(仮)強い漢になりたい   作:トーマ@社畜

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休み最高。
「インクレディブル・ファミリー」が面白すぎたから観て欲しい。

次話はリュンヌのターンです。お盆中に投げたい。


愉しいゾルディック一家/後編

コイツ、話が通じねえ…!

 

「だから!俺の好みは黒髪色白美人って言ってんだろ!?」

「まぁ!?やっぱりイルミのことじゃない!!」

「目、腐ってんじゃねッ!?!?!??!」

「〜〜ッ!何て言葉の汚い…お義父様、だから私はレッド家との訓練に反対したんです!まさかこんな…男装せずとも色気のない、暴力女にイルミが誑かされるなんて!」

「誰がいつ誑かした!?大体俺は身体が女でも、心は男なんだよ!色気なんて必要ねーし、二度と女扱いすんな!!!」

 

ゾルディック家の食卓。

風呂場で倒れたミルキをカルトと共に介抱し、夕食に招かれたその場でキキョウ=ゾルディックからの怒濤の口撃に遭った。ミルキとカルトちゃんに『悪影響』から始まり、イルミを『誑かした』だの…全く酷い言いがかりだ。寝言は寝て言え!

 

「キキョウ…それくらいにしておけ」

「そうじゃ。ワシら…お主も含めて、今までソレイユを男だと認識しておった。イルミを誑かすも何もないと思うがのォ」

 

「オ、オレは別に悪影響じゃないし寧ろ「ミルキ兄さん黙って。…お母様、僕も問題ありません」

 

「聞いたかよ、オイ?」

「あ…あなた達は甘過ぎですわ…!」

4対1だ。まさかのゾルディック家からの援護射撃で、漸く場が落ち着いた。

 

俺は食事途中だった皿に手をつける。ん…この白身魚のコンフィうめえ。

 

「味はどうじゃ?」

テーブルの向かいに座るゼノからの問い。

 

「うめえ。…これ毒入りか?」

「…食べてから聞くことではないと思うが…安心せい、お主のには入っとらんわい」

「ふ〜ん」

別に入ってても大丈夫なんだけど。

 

「ソ、ソレイユ!も…もし、毒が大丈夫ならオレのも食べる?」

隣に座るミルキが自分のコンフィを差して言う。

 

「いいのか…?」

「も、勿論!」

「サン「全く!言葉だけでなく、食い意地まで汚いなんて」…」

 

キキョウの言葉に伸ばしていた手が止まる。

「お宅の息子さんが『くれる』…つってんだけど?」

「『くれる』と言われれば、何でも貰うのかしら?全く浅ましい女ですこと」

 

「…だから、誰が『女』だって?」

キキョウを睨むと、向こうもこちらを睨み返してくる。

 

「マ…ママ」「…お母様…レッドも!」ミルキとカルトが俺たちを諌めようとする。が、…絶対に負けられない戦いってのがあるんだ。もう誰にも止められないからな…!

 

「ソレイユ様」

「…あ゛?」

何故か、後方の執事から声が掛かる。

 

「リュンヌ=レッド様よりお電話です」

 

 

 

「もしもし!」

『あ、もしもしソーちゃん?』

ソーちゃんですとも。まさに地獄に仏!…って、アレ?

 

「なんで、わざわざゾルディックの家電に?」

『ケータイ。電源切れてない?』

 

ポケットの中の携帯を取り出す。Oh…。

 

「ワリ、充電しとく…。で、どうした?」

『うっかりゾルディックホイホイしてないか、心配になって』

「?」

『…してそうだね』

 

電話の向こうから複数の溜め息が聞こえる。オイ、スピーカーフォンか?

 

『それと、ゾルディック家の執事さんから聞いたんだけど…ソーちゃん、どうしてゴンたちと一緒にいないの?』

「」

 

脳内でイルミの言葉がフラバする。「リュンヌの方が一枚上手ってこと」ま、間違いない…。

「アシタカラ チャント ヤリマス」

『…』

 

「そ、そっちは変わりないのか?」

無言の圧力にビビり、思わず話題を逸らす。

 

『…家に叔父さまが来てるの』

「ゲッ!? ペスト野郎が…!?」

気色悪い作り物の笑顔が脳裏に浮かび、鳥肌が立つ。

 

「か…帰る!今すぐ!!!」

『明日からちゃんとやるんじゃなかったの? それにそうは言っても…ソーちゃん、叔父さまのこと苦手でしょう?』

「…ん。つーか、アイツが得意な奴なんているのか?」

『…フフ、確かにそんな人いないかも』

 

いたら多分、ソイツもペストみたいな『災厄』だ。

 

 

 

 

 

<ミルキ視点>

外は雷鳴が響き、時折雷の光が届く拷問部屋。

つい2週間程前まではキルに刺された腹いせに、鞭を執拗にその身体に打ち付けていた。そう…だかそれも今では惰性だ。

 

オレには鞭を振るうよりも重要なことがある。

そう、キルを連れ戻しにきた友達の一人。ソレイユ=レッド。名前は以前より知っていた。イルミ兄の殺せなかった標的、あるいは戦闘訓練相手。

 

イルミ兄が負けた相手だ、気にならないワケがない。オレは自身の持つスキルや情報網を持って、レッド家の双子を調べた。

そして分かったことと言えば、レッド家の双子…その『妹』の方は秘匿されており、調べても写真が出て来るのは兄のソレイユのみ。金髪碧眼でかなり整った容姿に、どこのハーレムアニメ主人だ?とムカついたのは言うまでもない。そして、それ即ち秘匿された双子の妹…リュンヌ=レッドはメインヒロイン間違いなしの容姿ということ…!

俄然ヤル気が沸いてきたオレは、執事にリュンヌの写真を手に入れるよう命じた。ところが、だ。

 

「駄目だよミルキ。リュンヌに手を出しちゃ、それってソレイユの地雷だよ?」

戻ってきたのは写真を入手した執事ではなく、ボコボコに殴られた執事を気怠そうに抱えたイルミ兄だった。

 

「ウチの執事だから半殺しで勘弁したらしいよ?ま、オレは別にどうでもいいんだけど。牽制のためにコレ、持って帰ってくれってさ」

「…」

「あ、それと…オレも牽制だ」

瀕死の執事を床に投げて、イルミ兄が近付いてくる。

 

「…こ、これ以上、何に対して!?」

もう十分、リュンヌ=レッドに手を出す気は失せた。

 

「ソレイユに」

「」

 

 

 

あの時は、自分の兄が男色だったショックで一週間食欲が失せて3キロも痩せた。だが、しかし…だ。イルミ兄は男色でも何でも無かった。当のソレイユが女だったのだから。

 

男だと思っていた時はムカついたが、女となれば話は変わる。

 

もう金髪碧眼のボーイッシュ美少女ちゃんにしか見えない(血眼)。

寧ろ、普段とはだ…生まれたままの姿のギャップに滾る。人形のような小さな頭と長い手足。白い肌に、程よく筋肉がつき引き締まった身体。そこに張りのある大きなおっぱい。お、おっぱい…!

 

イルミ兄の牽制が今になってオレを苛む。

 

 

 

「はぁ………」

「なぁ、兄貴。ヤル気がないなら、オレもうここ出るけど?」

 

「…勝手にしろキル。あ、さっきママがお前の友達が執事室の近くまで来たって電話してきたぞ」

「うへぇ…あ、兄貴変なものでも食べた?」

親切なオレを不信な目で見ながら、キルが拘束具から脱け出す。

 

「キル、お子様なお前には理解しえない悩みだぜ…」

DEAD or OPPAI。

 

 

 

 

 

<ソレイユ視点>

リュンヌに電話で軽いお叱りを受けた俺は、次の日からは約束通りゴン達を見守った。特訓の間は近くで、夜は流石にホテルで寝泊まりしたけど。何故かミルキが執拗にゾルディックに泊まるのを勧めてきたが、キキョウのことがあるので断った。

 

それにしてもコイツら…ほんとに主人公補正はすげーな。どんどん力を付けていく。原作通り2週間で試しの門を開けられるようになった3人は先を急ぐ。

 

「ケッ、特訓をパスして高みの見物してたソレイユはいいよな」

 

「るっせ〜な。リュンヌに叱られなきゃ、見物すらしてねーんだから有り難く思え」

「なんだって!?」

 

「レオリオ落ち着いてよ、ソレイユがミケと遊んでくれたおかげで、オレ達心置きなく特訓できたんだから!」

「全く、最初に見たときは心臓が止まるかと思ったぞ…」

 

何故だ。カゲと比べたら、ミケは何倍も可愛い犬だぞ?

 

「出て行きなさい」

 

話をしていた俺たちの会話が止まる。眼前にいるカナリアによって。

はぁ、こっから長いんだよな…。

 

 

 

ゴンを殴る鈍い音が響く。もうどれくらいたっただろう。

コイツらのキルアを想う気持ちと、ゴンへの信頼は本物だな。

 

「君はミケとは違う」

カナリアの瞳が揺らぐ。

 

続くゴンの言葉に、カナリアの使用人としての顔が剥がれ落ちた。そう…この娘もキルアを想っている。

「お願い…キルア様を助けてあげて」

 

『パン』

狙撃音が周囲に響く。カナリアを狙ったソレは、俺の右腕に当たった。

 

「「「!?」」」

能力が知りたくて、当たってみたのだがコレ…ただの礫か?

ま、キキョウがイルミと同じ操作系なら、それはそれで無効か。

 

「全く、ウチのクソ見習いを庇うとはどういうつもりなのかしら?」

 

「どういうつもりも何も…女の顔を狙う下衆に言っても、なぁ?」

「じゃあ、次はあなたの顔を狙うべき?」

 

バチバチと火花を散らす俺たちに周りが若干引いている気がするが、仕方ない。コイツとは水と油だ。絶ッッッ対、相容れねぇ…!

しかし、そんな俺たちも気にせずにゴンがキルアへの質問を次々とキキョウに投げかける。…が、その途中でキキョウは声を荒げ屋敷に戻って行く。

 

多分、キルアが独房を出たのだろう。

キキョウに急かされるも、カルトは何故かこちらを見つめ続ける。ん…?コレ、俺にガンつけてね?

 

「ホラ、お袋が呼んでるぞ。さっさと行け」

「…ソレイユ。また、家に来る?」

「え? なんで?」

「〜〜〜ッ、バカ!」

 

「え…?」何故バカ呼ばわり…?

い、意味が分からん。結局チンチン見たせいか?

 

「ソレイユ…、一体何をしたんだ?」

カルトとの遣り取りを見ていたゴン達とカナリアの視線が痛い。何をしたって…?それは俺が聞きたい。

 

 

 

カナリアに案内されて、執事用の住居まで来た。

ゴトーとのゲーム。俺は別にキルアを連れ戻しにきたワケではないので、壁に寄りかかって終わりまで待つことにした。

 

 

 

 

 

「…様!レッド様…!」

 

やべ。うたた寝してた…。周囲を見渡すと、もうキルアが合流している。ゴンがこちらを指差し、キルアが若干気まずそうに手を振ってくる。それに軽く手を振り返し、声を掛けてきた人物と対峙する。

「えーと…ゴトー。何か…?」

「いつもイルミ様がお世話になっております。そして…今回のことも、色々とお手数をお掛けしました」

「別に…。リュンヌに頼まれただけだ」

「それでも、です。ありがとうございます」

「…イルミも大概だけど、お前らも相当キルアが大事なんだな」

俺の言葉にゴトーが笑顔を返す。

 

「キルア様をよろしくお願いいたします」

 

 

 

「ハア!?じゃ、兄貴を負かしたレッド家の双子って、リュンヌとソレイユのことだったのか?」

キルア、うるせえ。ゴン達はゼブロからその件を聞いたらしい。面白おかしく説明している。他人事だと思って…!

 

その話題を躱していると、話はクモ_9月1日、ヨークシンに移った。

 

クラピカとレオリオがそれぞれの目的の為に、ゴンとキルアに別れを告げる。

「ソレイユはどうするの?」

「家に帰る」

「! ソレイユ…リュ、リュンヌの連絡先を、さ…」

 

「だが断る」

「な…ッ!なんでだよ!?」

「諦めろキルア。私たちの誰一人教えて貰っていない。…それに会おうと思えば、レッド家か、レッドグループの本社に行けばいい話だ」

「め…めんどくせー!マジで、シスコンもいい加減にしろって」

 

ふはは、なんとでも言え。痛くも痒くもないぜ!

ヨークシンでの再会を誓い、別れる4人を見届ける。漸くお役御免だ。俺も帰ろうと、その場から離れ駅まで来た。

 

 

 

タイミング悪く、俺の乗ろうとしていた列車は10分前に出てしまっていた。駅の構内にある本屋で、次の列車を待つ時間を潰しているとクラピカと鉢合わせた。

…さっきぶり。

 

「ハハ…どーも」

「ああ。…ソレイユも時間を潰しているのか?」

「そんなとこだ…」

「そうか…」

「…」

「…」

 

「ソレイユ…その」

「ん…?」

立ち読みしている本から視線を外し、クラピカを見る。

「ゾルディック家でのこと、いや…ハンター試験中もだな。ソレイユとリュンヌには色々助けられた。礼を言う、ありがとう」

そう言い、クラピカは穏やかに笑った。

 

「いや、俺はリュンヌに頼まれたからであって…」

「それでも、だ。…ボドロやゾルディック家の使用人を助けたのは、キミの判断だろう?」

「…」

…どいつもこいつも……!

 

「私の待つ列車が来たようだ。これで失礼する」

一礼し、クラピカがその場を離れる。その先で復讐に飲まれるとも知らず。

 

「~~~クソが!」

「!?」

俺の突然の咆哮に、クラピカが振り返る。あぁ…、ムシャクシャする!

 

「お前がどこで何しようが、野垂れ死にしようが俺の知ったこっちゃねえ!…だけど!」

 

「そうなると、多分…リュ、リュンヌが悲しむ…から」

「…ソレイユ?」

心配そうに近付いてきたクラピカを即座に背負い投げた。一瞬で投げ飛ばされたクラピカは、何が起きたのか分からず目を点にしている。俺はそれに構わず、クラピカの首元に手刀を当てる。

 

「無茶な賭けは選択させない…それくらい強くしてやる」

 

暴力によって奪われる悲しみを、知らないわけではないのだから。

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