に殺され成り代わる

それが反影鏡の伝説だった・・だが鏡影鬼太郎はそんなつもりは無いと言う

 

「俺は人間を許さない。幽霊族を絶滅に追い込んだ人間を!親父と兄さんがやらないなら俺がやる。」

 

「なんじゃと?」

 

鏡影鬼太郎の発言に目玉親父が鬼太郎の髪の毛から顔を出し、驚愕を露わにした

 

「そんな馬鹿な事は止めろ!争いを争いで解決しようとするのは愚行じゃ!!」

「愚行・・・? 人間の身勝手な行動で起こった妖怪に関する問題を無償で助ける兄さんが善行でこの世の害悪な人間の駆除をしようとする俺の考えが愚行だと?父さんは妖怪の味方なのか?それとも人間の味方なのか?」

「儂は・・平和を愛する者の味方じゃ。」

「そうなんだ・・・平和思考の人間と妖怪のね・・・一体人間の中にそんな考え方をする奴はどれほどしかいないんだろうな」

 

「鏡影鬼太郎だったか?お前の企みは僕が止める!髪の毛針!!」

鬼太郎は鏡影鬼太郎と目玉親父との会話中に割り込んで攻撃してきた。どうやら彼の話は自分と異なる存在を受け入れられない奴が大っ嫌いな鬼太郎にとって我慢できなかったんだろう

 

「短気だな。兄さん・・佐紀美」

 

鬼太郎の髪の毛針が鏡影鬼太郎に当たる前に何者かが割って入ってきた。そのまま持っていた髪切りハサミで髪の毛針を切り裂き鏡影鬼太郎を守った

その防御の仕方には鬼太郎と目玉親父には見覚えがあった

以前鬼太郎と猫娘の2人掛かりでようやく倒せた妖怪・口裂け女だった

 

「お前は口裂け女!」

「彼の邪魔はさせない。」

「そういう訳だ。俺の邪魔をするのなら佐紀美と二人掛かりで兄さんを倒すよ。じゃあね」

 

鏡影鬼太郎はそう言うと口裂け女と共に屋根から飛び降りた。

鬼太郎は急いで落下したほうを見るが下には誰もいなかった

 

 

 

その後も鏡影鬼太郎の悪行(彼にとっては善行)は続いた。

夜になると悪人、ガラの悪い人間を主に殺しにかかった。魂を抜き取りそのまま食べたり、天ぷらにして食べたりと多種多様な食べ方をした。

おなか一杯になっても勢いは止まらなかった。生きたまま地獄送りにしたり鬼太郎憑きで首を絞め殺したり、時には髪の毛針、体内電気、霊毛ちゃんちゃんこを使い不可能犯罪を繰り返した

もちろんそんなことをしていたらニュースにも取り上げられ、妖怪ポストにも手紙が送られくる。それも山のように・・・

 

ゲゲゲハウスの鬼太郎達もしびれを切らす

「鬼太郎!これ以上奴を野放しには出来んぞ!」

「はい!父さん」

 

早速鬼太郎は、猫娘、小泣きじじい、砂かけばばあ、一反木綿、ぬりかべを連れて鏡影鬼太郎を成敗しに行った

 

 

探すといっても鏡影鬼太郎の妖気を見つけるのは難しい。鏡の世界を行き来できる為、妖気が途中で切れてしまうからだ。ならば鏡爺と連れてきたらいいのだが。現在鏡に入れないらしい。おそらく鏡影鬼太郎が雲外鏡と同じことをやっているのだろう

 

ならばどうするか?被害が多発している地域を分かれて捜索するしかない

 

鬼太郎ファミリーは現場に到着すると一斉に散らばり鏡影鬼太郎を捜索した

 

その数分後鏡影鬼太郎は見つかった。

正確には鬼太郎と目玉親父の前に姿を現した

 

「やあ、兄さん。待っていたよ・・さあ兄弟喧嘩を始めようか」

 

 

 

場所は夜中の都内、ビルが立ち並ぶこの場所で妖怪界で指折りの兄弟喧嘩が始まった

 

「髪の毛針!」

 

鬼太郎がそう叫び髪の毛針を勢いよく発射するが鏡影鬼太郎も髪の毛針を無言で発射し相殺した

 

「リモコン下駄」

 

続いてリモコン下駄を鏡影鬼太郎に向けて飛ばすが鏡影鬼太郎は霊毛ちゃんちゃんこで弾いた

 

ちゃんちゃんこを着直すと鏡影鬼太郎はジャンプし自分の髪を最大限に伸ばし髪の毛槍を放った。

 

「くっ」

 

鬼太郎は髪の毛槍を躱した。だが鏡影鬼太郎は一本だけではなく6本の槍を放った。

「兄さん。これならどうだ?」

 

6本の槍は鬼太郎を串刺しにする勢いで放たれたが鬼太郎は間一髪で避けた、そして地面に突き刺さった6本の髪の毛槍を霊毛ちゃんちゃんこで包みそのまま鏡影鬼太郎ごと背負い投げをした

 

鏡影鬼太郎は地面より高いところにいたため叩きつけられたというより落下だった。

「がはっ!!」

 

「髪の毛槍は威力は高いが隙が多い。」

「だからどうした?」

 

鏡影鬼太郎は落下により地面のコンクリートが破壊されたのを利用し地中に潜った。

だが鬼太郎は特に驚きもせずに助っ人を呼んだ

 

「ぬりかべ!!」

 

「ぬ・り・か・べ」

「おわっ!!」

 

地面に潜った鏡影鬼太郎だったが既に地中にいたぬりかべにより地中から追い出された

騒ぎを聞きつけた鬼太郎ファミリーが集結しだした

 

「どうやら派手に暴れたから気づかれたか・・・まあいいか」

「くらえ!おぎゃあ、おぎゃあ!」

鏡影鬼太郎の背後から小泣きじじいが泣きながら落下してきた

 

「おっと!」

鏡影鬼太郎はなんとか両手で小泣きじじいを持ち上げるが次第に石のように重くなっていく。

「ぐぐぐ・・」

「ぬりかーべー!」

ぬりかべがさらに小泣きじじいごと鏡影鬼太郎を潰しにかかる

 

「ちょっと・・まっ」

 

鏡影鬼太郎が言い終わる前にぬりかべは倒れた

 

だがすぐにぬりかべが倒れていない地面から鏡影鬼太郎は出てきた。鏡影鬼太郎は倒れたぬりかべに着地すると手を付け体内電気を流しぬりかべと下にいる小泣きじじいごと感電させた

 

「倒れたらすぐには立てないだろ」

 

「よくも2人を!喰らえ痺れ砂!!」

 

今度は砂かけばばあが痺れ砂をかけるが鏡影鬼太郎のちゃんちゃんこで跳ね返され砂かけばばあが痺れた

 

「か・・体が!!」

 

砂かけばばあは体が痺れてしまい、そのまま倒れた

 

「後は兄さんと親父だけだよ。猫娘さんは佐紀美が足止めしてるから」

「何!?」

 

「さて・・・決着を着けようか兄さん。」

「兄さんじゃない・・ゲゲゲの鬼太郎だ!」

「そう・・別に呼び方変えないけど」

 

「「リモコン下駄」」

 

2人は一斉にリモコン下駄を放った下駄は一度はぶつかったがすぐに相手に向かって飛んできた

両者ともちゃんちゃんこで下駄を弾くと、弾かれた下駄にちゃんちゃんこを投げ下駄を覆い動きを封した

 

両者とも互いの武器で武器を封じ無防備な状態になった

 

「兄さん。覚悟しろよ!」

「お前もな!!」

 

2人の鬼太郎は走り出し相手を殴り掛かった

鬼太郎は鏡影鬼太郎よりも小柄なため体を少し逸らすだけで鏡影鬼太郎のパンチを回避できた

一方鏡影鬼太郎は避けきれず鬼太郎のパンチを顔面で受けてしまい吹っ飛ばされた

 

吹っ飛ばされた鏡影鬼太郎はそのままビルにぶつかった

 

「はあ、はあ、僕の勝ちだ」

 

 

 

「今回はな」

 

突然鏡影鬼太郎はぶつけられたビルから立ち上がりそう呟いた

鏡影鬼太郎の顔は殴られたせいで顔に亀裂が入っていた

 

「今回は手を引くよ…また会おう兄さん」

 

そう言うと鏡影鬼太郎はビルの窓から逃げてしまった

 

 

 

その後、猫娘と戦っていた口裂け女も撤退したそうだ

 

 

 

 

 




人間に助けられた妖怪が恩返し!?
そんな妖怪には俺が説教してやろうと思ったがどうやらその人間は訳ありのようだ
面白いその恩返しというのも子供を攫うことらしいしな


次回、鏡影鬼太郎『夜道の通り魔』


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