つまりカイ=ゾルディック
椅子に座ってこの前手に入れた古文書(正確には友人に譲り受けたものだが)を読んでいた男は顔を上げて口角を緩やかに上げる
後ろでゆっくりと音を立てずに開くドアに顔を向けずに
「ノックはどうしたんだい、キル」
と声を掛けると後ろからは「ゲッ」と声が聞こえた
「カイ兄は何で直ぐに気付くんだよ…気配だって消してるのにさ」
キルアは頬を膨らませながら俺の座るソファの横に座るとまたブツブツと呟いた
「それで、今日はどうした?」
読みかけの本を閉じながらカイが尋ねる
「…何が」
「俺の部屋に来るときは大体嫌なことがあったときだろ」
キルアは元から大きい目をさらに丸くさせると図星をつかれたように顔を逸らした
「べ、別にそんなんじゃねぇよ!!」
「はいはい、俺が悪かったよ。俺はあまり遊びに来なくなったキルが来てくれて嬉しいけど?」
「オレは…忙しそうだから邪魔になるかなって…」
「俺はお前を邪魔だなんて思わないさ、分かるだろキルア」
「ん」
コクっと頷いて横を向いた耳がほんのり赤いのは指摘しないでやろうとカイは見なかったことにした
「で、ミルキにでも虐められたのか?」
「あんなブタ君怖くないっつーの!!」
「こら、きちんと名前か兄貴で呼べ」
「…ミルキじゃないよ」
「じゃあイルミ?」
「…」
「クスッ、本当に昔からキルはイルミが苦手だな」
クスクスと笑うカイは眉を寄せるキルアの頭を撫でながら軽く咎めた
「あんまり嫌ってやるなよ。お前を大事に思うが故の行動なんだから」
「それは分かってるけどさ」
コンコンとなるノックの音にキルアは体勢を直した
「兄さん、入るよ」
それは正に先程まで話していたイルミの声で、逃げ出そうとするキルアを左手で押さえつけながら「あぁ」と返事を返した
「(カイ兄離せよ!!!)」
「どうどう」
「馬か俺は!?」
「兄さん、キルを見なかった?」という声がキルアを見つけて止まった
「ここに居たんだ、キル」
「…まぁね」
「キル、オレはお前に兄さんの邪魔になるからあまりここに来るなって言ったよね?」
無表情で近寄るイルミをキルアから庇うように間に立ってイルミの頭を軽く叩いた
「悪いなイルミ、俺が呼んだんだ」
「…兄さんが?」
「あぁ、最近弟が構ってくれないから寂しくてな」
「イルミ、俺もお前も最近仕事で外に出ることが多かっただろう?今度俺とゆっくり食事にでも行こうか」
イルミのオーラが治まったのか震えていたキルアは息を整えていた
「うん、オレも行きたいし楽しみにしてるよ」
到底楽しそうだとは見えない表情だったが家族であるカイにはそれが分かった
「キルアも訓練続きで疲れてるみたいだし今日の訓練は不問にしてくれ」
「…まぁ、兄さんが言うなら」
「あぁ、いくら才能があっても休息は必要だよイルミ。お前も今日はしっかり休め」
「分かった」
キルアを一瞥してドアを静かに閉めたイルミを見てキルアも緊張がとけたようだ
ぐでっとソファに沈んで「ありがと、カイ兄」と消えるような声で礼を言った
「サボりも程々にな」と笑った彼を見ながらキルアは(もう絶対イルミのときにはサボらねぇ)と心に誓うのであった
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「ミルキ、居るか?」
扉から聞こえるノックの音にいつもは眉を寄せるミルキだったがその声の持ち主に気付き身体からは想像出来ない素早い動きで扉を開けた
「兄貴、どうかしたのか?」
中に入るように促したミルキは向かいの椅子に座ると首を傾げた
「これ要る?」
カイが差し出した箱を見るとミルキは奇声を発した
「こ、これ!!魔法少女の限定フィギュア!?か、カイ兄!これどうしたんだよ!!」
世界に10個しかないレア物でファンの間では50億ぐらいは余裕で値段がつく激レア物であることなどカイは勿論知らないのであった
「もうすぐお前の誕生日だろ?この前暗殺した人の部屋のケースに保管されてたからつい取ってきた。ミルが好きかなって」
「あ、兄貴!ありがとう!!マジでありがと!!」
暗殺者というよりも盗賊といえる振る舞いだがそれは友人に影響を受けたせいかもしれないと突っ込むものはここには居らず、ミルキは大事そうにフィギュアを抱えながら喜びを表現した
「はは、俺もお前が喜んでくれて嬉しいよ。悲しいことに誕生日の日には仕事でいないからね」
ミルキは元からカイに対して兄弟の中では1番好意を持っていた
イルミは怖いしキルアは生意気、アルカは…、カルトはあまり関わりがない
だが、カイは兄弟の誰一人も贔屓せずみんなを大事にしてくれている
「カイ兄、情報とかで困ったことがあったらオレに言ってくれよ!兄貴のためならちゃんとやるから!」
決意を胸に宣言したミルキに現金なヤツだなぁと笑って
「そのときは頼むよ」
と返して部屋を出たカイは(うん、雇ったかいがあったな)と頬を緩ませた
丁度胸ポケットの電話が揺れて歩きながら通話を押した
「どうした、
『いや、大した用ではないがこの前の依頼の品は喜んで頂いたかと思ってな』
「丁度今渡した所なんだ。なかなか反応が良くてな、頼んだかいがあった」
『全く…弟にやるプレゼントの為にオレ達
”蜘蛛”にフィギュアを盗んで来いだなんて言う奴は初めてだ』
呆れ笑いを遠慮なく声に出すクロロに携帯越しにカイは肩を竦めた
「そんな奴俺以外に居たら殺されてるだろ」
『フッ、確かにな』
「ホントに助かったよ、報酬はあれだけでいいのか?」
『200億をあれだけというお前の金銭感覚にため息が出そうだよ』
「依頼したことは内密に頼むよ。カッコつかないからさ」
『そういう契約だからな。…アイツらが「たまには顔を出せ 」 だそうだ』
「了解、今度また直接礼を言いに行くさ」
『あぁ、またな』
切れた電話をポケットに入れたカイは土産のことを考えながら自分の部屋に足を運ぶのであった
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通話を切ったクロロは周りで待ち構えている仲間を見ると頭を抑えた
「ねぇ団長!カイはなんて!?」
「弟は喜んだそうだ、今度直接礼を言いに来るらしい」
その答えに満足したのかシャルナークはルンルンと部屋に戻って行った
「ハッ、当然ね。私達召使いじゃないね」
「とかいってこの前の盗みのときやる気満々だった癖に、よく言うぜフェイ」
「フィンクス…死にたいならそう言うね」
「落ち着きなよ、これだからバカ男どもは」
「マチ、言いすぎよ」
「それなら良かったぜ!なぁノブナガ」
「あぁ。ってウボォーは殺ししかやってねぇだろ」
クロロはそんな仲間を横目で見ながら廃墟の外に映る月を眺めた
「(オレ達が出会ってもう何年も立つがお前は何も変わらないな…カイ)」
あれ、なんか蜘蛛との絡みの方が強くね?
とか思った皆さんに告げます
「こ、これからっすから!」