この疲れ果てた正義の味方に平穏を!   作:ブラック企業アラヤ2

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次の投稿は1週間以上先になると言ったのは嘘だ。






第3話 騒がしい奴ら

 冒険者登録も無事に完了し、私たちは早めの夕食をとることにした。サーヴァントの身である以上食事を摂る必要はないのだが異世界の料理がどういったものなのか気になり、こうしてカズマたちと食卓を囲んでいる。

 食事のメニューに関しては名前だけ見ても全く想像がつかなかったため、めぐみんが勧めたものを注文することにした。

 

 

「む、この唐揚げはなかなか美味だな。だが鶏肉というわけではない······これはカエルの肉か」

 

 

 フォークで大ぶりな唐揚げを一個突き刺す。

 その際に突き刺した部分からジワリと肉汁が溢れ出してくる様は肉料理の様式美といっても過言ではない。

 

 口に頬張れば、からりと揚がった衣が真価を発揮する。外はサクサクで中からは肉汁の旨味が出てくる。

 

 少々口の中が熱いがこれほどの唐揚げを前にして手を止める方が無理だろう。生前にもカエル料理は食べる機会があったが、これほどシンプルな味付けでいて舌を唸らせたものはなかった。さすがは異世界、驚くべしといったところだ。

 

 

「そんなに上品かつ美味しそうに食べられると私たちも奢ったかいがあるというものだ。見たところテーブルマナーも完璧だな。生前は貴族のような身分の高い地位についていたのか?」

 

「別にそういうわけではないぞ、ダクネス。一時期、ある国の名門貴族の下で執事として働いたことがある。その時にテーブルマナーを仕込んでもらったのだ」

 

 

 私の消耗した記憶では彼女に関することをあまり思い出すことは出来ないが、初めて出会った時のことはよく覚えている。というよりは忘れることが不可能である。

 

 高校を卒業してロンドンの時計塔に来たばかりのころに、まだ地理に疎かった私は彼女を狙う暗殺者たちに遭遇し、彼女と共闘したのが出逢いだった。

 

 それから彼女は私のことをシェロと呼ぶようになるのだが、あの時は後々赤い悪魔を交えた血みどろの闘いになるなど想像もできなかった。

 いや、もうあのことを思い返すのは止めよう。古傷が裂ける。

 

 

「ほう、だからそんなにも器用度が高いのか。名門貴族に仕えていたということはゴールデンルールは完璧というわけだな。今度、機会があったら紅茶を淹れてくれるとありがたい」

 

「そちらの方面に関しては一定の自負がある。どんな茶葉であろうとその旨味と香り、確実に引き出してみせよう」

 

 

 となれば、ダクネスにはいずれ最高級の紅茶を淹れなければならない。近日中にはある程度クエストをこなして収入を得たのち茶葉やティーポットなど色々買いに行かなくてはな。

 

 

「やっぱり、俺にはシロウは英雄じゃなくて執事にしか見えなくなってきたんだが」

 

 

 私とダクネスのやりとりを聴いていたカズマが唐突に心外なことを言ってきた。確かに私は正規の英雄ではないが、執事呼ばわりは流石に聞き捨てならない。

 

 

「失敬な。私とて好きでこのような技能を身につけたのではない。必要があったから取得しただけだ。私のことを他の冒険者はコックやバトラーなど好き勝手に言っていたが、それこそ本業の方に失礼だろう。いくら技能はあっても私はサーヴァントで、あくまでも戦う者にすぎん」

 

 

 

 なぜか昔から料理や家事が得意だから好きなんだな、とよく言われたが認めるわけにはいかん。

 家事全般、特に料理を得意としてるのはそれをすることで喜ぶ人がいるからであって、私は料理自体を楽しんでいるわけではない。

 私の料理で周りの人々が少しでも喜び、幸福感に浸れるというのならそれでいいのだ。

 そこに私の感情が入ることは決してない。

 

 

「もちろん、アクアの説明で英雄ってものが卓越した存在っていうのは頭には入っているんだけど、シロウを見る限りでは俺と何も変わらないただの人みたいな感じがするんだよな」

 

「確かに想像していた英雄とシロウがかけ離れているのは事実だ。別にシロウを窘めているわけではないのだが······」

 

 

 ダクネスまでもがカズマと同意見らしい。

 とはいえ、あまりに説明が不足していたか。

 私もこちらの世界の背景を知るのに手一杯だったし、もう何段階か踏み込んだ話をするとしよう。

 

 

「君たちはまだサーヴァントというものを完全に理解していない。せっかくの機会だからこちら側の話をするとしようか」

 

 

 食事を進める手を一先ず止めて、話を始める前に水で口を潤す。

 水を飲んでいて思ったことだがやはり自然豊かな土地の水は美味い。

 無料で飲める水で透き通るように喉を通っていくのだから、この世界の最高級の水はどんなものなのか楽しみである。

 

 

「そもそもサーヴァントとは分類上、使い魔ではあるがその正体は君たちも知っている通り、人々から信仰されることで人間霊である者たちを精霊の領域にまで押し上げた人間側の守護者、つまり英霊なのだ。本来は降霊儀式・英霊の召喚は抑止力のみが可能とするところであるのはアクアから君たちも聞いているのだろう?」

 

 明確には英霊には伝説上のもの、実在したものがおり、信仰が薄いものは守護者という大きな分類に含まれ、私はそのカテゴリーに位置付けられる。真っ当な英霊たちは神性が高かったり、人間側ではなく星寄りの存在になっているため、守護者に取り込まれずに済んでいるのだが、ここまでの話をしようとすると混乱を招きかねない。

 

「聞いています。世界が滅亡の危機に瀕した時に抑止力の守護者として召喚され、その事態を引き起こしている要因を排除し、世界を存続させるために奔走する存在が人間を超越した英霊である、と。それゆえに人間が英霊を使役することは不可能なんですよね?」

 

 

 めぐみんの言葉に頷きを返す。

 マスターであるめぐみんが英霊についてしっかりと理解してくれていたようで安心する。

 カズマ曰く、紅魔族は変な名前(本名)を堂々と名乗り、中二病のような芝居がかった言動をとることを本人たち自身は格好いいと思っているらしい。

 その大変残念な価値観を持っている代わりに生まれつき高い魔力と知力を保有しており、魔法使いとしての高い適性を持つそうだ。

 

 

「しかし、何事にも例外があるように英霊召喚にも裏技のようなものがある。それが先ほど説明した聖杯だ。私の故国の冬木という土地で始まりの御三家と呼ばれる魔術師の家系のものたちがあらゆる願いを叶えるという聖杯を作り出した。そして彼らを含めた7人の魔術師のマスターは聖杯を完成させる儀式として聖杯戦争、要するにサーヴァント同士の殺し合いを行なった。この時点で例外が生じているのは分かるだろう?」

 

「本来、人間には降霊できないという英霊を召喚しているということだな。話を聞く限りでは英霊とサーヴァントの区別があるようだが······」

 

「ダクネスの言う通りで英霊とサーヴァントには明確な区別がつく。結論から言うと聖杯に招かれる英霊は全てがそれぞれクラスに応じて選ばれているのだ」

 

「クラス······? その、シロウがアーチャーと呼ばれているようなやつか?」

 

「そうだ。もとより英霊をまるごと召喚すること自体が奇蹟に近い。それを7人分となると願望器とも呼ばれている聖杯でも手が余る。その解決の為、聖杯は予め7つの器を用意し、その器に適する英霊だけを呼び寄せた。それが7つのクラス、

 

 

 

 

剣の英霊、セイバー

 

 

槍兵の英霊、ランサー

 

 

弓兵の英霊、アーチャー

 

 

騎兵の英霊、ライダー

 

 

魔術師の英霊、キャスター

 

 

暗殺者の英霊、アサシン

 

 

狂戦士の英霊、バーサーカー

 

 

 

聖杯は役割に該当する能力を持った英霊をあらゆる時代から招き寄せる。そうしてクラスという殻を被ったものが『サーヴァント』と呼ばれる。英霊時とは違って霊核が幾分か劣化しているため能力やスキル、それ以外にも様々な制約を受けるがそれでも人間とは一線を画した存在であることには違いない」

 

 

 この他のクラスにもエクストラクラスというものが存在するようだが、詳細は私も知らない。

 そもそも通常の7つのクラスに該当せず、通常の枠から外れた英霊だ。

 英霊と呼べるか怪しい存在が召喚される可能性が高い。

 第三次聖杯戦争ではアインツベルンがアンリマユをアベンジャーとして召喚した辺り、私のように正規の英霊ではない者だけに与えられるクラスなのかもしれない。

 

 

「そうなるとおかしくないか? ウィズの店にあったあの魔道具はシロウをサーヴァントとして完全に召喚してみせたぞ。シロウ一騎だけとはいえ、あの魔道具ってそんなに凄いものだったのか」

 

 

 そう、カズマの言う通りだ。

 英霊をサーヴァントの領域にまで落として召喚することさえ、神域のそれによるものだ。

 けれどもあれは実際に私というサーヴァントを召喚してみせた。

 

 

「私もめぐみんに召喚され、すぐに異常を察知したよ。これは聖杯戦争ではなく守護者として召喚されたわけでもない、と。話を聞けば、英霊を召喚する魔道具とやらが私を呼び寄せたそうではないか。あれを作り上げた者は間違いなく天才であろうよ。聖杯に比べて随分と劣化し性質もかなり異なるが、サーヴァント一騎分を召喚出来る容量を持つ上に私が現世に留まれる程度にはめぐみんをバックアップしているようだしな」

 

 

 私の解析魔術で調べた限りではあの魔道具は聖杯の願望器としての能力を削ぎ落としたようなものだ。

 聖杯があらゆる願いを叶えるために造られたというのなら、あれはサーヴァントを一騎のみこの世界に呼び込み、留ませることだけに専念した魔術礼装と言ったところか。

 令呪システムのような使い魔制御の術式がないのが唯一の欠点と言えるが、規格外のものであることには変わりない。

 

 

「待ってくれ。仮にあの魔道具が壊されて、めぐみんへのバックアップがなくなったらしたらシロウはここに居られなくなるのか?」

 

「めぐみんの魔力量にもよるが、あの魔道具のバックアップなしでは私は2、3日でこの世界から消え去るだろう。あくまで聖杯や魔道具が私たちをこの世界に呼び込むのであって、マスターが呼び寄せたものではない。マスターはサーヴァントに魔力を供給するための燃料のようなものだからな。だが心配することはない。ウィズには魔道具を厳重に保管しておくように話を通しているし、めぐみんはまだ13歳と若く潜在能力も計り知れん。あの魔道具が時間経過による劣化等で機能しなくなってもめぐみんが魔法使いとして大成する頃には私程度のサーヴァントは優に維持できるようになるさ」

 

 

 めぐみんは未だ魔法使いとしては未熟だ。

 だが、全盛期を迎え、魔力量が最大になるときには魔道具などに頼らなくても私程度の存在など楽に現界させられるだろう。

 自分で言うと悲しくなるが、めぐみんは私にはもったいないほどの才を持った魔法使いなのだ。

 

 

「ふふふ、シロウは見る目がありますね。やはり、私は最高のサーヴァントを召喚してしまったようです。これで戦闘も楽になりますし、借金返済も時間の問題でしょう!」

 

 

 何やら不穏な言葉が聞こえてきた。借金、と言ったか?平均年齢が20も満たないこのパーティーがなぜ借金など······ああ、そういえばアクアがいたから平均年齢が20未満というのは詐欺になるか。

 というか借金を作ったのは九分九厘アクアだな。

 金運のなさが赤い悪魔と似てるから分かる。

 

 

「確かにそう考えたら未来が明るいわね! なら今日という日を祝福するために宴でもやるとしますか!!」

 

「借金作った原因、お前だけどな」

 

 

 やはりか。

 

 

「何よー! ベルディアもちゃんと倒せたし、借金はシロウの助力で何とかなりそうだし、今日は飲まずにはいられないわよ!!」

 

「あ、なら私もお酒が飲みたいです!! もう水とジュースは飽きました!」

 

「めぐみんに酒を渡すな! 酔っ払って爆裂魔法でギルドや街でも壊したらまた借金が増えるぅぅぅ!!!」

 

 

 

 どうやら今日から騒がしい日々が始まりそうだ。今まで守護者として殺伐とした日々を送っていたがこういう雰囲気もたまになら悪くはないかもしれ

 

 

 

 

 

 

「エクスプロー「やめろぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 やっぱり良くないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今度こそ次の更新は1週間から2週間以上先になります。
ごめんよ。
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