本編はオリキャラ大量発生&捏造設定です。
レッドグループ本社。
「「「お帰りなさいませ、リュンヌ様」」」
「ただいま戻りました」
「「「ハンター試験合格おめでとうございます」」」
「ありがとうございます」
玄関ホールで待ち受けていたメイドと、居合わせた社員が声を揃える。それに応えていると、ハンター試験の最終試験場からここまで随行してくれた執事が告げる。
「リュンヌ様。2時間後に旦那様と奥様が本宅に戻られるので、お疲れでなければそちらで一緒にお食事を」
「分かりました。一度、執務室に戻りますが…何か急ぎの仕事は?」
「帰路で片付けていただいた分で十分かと。また、執務室にはアセナを待機させております」
「そう…。アセナがいるなら、ゾルディック家に向かわせたいのですが」
「申し訳ありません。ソレイユ様の命でアセナはこれから二週間、リュンヌ様付きにするよう申し付けられております故、難しく…」
「…」
いつ命じたのか。こういうとこだけ、抜け目ないなぁ…。
謝る執事に礼を言い、執務室に向かう。向かう途中も付いてきてくれたメイド3人を執務室の前で帰そうとするが、無駄に粘るので部屋の外での待機を命じる。
…もしかしなくても、ソーちゃん専属のメイド達だ。
洗練された動きで扉を開けるメイドに礼を言い、漸く執務室に入る。
「お帰りなさいませ、リュンヌ様」
部屋の中央で、深いお辞儀をした青年が出迎える。
名をアセナ。他の燕尾服を着た執事と違い、黒いスーツに身を包み、顔には丸いサングラス。ミディアムな白髪を黒いリボンで結んでいる。一見すると、どこかの詐欺師かマフィアだが、その華麗な所作で彼が従者であることが分かる。
「ただいま戻りました………」
返事しながら服を脱いでいく。床に散った服は、後を追うアスナが拾ってくれる。そして己の胸元を見る。忌々しいったらない…。
ブラと共に蒸れるパット(ソーちゃん特注)も投げ捨てた。
「この開放感…!さいっこう…!!!」
ボクサーパンツ一枚になり、ソファーにダイブする。
「うわ…間違ってもそんな姿、ソレイユに見せないでよね。絶対メンドクサイから」
ブラとパットを拾いながら、アセナが苦言を呈す。アセナは一緒にいるのが私達双子だけなら、割と砕けた口調だ。歳も近いしこちらも気が抜けるから、有り難い。
「いい加減、女装やめたいんだけどなぁ…」
「…似合いすぎるのが駄目なんじゃない?」
「あ゛〜、…それは否めない。でも、多分これ以上筋肉はつかないんだよ…」
「線が細いもんね。成長を待つより、ソレイユが諦めるのを待つしかないんじゃない?」
「何その無理ゲー」
遠い目をする私を見て、笑いを堪えて小刻みに震えるアセナにクッションを投げつける。我ながら、ナイスコントロール!
「…お行儀が悪いですよ、坊ちゃん」
クッションを顔面キャッチし、ズレたサングラスをアセナが直す。…笑うからでしょ?
私が女装していることは、ソーちゃんを除いて親族の一部…それに執事長のアセナ、扉の前にいるソーちゃん専属メイドと私専属メイドしか知らない。
大勢いる会社の人間や他の従者も知らないのは、もの凄く息苦しい。知らない人の分だけ…女装するハメになるからだ。
「扉の前…人払いして、変わりにキャトル達を呼んで。お父様たちとの食事は緩い格好で行く」
キャトルは私専属メイド3人のリーダーだ。
「承知致しました。服、リンネルのシャツとジーンズでいい?」
アセナの言葉に頷き、目を閉じた。
「リュンヌ。そろそろ時間」
「ん…ふぁい……」
アセナに起こされ、脳が覚醒しないまま服を着せられていく。
黒いシャツの肌触りが気持ちいい。そんなことを考えていると、いつの間にか髪は高い位置でゆるく団子なっていた。そして、仕上げとばかりに黒縁眼鏡が掛けられる。
流石は執事…鏡に映る自分はユニセックスっぽい、少なくとも初見で女と思われない仕上がりになっていた。
「では、参りましょう」
「ただいま戻りました」
本宅の広い食堂に入ると、既に両親が席についていた。
「おかえりリュンヌ〜」
「…早く席に着きなさい、食事を始めましょう」
「はい」
ニコニコと笑う、ぽっちゃりしたマスコットのような父。対照的に神経質で、鉛筆を思わせる程に細い母。今世での私達の両親。背後に控えていたアセナが素早く椅子を引き、そこに座る。
お母様の声を合図に、コースの前菜が運ばれてきた。
「ハンター試験はどうだった〜?」
「私もソレイユも合格しました…試験内容は、そうですね。個人的にはバラエティーに富んでいで楽しめました」
「合格するのは当然です。身内にそれなりのハンターがいるのですよ?…落ちたら恥よ!!」
「まあまあ、ママ〜。合格したんだから、いいじゃないか。で…、始めから詳しく聞いても良いかい?ソレイユと別行動になった理由も聞きたいしね」
「はい…では、一次試験からお話しますね」
話と共にコースも進んでいく。
最終試験の話を終え、ゾルディック家の話になるころにはデザートを食していた。
「それで…仕事が忙しいから、友人の為とは云え…自分の変わりにソレイユをゾルディック家に行かせたと?」
「えっと…はい。な、何か拙かったでしょうか?お母様…」
「拙いに決まってるじゃないッ!!」
怒声と共に、デザートのプディングが宙を舞う。
「わ、私はあの、イ…ルミとかいう…嗚呼、口にするのも憚れるあの能面と、可愛いあなた達が一緒にいるだけで虫酸が走るのに…!
そんな輩がいる暗殺一家に『女の子』のソレイユを一人で行かせるなんて、リュンヌ…貴方それでも『男の子』なの!?」
「えーと、ですね…正確…じゃないな、大まかに言うとソレイユは私が監視しているので万が一危険が及べば分かるというか、助けられるというか……」
「例えそうでも、です!『男の子』…紳士としての行動がなっていないということよ!!」
「…」
ゾルディックへの拒否反応はまだ分かるが、3年前の暗殺未遂は両親に知られていないはず。イルミ君の素性をどうやって…
「なんとか言いなさい、リュンヌ」
………。
「お言葉ですが、奥様。『男の子』としてのリュンヌ様を一番認めていないのが、ソレイユ様です。リュンヌ様にそうあれ、と仰るならまずはソレイユ様に淑女になって頂かなければ」
「アセナの言う通りだよ、ママ〜。ソレイユがリュンヌを男、自分を女だと認めない限り、リュンヌにそれを求めるのは酷ってものさ」
アセナ、さっきはクッションを投げつけてごめんなさい。お父様、ありがとう…!
「そ…それが出来れば苦労しないわ!!全く…あの強情さは誰に似たのかしら」
「「「 」」」
『お母様の家系の血です』とは…皆、口が裂けても言えない。
「パーティ?」
昨日の夕食は散々だった。お母様はあの後もヒートアップし、そろそろ良家のお嬢様でも捕まえろだの、それが無理ならソーちゃんに女子力をつけろだの…お父様が成人するまでは双子の好きにさせよう、と宥めてくださって本当に助かった…。
「そう。今日の夜…奥様だけじゃなく、旦那様も出席して欲しいって言ってる」
「…夕べのこともあるし断れないか」
「そういうこと。諦めなよ…っと、僕は旦那様に呼ばれてるから、準備はキャトル達に頼むけど大丈夫?」
私にアセナを付ける、というソーちゃんの命令もお父様には勝てない。
「?…大丈夫」
私の言葉に頷いたアセナが部屋の扉を叩くと、既に待機していたらしいキャトル達が入ってきた。な…なんというか、3人共目がギラついてない?
「じゃ、あとはよろしくお願いします」
アセナは早々に退室する。ちょ…ちょっと待って…?
「え…よ、夜のパーティでしょう?」
「はい、しかし」
「奥様より身体の隅々まで清めるよう」
「命じられています」
今でもたまに見分けのつかない三つ子のキャトル・サンク・シス_私専属のメイドが息を揃えて言う。この三つ子は、容姿を変えるのが好きで今日は3人とも栗色のセミロングに琥珀のカラーコンタクトをしている。
「ん…?ちょっと待って、それって…」
「まずは湯浴みへ」
「安心して」
「私達にお任せ下さい」
「は…?」
はああああああああああああああああああああああああああああああああ!?
じ、地獄だった…。
メイドとはいえ、どうして自分より年上のお姉さん達に身体を洗われなくちゃいけないの…!
「リュンヌ様」
「スーツとドレスとの用意がありますが」
「どちらになさいますか?」
湯浴み後、3人が持ってきたラックに用意されている大量のスーツとドレスを見る。
「パーティのことはソーちゃんには言って…?」
「いいえ、しかしもしスーツで出られれば」
「後からソレイユ様が発狂すること」
「間違いなしですわ」
「」
「「「リュンヌ様、どちらになさいますか?」」」
日も暮れ、準備が終わった私をアセナが迎えにきた。
「…や、やっぱりスーツが良かった?」
濃紺のフレア素材で、肩が隠れるUネック。胸から腰にかけては花柄のレースがあしらわれたミモレ丈のドレス。
髪は複雑に編まれアップアレンジ、顔はナチュラルメイク。足下はメタリックなシルバーのハイヒール。というのが、三つ子プロデュースで仕上げられた私の格好なのだけれど、
アセナの顔色が悪い。普段は女装をしていても気にしないのに、何故?
「いえ、とてもお似合いです。ですが…」
「?」
「とってもよく似合うよ!!リュンヌ」
「…は、はひ」
口籠るアセナに案内された応接室で、私を待っていた両親ともう一人。
「ほら、弟君と私の言った通り…やっぱりドレスで来た!リュンヌはソレイユ想いだからねえ~」
「…スーツで来たらダンスのパートナーを頼もうと思ってましたのに。女装卒業は遠いようね」
「まあまあ、その話は蒸し返さない。君には私がいるだろう?」
「そうですよ姉さん。リュンヌは僕がしっかりリードしますからー。安心して義兄さんとペアに!!」
「そうね…じゃ、任せたわよ。パリストン」
くぁwせdrftgyふじこごっ、ごごご…後生だから…ま、任せないで…!
パリストン=ヒル/ハンター協会副会長。お母様の血の繋がった弟で、私とソーちゃんの…おっ…おおおおお…叔父!!!
お父様とお母様は寄り道するそうで、一足先にパーティ会場へ向かう。部屋には、私とアセナと叔父さまの3人だけ。
「リュンヌは本っ当に可愛いねー。久しぶりに会ったけど、相変わらずどこからどう見ても女の子にしか見えない!この胸なんてまるで本物だよ」
言いながら、叔父さまは笑顔で私の胸元を遠慮なく揉みしだく。…パットであっても不快だ。
「あ、…ありがとうございます。叔父さま」
変態じみた手の動きが下に向かいそうになった所で、身体を捻り距離をとった。
「いや ソレイユがいなくて残念だよ。2人にドレスを着て貰って、両手に花を実現したかった!!」
「…それは…私はまだしも、ソーちゃんが承知しないのはご存知のはずですが?」
「ハハハ、そうだったね!_でも、ゾルディック家の長男と何かあったらわからないでしょ?」
…お母様にイルミ君の素性をバラしたのは
「ちがう?」
確信する。この叔父以外にない。
「ちがうも何も…自分の性を決めるのはソーちゃんですので。私はどうなってもそれを応援するだけです」
「…応援ねェ?」
飄々とした表情は崩さないが、叔父さまのオーラはどんどん膨れ上がっていく。
仕方なしに対抗しようとオーラを練ると、
「おっと。忘れてた、これこれ!」
…ッ!
これだ、戦闘態勢からの切り替え。いつの間にか叔父さまのペースで…完全にからかわれている。こちらのことはお構いなしに、オーラを霧散させた叔父さまは、アセナに過剰に梱包された何かを差し出す。
「リュンヌに。それを付けてきて、ボクは先に下に降りるからロビーで合流しよう!!」
私達に有無を言わさず、退席しようとする叔父さまの腕を引く。
「叔父さま。高価な贈り物なら受け取れません」
…後が怖い。
「身につけて欲しいだけさ。いらないなら、パーティの後で返してくれればいい」
「…」
「やだなァ、そんなに警戒しないで。ボクは…」
続けて叔父さまが耳打ちした内容に、言葉が詰まる。
「じゃ、ロビーで待ってるよ」
ハメられた。このパーティは、回避不能の決定事項だ。