特撮のかっこよさというのは、やはり映像的な文字ではない絵面による視覚効果によるかっこよさであるのだと改めて思う頃。小説に向いてない気がするんだよな……それでも上手い人は上手いんでただの逃げかもしれないですが。
では本編です
「私が!!!投影された!!!」
その時の衝撃を僕は忘れないだろう。忘れたいとも思わないけど、きっとこの脳みそは忘れることを良しとしないから、結果僕は忘れないだろう。つまりはすごくびっくりした。
雄英から届いた合否通知を開いてみたら、そこに現れ出たのはまさかの存在オールマイト。なんでも今回から雄英の教師として教鞭を振るうらしい。ゾクゾクした、これは身震いじゃなくて武者震いだ多分。興奮でニヤニヤする。
そして告げられた合否の発表。ヴィランロボットを討伐したことによる点数の合計値による順位は5位。しかしそれだけではなかった。救助ポイント、つまりはヴィランを倒すこと以外でのヒーローとしての素質の評価。人を助けたり援護したり、という直接的ではないところで評価された点数。僕はこれを鑑みて結果的に筆記含めて総合2位になった。ちなみに1位はかっちゃんらしい。さすがとしか言えない。受験が始まる前に交わした言葉と彼の顔が蘇る。良かった、どうにか約束は果たせそうだ。
お母さんは泣いて抱きついて喜んでくれた。今になってだけど親孝行の一つくらい出来たのかな、そんな風に思ってたらこっちまで泣けてきそうだった。フィリップさんは今出かけているらしく報告のメールを送ったらしばらくして『おめでとう』と返ってきた。あの人らしいや。
実感はゆっくりやってきた。半分の諦めと残り半分の意地、そうやって生きてきた僕が2人の凄いヒーローに出会って誇張でもなんでもなく人生が変わった。そしてここまで来た。ヒーローになるための第一歩をようやく踏み出したのだ。気が早いといわれるかもしれないけど、変な緊張感が身体を奔った。
「……話って、なんですか?」
フィリップさんに呼び出され例の浜辺に来ていた。そこには風に吹かれどこか遠くを眺めているフィリップさんがいた。望郷の念、というものが滲んで溢れていた。
「まずは、合格おめでとう。君の師としての立場からも嬉しく思うよ」
目を細めて僕の頭の上に柔らかく手を置いた。ありがとうございます、が妙に恥ずかしくなって口から出た。
「でも、大変なのはこれからだ。ヒーロー科の中でもナンバーワンの雄英高校、そのカリキュラムは特に厳しいと聞く。降格制度もあるらしい。ヒーロー科で成績が振るわなかった生徒は他の科に移籍、最悪除籍もありえるとか」
「く、詳しいですね」
「検索ヒーローの名は伊達じゃないということさ。まぁ、今回に関しては検索だけではないけどね」
「というと?」
「僕も雄英で特別講師として時々だけど教えることになったんだ。おそらく、君に教えることもあるだろう」
マジで? なんて言葉が思わず漏れた。ただし教員免許を持っているわけではないから、雄英の教師になるわけではなくあくまでお手伝いとして顔を出すとのこと。
「君が入学したこともある。なにかあった時にすぐに手を貸せる方が合理的だ。それに、他にも目的がある」
「目的……」
「他の仮面ライダーを探すことだ」
人々の生活する声に混じって風の音が聞こえる。穏やかな風が少し力強くなる。そういえばフィリップさんの元いた世界の住んでいた街、確か『風都』と言った。その街はいい風が吹いているらしい。それがどんな風なのかわからないけど、きっと心地いい風なんだろうとその横顔を見て思った。
「僕はいつまでこっちにいられるかわからない。なぜこちらの世界に来たのかもわからないのだから、強制的に帰還させられるかもしれない。少なくとも、少しずつだけど変身できる時間が減ってきているのは確かだ。だからこそ、君のように戦える人間が必要なんだ」
「……僕一人では力不足、ってことですか?」
弱い言葉だった。結局のところそれだけ未熟ってことだろう。それは否定しようがないし素直に僕も認めるところだけど、事実そうであると言われてなにも思わないほど僕は強くない。
「半分正解だ」
「……っ!……半分、というのは?」
「君では力不足という点、それはある意味間違いではない。ただそれは君が弱いから、というわけではなく、一人では対処しきれない可能性があるからだ」
それは僕一人でも厳しいかもしれないことだ、と続けた。フィリップさんでも厳しいこと……?
「敵の組織の大きさというものが、僕の思ってたものよりもずっと大きいかもしれない」
「……と言うと?」
重く堅い顔のままに続きを口から零した。
「敵にも、仮面ライダーがいる」
そこは薄暗い空間だった。しかしなにもないわけじゃない。電子的な光があちらこちらに転がっていて、その中心には1人の男性がキーボードをカタカタ叩いていた。白衣を着て時折眼鏡のフレームをクイと上げる。洗練された定番の動きが妙な知性を感じさせる。
暗がりの中からやってくる足音が一つ。光の集合地に向けてやってくる。静かな足音だった。存在しているのかもよくわからない、そんな軌跡だった。
「やぁ、アストレイ。お帰りかい?」
「……ここに戻ってきたんだからそりゃお帰りだろ」
「それもそうだ!じゃあ質問を変えよう。成果は得られたかい?君が望むような一日になったかな?」
ゲーミングチェアーを回転させて後ろに立つ男に向かって言葉を投げかける。モニターにはおよそ素人が見ただけでは意味のわからないような英数字の羅列が並んでいる。アストレイと呼ばれた男は質問に対して怠そうに答える。
「面白かったよ。あれが世間で評判の良い仮面ライダーか、って思った。……ああ、思ってたより綺麗な緑色だったよ」
「そういう割には顔は相変わらず仏頂面だね?」
「……元からこうなんだよ放っておいてくれ」
アストレイは白衣の男の後方のソファに腰掛ける。持っていた瓶のコーラを煽る。
「……なぁ、プロフェッサー。バカはなにやってる?」
「それはドレットノートのことかい? それともプランクスターかい?……あ、もしかしてホロウのことかな?」
「ホロウはどうせ寝てんだろ。他2人だよ、バカ2人」
2本目の瓶コーラを開ける。相変わらずのペースだねぇとプロフェッサーが呆れたように笑うが、それをただうるせぇと何度もしたやり取りのように淡々と返す。
「プランクスターはどこかに遊びにも出かけてるんじゃないかな? 血ドバドバの骨ボキボキ、彼曰く刺激的なゲームというやつさ」
「ようはただのケンカだな。……ったく、わざわざ自分からヴィランにケンカふっかけるなんてそんなメンドくさいことよく出来るよな」
「仮面ライダーと喧嘩しに行った君が言えることではないと思うけどね」
「……」
「……」
「……ドレットノートは?」
「大食いしてくるって。よくあるだろう? 制限時間以内に完食できたら代金は無料という企画。また新しく見つけたみたいだよ」
「あいつ、いつも大食いしてないか?」
「普通に食べたら食費が非常に高くつくところ、毎度完食してくれるから結果的に食費はゼロ。ありがたいことじゃないか。交通費は別だけどね」
「はぁ、メンドくせぇ……。それで、ちゃんと帰ってくるんだろうな?」
「それを僕に聞くのはどうなのかな? 僕が言えることは、彼なら最悪自力で帰ってくるよ」
あいつ方向音痴じゃねぇかよ……と多くの息と共に零した。そうなった時迎えに行くのは決まって自分だ、それが分かってるからこそこの先の面倒に頭を抱える。ついつい3本目を開けた。
「仮面ライダーと戦った感想、もっと聞きたいな」
キーボードを叩く手を止めて後ろに振り返る。いやらしい笑みを浮かべている。利己的な興味に塗れた悪い目をしている。
「感想ってよ、一体なに言えばいいんだ? 綺麗な緑色って話はさっきしただろ? それともあれか、同じ仮面ライダーでも自分とは違うなって思いましたみたいないい話でも聞きたいのか?」
「改心なんてまるでいい話ではないな。そうなるともうここで君を始末しなければならないね」
「ドライバーを持ってないあんたにできるか?」
「それは関係ないさ! 必ずしもドーパントが仮面ライダーより下とは限らない、そうだろ?」
「それはそうさ、そりゃあな。でも俺はあんたよりも強いだろう」
「言ってくれるねぇ〜。確かめてみるかい?」
そういえばなんだかんだでこの研究馬鹿も暴れるの好きだったなぁと。同じ穴の狢、イかれてる側の人間かと白衣を着た男を見て黒いチェスターコートを着た若い男はかったるい目で見ていた。
「やらねぇよメンドくさい。んなくだらないことに時間使ってやれないんだよ俺は。これから大事な取り引きがあるんだ、ボロボロになった姿じゃかっこつかねぇだろ」
「それはそれでいいんじゃないかな? ヴィランっぽくてさ」
馬鹿にしてんだろ、ヴィランである青年は吐き捨てた。
「……勝てそうかい?」
「……さあな」
俺が仮面ライダーに勝てるか? ああそんなことはどうだっていい。アストレイにとって勝ち負けなどはあくまで付随する要素でしかなく、例え勝っても負けてもその本質は揺るがない。確かに彼らの目的の障害にはなるだろう。自分たちと考えや立ち位置は違うのだから。それでもどうでもいいのだ。あくまで彼個人の感情、それはそんなことは些細なものであると断定していた。
「かっこいいよ、正義の仮面ライダーさんはよ。惚れ惚れしてしまうくらいにな。それぐらいかっこいいからさ……」
持ってた瓶が塵屑のように割れた。握りつぶされた手の中は力強く朱に塗られていた。
「ぶっ壊さないとな」
いい笑顔だ。それは獰猛な獣のようで新しい玩具を見つけた幼児のようで、それでいてヴィランらしい実にいい笑顔だった。
ああワクワクしている。気分が高揚する。今にももう一度会いたくて仕方ない。これはもはやファンの心理だ。馬鹿なことを言っている。憧れや尊敬なんてもの、例えあるとしてもそれはあるかどうかもわからないほどの微細なもので、限りなく無いと言い切れるものでしかないのだ。なのにこれほどに欲しくなる。正義の仮面ライダー、ならば自分は悪の仮面ライダーと言ったところだろうか。くだらない正義だの悪だのと差別化することのくだらなさと言ったらないが、世論っぽく言えばそういうところだろう。ああいいじゃないか、悪だなんて所詮正義とは違う正義でしかないのだから。ならばこれは争い、そう戦争だ。正義と正義そして悪と悪の戦争だ。
「さあ、プロフェッサー。宣戦布告は済ました、これより開戦だ。この地球の記憶をオモチャにして壮大でくだらない喧嘩を始めよう」
「そうだね、僕は出張ってやんちゃするのは好きじゃないけど、サポートくらいしてあげるよ」
「あんたがそうしなかったらあんたのいる価値ないよ」
「それもそうだ……安心したまえ、僕は僕の目的を果たすまで死なないよ。例え君を殺してもね」
指で作った銃でアストレイを撃ち抜く。バキューンと効果音とともに口から出たプロフェッサーの意思に本気を見出した。ああこの人はそういう人だ。利用するものを全て利用してそれになにも罪悪感のない究極的に利己的な人だ。だからこそ一緒にいる。一緒にいて心地がいい。利害の一致、情なんて邪魔なものは取っ払えばいい。自分たちは自分たちのしたいことをするために他人のしたいことに手を貸す。そうやって上手く回る世界もあるのだから。
「……幻想、それを現実にしようか。理想があるならそれを現実にしないとな」
その理想を阻む理想があるのなら競わねば、どちらの理想が魅力的であるかを。これはそういう戦いなんだ。「P」を象った絵が刻まれた細長い小箱をぶらつかせた。
「1-A…1-A…あ、ここだ。……ここ?」
扉のサイズが自分の背丈の何倍もあった。なるほど、異形型にも配慮されたものなのか。平均身長以下の自分からしてみたらまるで余分に感じてしまう。下の方におおよそ一般的サイズのドアがあったのでそちらから入る。入った瞬間に聞き覚えのある声が聞きたくはないような声色で聞こえてきた。
「君!机の上に足をかけるなんて先代の方々に失礼だとは思わないのか!?」
「……いや思わねぇよ。てめぇはあれか? ご先祖さまの仏壇に足向けられないってタイプか? 安心しろよ、どうせ見てやしねぇからよ」
「そういう問題ではない! 自分自身がどのように思って接するか大事ってことだ!」
「真面目なこったね……どこ中出身だよ?」
「ぼ……俺は私立聡明中学出身だ!」
「なんだエリート様か……納得だわ」
……面倒な雰囲気だ、そう思ってしまった。両方知り合いであるから余計にそう思う。知らないフリ……できれば苦労しないけどおそらく無理だろう。
「……おいデク、なにコソコソしてんだ」
「ん?ああ!君は緑谷君!」
「あん? なんだテメェ、デクと知り合いか?」
「ああ!彼は入学試験の実技試験の時に一緒になってね……僕は大事なことを彼から教えられた……!」
「……へぇ」
怪訝そうな目で幼馴染に睨まれる。そんな様子を露知らず飯田くんがこちらに勢いよく近づき勢いよく手を取った。なんというか、直角に。
「僕のこと覚えてるかい!?」
「う、うん……手伝ってもらったからね。あのあとお礼出来れば良かったんだけど、僕倒れちゃって……あの時はありがとうね」
「感謝なんてとんでもない! それはむしろ僕がすることだ緑谷君! あの時君にヒーローとはなんであるかを教えてもらった! あれがあったから、君の熱い言葉があったから僕は今ここにいられる。君が倒れたと聞いて衝撃だった、僕も感謝を述べることが出来なくてモヤモヤとしていた……だが、心配はしていなかった!緑谷君ならすぐに復帰すると思ったし、なにより君なら合格すると思っていた」
大袈裟じゃないかなぁ。そこまで大きなことしてたつもりないし、そんな英雄譚みたいに語られると萎縮してしまう。けれど悪い気はしない。そこまで素直に熱く尊敬されるのは初めての経験だ。だから恥ずかしいけど素直にありがとうと言えた。
「随分と知らねぇうちに偉そうなこと言うようになったんだなデクよぉ?」
「こら君!なんだその口の利き方は! いくら幼馴染と言えどそのような乱暴な言い方はするべきではない!」
「は?うっせえな引っ込んでろ眼鏡、部外者は黙ってろよ」
「き、君は本当にヒーロー志望か!?」
「なんか文句あっかよ!?」
いや、そりゃあそうなるでしょ。現実気持ちだけあってもそれが伝わらないと意味ないわけで、そういうところはやっぱり将来的にネックになるんじゃないかなぁと思う、本人がどこまで自覚しているかわからないけれど。
「……失礼しま〜す」
この混沌とした状況の中今までとは違う音色の声が聞こえてきた。ドアを開けて中に入ってきた姿に見覚えがあった。
「あ! あの時の緑の超パワーの人!」
僕を指差して近づいてきた。この人、麗日お茶子さんはあの時、0ポイントヴィランが現れた時に瓦礫に捕まっていて、その後僕が吹き飛ばして落ちていたところを助けてくれた、あの女の子だった。彼女も受かっていたんだとちょっとした安堵を溢していた時に、僕は手を掴まれた。
「っ!!??」
いやぁすごかったね!あの大きなロボットを一発でドカーンと倒しちゃうなんてもうびっくりしたよ! おかげ様で助かりました! 君、名前はなんて言うの?
確かかろうじて緑谷出久ですと答えた気がする。初めて女の子の手なんかに触れたから正直まともな思考になってない。柔らかい感触が刺激的だった。同じ人間なのは当たり前ではあるのだけど、そんな当たり前を疑ってしまうような気分だ。今時そんな気分や感覚など大した意味を持たないのだろうけど。恥ずかしいとか照れ臭いという感情も勿論あるのだけどそれ以上に呆然としてしまった。かっちゃっんが呆れたような目をしていた。他のクラスの人たちからも変な目で見られてるような気がする。僕の大事な高校デビューが理想と象った石像が崩れてぼろぼろになる。
「おいお前ら、さっさと席に着け」
色んな心配をしていたら突如おおよそ僕らの歳ではない重みを持った声が聞こえた。慌てて席を立っていた人たちが席に座りみんなが静まりかえる。
「……時間は有限だ、それを無駄にするような真似は合理的じゃない。せいぜい次は時間を厳守するようにな、1秒たりとも無駄にしないように」
相澤消太と名乗ったその人は僕たちの担任であると説明した。ボサボサの髪伸びっぱなしの髭くたびれた服。不潔と勢いよく口にするほどではないにしろ、清潔と称することができるほどではない。
「さて、それじゃあ早速体操服に着替えろ」
どこから出したのかわからない大量の衣服の束を机の上に叩き置いた。
「あの……まず入学式とかあるんじゃないですか……?」
「……入学式、か。さっきも言っただろう、時間は有限だ。確かに全校生徒諸君は集まってるだろうな、だからどうした? 自由さを売りにする学校なら、当然俺たち教師も自由だ」
つまり、入学式に参加させるかどうかも担当教師の自由である。そう言っているのだ。
「その自由は時折理不尽に変わってお前たちを襲うだろう。そんな時俺から言えることは、乗り越えろ。それだけだ」
これがPlus Ultra。僕たちに求められた自由という名の試練だ。
「ようこそ、雄英高校ヒーロー科へ」
感 想 を く れ ! ! !
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