鏡影鬼太郎   作:殺六縁起

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神野悪五郎と鏡影鬼太郎との対決の中、狼谷快我の家に一人の少年が訪ねてきた。
その少年は狼谷家に本来ならインターフォンを押さずとも立ち入りを許させる。だが、この少年は立ち入ってはならない。なぜならこの少年は死んだはずだからだ。

狼谷陸。十年前に死んだ狼谷快我の弟


「久しぶり。兄さん」




呪われた兄弟

十年前、狼谷家は旅行先で事故にあった。がけ崩れに巻き込まれ家族は死んだ。両親の遺体が発見され、弟の陸は履いていた靴の片方が見つかったからだ。だが、ただ一人長男の狼谷快我だけ生き残った。彼は奇跡的に助かったのだった。後に彼は親戚をたらい回しにされ犬山まなの通う学校へ転校したのだった

 

だが一人だけ残された快我は感情を失ってしまった。死さえ恐れないほどに・・・・

 

 

 

「お前・・・陸か!?」

「もちろんそうだよ。兄さん」

「信じられない・・・生きてたんだ!!」

「まあ、いろいろあってね。」

 

 

陸の話によると彼は土砂崩れに巻き込まれた際、川に落ち、そのまま下流へ流されていき、辺りをさ迷った後、とある寺院に行きつきそこでお世話になったそうだ。

 

ショックで記憶を失ってしまったらしく陸は自分がだれか分からないまま生きてきた。そしてつい先日突然記憶を思い出し、今に至るとのことだった。

 

 

快我は久しぶりに心から喜び兄弟で夜中になるまで語り合った。

 

 

「おやおや先客がいらしたようですね・・・快我君の弟、陸。これは興味深い・・・」

 

その光景を見ていた夜道怪はとある場所へと向かった。ゲゲゲハウスだ

 

 

 

 

 

 

「死んだ人間がやってきた?」

「ええ。この目で確かに。あれは生きてはおりませんよ。動く死体そのものですよ」

 

夜道怪はゲゲゲハウスに行き見てきたことをすべて鬼太郎と目玉親父に話した。狼谷家にやってきた死んだ弟。そして陸がお世話になったという寺院についても

 

「彼が言っていた寺院それは以前あっしが宿を借りた場所でして、知っていたんですよ」

「その寺院に何かあるのか?」

「十五年前に潰れていますよ。もう誰も管理していないので荒れ果てていましたよ。」

「じゃあ、十年前には既に誰もいなかったと?」

「ええ・・・ですので彼の話は偽りなのですよ。誰もいない寺院で死に絶え妖怪になった少年。それが狼谷陸なのですよ」

 

『狼谷陸』

 

数日後、夜道怪は狼谷家を訪ねた。インターフォンを鳴らし数秒後ドアが開いた

「はーい、どちら様?」

 

出てきたのは狼谷快我だったが目の前にいた男二人に快我は困惑していた。二人とも会ったことのあったが、その内の一人が髭を生やした小柄のじいさんがいたら誰でも同じ反応をしてしまうだろう

 

「この方は画家でねえ、あっしがお呼びしたんですよ。生きてたんでしょう?坊ちゃんの弟が」

「あれ、話したかな?」

「いえいえ、近くを通りかかった時楽しい会話が聞こえましてね、覗いたら弟君がいたのでもしやと思い色々調べましてね・・」

「へえ・・・」

 

 

その後狼谷陸の似顔絵を画家が描くことになり陸は椅子に座った

最初は画家に自分を描かれることに照れていた陸。画家は彼の緊張を解こうと陸を描きながらいくつか質問していった

 

「緊張されていますね、ではいくつかあなたに向けて質問します。正直に答えてください。」

「はい。」

「あなたの名前は?」

「狼谷陸。」

「あなたの好きな食べ物は?」

「ハンバーグ。」

「あなたの好きな動物は?」

「犬」

「あなたの好きな場所は?」

「遊園地。」

「あなたの好きな人は?」

「兄さん。」

「あなたの好きな遊びは?」

「缶蹴り。」

「あなたの好きな季節は?」

「冬。」

「あなたの好きな天気は?」

「晴れ。」

「あなたの好きなのは海と山ではどっち?」

「海。」

「あなたは何かしたいことはある?」

「友達と戯れたい。」

「あなたの好きな自然は?」

「山。生き物がいっぱいいてあきないから。」

「あなたの好きな四季は?」

「夏。いっぱい食べ物にありつけるから。」

「あなたの好きなゲームは?」

「追いかけっこ。人を追いかけるのが好き。」

「あなたの好きな人間は?」

「狼谷快我。彼はおいしそう・・・」

「あなたの行ってみたい所は?」

「墓地。懐かしい・・・」

「あなたの好きな生き物は?」

「人間。私の食糧・・・」

「あなたの好きな部位は?」

「生き胆・・・あれはうまい・・・」

「あなたは一体何者だ?」

「私は・・・・私は・・・・・・私・・・は・・・」

 

 

「画家さん、一体何を?」

「坊ちゃんは何もせずに見ていてください」

自分の弟の様子が段々おかしくなっていき不安になる快我に夜道怪は何もするなと忠告する

 

 

「さあ、どうなんだ!お前は一体何者だ!?」

「私は・・・私は・・・!!!!!」

 

その時画家の髪の毛が立った。まるで妖怪アンテナのように。陸から妖気が溢れ出し周囲には不穏な空気が漂う

 

「私の名は陰摩羅鬼。陰摩羅鬼だ!!!」

 

狼谷陸の背中から巨大な三つ目の烏のような妖怪が出現した

 

「これが坊ちゃんの弟の正体・・・」

「陸・・・お前は一体?」

「父さん、出ました!あれが正体です!!」

「あれは供養をしてもらえなかった死人がなる妖怪。陰摩羅鬼じゃ!」

 

画家はそう言うと、着ていた服と付け髭を脱いだ。画家の正体はゲゲゲの鬼太郎

 

『陰摩羅鬼』

 

 

「貴様、ゲゲゲの鬼太郎だな!私の邪魔をしおって!」

 

「陰摩羅鬼!お前の茶番もここまでだ!!霊毛ちゃんちゃんこ!!」

 

鬼太郎は霊毛ちゃんちゃんこを陰摩羅鬼に向けて投げた

 

「私を退治する気だな!そうはさせるか!!」

 

陰摩羅鬼は口から火炎を放ち鬼太郎が描いていた絵を燃やし、ちゃんちゃんこを躱し陸の体に戻った。

 

「しまった!」

 

そのまま陸の体を乗っ取り陰摩羅鬼はしゃべりだした

 

「あれは儀式だったんだろ?妖怪退治でやられたよ!」

「やられた?誰に」

「お前ら調べたんだろ?私がどこにいたのかを」

「まさか・・・」

「あの寺院を廃院にしたのは私だ!!十五年前私がやった」

「お前・・そこにいた人たちはどうした?」

「食ってやったよ。全員!!」

「貴様!!」

「そう怒るなよ!!私はさっき、お前がやった術を当時食らってな!!まあ当時取り憑いていた人間の供養で連れてこられてな。退治されそうだったから殺して喰った。あれは正当防衛だ。私は悪くない」

 

話が終わるころにはちゃんちゃんこは鬼太郎の所へ戻ってきており、いつでも攻撃可能な状況だった

 

 

「僕はお前を倒す」

「できるかな?お前に?」

 

陰摩羅鬼は陸の背中から黒い翼を生やし、外へ飛んでいった

 

「一反木綿!!」

「コットン招致!!」

 

鬼太郎の呼びかけに外で待機していた一反木綿が現れ、鬼太郎を乗せ後を追いかけた

 

「夜道怪・・・一体何が起きてる?陸に何が?」

「坊ちゃん。弟君は陰摩羅鬼という妖怪だったのですよ」

夜道怪は快我に事情をすべて話した。戻りかけた快我の感情はまた失ってしまった

 

「あっしは後を追いかけます。坊ちゃんはここに残ってください」

そういった後鬼太郎を追いかけに夜道怪は闇に消えた

 

 

「僕は・・・・」

 

 

一人残った快我は自分の部屋に入り引きこもってしまった

 

 

場面は鬼太郎と陰摩羅鬼

 

「待て!陰摩羅鬼!!髪の毛針」

 

鬼太郎は髪の毛針を飛ばしたが陰摩羅鬼の火炎で燃やされた

陸の口から放たれた火炎は髪の毛針を燃やし尽くしそのまま鬼太郎に襲い掛かった

「ちゃんちゃんこ!!」

 

ちゃんちゃんこで火炎を防ぐ鬼太郎。だが火炎を放ちながら陰摩羅鬼は詰め寄ってきた

 

「何時まで耐えきれるかな?」

 

「この!!」

 

鬼太郎はちゃんちゃんこで火炎を防ぎながら髪を伸ばし陰摩羅鬼を拘束し、体内電気を放つ

「体内電気!!」

「ぐわあああ!!」

「食らえ!!」

 

鬼太郎は髪を動かし陰摩羅鬼を拘束したまま地面へ叩きつける

 

「あっしの出番ですね!!」

下では追いついた夜道怪が闇を展開し待機していた

 

「いいタイミングじゃ!!鬼太郎そのまま叩きつけるんじゃ!!」

「はい父さん!!」

 

鬼太郎が夜道怪の展開した闇へと陰摩羅鬼を叩きつけそのまま闇へ飲み込もうとした

しかし鬼太郎に別方向から突風が襲ってきた

 

「うわっ!!誰だ!?」

 

「ジパング・・ヨウカイ・・・キタロウ・・・タオス」

 

吹き飛ばされた鬼太郎と一反木綿は攻撃が来た方を見るとそこには見知った妖怪がいた

 

「お前はウィザードマン・ジード!!」

 

「キタロウ・・・タオス・・・ソレガ・・・俺ノ・・」

 

突風により鬼太郎の髪が引き裂かれ陰摩羅鬼が解放された

 

「助かったぜ・・・ええっと・・」

「ウィザードマン・ジードダ」

「そうか。ジード。ありがとな」

 

「鬼太郎!二対一じゃきつい。ここは一旦引くんじゃ!!」

「はい!父さん!!」

 

「逃がすか!!」

 

撤退する鬼太郎を追いかける陰摩羅鬼。一反木綿は真下へと下降し夜道怪へと向かう。

夜道怪も鬼太郎の意図を察し闇を展開し備える

 

しかし、鬼太郎が闇に逃げ込める寸での所で鬼太郎が何かに引っ掛かり電気が流れるような痛みが襲った

 

「ぐわああああ!!何が・・」

 

目の前には闇が展開しているが鬼太郎の体、いや、鬼太郎周辺には巨大な結界が張られていた

 

「ジードの仕業か!」

 

「まるで蜘蛛の巣にでも引っ掛かったような無様な姿だな」

 

陰摩羅鬼は身動きの取れない鬼太郎と一反木綿に向けて火炎を放った

体が拘束され霊毛ちゃんちゃんこも使うことが出来ずに直接攻撃を受けてしまった

 

 

夜道怪は下から闇を送り込むが、結界が闇を弾いてしまい攻撃することが出来なかった

 

「このままでは・・・」

 

夜道怪が悪戦苦闘する中、背後にジードが瞬間移動してきた

 

「ジパング・・・ヨウカイ・・タオス」

 

「いつの間に!?」

 

夜道怪が振り向いた瞬間ジードに首を絞められてしまいそのまま夜道怪の足が浮かされる

 

「せめてフードの中を・・」

 

ジードはフードで顔を覆い顔が見えなかった。なので中を覗こうとフードの中を凝視するが・・

 

ジードの顔には無数の目があった

 

「これは!?」

 

無数に出現した目が一斉に夜道怪を睨んだ瞬間、今度は夜道怪の首を絞めていた手が無数に出現し地面へと叩きつけた

地面を抉るほどの威力で叩きつけられ夜道怪は動かなくなってしまった

 

ジードは上空の結界へ手を広げ呪文を唱えた

 

火炎を放射していた陰摩羅鬼を瞬間移動で瞬時に移動させ、鬼太郎を拘束した結界の上空に雷雲を作り出し、竜巻を発生させ雷と突風の同時攻撃を繰り出される

 

「ライジング・ストーム」

 

 

結界から上が竜巻と雷が襲い鬼太郎を飲み込んでいった

 

 

 

 

ジードの攻撃が収まった後結界が解除され地面にちゃんちゃんこの球体が落ちてきた

どうやら鬼太郎が結界の呪縛を受けながらも一反木綿ごと自分たちをちゃんちゃんこで包み攻撃を防いだようだ

 

 

「しぶといな・・・だがちゃんちゃんこを開く勇気があるかな?」

 

ちゃんちゃんこを開けば周囲にいるジード、そして瞬間移動された陰摩羅鬼がおり、もし開けば袋叩きだ。現在袋に入っている訳だが・・

 

 

陰摩羅鬼は余裕の表情でちゃんちゃんこを剥がす

 

「はああ!!」

 

ちゃんちゃんこを剥がした陰摩羅鬼だったがそのちゃんちゃんこは吸い込まれるよう一点に収縮し陰摩羅鬼の顔面を殴った

 

「ぐはあっ!!」

 

何が起きたかというとちゃんちゃんこが引きはがさせる瞬間、そのまま鬼太郎が腕にちゃんちゃんこを巻きつけ、陰摩羅鬼を殴ったのだ

 

さらにそのままタコ殴りし陰摩羅鬼を追い詰める

ジードも攻撃しようとするが、一反木綿がジードの首に巻き付き首を絞める

 

「反撃開始ばーい!!」

 

「グ・・・グ・・・バイバイの・・・・・」

 

首を絞められたジードは目と手、足、などの体の各部を無数に出現させ一反木綿を飲み込んだ

 

 

 

一方タコ殴りされた陰摩羅鬼は足を鉤爪に変え鬼太郎を襲う

鬼太郎と陰摩羅鬼は互いを攻撃しあったが一瞬の隙を突き陰摩羅鬼をちゃんちゃんこで拘束することに成功した

 

「ぐわっ!しまった・・・」

 

「これで・・・終わりだ・・・指鉄砲。」

 

鬼太郎の指鉄砲が陰摩羅鬼の眉間を打ち抜き陰摩羅鬼は倒れた

 

「この私・・が・・・」

 

陰摩羅鬼は倒れた・・しかし背中から陰摩羅鬼本体が飛び出し、そのまま空へ逃げた

 

「この私がこんな所で死ぬわけにはいかん!!」

 

「まだあんな力が!一反木綿!」

 

逃げ出した陰摩羅鬼を追いかけようと一反木綿を呼ぶ鬼太郎。だが一反木綿はジードに踏まれておりボロボロになっていた

 

「一反木綿・・・」

 

一反木綿を踏みつけているジードは逃げ出した陰摩羅鬼へと視線を向けた。そして片手から紋章を出現させそこからビームのようなものを陰摩羅鬼目掛けて放った

 

ビームは陰摩羅鬼を直撃し、陰摩羅鬼は消滅してしまった

 

 

「何故陰摩羅鬼を・・・お前達は仲間じゃなかったのか?」

「・・・・・・・」

 

ジードは鬼太郎の問いかけを無視し陸の方へと歩み寄っていく

そして陸の死体を結界で覆った

陸の肉体の傷が徐々に治癒されていった

 

「傷が治っていく?」

 

しかし徐々に治癒が腐敗していき最後には骨だけになった

 

 

「腐敗させたのか?いや、元に戻したのか。ジードお前は一体・・・」

 

鬼太郎が振り向くとそこには誰もいなかった。ウィザードマン・ジードは妖怪退治を邪魔したが最終的に自分で退治し、取り憑かれた死体を本来の姿に戻し消えていった

 

まるで誰もしてあげられなかった供養をしたかのように

 

 

その後、重傷を負った陰摩羅鬼と一反木綿はゲゲゲの森で治療を受けた完治までにはまだじかんがかかるらしい。

一方、狼谷快我は弟の死を知ってしまい暫く引きこもっていたが弟の骨を遺骨に収め日々の日常を取り戻したのだった

 

 

「骨が戻っただけで充分だ。」

 

 

 

 

鬼太郎は快我と一緒に陸を供養し、ゲゲゲの森へと帰っていった

 

 

 

 

 

 




地獄の刀を振るいし復讐者
彼の目的は父親の死
鏡影鬼太郎は食い止めることが出来るのか!?それとも・・・



次回鏡鬼太郎、『復讐の鬼人』

新たな世界の扉が開く

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