切札持った僕のヒーローアカデミア   作:ソナ刹那

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続けるか未定のヒロアカ原作SS第二弾。
まだこっちの方がモチベーションある。
他にもゼロノスを題材にしたヒロアカとか考えてたりするけど、さすがに書かなさそう。
短め、気楽に読んでください。二番煎じだったら申し訳ない。



Jの始まり/これがオリジン

 確か僕が小学生になるよりも前のこと。あまりに小さい頃のことではっきりとした記憶はない。なにで遊んだとか、だれと仲が良かったとか、どんな子供だったとか、今なお続いている要素ならば実感できるけど、周りの大人たちに聞かされるだけの事実とやらは、僕の中ではフィクションと大して違いなかった。

 

 そんな僕にも忘れられない当時の思い出というのがある。厳密には部分的にははっきりしている、そんな思い出だ。幼かった僕はある日誘拐にあった。誘拐と言ってもそんな大層なものでもない。警察沙汰でもないし、ましてや身代金の請求などはないし、そもそも未遂だった。そこら辺の詳細は覚えていないが大の大人になにか怒鳴られるように言葉を浴びながら、恐怖で言うことを聞かなくなった身体に呆然とした僕を連れ去ろうとした。結論から言うと助かった。ある男の人が助けてくれたのだ。顔は覚えていない。日の光が眩しくて顔の部分だけ飛んでいた。ただ彼が被っていたハットだけが印象的だった。

 

 

「坊主、大丈夫か?」

 

 

 手を伸ばしながらそう声をかけた。僕はゆっくり手を取って身体を起こした。カッコいいと思った。スマートに大人たちを無力化する姿、シンプルにヒーローのようだと思った。あなたはヒーローですか、そう聞いていた。

 

 

「ヒーローねぇ……そう呼ばれることもあるな」

 

 

 少し照れるようにけれどそこに自信が欠けた様子はなく、誇らしげに応えた。どうしたらあなたみたいになれますか。

 

 

「ヒーローになりたいのか?」

 

 

 はい!オールマイトみたいにいつも笑顔でみんなを助けられるようなそんなヒーローに!彼は少し唸って僕の頭に被っていたハットをちょこんと乗っけた。大きくて目まで隠れてしまった。

 

 

「誰かのために、何かのために、そうやって自分の命を賭けることに誇りを持てるやつ。ヒーローってのはそういうやつだ。喧嘩が強いとか、とんでも特技を持っていることが大事なんじゃない。怖くても辛くてもいくら悩んでも、最後は前を見て伸ばした手を掴めること、大事なもんはそれだ」

 

 

 初めて言葉を知ったような衝撃だった。無個性な僕が現実を受け止められずに困惑し、それでも純粋に憧れていた頃。その言葉は僕にとって希望だった。無個性の僕でもヒーローになれますか?

 

 

「なれる、きっとな」

 

 

 間髪入れず残酷なほどに優しい言葉を僕に聞かせた。彼はポケットからなにかを取り出し、僕の小さな手で握らせた。これは?

 

 

「お守りだ、それとまた逢うっていう約束。いつかそれがおまえの切札になる。そんでもってまた俺に返しに来い、そのぶかぶかな帽子が似合う一人前の男になってな」

 

 

 そのあと彼は颯爽と立ち去った。その後ろ姿をしばらく溺れたように見ていた。手に握った細長い無機物と頭を覆った繊維の感触に思いを馳せながら、一つだけ思ったことがある。あんなヒーローになりたい。強い憧れの対象がオールマイトの他にもう一人出来た瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 オールマイトの真実を知る中学三年、あの瞬間は確かに僕にとってある種のスタートであった。真の意味でヒーローへと進む道が開けた瞬間だろう。だがそれより以前にも僕のヒーローへと進む道のきっかけはあった。それは思い描いていたヒーローとは違い、それでいてそれ以上の憧れ。それはきっとオリジンより前のもう一つのオリジン。

それは丁度中学生になろうという、小学6年の春休みだった。桜が咲いていたのを覚えている。家族で夜桜を見に行っていた僕は、途中でお手洗いに行くために1人逸れて行動していた。周りに誰もいない、そんな静かな闇の時間だった。お手洗いを済まして帰ろうとした時、目の前に見知らぬ男がいた。やけにボロボロで傷ついた様子だった。けれどこっちを見る目はおよそ普段人間がするものではなかった。今思うとなんでこう巡り合わせが悪いのだろう。なにかそういう負のエネルギーを呼び寄せるものでもあるのだろうか。それが個性だとしたらまるで笑えない。

 

 

「……なに、見てんだ?」

「ヒッ……!」

 

 

 ドスの効いた威圧的な声に上ずった情け無い声が溢れる。少しずつ近づく男から距離を取ろうと後ろを見ずに後ろに下がる。

 

 

「ったく、あんなやつがいなきゃよぉ!気持ちよくやれたっていうのによ!……イライラするわほんと」

 

 

 なにを言ってるのかよくわからないけど、どうしようもなく怒りに満ちてることだけは伝わってくる。男は懐からなにかを取り出した。それは僕もよく見たことのある細長い小さな小箱。

 

 

【ZEBRA】

 

 

 機械音声が聞こえたと思えば彼はその小箱を左腕に挿した。まるでデバイスにUSBメモリを繋ぐように。そのメモリは身体の中に消えやがてその姿は異様な形に変化し始めた。白と黒とかストライプ状に走った異形。その頭は馬のようで、まさにそれは音声の通りで言うなればシマウマ人間というものだろうか。

 

 

「か、かかか怪物……!?」

 

 

 異形系の個性とはまた違う、明らかにそれより不気味な明確な恐怖の顕現。個性なんていう生温い表現では足らない、不自然なまでに異質なものだった。

 

 

「付き合えよ、八つ当たりに」

 

 

 それは明らかに僕に向けられた殺意。それに当てられて身は硬直している。いわゆる絶体絶命、自分の小っぽけだった今までの人生に悲観しながら最期を迎えようとしていた。

 

 しかしそれは叶わなかった。瞬間目の前の怪物が真横に吹っ飛んでいった。ちゃんと説明すると、どこからともなく現れたバイクが、暴力的な速度のまま衝突し怪物を吹き飛ばしたのだ。

 

 

「全く……逃げ足だけは早い。おかげで探すのに苦労した」

 

 

 バイクから降りたその人はヘルメットを取り、その顔を見せた。端正な顔立ちだった。どこか神秘的ながら知性が漂っていた。ストライプのシャツに緑のロングベストが風でたなびいている。

 

 

「あ、あなたは……」

「ぼくかい?そうだな……訳あって名乗れないが、あの化け物の追跡者とだけ言っておこう。あとそれと……」

 

 

 懐から赤色をベースにしたバックル状の、左右非対称のメカを取り出した。それを腰に当てるとバックルからベルトが伸びて巻きついた。そしてまた懐から取り出す。それは半透明な緑色の例のUSBメモリ。()()と色違い。

 

 

「これから起こることは、他言無用でよろしく頼むよ」

 

 

【CYCLONE】

 

 

 またあの機械音声が流れる。そのメモリをベルトのスロット部分に挿し込んだ。その人は顎に右手を当て、そのままその手でスロットを横に倒した。

 

 

「変身!」

 

 

【CYCLONE】

 

 

 緑の光が満ちて強い風が彼を囲うように巻き起こった。それはまるで竜巻。翡翠のように眩い突風が止むと中からは同じく翠玉に染められた鎧を纏った人がいた。

 

 

「……まさか」

 

 

 それは噂程度にしか聞かない話。全身を装甲で纏った覆面のヒーロー。突然現れては特殊なヴィランたちを倒す。その正体は誰も知らない、謎多き正義の味方。それを世間はこう呼ぶ。

 

 

「……仮面ライダー」

 

 

 僕の前にその人がいた。




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