ヤル気も上がると思うので…!
念能力
【影の泉/ナイトプール】
・ 操作系能力+特質系能力
影とその中の空間、空間内の物質を自由自在に操る能力。
また、主と契約した者は【影の泉/ナイトプール】を使用することが出来る。(契約は主の勝利が前提条件としてある)使用は主との関係性(眷属・隷属)によってその範囲が異なる。
眷属…【影の泉/ナイトプール】のあらゆる能力を使用可能。契約時に体内の血の半分を【影の泉/ナイトプール】の影で作った疑似血液と交換しなければならない。また、眷属は個の念能力は持てない。仮に眷属化前に個の念能力を持っていたとしても契約と共に消滅する。
隷属…【影の泉/ナイトプール】の攻撃能力以外を使用可能。契約時に体内の血の1/4を【影の泉/ナイトプール】の影で作った疑似血液と交換しなければならない。また、隷属は個の念能力を保持出来る。一方で【影の泉/ナイトプール】を使用した際、眷属の倍のオーラを消費する。
<制約>
不明
以上がソレイユの知っている範囲での、カゲの念能力だ。
現在、眷属はリュンヌの専属メイドの三人。隷属しているのはソレイユ、イルミ、アセナ_そしてヒソカである。だが、ヒソカの隷属化をソレイユは知らなかった。他にも知らない契約者がいるかもしれない。
「…」
だが、今は。
部屋のソファーに転がしたカストロを見遣る。一呼吸して、ソレイユは【影の泉/ナイトプール】を発動し、影に潜った。
影の中は無限の暗闇で、果てがない。夜目はきくが、ソレイユはあえて【全ては光から生ず/バース・ライト】で己の左手を松明のように発光させた。段々と発光を強くすると、それと同時に自身の身体が悲鳴をあげる。光と影は表裏一体、互いが弱点でもある。【影の泉/ナイトプール】で交換された分の血が燃えるように疼く。隷属しているだけでこれなのだ…ほら来た。
「…お帰りなさいませ、ソレイユ様」
身体を震えさせたリュンヌの専属メイドの一人が、光を避けた位置に現れた。左手はそのまま、発光させ続ける。
「帰って来たつもりはない」
「では、何用で?…光を消して頂けると有り難いのですが」
「アセナに俺の元まで来るように伝えてくれ。来ないのなら、次はもっと発光させるぜ」
「…直接、執事長の影まで移動されては?」
「アセナは大抵、主人の側にいる。今はカゲか、両親の側じゃないのか」
「…」
そこまで言うと、メイドは何も言わずに闇に消えた。無言の肯定を受け取ったソレイユは、身体を影から浮上させた。
_待つ事、3分。アセナがソレイユの背後の影から現れた。
「…また、拾い物?」
ソファーのカストロを見遣り、アセナが問うた。それに頷き、続けて頭を下げた。
「コイツを頼む」
「…栞のメッセージ、分かったんでしょう?」
「あぁ…、けど生かした。俺の人を殺める責任と、コイツは別だ」
「屁理屈に聞こえるけど?」
「…屁理屈だから」
「…」
「…」
アセナの短い溜め息が溢れる。堪らず、ソレイユの口元が緩む。
「サンキューな!」
「…貸しだからね。それに、クラピカは必要だったから執事にしたんだ。彼はそうじゃない。希望は聞くが、最終決定権は僕だ。OK?」
「おう!…と、そのクラピカは大丈夫か?」
「五体満足を大丈夫というなら、大丈夫だろう」
「全然大丈夫じゃないってことだな…。もしかしなくても…」
「そ、ご明察通り。カゲが主導してる。教育に付き合わされるミシマとニトの機嫌が悪くて困ってるよ」
「…リュンヌは?」
「ソレイユと喧嘩してから、出て来ないんだ」
「…そうか」
「驚かないの?…ずっとカゲの人格でいるなんて、今までそんなことなかったのに」
「そんな気がしてたんだ。アセナが思うより、リュンヌは頑固で横暴だぞ?」
「…噓」
「噓ついてどうすんだよ。生まれた時から一緒にいるんだ、俺の方がリュンヌを知ってるのは当然だろ」
「…は、僕の方が驚かされたよ。誇っていい。君のシスコンは、本物だ」
「言ってろ」
「うッ…ここは…」
会話が五月蝿かったようだ。
「ミスター、ご気分は…?」
昏倒させていたカストロが目覚めた。アセナは心配そうに彼に近付いて、その額に手を当てる。そして、アセナの念能力が発動した。
念能力
【肯定する因果/タスク・マネージャー】
・ 特質系能力
対象を12時間管理することが出来、その間の行動を知覚できる能力。(対象の身体を操作しているのではなく、身体に宿る精神の時間を止めている)
対象が絶対に取らない行動を促すことは出来ない。また、対象は管理されている間の記憶はない。
<制約>
対象の頭のどこか一部へ、直に接触しければならない。
「さて、ミスター。貴方のお名前は?」
「…カストロだ」
「カストロ。そこのバスルームで汚れを落とし、自分で最低限に傷の治療をしてから出てきなさい」
「承知した」
答えるカストロの目は虚ろだ。起き上がった彼は、指示された通りにバスルームへと消えた。
「クラピカの時みたく、【否定する因果/バタフライ・エフェクト】で時間を戻して、偶然を演出した方が良かったんじゃねーの?」
アセナの念能力は【肯定する因果/タスク・マネージャー】と【否定する因果/バタフライ・エフェクト】の2つだ。後者の方が、リスクは高いが話は早い。そう思ってソレイユが言葉にすると、アセナの表情が曇る。
「…君と。君とリュンヌの喧嘩を止めようとした時に、12回戻ったんだ。…その結果が今。何度やり直しても、君たちは結局喧嘩した。その中で、リュンヌが気持ちを吐露したのは、ただの1回だけだった。あの栞はその戦利品なんだよ。だから、当分【否定する因果/バタフライ・エフェクト】は使いたくない」
12という数字は、同日に【否定する因果/バタフライ・エフェクト】が戻れる限度回数。そして限度回数まで戻ると、代償を支払わなければならない。アセナは軽くはないそれを、払ったのだった。
<キルア視点>
「ソレイユさんこれもおいしいッス!」
「ん」
「「「…(凄い)」」」
キルアとゴンはウイング達と共に、ソレイユと食事に来ていた。
二人の姿を見たソレイユは、一瞬眉を寄せたが特に何も言わなかった。ソレイユは腹が減っていたようで、次々と料理を注文して届いた料理を恐ろしいスピードで食していた。それに動じないズシは、ソレイユに更に料理を進めている。
「?、皆さん食べないッス?」
「…んぐ、食べないなら俺が食うぞ?どうせ、金払うのは俺だし」
「た、食べるに決まってるだろ!」
「うん、食べるよ!…ちょっとソレイユの大食いにビックリしてたんだ」
「私も二人と同じです」
オレ達は返事をしながら、料理に手を伸ばす。
「…ここ数日まともに食ってなかった」
「金はあるだろ?つーか、なんで下の階で燻ってるんだよ。200階クラスで戦わないし、そもそもカストロはどうした?」
「キ、キルア…」
ゴンの咎めるような視線を流す。ソレイユには聞きたいことが沢山あるのだ。
「…金はあんまりねーよ。実家を勘当されたからな。下にいるのは、別に上に上がる必要がないからだ。戦うためじゃなくて、金が欲しくてここに来てる。カストロは、知人に預けた。信頼できる奴だから、それきり連絡は取ってない」
ソレイユは澱みなく質問に答えた。そして、新たにきた料理をたぐり寄せている。
「…か、勘当?」
「確か、ソレイユの実家って凄いお金持ちじゃなかった?」
理解が追いつかない。そんなキルアと同様に、ゴンも疑問を口にする。
「金持ちだな。だけど、まぁ…色々あって勘当されたんだ。もういいだろ?」
「…良くない。ヒソカの足元から出てきたのは、誰の能力だ?」
「そんなの、お前らに言う必要はない」
一蹴するように、ソレイユが苦笑する。『誰の』の部分を否定していない、そのことからソレイユの能力でないことは確信となった。
「いいや、ゴンはヒソカと試合をするんだ。こっちはカストロの時みたいに、試合中に出て来られちゃ困るんだよ」
「うん。オレ、思いっきり試合したいから」
「…それなら心配ない。ゴンとヒソカの試合に介入する気は更々ないんでな」
「じゃあ、何故カストロとヒソカの試合には介入したんだよ?」
「…」
ソレイユが固まる。ここで逃がすもんか。
「答えろよ」
「キルア君、無理に聞くのは…「答えてやるさ」……ソレイユさん!」
何故か止めようとするウイングを、ソレイユは遮った。
「カストロとヒソカがやってたのは、試合だが殺し合いでもあった。けど、ゴンとは違う。ヒソカはお前に一目置いてるが、殺し合いをする気はない。ゴンだって、奴を殺そうとまでは思ってないだろう?」
「…それは、そうだね」
「俺は自分の視界内で、人が死ぬのが嫌なんだ。だからカストロを助けた。そして、ヒソカにはゴンを殺る気がない。
「てっめぇ…!なんて言い方しやがる…!!」
「…事実だ。違うか、ゴン?」
「…違わない。けど、今決めた。おままごとなんて言わせないくらい、ヒソカを本気にしてやる」
ゴンの目がソレイユをじっと見据える。対してソレイユは、「あっそ。頑張れよ」と興味なさげに食事を再開した。
「あああ〜ムカツク!!!」
「まあまあ、落ち着いてよキルア〜」
「うるさい!てゆーかゴンがキレるとこだろ、ここは!」
「そうッス!落ち着いてこれでも食べるッス!」
「にゃああああああああああああ!調子狂うから、二人ともちょっと黙れ!?」
結局、ソレイユとヒソカに繋がる第三者のことも、その念について掘り下げることも出来ずに食事会はお開きとなった。
解せぬ。