救い無き者に幸福を   作:MYON妖夢

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概ね主人公の説明回。と言ってもだいぶ大味になりますしごっちゃとしてしまいそうですけどね。


プロローグ 転生者・欄間仁の場合 前編

 また、一つの世界での俺の人生が終わる。

 いつだって終わり方はお世辞にもいいものとは言えないだろう。極力重要な存在と思わしき存在とは関わらないようにしつつ、その世界の大きな流れを壊さないように裏で暗躍するなど、本来ほぼ不可能なことなのだ。

 転生者として世界に生まれ落ちる俺はいつだってその世界での最低限の能力を与えられる。その俺が流れに関わらないなんてことはいつだって難しい。

 けれど、それでも俺は、流れに深く関わり大切な存在を作って、それが失われるのが怖かった。所謂原作というやつの重要な登場人物を、転生者(部外者)として介入することで殺してしまうのが怖かった。本来死ぬことのない存在を友達として絆を結び、その末に自身の予測できない展開で失うのが、怖かった。

 

「神さん。次はどこだ」

 

 人生が終わると白い空間に戻ってきて、目の前にいつもいる老人の姿の『神様』に問う。

 いつだって彼は飄々とした顔で、そう問う俺には決まって同じ言葉を言う。

 

「既に決まっておるよ。能力は向こうで確かめてみるといい」

 

「そうか」

 

 目を瞑り、もはや慣れてきた意識を引っ張られる感覚に身をゆだねる。少しずつ意識は遠のき、全身を浮遊感が包み込む。

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「……変わってしまったのう。眼も、心も……」

 

 少しだけいつもの顔を崩して、神は一人で呟く。

 

「儂にはお前さんを転生させた責任がある……取り戻すまで付き合うとしよう」

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 ゆっくりと目を開ける。場所は恐らくどこかの路地。今回はどうやら15の年齢で転生したらしい。

 頭の中に色々な情報が流れ込んでくる。この世界のこと、そしてこの世界で今まで起こったこと、転生者としての能力。そしてこの【欄間仁】という身体が今までどんな人生を歩んできたか。という情報。

 普通の家庭で生まれ、ある事件で両親を亡くし、両親が遺した遺産で今まで生きてきた。今まで転生してきた中で何度も味わった【設定】だ。それでもこの世界でこの身体を産み落とし、育て、そして亡くなった【両親】や俺に塗り潰された【欄間仁】への敬意は忘れてはいけないことだ。転生者の器として用意されたとはいえこの身体は、俺が乗っ取ったようなものなのだから。

 少しの時間黙祷し、身体の調子を確かめながら世界について整理する。

 

 世界は【インフィニット・ストラトス】……俺はこの世界について詳しいわけじゃない。というかほとんど知らない。話には聞いたことがある程度だろう。

 この世界で今まで起こったことでハイライトするならば、やはりインフィニット・ストラトスことISが一人の天才によって開発され、白騎士事件を経て本来開発者が願ったものとは違う運用方法をされているということか。

 白騎士事件とは、日本を攻撃可能な各国のミサイル2341発。それらが一斉にハッキングされ、制御不能に陥ったらしい。それが白銀のIS一機によって無力化され、その後各国が送り出した戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視衛星8基を、一人の人命も奪うことなく破壊するという、到底俺が元々いた世界の常識では測れないような事件だ。それによって世界はISに傾いた。

 

「しかし……」

 

 本来ISは女性にしか扱えない。故に女尊男卑といった歪んだ概念もこの世界には生まれている。その世界に男が転生してどうしろというのか。

 軽くため息を一つ吐き、今回の転生による能力を確認する。こちらも情報として脳内には流れ込んできているが、試してみないことには安心しない。

 まずは、元々最初の転生の際の能力。剣の生成。意識すればすぐにどこかの世界では主人公が振るう黒い剣が手の中に僅かな光とともに呼び出される。そのまま肩に引き絞る形で構えると、剣に青い光が淡く纏われる。

 

「ふっ!」

 

 鋭く速く長い突きである《ヴォーパルストライク》が起動する。こちらも最初の転生能力であるソードスキルの使用も問題ない。

 心意(インカーネイト)の使用は確認ができない。というのも生身では負担がかかりすぎるためだ。

 次に、この剣の生成能力が強化されたものとして、いつかの世界ではユニークスキルとして目覚めた【虚像作製(ホロウメイカー)】の能力。その世界では【ソードスキルを見切りコピーする】というものだったが、ソードスキルなんて存在しないこの世界ではどうなるのか。

 

「痛っ……」

 

 意識すると右眼が熱くなり、同時に鈍い痛みが右眼と頭に響く。どうやらこの世界では右眼に【虚像作製】が搭載されているらしい。まだ効果のほどは不明だが、使うと痛みが走りその痛みがじわじわと強くなっていくため、頻発は控えたほうがいいだろう。

 

「こんなもんか……」

 

 最後に、いくつも世界を共に歩いた相棒を呼び出そう。【炎剣レーヴァテイン】。文字通り炎を自在に操ることのできる剣だ。俺は妙にしっくり来たコイツをいつもよく使う。

 しかし、剣の姿でそれが現れることはない。

 

「……うん?」

 

 いくらか視点が高くなったような気がする。いや確実に高い。何やら包まれるような不思議な感覚もある。

 不審に思い視線を下に向けると、所謂装甲というべきものが身体表面に展開されているようだ。首から下はほぼ覆われており、胸や腹部を覆う真っ赤な装甲に半透明な黒い線がいくつも入りアクセントとなっている鎧。腕は自分の掌を開閉するような感覚で、本来の手よりも二回りは大きい掌が開閉する。足の装甲もガッチリと付いており、視点が高くなったのは足の装甲によって地面よりいくらか高い位置に自身の足が設置されているためのようだ。

 そして極めつけ――

 

初期化(フォーマット)完了。最適化(フィッティング)開始……は必要なし』

 

 鎧から声が聞こえる。頭に直接響く声だ。いつかの世界で電子体と化した存在と話した時をほんの僅かに思い出す。

 

『……一次移行(ファーストシフト)完了。ということで』

 

 視界に映し出されるモニターの一つに女性の姿が現れる。梳けば肩ほどまで黒い髪を首のあたりで小さくまとめた大人しそうな和服の女性だ。

 聞いたことのない女性の声は彼女の声だろうか。けれどいつも一緒にいたような気さえする。

 

『おはようございます。仁』

 

「あ、ああ。おはよう」

 

 だから、つい返事をしてしまった。

 

『炎剣レーヴァテイン。改めレーヴァテイン。和名を炎鎧(えんがい)。この世界ではISとして貴方の力になりましょう』

 

「……お前、レーヴァテインなのか」

 

『ええ。やっと、話せますね』

 

 驚きこそしたものの、拒否などしない。これは相棒の新しい姿だとすぐにわかる。だが北欧神話の武器なのに和服というのは果たしてどうなのか。と思うが。

 

『さて』

 

 一つ溜息を吐くようにしてからレーヴァテインが意識の中で息を吸う。

 

『貴方いつもいつも無茶ばかりして! 気が気じゃないんですよ私は!』

 

「おお!?」

 

 突然怒られた。それも自分の剣に。普通の人間よりもいくらか長く生きてきたが流石に予想外だ。モニターの中の女性も非常に今私怒っていますというように見える。

 

『誰かを守るためとはいえいつも死にかけるなんて、言葉が発せないなりに心配でしょうがなかったんですから!』

 

 ああ、そうか。

 彼女がレーヴァテインだというのなら、今まで右手に握り共に戦ってきていたのだから、人格があったにしろなかったにしろ、当時のことを彼女は咎めているのだ。

 

「剣にまで心配されてたのか俺は……」

 

『誰かを守るってことだけは昔から変わらない癖に自分の優先度を下げるのは少しずつ酷くなっていくことを心配しない相棒がいますか!』

 

 思わずISの腕を持ち上げ頭を押さえつつ天を仰いでしまう。おっしゃるとおりである。

 

『だから私が仁を守ります! これからは二人です!』

 

「……ああ。心強いよ」

 

 本心だ。紛れもない本心だ。意思の疎通ができるようになったのは大きいことだし、ましてやこの世界で戦うならまず必須なISだ。しかしこうなると剣を投げつけたりする荒業がやりにくくなってしまうではないか……。と頭を押さえる鉄の指が一本増える。意思のある相棒をどうして投げられようか……。

 

「……おっと」

 

 ふらりと機体ごと身体が傾く。俺が何かする前にすぐに態勢は戻るが大分体力を持っていかれていることに気付く。

 

『……私の武装の説明はまた後日ですね。今は私が展開の際に初期設定を行う兼ね合いで持って行った体力の回復に努めましょう』

 

 呼び出した剣を消す時と同じ感覚でISを非具現化する。

 

『私の待機状態は指輪のようです』

 

 右手の中指に新しい熱を感じる。見ると綺麗な赤い宝石が付いた指輪が中指に収まっていた。

 

『ちなみに、右手中指の指輪には【邪気を払う】という意味があるようです。私が仁に付く邪気を払って幸運をもたらしましょう!』

 

「そんな知識どこで拾ってるんだお前……」

 

 どうやら指輪のままでも意識での会話はできるようだ。今度なぜ和服なのかも聞いておきたいものだ。と思いつつ今度こそ足がかくりと曲がる。低下した体力を戻すには眠るのが一番だろう。幸いここの人通りは限りなく0に近い。

 

『最低限の警戒はしておきます』

 

 その言葉を聞いたのを最後に丸くなって意識を手放した。




 レーヴァテインについては、前作を読んでいない方はまぁ彼の愛剣とだけ思っておいていただければ結構です。前作よりもともに戦った時間が長いのでこんな感じになりましたが。
 楯無さんの方と同じところまで行きたかったけど思いのほか長くなってしまったのでプロローグ欄間仁編は前後編構成になりました。
 敬語ということくらいしかおおまかには決まっていなかったレーヴァテインの性格が書いてるうちにどんどん生えてくるのがなんとなく楽しい。
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