江ノ島盾子にされてしまったコミュ障の悲哀【完結】 作:焼き鳥タレ派
「オメーはよう、一体オレに何をさせてーんだよ!?」
意図のわからない質問に、プレゼントを差し出したまま首をかしげる。
「え、何って。
この景品、私には使いこなせそうにないから、左右田君に使って欲しくて……」
「そーじゃねー!お前はモノクマをぶっ壊してほしいのか、宇宙戦争に勝利したいのか、
どっちなのかを聞いてんだよ!」
「なんでそんな話になるの!?」
「それだよそれ!そいつは縮退炉つって、
ブラックホールを発生させてエネルギーを取り出すバケモンだー!
しかも持ち運び可能な小型!」
「ええっ!そんな物までガチャガチャに?未来機関ってそこまで技術力があるの?」
「まぁ…いや、流石にまだ研究段階に入ったとこだろーよ。そう思いてえ。
試作品なら俺達への景品として十分だと思ったんじゃねえか?
オレがジジイになる頃には完成してるだろうが」
「そっか。危険なものじゃなくてよかった~
事故って地球が飲み込まれたらどうしようかと思ったわ」
未来機関 遊び心が 過ぎますよ? 江ノ島 心の俳句
「じゃあ、この小型縮退炉、受け取ってくれる?」
「ああ。……ありがとよ、また奴らと戦う武器が増えた」
左右田君は小型縮退炉を手に取り、
ドライバーでフレームの一部を外し、内部を覗き込んだ。
しばらく真剣な表情で内部を分析すると、何か納得した様子でうなずく。
「ブラックホールは無理だが、
動力の軸になってる水素核融合なら、実現できるかもしれねえ。
タダ同然の燃料で無限に近いエネルギーを得られる。
オレでも2,3年は掛かるだろうがな」
「えっ!それって凄すぎるわよ!地球のエネルギー問題、一気に解決じゃない!
う~ん、超高校級のメカニックってチート能力だと思い始めてる、私」
「褒めてもなんも出ねーぞ。
あと、もらっといてこんなこと言うのもアレなんだけどよう……」
「なあに?」
「あんまりホイホイ良いもん配るのも考え物だぜ?」
「どうして?独り占めはよくないし、みんなに喜んで欲しくて……」
「悪りぃが……その辺の事情は察してくれ。
コレについては、本当サンキューな。あばよ」
「うん、さようなら?」
左右田君の言葉の意味がわからないまま、とにかくコテージに戻る彼の背を見送った。
事情ってなんだろう。考えてみたけど、さっぱりわからない。
仕方なく、次のプレゼントを手に田中君を探して、彼に話しかけた。
「田中くーん!待ってー!」
「……人の子が造りし偽りの世界に舞い降りた、頭に翼を持つ堕天使か。
あまり虚空の覇者たる俺様に関わると、波動の共鳴が起こり、天は裂け地は破れ、
不可逆的カタストロフィが地球を覆い尽くすだろう。努々気をつけることだ」
「あー!今回は翻訳不可だけど、“頭に翼” はわかった!
今、私のツインテール馬鹿にしたでしょ~。そんなに大きくないもん、ひどい!
せっかく田中君にピッタリのピアス、プレゼントしようと思ったのに」
「俺様への供物か。やはり危険な女だ。
選択を誤ると、ラグナロクの開戦を早めることに……!?
それは、エル・ドラードの宝物殿に安置されていると言われる、
伝説の“破邪のピアス”!
フッ、そうか、ようやくわかったぞ。
江ノ島!お前の真の才能は、超高校級の神器管理官」
「気に入ってもらえないみたいだから、片付けるね……」
そんな二人の様子を影から観察する者達が。
“あ、やっぱり受け取ってくれるんだ。よかったー”
“……ありがとうございます”
「江ノ島はまだ戻る様子はない。距離も十分。やるなら今だと思うが」
「そうだな。あいつが困らない程度に、少しだけ。少しだけだからな?」
「くっ、自分に負けた自分が、許せない……!」
そして、謎の人物達は周囲を警戒しつつ、江ノ島のテントに入っていった。
テントに戻ると異変に気づいた。コンテナの蓋が、急いで閉めたように、
角のひとつが引っかかって閉まりきってない。
すぐに蓋を開けて、中身を確認すると、ほんの数点だけど、アイテムがなくなっていた。
「……」
僕は、電子生徒手帳を取り出して、頼れる人物にメールを送った。
送信者:江ノ島盾子
件名:相談したいことがあるの
ちょっと相談に乗ってもらいたいんだけど、今いいかしら。
声が漏れるからテントじゃ話せない。コテージで話を聞いてほしいの。
返信はすぐに帰ってきた。
送信者:日向創
件名:RE: 相談したいことがあるの
ああ、構わないぞ。俺のコテージに来い。
俺は机に向かって、来週の労務シフトを作成していた。
「こんなもんだろう。弐大にばかり力仕事をさせるわけにもいかないし、
細かい室内作業にも慣れてもらわないとな」
すると、電子生徒手帳にメールが着信。江ノ島からだ。珍しいな。
……俺に相談?しかもテントじゃ話せないようなこと、か。俺はすぐに返事を送った。
日向君のコテージに着くと、呼び鈴を押した。
ドアが開くと、彼が手招きしたから、上がらせてもらった。
相変わらず片付いていてキレイ。僕がゲームの外にいた頃とは大違いだ……
と、感心してたら。
スパン!と、昔とん○るずがしょっちゅう使ってたようなスリッパで、また叩かれた。
「あたっ!」
振り返ると、黙って希望ヶ峰の指輪を見せる無表情の日向君。まだ根に持ってるよ~
「うう……もう許してよ。それに七海さんは気に入ってくれてるよ?
なんだかんだ言って日向君も着けてくれてるし、やっぱり二人は赤い糸で……
あああ、ごめんなさい、もうしませんから!」
「本当にお前って奴は……!」
思わずツインテールで頭をかばうと、
日向君はスリッパを放り出し、椅子を出してくれた。
彼もソファの端に座ると、本題に入った。
「それで、相談したいことってなんだ?」
「うん。それがね、実は……」
僕はさっき気がついた出来事を説明した。
今日は日曜で労務がお休みだから、みんなとお喋りしたり、
プレゼントを渡したりしてたんだけど、
外から戻ったら、コンテナの様子が変だから調べてみると、
アイテムが数点なくなってた。
なくして困るようなものじゃあないんだけど、
誰かが盗んだとしたら、そんな人がいることは悲しいし、
ひょっとしたらあの人が?なんて思いながら、これから共同生活を続けていくのは嫌だ。
話を続けるうちに、日向君の表情も徐々に真剣なものになっていった。
「そうだったのか……それは、すぐ対処すべき問題だな」
「別に犯人を捕まえて吊るし上げようってわけじゃないの。
ただ、どうしてこんなことをしたのか聞きたくて。
ひとこと言ってくれれば、いくらでも持っていってくれてよかったのに……」
「盗まれた品物は何なんだ?」
「“百年ポプリ”と“麦飯パック”の2点よ。所持品管理アプリと数が一致しない」
「欲しがりそうなやつは見当が着くが、決めつけてかかるのは危険だ。
また、学級裁判で話を付けるしかないだろう。ウサミー?」
「ダメでちゅ!」
やっぱり空中でポンと弾けるように現れたウサミに、開口一番拒否られた。
「どうしてだ。こういう揉め事を解決するための法廷だろう?」
「Ver2.01では使用のハードルが低くなってまちゅが、
法廷は誰かの人生を左右する重大な事件を扱う場所なんでちゅ!
お友達同士のトラブルくらい、
レストランかどこかで本人同士で話し合ってくだちゃい!」
「そんな言い方はないだろう?江ノ島だって真剣に悩んで相談に来たのに」
「ダメなものはダメなんでちゅ!システム管理者の一人として、ここは譲れまちぇん!」
「いいよ、言ってみれば私個人の問題なんだし。
たまには自分の力で事件を解決してみる」
「自分一人でって……大丈夫なのか?」
「任せて!日向君は1時間後に、レストランに集まってくれるよう、
みんなに連絡してくれるかしら?」
「それはいいが、無理だと思ったらすぐ戻って来いよ?」
「ありがと!行ってくるね!」
急いでブーツの靴紐を結ぶと、日向君のコテージを飛び出した。
短期決戦で解決しなきゃ。
せっかくみんなと仲良くなれたのに、アイテム2つで台無しにしたくない。
終わりの始まりは小さなほころびっていうからね。ゲームのセリフだけど!
■捜査開始
まずは状況整理。盗まれたものは……
○コンテナ
江ノ島の私物や手に入れた大量のアイテムが入ったコンテナ。
鍵は付いておらず、誰でも開閉が可能。
○百年ポプリ
花やハーブ、果物の皮を混ぜ合わせて熟成させた、香りを楽しむアイテム。
○麦飯パック
米と大麦を混ぜた麦ごはん。食物繊維などの栄養も豊富。牛タンにも合う。
事件発生時刻は、お昼ご飯を食べて、テントにプレゼントを取りに戻ってから、
みんなに会って、また戻ってくるまでの大体2時間以内。
小型縮退炉とかを取り出した時には異常はなかった。
○事件発生時刻
推定犯行時刻は、昼食後から約2時間以内。12:30~14:30。
こんなところかな。次は聞き込み調査!
とりあえずプレゼントを渡し終えてからみんなと遊ぼうと思ってたから、
贈り物をした人から順に話を聞いてみよう。左右田君のコテージを再び訪ねる。
「何回もごめんね。日向君から連絡はあったと思うんだけど」
「わり、まだメール見てねえわ。で?またヤベーもん持ってきたんじゃねーだろうな」
「違うよ!実は、大きな声じゃ言えないんだけど……」
事情を説明すると、彼はニット帽を直しながら、少しばかりその顔に後悔をにじませた。
「チッ、やっぱり……ちゃんと言っとくべきだったのかもな。
もうその時には手遅れだったのかもしれねーが」
「それって左右田君の、プレゼントを配りすぎるな、っていうアドバイスのこと?」
「ああ。起こっちまったなら仕方ねえ。
何が言いたかったかは、裁判の時にわかるだろーよ。
それまでは、お前もその意味を考えといてくれ。
自分で気づければそれだけでも意味はあるからな」
「やっぱりよくわからないけど……ううん、ちゃんと考える。
あと、もう少し聞きたいことがあるの」
盗まれたものについて、必要としてそうな人に心当たりはないか聞いてみた。
やっぱり仲間を疑うみたいで嫌だったけど。
「百年ポプリは意外と男にも人気あるぜ。
前に西園寺がモノモノヤシーンで当てて自慢してたから、匂わせてもらったんだがよ、
あの香りはヤベーぞ。
なんか変なクスリでも混ぜてんのかと思うくらいリラックスできて、
ストレスもすっかり吹っ飛んだんだ。
その日の晩は、まるで寝る前に温かいミルクを飲んで20分のストレッチをしたみてーに、
ほとんど朝まで熟睡だった」
「そんなに凄いものだったんだ……」
「誰が欲しがっても不思議じゃねーな、これは」
○百年ポプリ(情報更新)
花やハーブ、果物の皮を混ぜ合わせて熟成させた、香りを楽しむアイテム。
男女両方に人気がある。
「まあ、麦飯に関しちゃ大食いのやつが持ってったんじゃね?
これには別に思い入れはねーよ。普通の飯だ。俺はパン派だし」
「わかったわ。ありがとう。大きな手がかりになったわ」
「後でな」
左右田君から思わぬ手がかりを得た僕は、百年ポプリを持っている西園寺さんを尋ねた。
居るかなぁ。呼び鈴を鳴らすと、小さな足音がトテトテと。
「あ、江ノ島おねぇじゃん!犯人の野郎ひでーよね!
おねぇの家がボロくせーのを良いことに、盗みを働くなんて最低だっつーの!」
「さりげなく酷いこと言われたけど、同情してくれてありがとう。
その事でちょっと聞きたいことがあるの」
「なーにー?」
西園寺さんが百年ポプリを持っていることを聞いたから、
その特徴を知る必要があると伝えて、実物を見せてくれないかと頼んだ。
「いいよ!手に入れた時に見せびらかして以来、
普段は小泉おねぇ以外の連中には見せないんだけど、
江ノ島おねぇには特別にわたしの宝物見せてあげる。上がって!」
「ありがとう。おじゃましまーす」
和風テイストの西園寺さんの部屋に来るのは2度目。彼女の舞い、綺麗だったな。
少し前の思い出に浸っていると、
西園寺さんがリボンで口を結ばれた、小さなかわいい袋を持ってきた。
「これだよー。嗅いでみてー」
「うん、ちょっと見せてもらうね」
小袋を手にとって、香りを確かめる。……こ、これは!?
乾燥したハーブやフルーツの香りが絶妙に混ざり合い、嗅覚が脳を刺激する。
まるで香りが脳をマッサージしてくれるようで、リラックス効果は抜群。
左右田君の言ってたことは大げさじゃなかった。これは、誰だって欲しい。
「あは、えへへへ……」
「江ノ島おねぇ!?こっちに帰っておいで!その川は渡っちゃ駄目だよー!」
「はっ!ごめん、ごめん。あんまりいい香りだから、うっかりトリップしちゃった」
「顔赤くしてよだれ垂らして笑ってて、頭のイカれた人みたいだったよ?」
「ウヒヒごめんね~。これ返すわ。じゅる。でも、本当にいい香り。
なのに部屋に広がらないのは不思議ね」
「そこがキツい臭いを撒き散らす安物の芳香剤と違うとこだよ。
手元だけにそっと、だけど上品かつ存在感のある香りを長く漂わせる一級品だからね。
わたしは枕元に置いてるんだけど、これのおかげで毎朝寝覚め最高だもん!」
「確かにこの一品なら男性も欲しがるのも納得ね。
ところで、このアイテム、他に持ってる人はいないの?」
「いないよー。持ってるだけで羨望の的だし、だからって、
なけなしの給料でモノモノヤシーンに連コする度胸のある奴なんていねーし!
中途半端に余ったお金で挑戦して、見事ゲットしたわたしだけの贅沢だよ!」
今、西園寺さんが少し気になることを言ったな。ちょっと詳しく聞いてみよう。
「ねえ。こんなこと聞いていいのかアレなんだけど……
みんな、あんまりお金に余裕ないの?」
「ないない。みんなクソ貧乏だよ。まぁ、わたしも人のこと言えないんだけどさ。
給料が月20ウサミメダル、現実世界じゃ王冠20枚ってシケてるよねー!
それはしょうがないんだけどさ……」
これ以上突っ込むのはやめておいた。ここの住人は囚人で、贅沢は許されない。
つまり、そういうこと。ここから先はみんなの罪を掘り返すことになる。
○ポプリの香り
百年ポプリは手のひらや枕元にそっと効果の長い香りを残す慎ましやかな存在。
絶妙に調合された乾燥ハーブやフルーツがかわいい小袋に詰められた一品。
その香りは人をあらゆるストレスから解放し、安らぎをもたらす。
○西園寺の証言
百年ポプリを手に入れるには、僅かな給料でモノモノヤシーンに挑戦する必要があり、
入手は非常に困難。所持しているのは西園寺だけと考えて間違いない。
「ありがとう、西園寺さん。重要な手がかりが得られたわ」
「もういいの?じゃあ、レストランで待ってるから」
「私の都合に付き合わせてごめんね、必ず解決するから」
「んなもん、犯人が悪いんだよ!見つけたら思い切り弁慶の泣き所蹴飛ばしてやる!」
「アハハ、お手柔らかにね?また後で」
西園寺さんのコテージから出たところで、電子生徒手帳に設定したアラームが鳴った。
日向君のコテージを出てから1時間。
時間切れだし、これ以上調べ回っても、何かが出てくるとは思えない。
覚悟を決めてレストランに足を向けた。
全員、いつも食事を取っているテーブルに座って、プチ学級裁判の開廷を待っている。
テーブルには冷たい麦茶が入った保冷ポットがいくつか等間隔に置かれ、
それぞれ自由に飲んでいる。僕は立ち上がって、宣言した。
「みんな、今日はせっかくの休みなのに、私の都合に付き合わせてごめんなさい。
確かに盗まれたのはたった2つの品物だけど、
それでこの中の誰かを疑い続けるのはどうしても嫌だったの」
「御託はいいンだよ!誰がそんなくだらねえ真似しやがった!
とっと見つけて落とし前、着けさせんぞ!」
「まさか盗みがマーケットの外で行われるとは……この十神、一生の不覚!」
「そうだね。早く話し合って、結論を出そうよ。アタシもこんな状況やだ」
「その通りです!彼女のテントがオンボロ屋敷であるのをいいことに、
勝手に所持品を持ち去るなど、言語道断横断歩道です!
わたくしの祖国なら、しっぺ1万回の刑に相当します!」
「慰めてくれて、ありがとう……ハハ」
「はぁ、こんなどうでもいい事件じゃ、
誰がクロだろうと希望の光なんて見えやしないよ。ボク、帰ってもいいかな?」
「アンタに拒否権はないの!大人しくそこで座ってなさい!」
「フハハハ!案ずるな。古の伝説によると、17人の怒れる信徒が集いし時、
轟く雷鳴が咎人を照らし出し、総ての邪悪なる」
「ありがとう。じゃあ、始めよう!」
【学級裁判 開廷】
仮の法廷とは言え、学級裁判のスタートを切ってくれるのは、やっぱり日向君。
「江ノ島が集めた情報によると、犯行が行われたのは、昼食の後。
大体12:30~14:30だったな?」
「うん。みんなとお喋りしたりプレゼント渡して、
テントに帰ってきたらコンテナが微妙に開いてたから、
中を調べたらアイテムが2つなくなってたの……」
「なくなったのは、百年ポプリと麦飯パック。間違いないな?」
「そうなの。百年ポプリはともかく、なんで麦飯パックと一緒だったのか、
どうしてもわからなくて」
「なら、まずその点から突いて行こう。どうして犯人はその2つが必要だったのか」
日向君の言葉に、フッと意識が暗転。
“彼女”が大げさに左腕の上に右腕を立て、顔を隠すように右手の指を被せる。
「……そうだね。それぞれのアイテムの関連性がはっきりすれば、
自ずと犯人の足取りも見えてくるはずさ」
「アタリおねぇが来た」
「え、江ノ島さぁんっ……!」
■議論開始
コトダマ:○事件発生時刻
日向
百年ポプリは[誰にでも人気がある]から、これ単体では手がかりにならないな。
左右田
だからって[麦飯パック]とセットにしても意味わかんねーぞ。
終里
犯人は[腹が減ってた]んじゃねえの?百年ポプリのついでに食おうと思ったんだよ。
辺古山
別に邪魔になるものでもないが、[共通点なども見当たらない]な。
・ボクも暇人じゃないんだ。こんな揉め事で叩き起こさないで欲しいよ。
・“彼”の今後の人間関係に関わるの。協力してあげて。お願い。
REPEAT
日向
百年ポプリは[誰にでも人気がある]から、これ単体では手がかりにならないな。
左右田
だからって[麦飯パック]とセットにしても意味わかんねーぞ。
終里
犯人は[腹が減ってた]んじゃねえの?百年ポプリのついでに食おうと思ったんだよ。
──それは違うわねぇ!!
[腹が減ってた]論破! ○事件発生時刻:命中 BREAK!!!
「その意見には同意しかねるよ。終里さん」
「えっ、オレなんか変な事言ったか?」
「事件発生時刻は昼食直後。長く見積もっても、約2時間しか経っていない。
わざわざ盗んでまで食べるほど、
犯人は腹が空いていなかったと考えるほうが自然なのさ」
「そう言われりゃあ、そうだ、なぁ……」
「コンテナの中にはガラクタの方が多いとは言え、他にも有用なグッズが色々ある。
あえて麦飯パックを選んだのには理由があると考えるべきだと、ボクは思うんだけどな」
「なるほど。麦飯パックでなければならない理由……次はその点を議論しよう」
「ハァハァ…やっぱり江ノ島さん、素敵ですぅ」
「罪木おねぇキモい」
■議論開始
コトダマ:○コンテナ
九頭竜
麦飯パックが欲しい奴?そんなの、[昼飯が足りない]大食い野郎しかいねえだろ。
十神
言っておくが俺ではないぞ。仮にも[万引きGメン]である俺が盗み食いなど!
弐大
ワシでもない。[天に誓って]盗みなど働かん。それに食い過ぎは[肥満の元]じゃ。
終里
オ、オレじゃねーよ!飯の量だって[我慢できてる]し、人の飯まで盗らねえよ!
・こんなところで、久々にアレが必要になるなんてね。
・ええ、今の言弾じゃ威力不足ね。
REPEAT
九頭竜
麦飯パックが欲しい奴?
そんなの、[[○昼飯が足りない]]大食い野郎しかいねえだろ。
十神
言っておくが俺ではないぞ。仮にも[万引きGメン]である俺が盗み食いなど!
弐大
ワシでもない。[天に誓って]盗みなど働かん。それに食い過ぎは[肥満の元]じゃ。
終里
オ、オレじゃねーよ!飯の量だって[我慢できてる]から、人の飯まで盗らねえよ!
──それは違うわねぇ!!
[我慢できてる]論破! ○昼飯が足りない(MEMORY):命中 BREAK!!!
「ま、またオレか!?」
「言葉尻をとらえるようで申し訳ないんだけどさ、“我慢してる”ってことは、
九頭竜君が言った、“昼飯が足りない”ことに通じると思うんだけど、どうかな」
「えっ、いや、それは言葉の綾ってやつだよ、ほら」
「ふふっ。くだらない裁判ごっこだと思ってたけど、少し面白くなってきたね……」
「それに3人の中で具体的根拠がないのはキミだけさ。
盗まない理由を、もっと明確な形で示して欲しいな」
「……どうなんじゃ?終里」
「あー、あれだよ、ほら!一緒に盗まれた百年ポプリ?
アレっていい匂いだけど、飯と一緒にしちまうと飯の方の食欲が失せるっていうか、
食うために同時に持ってくのはなんか不自然だと思うんだよな、オレとしては!」
「適材適所って奴っすねー!唯吹も車の中でハンバーガー食ってる時に、
車用芳香剤の臭いで食う気失せるってことあるっす!」
「なるほどのう、麦飯を食いたい奴がポプリまで一緒に持っていく理由が見当たらんな」
「(百年ポプリに話が向いた時、ある人物の目尻が少し動いた。
“彼”が学んだ女の勘さ)
少しいいかな。今、新しい可能性に思い至ったんだけど、
それについて考えをまとめたいから、ボクはこれで失礼するよ。アディオス」
「ああ~あの人が行ってしまいました」
「新しい可能性?それは何だ」
「すぐに目を覚ますよ、ペコちゃん。次の盾子ちゃんが説明してくれる」
■ロジカルダイブ 開始
あんだよこのクソつまんねえコースは!!自動車教習所の方がまだマシだっつーの!
あなたは安全運転を学び直した方が良いわね。無事故無違反でお願い。
こんな赤ちゃん向けコース、事故りようがねえっての!行きゃいいんだろ!!
3.2.1…DIVE START
QUESTION 1
犯人が品物を盗んだのは、昼食の前? それとも後?
昼食の前 昼食の後
[昼食の後]
「やる気出ねえ!ああ、やる気出ねえ!!」
居眠り運転はやめてね。叫ぶ元気があるなら大丈夫だろうけど。
QUESTION 2
犯人の真の目的は? 百年ポプリ? 麦飯パック? 片方はカモフラージュ? 両方?
百年ポプリ 麦飯パック カモフラージュ 両方
[両方]
「うっし!マシなコーナーが現れやがったぜ!ファーストイン・ファーストアウトォ!」
一度でいいから言うことを聞いて、お願いだから……
QUESTION 3
犯人は単独犯?それとも複数犯?
単独犯 複数犯
[複数犯]
「ヘイ、ラストぶっちぎるぜぇぇ!オレに追いつくグラマン無し!!」
あなたいつの時代の人?
──真実はアタシのもの!
「皆様、大変長らくお待たせしました。事件の大枠が掴めましたので、ご説明致します」
「おお、江ノ島が目覚めおったぞ!」
「アハハ、やっぱおもしれー七変化だな!」
「大変恐縮ではございますが、終里様は笑っている場合ではないと存じます」
「えっ、どういうことだ……?」
「私の考えを申し述べますと、
今回の犯行は2人以上、つまり複数犯によって行われたと思われるからであります」
「複数犯だって!?江ノ島、詳しく説明してくれ」
「では、日向様のご要望にお応えして。先程、終里様が仰ったように、
飲食物と香りの強いポプリを同じ手で持ち去るのは決して好ましい行為ではありません。
でしたら、例えば2名が1つずつ持ち去れば物品の質を損なわず盗み取ることが可能」
「そうか!犯人が複数なら目的の品も別々。2つの間に共通点がないのも当然だ!
でも、どうして急に複数犯なんて説を思いついたんだ?」
「それは、とてもいい香りが漂ってくるからです。……辺古山さん、あなたから」
「なにっ!そんな馬鹿な!?そんなはずは……!」
「はい、ありません、嘘です、ブラフです、ハッタリです。
私としても、このような知性に欠ける行為は不本意だったのですが、
2対1の状況に少々強引な手段を取らざるを得ませんでした。何卒ご了承下さい」
終里さんと辺古山さんがただテーブルに視線を置いています。そろそろ終演でしょうか。
「終里!どうなんじゃ?」
「ペコ……まさかお前」
「違う」「違います」
「違うと言っても、江ノ島の理屈は……」
「違う」「違います」「違う」「違います」「違う」「違います」「違う」「違います」
「違う」「違います」「違う」「違います」「違う」「違います」「違う」「違います」
──私・オレじゃない!!
■暴走モード突入!!
どうやらそうではないらしいですね。
追い詰められた終里さんの背後にはリボルバーを持った彼女の生霊、
辺古山さんの背中にはサブマシンガンを構えた彼女の生霊が取り憑いています。
この恐ろしい姿、他の皆様には見えていないのが救いでしょう。
■議論開始(射手:暴走終里)
コトダマ:○事件発生時刻
江ノ島(メガネ)
何が違うというのでしょうか。[麦飯パック]を必要としていて、
なおかつ[変質させず入手可能]なのは、あなただけなのです。
[事件発生時刻]も私がテントを離れていた時と一致します。
[昼食の量が足りていない]あなたの犯行としか考えられません。
──負けるかぁ! ○事件発生時刻
[昼食の量が足りていない]狙撃!
暴走終里
要するにお前が言いたいのは、
事件発生時刻にオレが麦飯パックを盗んで食ったって事だろ?
オレは言ったはずだぜ、昼飯の量は我慢できてるって。
だから盗む理由なんかないんだよォ!
江ノ島(メガネ)
それは我慢できるでしょうね。なぜなら、もう食べてしまったんですから。
昼食の後、更にご飯もう1パック。大抵の女性なら食べきることすらできないでしょう。
その事実はあなたの容疑を否定できるものではありません。
○事件発生時刻:回避 DODGE!!!
「くそっ……何か、反論できねえのかよ」
彼女が言弾による銃撃戦に慣れていない事が幸いしました。
もっとも、そんなものに慣れているのは我々くらいのものですが。
まだ安心も出来ません。次に強敵が待ち構えています。
■議論開始(射手:暴走辺古山)
コトダマ:○百年ポプリ
江ノ島(メガネ)
先のソニア氏に関する事件で、監視カメラの[15mルールを知っていた]あなたは、
江ノ島盾子の動きを観察しながら[テントに忍び込むことができた]のです。
そうなると、[百年ポプリ]の盗難に手を染めたのは、
辺古山さんということになります。
貴重品であるポプリを盗む理由は[いくらでも挙げられます]。
──覚悟しろ!! ○百年ポプリ
[いくらでも挙げられます]狙撃!
暴走辺古山
さっきは随分汚い手を使ってくれたな。その割には雑な理屈で欠伸が出る。
お前の言う通り私が監視カメラの隙を突いたというのなら、
それはそのまま私がテントに入った証拠がない、という証明になるのではないか?
ポプリに興味があるのは誰でも同じ。理由をいくつ挙げても何の意味もない。
お前は詭弁を弄して場を乱しているだけだ。
この事件自体、自作自演という可能性も出てきたぞ?
江ノ島(メガネ)
やはり先の事件から何も学ばれていないのですね。自作自演はあり得ません。
江ノ島盾子は立場上、不用品を捨てたり自宅外に隠したりすることができないのです。
そのようなことをすれば島中でサイレンが鳴り響きますから。
ポプリを求める理由が多すぎるなら1つにまとめましょう。“欲しい”。以上です。
○百年ポプリ:回避 DODGE!!!
「それは、そうなのだが、いや、待ってくれ……」
まさにマシンガンのような言葉の嵐をどうにか回避できましたが、
心臓に大変な悪影響を及ぼすので、二度と御免被ります。敵兵二人は沈黙。
さあ、そろそろ起床の時間です、女王様。
■暴走モード解除
「おっほっほ!二人共ぐうの音も出ないようね!
敗者を高みから見下ろすのは実に気分の良いことだわ!」
「盾子ちゃん!椅子に立たないで、見えちゃう!」
「……では、私様が短いながら、この事件の真相を整理してあげようじゃないの」
(よかった、大人しく座ってくれて……)
■クライマックス推理
>クライマックス推理 開始
>推理を完成させろ
Act.1
このしみったれた事件は2人のクロの利害が一致したことで始まった。
つまり、私様の所有する宝が欲しい。
計画を主導したのがどちらかは知らないけど、
とにかく一方が自分達と私様が15m以上離れていて、
監視カメラが作動していないことを確認しつつ、テントに侵入。
Act.2
お互い目的のブツを手に入れたら、即座に退散。それぞれのコテージに持ち帰った。
偶然か示し合わせていたのかは、この際どうでもいい。
二人が別々に宝を持ち去ったため、麦飯パックにポプリの匂いが付くこともなく、
片方のクロは満足行くまで貪り食った。
もう一方は何らかの理由で求めていた百年ポプリを手に入れて目的を達成した。
Act.3
その後、日向創から学級裁判という名の愚痴り大会開催のメールが届くと、
ポプリを入手した方のクロは焦った。いくら洗っても微かにポプリの匂いが手に残る。
仕方なく2人のクロはそのままレストランに現れた。
そういうことよねェ!? 辺古山ペコ、そして終里赤音!
──これが事件の全貌よ! COMPLETE!
「ここまで、か……」
「ちくしょう、ちくしょう……」
遂に観念したクロ2人。だけど、今回ばかりは私様にもミスがあったわね。
女王たる者、そこは素直に認めるわ。
「全員に言っておく事があるの。
この事件、最初から互いの手を嗅いでいれば解決していたのよ。
この身体を管理しているボンクラに思考の足を引っ張られたの。
では、皆の衆、さらば!」
ぼんやりした意識の中で、“おい、待てよ!”と僕に叫ぶ日向君の姿を見た。
少しずつ視界がはっきりしてくる。
【学級裁判 閉廷】
そして。犯行動機となった品を持ってくるため一旦コテージに戻った2人は、
再びレストランの席に着いていた。
辺古山さんの前には、この前プレゼントしたアンティークドール“ハルナ”。
何かの紐で作ったリボンや、手編みの刺繍で可愛くおめかしされている。
終里さんの前には食べ終えた麦飯パックのカラ。
「終里ィ、この馬鹿もんが!!」
パシィ!
「つっ!」
「よせ弐大!暴力はだめだ!」
「魔神トールの荒ぶる力は人の子には余るぞ!」
弐大君が終里さんの頬を張った。隣の田中君と日向君が慌てて止める。
「終里よ!お前まで、お前まで“誓い”を!ワシらは、何のためにここに集った!!」
終里さんが呆然として見上げる弐大君の目から、滝のような涙。
彼の握りすぎた拳からは血がポタポタと。
「オッサン……すまねえ。すまねえ!」
「……ペコ。九頭竜組の看板に泥塗った落とし前つける覚悟、出来てんだろうな?」
「指でも腹でも切る覚悟で御座います……」
テーブルの上で九頭竜君に土下座する辺古山さん。
彼女はそばに置いた竹刀を手に取り、すらりと抜く。だめだ、止めないと!
「待って!待ってよ二人共!」
「江ノ島、うちのモンが迷惑掛けた。九頭竜の頭として、オレも指つめらぁ。
それで、手打ちにしてくれや」
「叩いたり、指切ったり、そんなことはやめようよ!
それで何が解決するっていうの!?」
「ウチのケジメだ。頼むから、こればっかりは口出さんでくれや。
[全部ペコの不始末だった]んだからよ」
──それは違うわねぇ!!
[全部ペコの不始末だった]論破! ○西園寺の証言:命中 BREAK!!!
「今回の事件で、一番責任を負わなくちゃいけないのは、私なの……」
「お前さんに、じゃと?」
「どういうことだ?説明しろ」
「西園寺さんから聞いたの。みんなが労役で得る収入は、決して多くないって。
だから欲しいものも我慢して、生活に必要な物を買って、
余ったお金でやっと好きなものを買える。
私、そんなことも知らなくて、学級裁判の褒賞金を独り占めしていたの!」
「江ノ島、あれはあくまで未来機関からの……」
「言わせて、日向君。
私、学級裁判が終わる度に、褒賞金として大量のウサミメダルを受け取っていたの。
それこそ50枚、100枚と。でも、それっておかしいわよね?
学級裁判って、みんなが議論してこそ解決に向かっていくものなのに、
最後に賞金をもらうのは私だけ。協力者のみんなは相変わらず我慢の生活」
弐大君が腕を組んで黙って聞き入っている。
「それを知らずに私、モノモノヤシーンで湯水のようにお金を使って、
たくさんアイテムを抱え込んでた。挙句の果てには、みんなの気持ちも知らないで、
仲良くなりたい一心でプレゼントを配り歩いた。
ただ物欲を刺激して、辛い思いを増すだけなのに!」
「おねぇ……」
「今日、左右田君がそれとなく忠告してくれたの。私の間違いについて。
でも、遅かった。辺古山さんや終里さんに悲しい罪を背負わせてしまったの!
謝らなきゃいけないのは、私!みんな、本当にごめんなさい!!」
そして深く頭を下げた。
辺古山さんや終里さんを含む全員が、声も出さずに驚きながら僕に注目する。
「江ノ島、それはお前さんのせいじゃない。終里の心の弱さ、ワシの鍛え方の甘さ……」
「ううん……もっと早く気づくチャンスもあったの。最初にプレゼントを配った時、
弐大君や澪田さんが、ティッシュ1箱であんなに喜んでくれたことを、
おかしいと思うべきだった。メダル1枚でも惜しいみんなの事情も考えずに……!」
「もういい、もういいよ!
江ノ島おねぇは、傷つけるために贈り物をくれたんじゃないよね?この扇子だって!
貴重なものだから嬉しかったんじゃないよ。やっぱりそれもあるけど、
おねぇがわたし達との思い出を、
それほど大事に思ってたからって言ってくれたじゃん!」
「そうだよ!
アタシにだって、一緒に過ごした時間を形としてお礼にしてくれたんじゃない!」
「それにあなたは!愚かな間違いからその気持ちを捨ててしまったわたくしにすら、
もう一度感謝の気持ちを受けるチャンスをくれたではありませんか!
お金で買えない形で!」
「実際ティッシュマジ助かるっすー!タハァ!」
「お前の捧げし宝物。無垢なる精神を持たざる者には視ることすら出来ぬ品々であった。
つまり……そういうことだ」
他の仲間からも次々声が上がる。みんなを見回すと七海さんと目が合った。
彼女は微笑んで指にはめた希望ヶ峰の指輪を見せた。
「ほれ見ぃ。誰もお前さんを責める者はおらん。もう頭を上げい。
お前さんは、ちゃんとみんなに取り分を還元しておったんじゃ」
「還元……?」
思わぬ言葉に無意識に頭を上げて立ち上がる。だったら。
その時、テーブルの方から声が聞こえた。
「……ペコ、いい加減下りろ。そこは座るとこじゃねえや」
「ぼっちゃん……」
「おい、テメーらよく聞け。なんかいい雰囲気ンなってるとこ悪りぃがよう、
やっぱ2人にはケジメを着けてもらう。そうじゃねえと、この場は収まんねえ。
そうだろ?」
「九頭竜さん!どうしても、彼女達に罰が必要なのでしょうか……?なんとか穏便には」
「ならねえな。
じゃねえと、今まで学級裁判で“おしおき”をこなしてきた連中に、
なんて言えば良いんだ。だろ?」
「それは……そうなのですが」
「まぁ、慌てんなよ。オレだって鬼じゃねえ。
この学級裁判が本番じゃなかったってことを踏まえると……」
再び全員がテーブルに着いた。
えー、これより辺古山さんと終里さんの“おしおき”タイムを開始します。
「ここはオレが仕切らせてもらうぜ。江ノ島は茶でも飲んで休んでてくれ。
こいつらの“おしおき”、それは、“なんでこれを盗んだか全員に発表すること”だ」
既に周りからクスクスと笑い声が聞こえる。
僕もニヤける顔を麦茶を飲んでごまかすのに苦労してるよ。
「そーだなぁ。終里の方は見りゃ分かるから後に……と思ったが、
俺は楽しみは最後に取っとく主義でよぅ。まずお前から行ってみるか」
終里さんはバツが悪そうに、麦飯パックのカラを手に取ると、ポツポツと語りだした。
「えと、オレは、人より腹が減りやすいタイプで、
みんなと同じ量じゃ、次のメシまでに腹が鳴っちまうんだよ……
そんな時、江ノ島が山ほど物を背負ってテントに戻るのを見たんだが、
うまそうな食い物もたくさんあった。それで、つい、手が出ちまった……」
「うまかったか。ん?」
「うまかった……です。すげえ腹にたまって、満足でした」
ブッ!と誰かが吹き出し、別の誰かにたしなめられるのが聞こえた。
やめてよ僕までつられるじゃないか!でも、飢えって甘く見ることはできないんだよ?
旅慣れた渡世人でも苦しめられるくらいだから。木枯し紋次郎で言ってた。
「おーしおし、次はペコ。お前だ。
ん~?ずいぶん可愛いお人形さんを持ってるみてえだが」
「ぼっちゃん後生ですお許しを!」
わっ!とテーブルに崩れ落ちる辺古山さん。イッツ・ショータイム。
「だーめだ。終里はやり遂げた。まず、その人形はどこで手に入れた?」
「江ノ島から、もらいました」
「本当か、江ノ島」
「うん、私、お人形さんに名前を着けて可愛がってるんだけど、
モノモノヤシーンで2体目が出たの。
だから偶然訪ねてきた辺古山さんに名付け親になってもらって……
ちなみにハルナちゃんって名前なんだけど、二人がとっても仲が良さそうに見えたから、
連れて帰ってもらったのよ!」
“江ノ島さんはともかく、辺古山さんって意外と乙女……”
“意外と、は失礼でしょ。でも普段のイメージとはギャップはあるわね”
“ププッ、ハルナちゃ~ん”
下を向いて顔を真っ赤にする辺古山さん。でも、公開処刑はまだ終わらない。
「なるほど?そこんとこはよくわかった。
だが、その可愛らし~いお人形と、百年ポプリ。どう繋がんだ?説明しろ」
「その前にひとついいかしら」
「どした、江ノ島」
「ハルナちゃんだけど、辺古山さんにお迎えしてもらった時より、
ずいぶんおめかししてもらってるみたいなの。
菓子箱か何かに巻いてあった紐でリボンを着けたり、服に刺繍をしてもらったり。
当時と状態が違うから、本当にあのハルナちゃんなのか、
わからなくなっちゃったわ~ん」
辺古山さんが顔を赤くしたままギッ!と睨んできた。怖いから顔を背ける。
それにしても九頭竜君の言葉責めがえげつない。
「ほーう。江ノ島の知ってるハルナちゃんと違うなら、
コンテナから別に持ち出した可能性が出てきたなぁ。
その疑いを晴らすためには、状態が変わった理由を説明しないと、
学級裁判のやり直しになっちまうぜ?」
「ううう……このハルナちゃんは、確かに江ノ島から譲り受けたものです……
状態が異なっているのは、かわいい格好をさせたくて、私が手を加えました。
リボンを結ってあげたり、服にハートを縫ってあげたり……」
“激萌えっす!ハルナちゃんとペコちゃんに!”
“あう、ちょっと怖い人かと思ってましたけど、辺古山さんへの親近感が増しました~”
「なるほどな。かわいいハルナちゃんだ。そりゃお洒落させてえよな。
そっちの疑いは晴れた。
最後の質問だ。百年ポプリとハルナちゃんって、何の関係があんだ?」
こればかりは本当にわからない。九頭竜君も同じみたい。
「あの一度味わった香りが、忘れられなかったのです……
ハルナにあの小袋を持たせて、枕元に置いたら、
きっと、その、ハルナが寝かしつけてくれるようで幸せだろうと……」
みんなの心がひとつになった。辺古山さんは、かわいい。
「おっしゃわかった。お前も“おしおき”達成だ。お疲れィ!
お前ら、ペコが騒がせちまったな!これでお開きだ!」
皆がファンシーな気持ちで立ち上がろうとした時、
大事なことを思い出してみんなを呼び止めた。
──ちょっと待ってくれるかな!
また少し時間が経って、所は再びレストラン。その一角。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!獲得品の大放出祭のはじまりだよ!」
「「うおおおお!!」」
床に敷いたシーツの上には、
モノモノヤシーンで得たアイテムが所狭しと並べられていて、
僕はそれを売る露天商のように、シーツの端に座っている。
あの後ね、弐大君達に手伝ってもらってコンテナのアイテムを全部持ってきたんだ。
それから、厨房の割り箸で番号を書いたくじを作って、全員に引いてもらった。
もう何がしたいかはわかるよね?
くじの番号順に、みんなに好きなアイテムを持っていってもらおうってイベントだよ。
みんなワクワクしながら順番を待ってる。
「スタート!」
そして開始を宣言……だけどやっぱりこいつが来た。うげ。
「やあ、なんか悪いなぁ。ボクなんかが1番を引いちゃうなんて、さてと、どれに……」
僕は1番の棒をひったくって、紙の束を突き出した。
「超高校級の幸運で引き当てた1番は無効だよ!ズルした狛枝君は一番後ろ!
このミレニアム懸賞問題でもやってなよ!
君なら掛け算繰り返してたらいつか解けるんじゃない?100年後くらいに!」
「そんな!能力なんて止めようがないのに……」
「みなさーん、この人自分だけチート使ってくじ引いてますよ、どう思います~?」
“引っ込めー!”
“早くどくっすー!”
“ブーブー!”
「わ、わかったよ!ひどいや、どうしてボクだけ……」
すごすごと引き下がる狛枝君。ざまーみろ。
「さあさあ!どんどん持っていってね!早いもの勝ちだよー!」
みんな好きにアイテムを選んで持っていく。
その嬉しそうな笑顔を見ると、僕の胸までいっぱいになる。
そして、辺古山さんの順番が回ってきた。
「本当に、私までもらってもいいのか……?」
「うん。あのポプリは、みんなからハルナちゃんへのプレゼント。
そういうことにしようよ」
「ありがとう……」
彼女が列に並び直そうと振り返る間際に、僕に微笑みを向けてくれた。今度は終里さん。
「悪かったな、バカなことしちまって……」
「それはいいよ。
元はと言えば、僕がみんなのことをよく考えてなかったせいなんだから」
「ありがとよ。オッサンが、空腹感を和らげる精神修養の効果があるヨガを
トレーニングに組み込むってさ。もう迷惑は掛けねえよ」
「よかった。弐大君って本当に頼りになるよね!」
「おう!」
その後もどんどんアイテムは減っていき、とうとう最後の一個から2つ目がなくなり、
大放出祭は無事終了した。
あ、ひび割れだらけの水晶は最後の人が辞退したから、コンテナに逆戻りになったよ。
夕食後、ホテルのテラスで風を浴びていると、
後ろから誰かが近づいてきて、隣に立った。
「いい風だね、左右田君」
「……おう」
手すりに腕を乗せながら、星空を眺める。彼はなんとなく迷った後、口を開いた。
「お前がよう、人の話聞けるやつだってことはわかった」
「左右田君……」
「殴ったことは謝る。悪かった。今度はタイプライターじゃねえ」
彼なりのジョークを交えながら、始めて会った日のことを謝ってくれた。
「もう、いいの。みんなが事情を抱えてることがわかった今は、もう」
「正直な所、まだ人間のクローンに異世界の人格が宿るなんて信じられてねえが、
お前は絶望の江ノ島盾子じゃなくて、同姓同名の別人だって思うことにした。
今できることはそんくらいだ」
「十分よ。左右田君の仲間になれただけで、嬉しい」
「……だが!絶望の残党とオレ自身だけは絶対許さねえ。それだけは変わらねえ」
「左右田君まで?どうして……」
「悪い、今はまだ無理だ。気持ちの整理が着いたら、話すかもしれねえ。じゃあな」
そして彼はコテージに帰っていった。
気配には気づいていたけど、後ろで待っていた彼女が話しかけてきた。
「よかったですね、左右田さんと和解できて」
「ソニアさん……お願い」
「なんですか?」
「彼を、左右田君を、憎しみから救って欲しいの。
それができるのは、ずっと長い間一緒に過ごしてきて、
かつての左右田君が愛してたソニアさんだけ」
「愛、だなんて……わたくしに、そんなことが……」
「できる。元の世界からずっと見てたけど、
左右田君は中途半端な気持ちでソニアさんに想いを寄せてなんかいなかった。
だから、お願い。彼はいつか、死ぬつもりなの……!」
「っ!?……わかりました。わたくし、絶対にそんなことはさせません!」
「よろしく、お願いします……」
友人を救ってくれるかも知れない女性に、僕はこれ以上なく丁寧にお辞儀をした。
まったく、江ノ島さんもひどいよ。真の力を引き出させようと背中を押してあげたのに。
旧館でボクは退屈しのぎに懸賞問題とやらに鉛筆を走らせる。
メモ用紙は倉庫に山ほどある。
筆の向くまま適当に記号や数字、それっぽい言葉を書き散らしていると、
ふと鉛筆が止まった。それ以上何か書こうと思っても、何も思い浮かばない。
あれ、もしかして解けちゃった?
まあいいや。どうせこれを発表した研究所なんて、もう存在しないんだし。
ボクは回答済みの数学問題を眺めながら呟いた。
「……そろそろ、かな?」
CHAPTER 3.5 CLEAR
ショクザイ ノ カケラ ヲ ゲットシマシタ
ペコヤマ ペコ ×100
オワリ アカネ ×100
ソウダ カズイチ ×50
タナカ ガンダム ×50
コマエダ ナギト ×10
ソノ ホカ ×50