筆がなかなか進まずに困っておりました。少しずつ書いてようやくです。
「子として、生徒として」と「いざいざ挑戦だ」をほんの少しだけ書き直しました。具体的に言うと本音→仁の感情について少し。
あの子は恋愛感情よりも友情の方が上な感じがしたのでそのように。元々「好意」とだけ書いていたので曖昧だった部分を確約したという意味にもなりますね。
一応わざわざ探して読み返す必要が生まれない様にの説明でした。
『仁、私には相手のISと対話をする能力があります』
「さっきもサレムの機体のコアと話していたんだろう?」
『はい。アレを使ってレーゲンの深層までダイブします』
先程と同じ剣の軌跡を同じように受け流す。幾度となく繰り返した行動だ。もう問題はない。
「アレに接続して大丈夫なのか?」
『私が説明を引き継ぎます。レーヴァテインさんは準備を』
「クロニクルか」
『お久しぶりです。早速説明を。レーヴァテインさんのこの能力は対話という一点に特化しています。普段お二人の脳内に展開されている心象景色を媒体にしての接続です』
蹴り飛ばし、少し時間を作る。
『半分は向こうのテリトリーですが残る半分はレーヴァテインさんの世界。問答無用で直接害される事は少ないと思われます』
「成程……それでボーデヴィッヒ本人と話を付けるって事か」
『はい。まず相手のIS、もしくは武装と接触している状態でなければパスを開けません。レーヴァテインさんの準備が整い次第打ち合ってください。鍔迫り合いが好ましいです』
それを聞きながら一度右眼から力を抜く。右眼の動体視力が無ければ攻撃を見切る事は難しいが、攻撃が読めている今は問題はないだろう。
クロニクルの話の通りだと長期戦になる。このままずっと右眼を使っていたら右眼の痛みで肝心な時に右眼が使えないなんて事になりかねない。危険ではあっても一度休ませる必要がある。
『……仁さん、レーヴァテインさん。あの子を、よろしくお願いします』
「ああ」
短く答え、剣を構え直す。こういった場面なら大剣の一つでも欲しいものだが、どういうわけか【レーヴァテイン】という機体に乗ったままでは俺自身の剣の精製能力は使えない。
『お電話代わりまして束さんだよ。仁くん、行ける?』
「俺はいつでも。後はレーヴァ待ちだ」
居合、袈裟、逆袈裟、唐竹割り、水平切り払い。右眼の能力を閉じた事でその速さがよくわかる。速い上に強く鋭く、一撃でも貰えばシールドエネルギーを一気に吹き飛ばされるだろう。
剣の初動を見て攻撃の軌道を予想し受け止め、受け流す。反撃を考えなければまだ問題はない。
『本当は私が行ければいいんだけど、私もやらないといけない事があるんだ』
「そもそもこれは学園のゴタゴタだ。生徒会や教師の仕事なんだ。アンタが手を下す必要はない」
『束さんは君がまたボロボロになるんじゃないかって気が気じゃないんだぞう』
「過保護過ぎだ。いくら一個人を気に入ったからといって必要以上に何かをしてくれることはない」
『束さんがしたいんだよ~。あ、くーちゃんがあの子に似てるとかって話はまた今度ね?』
気が抜けそうだ。だが彼女は彼女で気の張ったこちらをほぐそうとしてくれているのは、軽いものへと変え切れていない声のトーンでわかる。
最初会った時とは違い、随分と人間らしくなったものだ。問答無用に人の頭を覗いてきた篠ノ之束とはとても同一人物とは思えない。
『準備、できました』
「ああ」
振るってきた剣に二刀を合わせ、鍔迫り合いに持ち込み、ふう、と息を吐いてもう一度右眼に意識を集中させる。
ピリッという痛みと共に右眼から得られる情報量が莫大なものへと変化を遂げる。
『できるだけ長い間、あの機体に触れていてください。パスさえ開けばそれ以降は触れなくても大丈夫です』
「わかった……行くぞ」
ここからはレーヴァの補助は無しだ。二機のビットを自分の横に浮かばせて炎の刃を纏わせる。
ここまでで消費したシールドエネルギーは大体二割。問題はない。
『頑張ってね。くーちゃんが悲しいと私も悲しいからね』
「任せておけ。負ける気なんて元よりない。俺だって俺の周りが悲しむのは、嫌いだ」
『まぁ、こう言えば君はそう言うよね。仁くんは優しいからにゃー』
「やれやれ……」
『止めなきゃいけない理由が、増えてしまいましたね』
「何、いつも通りやるだけだ」
気負う事はない。守るべきものが背後にいないだけ無人機の時より随分と楽なものだ。
「ハナシハオワリカ。サッキカラブツブツト……!」
鍔迫り合いの姿勢のまま黒い雪片が高い高音と共に光を放つ。
「キル……キサマハ、ワタシガ!」
右眼が伝えて来るのは【零落白夜】と同じ情報。色こそ真逆ではあるがその一撃は織斑のものと同じで絶望的なまでの一撃。しかし――。
「俺は織斑にも同じことを言ったが……」
「切り札は確実に当てられる時に取っておけ。何故お前らはそう切り札を安売りするんだ」
キィィィィン……と超高音が鳴り響くまでに圧縮されたエネルギーの奔流は体勢を崩した際にアリーナの地面を抉り飛ばし、半径1m程のクレーターの中心に深い谷を刻む。一撃でも貰えばどうなるかは、推して知るべしだろう。
「コノォ!」
そのまま黒い零落を維持しながら先程までのように切りかかって来る。ここが織斑とは違う点といえる。
このVTシステム、恐らくエネルギーが無尽蔵だ。暴走しているせいかどうかは不明だが、装甲や黒い雪片の自動修復をこれだけ続けているのに力尽きる様子が無い。競技形式は中断されているため相手のシールドエネルギーを見る手段すらない。
無尽蔵と仮定した場合、この零落はいつまでも使っている事ができる。本来エネルギーを莫大に消費する零落でも、そのエネルギーが無限に沸いてくるのならばそのデメリットに関係はない。とはいえそれとは別にボーデヴィッヒ自体の身体への時間制限があるのだが。
「アレと切り合うのは中々のスリルだな……」
言っていても仕方がない。炎を纏わせる事を止めた二刀で受け止める。エネルギーを切り裂く手段である零落が発動してしまっている以上、炎は纏っていても無駄だ。
【炎剣レーヴァテイン】は実体剣。これがエネルギーブレードであったならばそれこそ絶望的だったが、この剣ならば零落であろうと受け止める事はできる。一撃の重さは先程までの比ではない上に光のエネルギーの束を逸らすのは骨が折れるが、やらなければならないのならばやってやろう。
「アレの対抗策はそもそも近付かない事なんだがな……!」
先程までよりもずっと重い袈裟切り。二刀を右肩に担ぐ様に構え受け止める。耳障りな高音が耳を打ち続け、高圧縮のエネルギーの重みが右肩と両腕にズシリと来る。
例外的な武装であるサレムの【ヴォーパルソード】程の威力はない。いくらレーヴァの複製である【炎剣レーヴァテイン】であろうともこの炎の剣は簡単に両断されるような代物ではない。
そのままねじ込む様に力を込めて来る。今のこちらとしては好都合だ。こちらも両足の展開装甲を切り替える事で出力を上げ、上を取られている分不利な鍔迫り合いに持ち込む。
「任せたぞレーヴァ……!」
―― SIDE レーヴァ――
「任されました。私だってやれるという事を仁には見てもらわねばなりませんからね!」
青空の下に広がる白い空間で眼を閉じ、意識を仁と同調。そして二本のレーヴァテインを通して接触している黒い雪片のデータを探る。
「大体いつも仁は優しすぎなんですよ。私は道具なんですから私の事も守るなんておかしいというのに」
仁に届く事はない言葉を紡ぎながら少しずつデータという細い糸を黒い雪片に通す。針の穴を通す作業、というにはちょっと雑な繋げ方ですが、私は器用ではありませんからね。
「まぁ、それがまた嬉しいんですけど……痛ッ……」
黒い雪片に接続が始まると同時に大量のジャミングデータが流れ込んで来る。恐らくは仁が視たVTシステムを隠蔽していたジャミングデータでしょう。私の頭脳として存在するコアに流れ込み、頭痛という形で私という意識にダメージを与える、一種の対IS機能とも言えるでしょうか。防衛機構のような働きもするとは何とも入念なものです。
機体へのダメージは一部私にフィードバックされるので痛覚と無縁というわけではありませんが、大量のデータによるコアへのダメージに一瞬身体がフラっと傾いたのを何とか耐える。
「目に見える形で攻撃を仕掛けられる方が楽なんですけどね……」
最初の波を耐えてもチリチリと頭に残り続け、依然痛みを発し続けるジャミングデータを無理矢理
ともかく黒い雪片への接続には成功。次は黒いISへの接触。
「ぐっ……う……」
先程の倍近い量のジャミングデータ。何とか抑えきれる量ではありますが、漏れ出した様に白い世界の端が僅かに黒く染まり始める。
「あまり時間を掛けられそうにはありませんね……下手を打ったら私が呑み込まれますか」
だからといって負けるわけにはいかない。
「搔き分けて……まずはシュヴァルツェア・レーゲンとラウラ・ボーデヴィッヒを見つけないと」
それが今の私の役割。仁の相棒としてできる最善の行動。外で相棒が奮闘しているのに、それに応えられないようでは相棒なんて名乗れない――!
仁には右眼のタイムリミットがある以上あまり時間もかけていられない。意識を細分化しろ。いくつもの並列思考を行え。実体を持たなく、ISコアという超高性能のAIとしてこの世界に生まれた私なら、できる筈です。
眼を開き、白い空間全てに意識を張り巡らせる。青空以外全くの白だった筈の世界の宙にいくつもの赤と黒のノイズ状の波長が揺れる。その一つ一つが私の意識であり、今黒いISに接続している全ての特異点。
それが増えたのに比例して同時にこちらに侵入するジャミングデータも増えていく。修正力の対応量を超え、すり抜け私に頭痛として襲い掛かるそれを、無視する。ISコアに侵入してくるそれを無視するという事は、レーヴァテインという機体の動作に問題が起こるかもしれないけど、仁を信じて私は私の仕事をしなければいけません。
『――』
「見つけた……レーゲン!」
どれだけ経ったかを感じる余地はありませんが、頭痛の度合いから考えるとそう時間は経っていない筈。ここからが本番。
『――』
「ええ。彼女の事は、今は私達に任せてください」
ノイズが多く混ざった声で語り掛けて来るのは相方の心配ですか。元来人格が優しい娘なのか、それともドイツでの環境が良かったのか。後でまた話したいものです。出来れば戦闘じゃなくてゆっくりとコアネットワークの方で。
「さて……」
世界の至る所に生まれていたノイズの波長にピシピシと亀裂が入る。そこから入って来るのは私の白とは対照的な黒の空。黒の世界はまるで戦争の後のように、荒れた荒野に無数の薬莢が転がり、土の地面はいくつもの抉れたような窪みが刻まれている。
「ようやく繋がりました」
黒の空と荒れた荒野は、青空と白の世界とスッパリと切って分けたように世界を二分する。私の側には私の世界が、そして少し離れた向こう側にあちらの世界が広がる。
それはつまりレーゲンの世界と私の世界が繋がったという事。軍に属しているから心象景色が戦場跡のようなのでしょうか。コアの子達はまだ良くも悪くも純粋ですからね。
さて、繋がったという事は当然いる筈です。
「ね、ラウラ・ボーデヴィッヒさん」
「……何者だ貴様。いや、それ以前にここはどこだ」
「ここは私とシュヴァルツェア・レーゲンの心象風景の結合点。ISコアの深層部分とも言えますね」
「何故私がそんな場所にいる。そしてレーゲンの心象だと言ったな。ISに、兵器に心があるとでも言うつもりか」
「今の貴女は精神体。実体の身体は向こうで今も仁と戦っていますよ。そしてISに心はある。私がそうであるように、レーゲンにも」
「笑わせるな。折角心地が良かったものを。そのような戯言を言うために呼び出したとでも?」
「生憎、その心地の良い力とやらでは私の相棒には勝てません。そして、私にも」
眼帯が既に無くなっている左の金色の瞳も、元来の赤い瞳も鋭く変わる。
「貴様……奴の相棒だと言ったな?」
「ええ。私の名前はレーヴァテイン。欄間仁のISのコア人格にして、相棒です」
「……いいだろう。まずは貴様からだ。ISが人格を持っているなどにわかに信じられる事ではないが、真実ならば貴様を消せば奴のISもまた消える」
「やれやれ……前よりも頑固で短気な人です。一度落ち着かせるべきですね」
ボーデヴィッヒさんがナイフを構える。対してここは私の世界。こちらは念じるだけでいい。
包む込む様に構えた両手の中に呼び出されるのは
同時に服装も変わる。後ろで結わえている髪は解け下へ流れ、普段来ている和服はそのままに、その上から真っ黒なコートが羽織る形で粒子から実態を持つ。
前を止めれば口元まで覆い隠し、私には少し長すぎる膝下まで届く黒い裾は不思議と邪魔に感じず、心地の良い感触。かつてどこかの魔法と魔女の世界や剣の仮想の世界で仁が使っていたものと同じコート。前者の世界に私はまだいませんでしたし、どちらの世界も彼は覚えていないでしょうけど。
「貴様もその剣か」
「仁を傷付けたナイフ……」
「「目障りだ!/です!」」
同時に踏み込む。お互いの世界から、その境界線へ。
初手は最速のナイフの突き。掻い潜った先に鋭く水平に切り払うもう一本のナイフ。それを剣の腹で受け流してから相手の腹部を目がけての切り込み。
身体を捻って回避されたところに更に踏み込み、Vを描くように斜めに切り上げる。片手剣ソードスキル二連撃《バーチカル・アーク》。私はソードスキルを起動できませんが、誰よりも近くで仁を見てきたのです。真似る程度なら容易い。
「チィッ」
二本のナイフを合わせて受け流され、今度は鋭いハイキックが放たれる。上半身を大きく仰け反らせて回避。すぐに体勢を戻しながら少し後退。するとさっきまでの私の胸があった位置をナイフを通り抜ける。
この姿での実戦は初めてですが、中々悪くないようです。ここが精神世界である以上肉体疲労もそう大きくはないでしょう。
「奴と似ているその剣術……気に入らん!」
「そうでなくても気に入らない癖に!」
距離は振り出し。仁、もう少し待っててください。
今回と次回はレーヴァ回です。毎回仁だけ見せ場あるのもあれですし、仁がVTシステムに負ける要素が見つからないというのもあるので、負けないけど勝てないという状況にしてレーヴァに頑張ってもらうという形ですね。
VTシステム。大体二次だと超強化されるいくつかの要素のうち一つ的なそれですよね。うちでもそんな感じです。しかしこうやって色々強化すると、原作のままな一夏がどうしても色褪せてしまって見せ場をオリ主が食ってしまうんですよね。私も今後の一夏について、ちょっと考えないとなりませんね。
そういえば我ながら思い上がったなと思いつつtwitterに投稿報告をすることにしました。以前もtwitterアカウントは作っていましたけど、今回は普段使ってる方です。普段RTといいねしかしてませんけどね。
というわけで 『@kou_myon』 にて投稿報告を行います。本当にRTといいね以外は投稿報告くらいしかしないと思いますがよろしければ是非。
では次回もよろしくお願いします。
感想等お待ちしております。