2戦目の一般生徒ペアとの試合は問題なく突破。流石に2回戦落ちとなってしまっては楯無に顔向けもできなくなってしまうためそういった方面での緊張感こそあれ、試合そのものは夜竹の練度もあって問題はなかった。
観戦していたところボーデヴィッヒ・篠ノ之、織斑・デュノア、オルコット・如月も一部危ないペアこそあったにしろ突破。このままサレムのペアも勝ち残るようならば3回戦は俺達とオルコット達。それを勝てば四回戦でサレム達とぶつかる事となる。
この4回戦で織斑・デュノアペアとボーデヴィッヒ・篠ノ之ペアがぶつかる。つまりここで残った方と俺達が決勝戦だ。
詰まるところオルコットペアとの試合に入れば完全に専用機持ちラッシュだ。それぞれ問題なく勝ち上がる能力は充分にあるだろう。唯一技術で乗り遅れる織斑は操縦者はともかく、機体性能とデュノアのフォローがある。
強いて言うのならばボーデヴィッヒ・篠ノ之ペアだろうか。あのペアは相変わらず個人技だ。ボーデヴィッヒは操縦者としての腕もいい上にあのAICだ。そうそう負ける事はないだろう。
篠ノ之の方は剣道の腕で相手を叩き伏せてはいるが、銃を相手にすると動きが鈍い。尤も、篠ノ之が落とされても一般生徒相手ならばボーデヴィッヒが2体1を制して勝つのだが。
さて、今はと言うと昼飯時だ。今回は生徒会室ではなく食堂に連行されている。
「別にどこで食おうといいんだが……」
そう。どこで食うとかそういうのは気にしない。
「人数がやけに多くないか……?」
俺、更識姉妹、布仏姉妹、オルコット、夜竹、更にはサレム。合計8名。どう考えてもただ昼飯を食うには人数超過だ。食堂の机は円形に囲んで座るタイプの机もあるため食事と雑談を同時に行う分には困らない設計ではあるのだが。
「まぁこんな行事の時くらいね?」
「そうそう。生徒会室遠いし~」
「ただの敵同士というわけでもありませんし、息抜きも大事ですわ」
「私もお邪魔してよかったのか?」
「勿論。一度戦えば、友達。元々友達だけど」
「いつもより賑やか」
「本当、賑やかになったものです」
楯無、本音、オルコット、サレム、簪、夜竹、虚の順番だ。この人数がいるというのに会話が混ざらないのは息が合っているというかなんというか。
「サレム。パートナーの音無はどうしたんだ?」
「誘ったんだけど恥ずかしいって」
音無日奈。こちらも俺の見舞いには時々来ていたがどうにもあがり症らしく言葉を交わせる機会は少なかった。来る時自体も友人と一緒にというケースが多かった。主にサレムか簪だったが。
「そうか。相変わらずだな」
「クラスではそんな事無いんだけどなぁ……」
「そうなのか?」
「うん。仁と話す時みたいに真っ赤になったりしない」
答えたのは簪だ。
「山田副担任のように男性ってのが問題なのかもな。そこは俺にはどうにもできんな……」
「あの子の問題だし、仕方ないな。私や簪がいればサポートもできるんだけど」
やはりサレムの日本語は少々硬いというか、中性的というか。問題なく通じるし彼女の個性がよく出ている口調でもあるのだから問題はないのだが。
「それにしても、今年の1年生はレベルが高くて結構結構。簪ちゃんと本音ちゃんが負けちゃったのは残念だけどね」
「専用機持ちの全体数が多いのですし、当然とも言えますわ。専用機持ちを抜きにしてもさゆかさんやハミルトンさんのように頭1つ抜けた人がいるのも事実ですけれど」
「歴代でも特に見ごたえのある1年生トーナメントだと評価をいただいていますよ。皆さん頑張ってくださいね」
「私達も応援してるよ~」
「明日の午後からの私達も負けてられないなぁ」
「と言っても生徒会長は負ける気なんてまるでないだろう?」
「勿論。まだまだ学園最強を譲る気はないわよん」
負けられても困る。仮に彼女が負ければ生徒会長がすげ代わってしまう。そうなってしまえば当然俺達も生徒会から外されるわけで。
仕事が減ると言ってしまえばそうなのだが、今更今までずっとやっていた事をやらなくていいと言われてもモヤモヤするというものだ。ここまで来たのなら最後まで生徒会長には頑張ってもらわねば。
「オルコット。そっちの調子はどうだ?」
「万全と言っていいですわ。今回は、勝ちます」
「ほう。楽しみにしておこう。だがやるからには負けるつもりはない」
「そう来なくては面白くありません」
そう不敵に笑う。
「俺ばかり気にしてるなよ。今回はタッグ戦だ」
「私も、頑張るよ」
「ええ。勿論さゆかさんも優れた操縦者です。ですので……油断など一切するつもりはありません」
「そう来なくてはな」
「口調は楽しそうなのに表情が動かないんだな2人共……」
「やっぱり無表情コンビ」
そこの4組。聞こえているぞ。
「行けるか?」
「ん」
今回もサムズアップが返事だ。交わす言葉が少なくも思うが、それが彼女なりの付き合い方だ。普段から口数も多い方ではない事を知っていれば特に気になる事でもない。
レーヴァの点検もエネルギー補充も終わっている。取り合えずこの3回戦が終われば今日の部は終わりだ。夕方以降は彼女の整備に時間を使ってやるとしよう。
「よし、行くか」
ピット・ゲートから今回は揃って飛び出す。向こうもほぼ同時に飛び出してきた。【ブルー・ティアーズ】を纏ったオルコットと、【打鉄】を纏った如月。
今回も先に片方を落としたいが、多対一を得意とするティアーズを先に落とすのが好ましいが、2人で手こずっている間に如月にあの剛剣を叩きこまれてはひとたまりもない。かと言って今度は如月を狙えば意識外からティアーズのレーザーライフルやBT兵器が狙撃してくるという厳しい相手だ。超近接型の如月と、後方援護のオルコット。中々どうして相性がいい。
そうなると1人が1人を相手取るのがこの場では選択肢に入る。俺が如月を相手にするのが戦闘スタイル的にはいいのだが、そうなると夜竹がオルコットと一騎打ちになる。相手は代表候補生。耐えてくれと言うのは簡単だが実践するのは難しい。とはいえオルコットを追うのに時間を費やすわけにもいかない。
「分断を狙って1人を落としに行くか」
「ん。了解」
両手にアサルトライフルを1丁ずつ構えた夜竹が頷く。こちらもビットを展開して備える。
既にオルコットは4機のレーザービットの操作に入っている。あくまでミサイルビットは接近されたときの最後の手段として温存するという事か。
今回は【炎の枝】を自身と夜竹の援護に付ける。オルコットと初めて戦った時と同じように機体の両脇に配置する事で本体への被弾率を下げつつ攻撃の密度を増やす。
「ところで1回戦から気になっていたのですが……」
「なんだ?」
「わたくしがビットと本体の思考を分けるのに苦労していた事はご存知ですわね?」
「ああ」
「……どうして仁さんもビットを4機扱いながら本体の操作ができているんですの?」
BT兵器の本場イギリスからすればそりゃあ気になるだろう。とはいえ俺が操作しているわけでもないので何とも言えない訳なのだが。
「……企業秘密だ。お前がこの試合勝てたら教えてやる」
「言いましたわね? 約束ですわよ?」
余計負けるわけにいかなくなってしまった。レーヴァの気分次第で教える存在が増えるのはいいのだが、逆に言えばレーヴァが知らせたくない時に教えるのは好ましくない。なので今回は勝たなければならない。
『まぁセシリアさんとさゆかさんになら別にいいんですけどね?』
『お前なぁ……』
周りには聞こえない念話の形だが今このタイミングで言われても気が抜けてしまう。さっきまで大人しかったくせにこれである。
『まぁ気が向いたらという事で』
気を引き締めなおす。気を抜いたままで勝てる相手ではないのは百も承知。アレからどれだけ成長しているか、見せてもらうとしよう。
炎を両手の剣と装甲表面に一定量放出し維持。両手首にワイヤー射出機を呼び出す。
「でぇぇぇい!」
如月が突貫。両手持ちのブレードによる大上段からの振り下ろしを剣をクロスして受け止める。
「ッ……!」
重い。弾き飛ばされる前に横に逸らして受け流す。それでもシールドエネルギーが僅かに減らされた。やはり如月の大振り一刀は受けてはいけないようだ。
ISの出力は他の打鉄と変わらないはずなのにこの怪力。力の変転の仕方が上手いのだろう。力の強弱の操作に慣れているのは流石山岳部といったところか。
受け流して態勢の崩れた如月に追撃を入れようとして中断。俺が先程までいた場所をレーザーが通過する。そちらに向かってこちらのビットから弾丸が放たれるがオルコットも回避する。
間髪入れずに夜竹が
「行くぞ」
「来ーい!」
如月の剛剣には一瞬の溜めが必要なのは見ればわかる。それならばこちらからの連続攻撃でそれを使う余裕を与えない。
こちらについているビット2機を夜竹に付ける事でオルコットを抑えるためのサポートに回す。
炎を纏っている間は相手との近接戦では炎によってシールドエネルギーを削る事ができるためこちらに分がある。一気に片を付ける。
右袈裟切りをブレードで受け止められながら左水平切り払い。防御が間に合わない如月に更に切り払いの勢いのまま回転し裏回し蹴りを叩きこむ。
「容赦ないなー!」
「試合で容赦する奴があるか」
打鉄は防御偏重。ラファールに比べればダメージの通りが悪い。更にもう一撃を加えようとしたところで機体が揺れる。
一度距離を開けて確認すると、ティアーズのミサイルビットとレーザービットが1機ずつこちらに来ている。ミサイルビットは如月の横に陣取る。オルコットが新しいパターンをビットに組み込んだという事か。
「一筋縄ではいかんな……」
いくつも放たれるレーザーを切り払いながら如月に接近する。先程までの速度が出せない事で如月も体勢を立て直す時間が生まれ、再び大上段にブレードが構えられる。
それを見て左の剣を投擲。同時にワイヤーを射出。
「うわっと!」
一瞬だけ動きが鈍ったところに右の逆袈裟切り。大上段からの振り下ろしを合わせられ押し返されるが、ワイヤーを手首のスナップを利用し先程投擲した剣の柄に絡めて引き戻す。
引き戻した剣が意識の外から打鉄の背部装甲を切りつけると同時に、押し込んでいたブレードの力が弱まったところを右の剣を振り抜いて弾く。そのまま返す刀で右切り上げ。直前でソバットの要領で剣の腹を蹴りつけられコースがズレ、そしてミサイルビットからミサイルが放たれる。
「くっ」
攻撃がズレた衝撃で回避が間に合わず被弾。一度距離を開けるがこの距離は如月の距離だ。
「でりゃあああ!」
構えから今までの大上段とは違う。横から殴りつけるような斜め振り上げ。咄嗟に後ろにスラスターを吹かし後退する事で回避するがそのままの勢いで回る様にもう一度同じ一撃が飛んで来る。
体勢を立て直しワイヤーで引き戻した剣を左手に握り直し、ソードスキルを起動する。どんなコースで来るかわかっていればソードスキルのリスクは実質ないようなものだ。
斜め上から2本の剣を揃えて切り下ろす二刀流ソードスキル《ダブルサーキュラー》。淡い青に輝いた二刀が如月の渾身の一撃とぶつかり合い、上下での鍔迫り合いになる。
これが地上であれば上から力を込める事ができるこちらが有利だが、IS戦闘は空中だ。後は技術の勝負。単純な力では如月に押し負け、一定以上まで押し返されればソードスキルは中断され致命的な隙を晒す事になる。
それならばと敢えて力をふっと抜き、もう一度後ろに飛ぶ。如月の一撃を後ろに衝撃を逃す事で吹き飛ぶ事にはなるがこちらの硬直もその間に解消される。
「うえぇっ!?」
鍔迫り合いは必然的に力がこもる。その状態で先程まで同じ力を込めていた相手が力を抜いていなくなれば当然体勢を崩す事になる。すぐに体勢を立て直すのは素人では無理だ。
反転での
身体が浮き上がる程全力で切り下ろすソードスキルなため本来は隙が大きいが、この場面ならば関係ない。Xの斬撃が如月を地面へ向けて叩き下ろす。
「硬いな」
それでもまだシールドエネルギーは残っている。追撃を掛けて終わらせる……!
ガギィン! という音と共に剣が止まる。止めているのはショートブレード。ティアーズの武装の一つである【インターセプター】だ。
「ほう……」
「今度はわたくしが相手です……!」
―― 時間は少し戻り SIDE さゆか ――
欄間くんが如月さんに急接近し、こちらにビットが2つ飛んで来るのを確認しながらセシリアと向き合う。
「多重対象射撃での分断……お見事ですわね」
「ありがとう。取り合えずセシリアの相手は、私」
「キサラさん1人では仁さんの相手は厳しいでしょう。さゆかさん。容赦はしませんわ」
セシリアはライフルを油断せずこちらに向けて構え、ミサイルビット1つとレーザービット1つを如月さんの方に飛ばしながら不敵に笑う。
「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる
両手のアサルトライフルは弾切れ。収納して今度はサブマシンガンを2丁展開。
「簡単には、落ちない……!」
私ではビット全てを回避しながら反撃は難しい。欄間くんのビットに攻撃を任せて回避に集中する。
現在3機のビットならセシリアはマニュアル操作で操作するだろう。欄間くんが言うにはセシリアのビットの1つは「必ず一番反応の鈍い場所」から撃ってくる癖があると言っていた。それすらも回避するために意識を研ぎ澄ませる。
上下からのビットの射撃。身体を捻りながら横に飛んで回避。残る1機は私の背後にピッタリと付いての射撃。確かに避けるのは難しい。けどそこには欄間くんのビットがある。4機のビットは私を囲む様に防御してくれている。
今度は正面からのライフルによる狙撃。飛ぶ先を予測した偏差射撃をその場でピタッと止まって回避。間髪入れずに今度は左右からのビット同時射撃。上に飛びながら両手のサブマシンガンを収納。両手に呼び出すのはレーザー弾を放つ2丁拳銃。今の状態からならこれがいい。
再び背後からの射撃。今度はそれに向かって拳銃を発砲。レーザー同士がぶつかり合うけど明らかに向こうの方が威力が高い。拳銃のレーザー弾は消滅。けどぶつかった衝撃でレーザーが僅かに逸れ、回避の猶予が生まれる。
「やっぱりさゆかさんも素晴らしい腕ですわ。ですが……」
上と右からのビット射撃を回避。同時に左足に衝撃が走る。
「わたくしも代表候補生として負けてはいられませんので!」
本体とビット同時の射撃。ビットに意識を向けていた分本体のレーザーライフルに反応ができずに左足に被弾したらしい。体勢が崩れたところに残った1つのビットの射撃が突き刺さる。
「くぅ……っ」
欄間くんのビットでの射撃も挟まれているのにそれを回避しながらの狙撃。流石代表候補生と歯噛みする。
やっぱり防御一辺倒ではセシリアを押さえ切れない。大きな隙を見せたら向こうの戦場に割り込まれてしまう。それなら……。
今度は右手に実弾のセミオートショットガン、左手にレーザー弾のアサルトライフルを呼び出す。
「負けないから……!」
上からビット射撃、前に思い切り飛んで回避。前からレーザーライフル。アサルトライフルを連射してセシリアのレーザーにぶつけ、無理矢理逸らしながらセシリアに反撃。同時にこちらのビットから炎の弾丸がいくつも放たれる。セシリアはそれを回避しながら右のビットに指示を出したのかビット射撃が放たれる。旋回飛行で回避。最後のビット射撃は被弾しながらそれすらも勢いに変えて前へ飛ぶ。
「まさか……!」
「やぁぁぁーー!」
一気に接近してショットガンをセシリアに向かって連射する。ショットシェルの弾数は8発。全て撃ち切る。
その間にビット射撃がいくつか被弾するけどそのままショットガンを収納。ほぼ同時にサブマシンガンを呼び出し、左手をアサルトライフルから離しサブマシンガンを両手持ちでブレないように押さえながらばら撒く。
「
全身を強い衝撃が叩き付ける。射撃に無我夢中で意識から外れていたミサイルビットが炸裂したらしい。視界の端でシールドエネルギーを確認すると残り2割を切っている。もうレーザー弾は使えない。
体勢を立て直し、ミサイルの黒煙が晴れるとセシリアがいなくなっている。欄間くんの方に視線を向けると、欄間くんの剣をショートブレードで受け止めているセシリアが見えた。
「やっぱり、強い……」
でも、まだまだここから。
今回セシリアは操作するビットが1機減った事で純粋に負担が減っているのでマニュアル操作と本体操作を同時に行えています。4機+本体だと最低1機分は操作パターンを組んで、その1機をほぼ自動にしての本体同時操作になりますね。なんか計算おかしい気もするけどそんな感じです。
日常パートが相変わらず苦手な人です。人数増えると純粋に頭の処理能力が追い付かなくなったりしてどうしても影が薄いキャラが出てしまいますね。まだまだ精進が足りません。
影の薄いソードスキルですが今回や無人機の時の様にたまーに登場します。一応SAOのゲーム全部やってるので今回のシグナス・オンスロートとかみたいにそちらからも抜粋してます。
珍しい夜竹さん視点でした。とはいえ私の書き方では視点が変わっても地の文があまり目に見えた変化をしないのですが。
今回の戦闘スピード感少し薄いかな……。
では次回もよろしくお願いします。
感想等お待ちしております。