救い無き者に幸福を   作:MYON妖夢

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 さてはずっと書きたかった無人機戦書いて満足し始めているせいで書く事への積極性が下がってきているな? と自覚している私です。つべこべ言わず書いていきましょうね。


生徒会の一人として

 更識姉妹の話し合いを仕向けてから三日程が経った放課後。アレから布仏姉妹から聞いた経過としては、無事上手い事いったらしい。そもそもあの2人が覚悟を決めた時点で話し合いする機会さえあれば上手くいくと確信はしていた。更識の方はもう簪を遠ざけるメリットがなくなったのだから自分に素直になり、簪の方は姉の本意を聞く事ができたため印象としては以前ほど悪いものにはなっていなかったのだ。それが腹を割って話し合って悪い方向に転ぶわけがない。

 この3日程は見舞いに来てはいないが、姉妹として空いた時間を埋めていると聞けば当然と言えるだろう。

 結果的に簪は生徒会に加入が決まったと本音は喜んでいた。そもそも生徒会は生徒会役員が推薦してそれが通れば加入が可能なのだから、仲直りした時点でこれはほぼ確定していたと言ってもいいだろう。生徒会室が賑やかになりそうだ。

 

 現在はと言えば整備の参考書を片手に見舞いに来たオルコットに織斑の経過について聞いていた。

 

「織斑の訓練の方はどうだ?」

 

「鈴さんも加わっての訓練ですが、相変わらずと言ったところです。物覚えこそいいのですけれど、基本的には直線的な一撃必殺です。仁さんと今もう一度やっても結果は変わらないと思いますわ」

 

「まぁ、易々と変わるようなものでもなければ、変えるべきと限ったものでもない。織斑にはアイツなりの戦い方があるだろうからな」

 

「いい加減織斑先生に助けを求めてもいいと思いますけれど、進言しても頑なに迷惑になると言って聞いてくれませんの」

 

 

 彼女の辟易とした表情からも読み取れるが中々苦労しているらしい。彼女は完全に理論派であり、対して織斑も凰も感覚派な方だろうから難しい点は確かにあるだろう。

 

「強くなるのに一番手っ取り早い相手を選ばないってのはわからないもんだな……キツイなら別に強要はしないぞ。凰も加わったなら降りても問題は……」

 

「いいえ。一度決めた事を辞めるのは癪ですわ。わたくしが辞めるとすれば織斑さんから拒否された場合くらいです。それに基礎に立ち返るのにはやはりうってつけですもの」

 

「そうか。本人がそう言うならこっちから止めるのは野暮だな」

 

 しかし凰を名前で呼ぶようになっている辺りそちらの関係は別に悪くないようだ。

 

「それよりも、仁さんはもう大丈夫ですの?」

 

「ああ。ようやく杖も必要なく歩けるようになった。ここの技術は本当に高いな。復学もそろそろだ。懸念事項はあったがそっちもクリアした」

 

 尤も、その懸念事項は怪我の事とかそういうものではないのだが。

 右腕は僅かに痛みが残っているが、中でも大きかった裂傷の傷痕が残っているくらいでほぼ問題ない。右足は杖なしだと未だに引き摺る形で痛みもあるが歩けるように放った。医療技術が高いにしても回復が妙に速い気がするが、恐らく()印のナノマシンの方の効果も色濃く出ているのだろう。

 

 事情を知っている生徒会の面々に新しくロンググローブを調達して来て貰ってあるので今はそれを両腕にしている。今度は右腕の問題で肩まで覆うものだ。変にそのままにして事情を知らないものに見せても心配をかけるだけだろう。今はまだこれでいい。

 

「それはよかったです。例の転校生が転入して来るという日までには間に合いそうですわね」

 

「こっちでも話は聞いている。フランスとドイツ。それも片方は男性操縦者と聞いている」

 

 生徒会長として、そして暗部の長として更識には相当量の情報が集まる。それらの情報は取捨選択してではあるが俺ら生徒会の生徒にも届く。届いた中から我らが1年1組に転校生が2名来るという事を聞いている。

 オルコットはイギリスとしての情報網だろうか。慢心もプライドも最低限を残して必要ないと切り捨てた彼女がイギリスから情報を仕入れるのは至極当然と言えるだろう。

 

「ええ。仁さんはどう思いますか?」

 

「俺個人としては、男性操縦者が新たに見つかったというのに妙に世間が静かなのが気になる。俺や織斑の時みたいにニュースにもなっていなければ生徒間にも噂としてすら流れていない。その点で妙だとは思っている。生徒会の総意としては、それを踏まえてフランスの方は警戒対象だという事になっている。生徒会長も情報収集に駆け回ってるよ」

 

 生徒会の仕事は何も資料整理やイベント主催だけではない。"生徒を守る"のが一番の仕事だ。学園に接触してくるものが危険だと判断したら排除に走るし、無害だと判断したのならその人間を生徒として守る。それを見定めるのも生徒会の仕事だ。

 

「オルコットはどう思ってる?」

 

「わたくしも概ね同じ、と言ったところでしょうか。あまりにも静かすぎますわ。最近のフランスはどうにもよろしくない話も聞きますし、警戒はしてしかるべきかと」

 

 フランスのよろしくない話。というのもフランスで一番と言っても過言ではないIS企業である『デュノア社』の動きがどうにも妙なのだ。ちぐはぐという印象が強いだろうか。欧州連合統合防衛計画『イグニッション・プラン』――現在イギリス、ドイツ、イタリアが時期主力機選定のトライアルに参加しており、イギリスが一歩リードしており、オルコットは実用化のための実稼働データのために入学してきたらしい――から除名され、削減された予算の点から第三世代機の開発が困難になっている事で何かがあったと生徒会では話している。

 あまり関係ないと思いたいが、デュノア社の社長の奥方が社長を差し置いて実権を握っているという話すら聞く。

 

「ドイツの方は……まぁ恐らく『イグニッション・プラン』の為にレーゲン型の実稼働データを合法的に取りたいってところか。第三世代機の方も組立には成功しているらしいしな」

 

「でしょうけど、あちらは軍での活動にISを多く活用していると聞きますし、少々不安ですわね」

 

「兵器としての使い方も勿論ISの使い方の一つだが、それを前面に押し出されていい気はしないな。まぁ何かあれば生徒会が動くだけだが」

 

 今回選抜されてきたのはドイツ軍IS配備特殊部隊の方からと聞く。オルコットがそこまで知っているかどうかはわからないがその懸念は確かだ。そこまで情報を仕入れてくる辺り更識は流石である。

 ISを兵器として扱うのは篠ノ之束のやり方(白騎士事件)が悪かったため仕方がないが、どうしてもそれを主張されてしまうとよくは思えない。

 

「まぁなるようになるだろう」

 

 結局のところどうなるかなどわからない。男性操縦者の入学で一波乱あるのは間違いないだろうが。

 丁寧に断りを入れてから部屋を出ていくオルコットを見送り、もう一度参考書を開いた。

 

 

 

 

 

「微妙に違和感はあるが……治ったな」

 

『こちらでも観測できています。問題ないかと』

 

「もう今日から復学するの?」

 

「許可は出ているからな。遅れは問題ないが動けるのに動かないのも性に合わん」

 

 数日後の月曜日の朝。保健室では無く寮の俺の部屋での活動の許可は少し前に出ていたので現在は俺の部屋。木刀片手に身体を軽く動かしていたところに更識が来ていた。

 

「足の方は多少違和感が残ってるがもう少しすれば治るだろう。本当にここの医療も篠ノ之束のナノマシンも凄いな」

 

「君自身の回復力が随分と底上げされてた筈だからね。その分内部的にはまだダメージが残ってる筈だから無茶はしないこと。わかったわね?」

 

「ああ。まぁそう何度も無理をするような事が起こってたまるか」

 

 ゴキゴキと首を鳴らして一つ大きく息を吐く。

 

「その通りだけど、どういう偶然か今日は例の転校生二人が来る日よ。一応気を付けてね」

 

「ああ。生徒会役員として最低限は見定めるとするさ」

 

 積極的に関わるつもりはないが、見定める必要はある。仕事は仕事としてしなければならない。

 

「あと、生身での炎の訓練はもうしない事。いくらなんでも危険が過ぎるわ」

 

「レーヴァにも止められたからな。流石にもうやらない」

 

『私は前々から止めてました。痛い目見ないとわからないんですか?』

 

「そう怒るなって」

 

 木刀を先から消滅させながら足をトントンと地面に当てて調子を確かめる。やはり何ヶ所も砕けていたためどうしても変な感覚は治り切っていない。

 右眼に関してはやはり視力が戻っていないが、わかった事がいくつかある。

 まず、右眼の視力だけは【虚像作製(ホロウメイカー)】を使用している間は以前と同様の視力に戻るという点。ISの情報を抜こうとしなければ痛みもそれほど酷いというわけではない。ただそれでも痛みは使用時間に比例して強くなり、10分が精々でそれ以降は痛みが最高潮を維持し続けるため難しい。

 そして使用中は基本的に動体視力も跳ね上がっている様だ。動いているものの動きが酷く良く見える。生身で戦う時があったらこれは便利な能力だろう。やはり普通に使うだけでは視力は下がらないらしく痛みに耐えられるなら相当便利な能力になっている。尤も長期使用すれば痛みでそれどころでは無くなるのだが。

 

「そうだ。簪ちゃんが君の話するとき、妙に熱が入る気がするんだけど、心当たりは?」

 

「……気のせいじゃないか?」

 

「目を逸らさない。あるのね? あるのね心当たりが?」

 

「寄るな。真顔で寄るな。今日は妙に扇子が出てこない辺りそもそも目星付いてるだろアンタ。右腕を構えるのを止めろ」

 

 扇子が出てこないのは本当に真面目な時。もしくは余裕が無い時か機嫌が悪い時。恐らく今回に至っては全部だ。

 

「前に簪ちゃんを名前で呼んでるの聞いたわよ? 更識の女を名前で呼ぶ意味知らない訳じゃないでしょう?」

 

「そこまでわかってて何でわざわざ問い詰めるんだアンタは……」

 

 観念するしかないらしい。

 

「……本人にアンタとの区別にそう呼べと言われただけだよ。こっちからどうこうって訳じゃない」

 

「それでも呼んでるんじゃない。私の事は名前で呼ばない癖に!」

 

「だからオルコットにしても何でそうアンタらは名前で呼ばれたがるんだ……」

 

「虚ちゃんも本音ちゃんも名前で呼ばれてる中で苗字って疎外感があるのわかる?」

 

「わかったわかった早口で捲し立てるのは止めてくれ。楯無と呼べば満足か?」

 

「わかればいいのよわかれば」

 

 そもそも"楯無"は襲名した名前であり本名ではないだろうに、そこまで必死になられると呼ばざるを得ない。こういう時にはさっさとこちらが折れてしまう方がいい。なお本名は未だに知らない。

 

「それじゃ気を付けてね。君上の学年からは評価高いんだから怪我したら結構大事なのよ?」

 

「今回でよくわかったよ。見舞いが1年より2、3年の方が多いとは思わなかった。黛先輩に動けないところをインタビュー迫られるのももう勘弁だ」

 

 肩を竦めながらそう言うと苦笑を返される。

 

「学年別個人トーナメントも近いんだから身体も鈍らないようにね」

 

 学年別個人トーナメント。生徒全員強制参加の学年別でのIS対決トーナメントだ。全員参加というだけあって係る時間は1週間という、1つの行事にしては非常に長い期間だ。各国の上層部やIS関連企業からお偉いさん方も身に来るというだけあって中々大規模な物らしい。確かに備えなければならないだろう。

 楯無は校舎の方へと向かっていった。俺もさっさと行くとしよう。織斑千冬の出席簿は勘弁だ。

 

 

 

 

 

「おはよ~ランラン」

 

「おはようございます仁さん。もういいのですか?」

 

「ああ。おはよう。足も多少の違和感以外はもう問題ない。そもそも完全に回復するまで謹慎っていうのがやりすぎなんだよ」

 

 席に着くといつもの2人から挨拶をされる。尤もよく顔を合わせていた相手であるため久し振りという感覚も特にはないが。

 感じる視線が以前と違ったものになっているのは勘違いではないだろう。少なくとも恐怖だとかそういう視線は殆ど感じない。

 周りはと見てみればどうやらISスーツのメーカーについての話がよく伺える。カタログ片手にワイワイと話し合っているのが見えるが、カタログを横から見る気にはとてもなれない。何せスクール水着のようなそれだ。そしてそれを着用するモデルは決まってスタイルもいい。目に毒という奴だ。

 

「そういや一般生徒はスーツの申し込み今日からか」

 

「よく覚えてるね~」

 

「生徒会役員としてその月の行事の日程やタイムテーブルは頭に叩き込んでいるからな。お前だってそうだろうに」

 

「勿論だよ~」

 

 こう見えて本音は意外にも基本的には真面目だ。行動速度は相当に遅いがそれも実はその気になれば行動は迅速。銃器の組立の際など普段の笑顔がなりを潜めて滅茶苦茶な速度で組み立てだすのだから驚くというものだ。分解の姉に組立の妹。得意分野が上手い事二極化している辺りお互いをカバーし合うという点では流石は暗部所属の姉妹といったところか。尤も本音本人は生徒会書記として所属しているのに『自分がいると仕事が増える』と言ってのけるが、そこまで無能と思っているものは生徒会には1人としていない。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃程度なら完全に受け止める事ができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」

 

 すらすらと説明をしながら教室に入って来る山田副担任。緊張に極端に弱いという点を除けばかつて織斑千冬と日本代表を競い合った彼女も間違いなく有能なのだ。普段は中々そう思えないのが玉に瑕だが。

 なお彼女には入学1か月半程の現在で既に『山ぴー』『山ちゃん』『マヤマヤ』『まーやん』といった感じで計8つ程の愛称が付けられている。1人の教師に付けられる愛称としては破格といっていいだろう。それだけ彼女がとっつきやすい教師であるという事が伺える。

 

「諸君、おはよう」

 

 そんな彼女による緩めの雰囲気は一瞬で引き締まる。織斑担任が教室に入って来る時は大体皆一気に真面目になる。誰だって出席簿を食らいたいわけではないのだ。

 

「今日からは本格的な実践訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定の物を使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

 

 先程ISスーツはスクール水着のようなそれと語ったが、この学園の指定水着もスクール水着だ。今時滅多に見ないだろう完全未改造クラシックのそれを使っている辺り医療技術の進み方と真反対でありこの学園はよくわからない。それはともかく下着姿はこちらからして困るので勘弁願いたい。興味があるかないかでいったら答えは無言を貫くが、俺とて枯れているわけでは無いのだ。こういう時は肉体年齢に引っ張られがちな精神年齢が邪魔だ。つまり困る。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

 眼鏡を拭いていたらしく慌ててかけなおした山田副担任がバトンタッチを受け取る。

 

「ええとですね、今日は何と転校生を紹介します! しかも2名です!」

 

「「「「えええええっ!?」」」」

 

 まぁ知らなければ当然の反応だろう。しかし意図してだろうが専用機持ちがよく集まるクラスだ。本来ならば学年別トーナメントを控えた今、各クラスに分散させるべきなのだが、1クラスに纏めて織斑千冬や生徒会によって監視しやすくするという意図が実によく見える。

 ざわめくクラスのドアが開かれ、2人の転校生が入って来る。片や小柄な身体に銀髪ロング、そして目立つのはやはり左眼の眼帯と、腰に鞘ごと用意されているナイフだろう。発する雰囲気は鋭く研いだ刃物のような、隠しきれていない戦場に立つ者特有の、死を見た経験もあれば死を与えた経験もある者のそれだ。

 彼女はドイツ軍IS配備特殊部隊『黒兎隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)』隊長にしてドイツ軍少佐、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。

 当然ながら生徒会の情報網にて調べ上げている。入学手続きの際にある程度の情報開示は必要なためそこからすっぱ抜いた情報を元手に調べた。

 見た目の特徴としてはクロエ・クロニクルに似ている。彼女よりやや小柄か。クロニクルが眼を開けたところを見た事が無いため瞳の色や目付きまで似ているかどうかは不明だが。

 

 そして片や人懐っこそうな顔に濃い金髪を首の後ろで束ねた華奢な身体の"男"。立ち姿は礼儀正しく顔立ちは中性的。世間一般から見ると美形というやつだろう。男と思えぬ程に筋肉は少なくスマートといった印象を受けるが、それらに比べると少しだけ胸板だけは厚い。どういう鍛え方をすればそんな事になるんだという疑問は野暮だろう。

 "彼"が例のフランスからの男性操縦者、シャルル・デュノアだ。デュノアという苗字からはやはりフランスの現状を考えさせられてしまい、自身の眼が細められるのを感じる。

 

『うーん……』

 

 レーヴァが唸っているが気持ちはわかる。

 

『女の子ですよねぇ……やっぱりどう見ても』

 

 皆まで言うな。わかっているから。

 

『やっぱり一波乱あるんですねぇ……』

 

 こちらとしても久し振りに頭痛薬に頼る必要が生まれかねないのは、それ自体が既に頭痛の種である。面倒事は一度始まれば連鎖してしまうものなのかとジワリと痛む頭を押さえた。




 久し振りの頭痛薬である。頭痛薬は友達。
 うちのセシリアは中々聡いですね。恋は盲目を地で行く原作より視野が広いのはまぁ彼女の現状的に当然な形かと思っております。
 そして日々増え続けるお気に入り登録、ありがとうございます。少しずつお気に入りの伸び方が目に見えてくるとやはりモチベが保ちやすいですね。承認欲求が満たされたいというのは二次を書く者は大小は有れど共通の認識だと思っているのでやはりありがたい。

 では次回もよろしくお願いします。
 感想等お待ちしております。
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