江ノ島盾子にされてしまったコミュ障の悲哀【完結】   作:焼き鳥タレ派

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*各作品の時系列がめちゃくちゃですが、寛大な心でお許しください。


第18章 集う想い

どうして、私だけなんだろう。

わかっていたはずなのに、どうしてもそう考えてしまう。

 

“……姉ちゃん!むくろお姉ちゃん!”

 

徐々に意識を取り戻し始めると、

聞き慣れた声が私を急かし、彼女が小さな手で身体を揺らす。少し待って欲しい。

バーチャル世界のダイブから戻ったばかりで頭がぼやけてるし、身体もあちこち痛い。

このリクライニングソファ型精神移送機も、

柔らかいとは言えずっと寝たきりだったから。

床ずれができていないことから、モノクマが時々体勢を変えてくれたみたいだけど。

 

「ねー、むくろお姉ちゃん。起きてよー!」

 

「……ごめんね。ちょっと寝ぼけてたから」

 

栄養注入や透析を行っていた、輸液チューブを腕から抜いて答えた。

腕に微量の血が飛ぶ。

 

「ねえ、大変なの!

いくら盾子お姉ちゃんにメールを送っても、ちっとも返事をくれないの!

いきなりログアウトしたってことは、何かあったんだよね!?教えて!」

 

「テレビやラジオは、なんて言ってるの?あとネット。未来機関のこと」

 

「モ~ナ~カ~が~聞~い~て~る~の~!!」

 

今にも泣き出しそうな表情で、腕を振って駄々をこねるモナカちゃん。

どうすればいいのかな。

一度目のビデオ通話以来、殆どあっちの世界の情報を知ることはできなかったはず。

すぐ未来機関がプロテクトの再強化を施したし、

現にこうして私に聞いているくらいだから。未来機関も馬鹿じゃない。

お姉ちゃんが全てを知って、不穏な流れになった時点で放送は止めていたと思う。

 

「あのね、モナカちゃん。落ち着いて聞いて?

盾子ちゃんは、なんというか……急病に罹ったの。

ちょっと希望更生プログラム内の盾子ちゃんのアバターにバグが見つかったらしくて。

今は修復後の再起動中だから、接続を一時中断したの」

 

「それって平気なの?盾子お姉ちゃんの肉体に害はないよね?」

 

「安心して。ちょっと特定の行動をすると動作が緩慢になるだけで、

痛い思いをしたりするようなものじゃないってさ。

もう修正済みだから、後は再起動の完了待ち。数日掛かるって。

生活もこっちの世界のホテルがあるから問題ないよ」

 

「そっかー!盾子お姉ちゃんが無事でよかった。

メールもバグの影響かな。むくろお姉ちゃん何か聞いてない?」

 

「ううん、何も。

モナカちゃんの言う通り、やっぱりバグのせいでメールが届いてないんじゃないかな。

もし来てたら、ビデオ通話の時みたいに全員で対策会議みたいになってたと思うし」

 

「よかった。モナカ、盾子お姉ちゃんに嫌われたちゃったんじゃないかって、

心配で眠れなかったの!」

 

「そんなことないよ。モナカちゃんはとっても賢くて、絶望を理解してて、

盾子ちゃんに愛されてるんだもの……」

 

「えへへ。愛されてる、だって。嬉しいな!

……あ、そうだ。むくろお姉ちゃんも普通のベッドで休んで。

久しぶりに本物の食べ物もお腹に入れたいよね?食料庫のもの適当に食べてよ」

 

「うん、ありがとう……」

 

私は結論を先延ばしにすることにした。

お前は誰かって?あ、ごめんなさい。今更だけど、自己紹介から始めるね。

私の名前は戦刃むくろ。……のクローン。

ここ塔和モナカの研究所で、オリジナルのDNAから培養され、

一部を改ざんされた生前の記憶を持った、

本来はまだ年齢3歳にも満たない造られた人間。

 

そんな私は、コロシアイ学園生活で誰かに殺され、

モナカちゃんに肉体を復元、蘇生されて生まれ変わった。という記憶を持っていた。

あの時までは。現実は違った。私は盾子ちゃんに裏切られて、串刺しにされて殺された。

当時はそれでいいと思ってた。盾子ちゃんが姉の私を殺して絶望してくれるなら。

 

何の目的かはわからないけど、モナカちゃんはそんな私のクローンを作り、

テレビで虐げられている盾子ちゃんを見せたの。

いつも自信に満ちあふれていた妹が、周りの連中の顔色を伺い、

すっかり弱ってしまった姿を見て、私は怒りに震えた。

殺してやる。そうつぶやいた私にモナカちゃんが囁いた。

 

“盾子お姉ちゃんを助けてあげて”

 

彼女が用意した装置でそれが可能だという。

冷静な判断力を失っていた私は一も二もなく飛びついた。

そして、希望更生プログラムですっかり変わった妹と対面し、驚くと共に歓喜する。

実際は変わったのではなく、初めから別の存在だったんだけど。

 

あの時耳にした微かな歌声。それで全てを理解した。

本当の私は死んでいて、盾子ちゃんも、もういないこと。

妹にはなかった超高校級の女神、なにより、一緒に過ごした数日間。

初めは私に冷たかったけど、

ある日、何かの葛藤を乗り越えたような様子を見せると一転、

私の実の妹のように振る舞って、優しく接してくれるようになった。

 

盾子ちゃんに見える誰かがずっと放送で主張していたように、

その人が江ノ島盾子の姿をした別人であることは、

妹にバカデブスと言われるような私にもわかった。

でも、私は何も言わずに彼女と生きてしまった。

寝食を共にして、奇妙な仲間達と楽しい日々を過ごしてしまった。

 

そして、あの歌声で私の妹に対する異常な執着がまともな家族愛に変わると、

私をお姉ちゃんと慕い、母のような優しさで妹のように懐いてくる彼女を、

自分も好きになってしまっていた。その想いがどうしても捨てられない。

 

オリジナルの盾子ちゃんが嫌いだったわけじゃないよ。

いつも私に厳しくて、隙あらば私を殺そうとしてでも絶望しようとする、

志にひたむきな盾子ちゃん。だけど彼女はもういない。

その現実を突きつけられた時、目の前に現れた、妹と生き写しの姿に優しい心を持った、

もうひとりの盾子ちゃん。

どうしてかはわからないけど、別人のはずなのに、やっぱり私を姉と呼んでくれるんだ。

 

そんな彼女に心を動かすなと言うほうが無理な話だった。

私は盾子ちゃんを守ろうと……うん、違うよね。助けられたのは私の方。

塔和モナカに利用されて、

もういないオリジナルを奪い返そうと必死になっていた現実を教えてくれたのは、

彼女なんだから。

 

長くなってごめんね。生き返ってようやくわかった事実をまとめると、

私の知ってる盾子ちゃんは死んだ。あの島で一緒に楽しく生活をした彼女は、別人。

そして私は、彼女のことが好きだってこと。

 

結局、私は今まで妹に依存してきただけなんだよね。

彼女のために戦ってきたつもりだったけど、

それはただ盾子ちゃんに嫌われたくなかったから。

なぜなら、さっきも妹の姿をした誰かのために嘘をついた。

彼女の敵になりたくない。それだけの理由で。

 

変わりたい。全てを失った私の妹になってくれたあの娘のために。

私は食料庫のレーションを頬張りながら、彼女のために何ができるかを考えていた。

今度こそ、自分だけの意志で。たった数日ですっかり寂しがり屋になっちゃったな。

ひとりで食べる食事が、こんなに味気ないものだったなんて。

 

「同じところに、帰れたらよかったのに」

 

無意識にそんな独り言が出るほど、心弱くなるなんて。

できるなら、もう一度あの娘に会いたいな。きっとそんな資格はないんだろうけど。

私は冷たい缶詰をまた一口食べた。

 

 

 

 

 

未来機関第十四支部。

 

という場所の応接室にアタシは移されたの。

イージス艦で日本に到着してからは、全員装甲車で移動。

未来機関の陸戦部隊が安全を確保してるルートを通って、

この近代的なビルに到着したわけだけど……

途中、小さな覗き窓から見た景色は、世界の終わりそのものだった。

 

地球は青いと言った宇宙飛行士もこの空を見たら大層がっかりするに違いないわね。

いつも真っ赤で晴れ間のひとつも見えやしない。

どの建物も落っことした豆腐のように崩壊し、窓ガラスの一枚も残ってはいなかった。

物流もインフラも望むべくもない。未来機関の力がどれほどのものか知らないけど、

よくこの状態からまともなオフィスビルを建造できたものだと思うわ。

 

アタシは不安だった。こうして丁重な扱いで、応接室に通されたんだけど、

みんなとは離れ離れになった。ひとりきり。他の人は別の大会議室で待機だって。

せめて面会の様子をみんなにもビデオ中継で見てもらうことを認めてもらった。

 

未来機関がアタシの存在を抹消するかもしれないじゃない。それを警戒したのよ、うん。

あと……心細かったから。なによ、悪い!?

とにかくまず、ここの責任者と会うことになるらしいけど、

そわそわした気持ちばかりが募る。

 

誤解が解けて対等な立場になったのはいいけど、何を話せばいいのかしら。

何もわからないアタシを拘束して、

見世物のように絶望の残党処理に利用したことへの怒りをぶつけるべきなのか。

それとも、最初から“気にしないで”の一言で済ませるという、

ある意味楽な対応で済ませるべきなのか。誰か教えて欲しい。

 

ああ、だめだめ。そうやって大事な判断を人任せにしてきたからアタシは弱かった。

あのプログラムで学んだじゃない。

……そうだわ!お姉ちゃんは?むくろお姉ちゃんのことを聞かなきゃ。

姿が見えないけど、ここまで複数の車両に分乗してきたから、

別の車にいると思ってた。

 

そもそもお姉ちゃんは塔和シティーから来たんだから、

肉体が同じ場所にあるわけないじゃない!

艦で見かけなかった時点で気づきなさいよアタシ!

確かに学んだけど、頭はよくならなかったみたいね……

 

元々は塔和モナカと組んでいたから、

塔和シティーのどこかにいることは想像がつくけど、

今どこで何をしているのかしら。無事でいてくれているのかしら。

 

たった数日を過ごしただけの、仮初の姉妹だったけど、だからこそ心が離れない。

お互い作られた偽物同士。

そんな関係だから、余計にお姉ちゃんと過ごした思い出が愛おしい。……だったら!

 

“だったら?”

 

アタシがお姉ちゃんを助けるに決まってるじゃない!

未来機関がアタシを利用したことは許してあげる。

 

“あなたを実験動物扱いした連中へ報復しなくていいの?考えを変えるなら今が最後よ”

 

そんな事どうでもいい。でも、今度はアタシが未来機関を使わせてもらう。

誰が来るかは知らないけど、まずは向こうの出方を見るわ。

その上でアタシの能力と引き換えに取り引きする。

世界の行く末なんてアタシにはわからない。

だけど、むくろお姉ちゃんだけは絶対に取り戻す。

 

“本当に、強くなったのね”

 

正直言うと心臓がバクバク言ってるけどね……

出された紅茶を一口飲むけど、カップが小刻みに震える。

すると、柔らかい足音が二つ近づいてきた。それがドアの前で止まると、ノックが3回。

 

“未来機関第十四支部支部長、霧切響子と部下の苗木誠です”

 

「どうぞ」

 

ドアが開くと、忘れるはずもない顔ぶれが入室した。

薄紫のロングヘアと、日向君みたいなツンツン頭。

ふたりとも、猛獣でも相手にするかのような緊張を顔に浮かべてアタシに向き合う。

失礼ね、取って食べやしないに。まずは微笑みと挨拶を。

 

「お久しぶり。肉体で顔を合わせるのはいつ以来かしらね。霧切さんに、苗木君」

 

「こうお呼びすることを許して頂けるかはわからないのですが……江ノ島さ」

 

「申し訳ありませんでしたあぁ!!」

 

霧切さんの話を遮って苗木君が床に頭をこすりつける。

彼女も困惑してるし、話に割り込んじゃいけないわ。

それに土下座ってされる方もしんどいのよ?

 

「ボクが、何もかも間違えていたせいで、あなたに、取り返しのつかない心の傷を!」

 

「よしなさい、苗木君!正式な謝罪は責任者の私がするって言ったでしょう!」

 

激しく謝罪する苗木君を立たせようとする霧切さん。

あえて何も言わずにその様子を少しだけ観察する。

紅茶をすすり、タイミングを見て、努めて落ち着いた態度を崩さず話を切り出す。

 

「立ってちょうだい、苗木君。床に座られたら、話がし辛いわ」

 

「はいっ!!失礼して、立たせていただきます!」

 

「彼女の言う通りよ。とにかくあなたは黙ってて。まず私が話をするから……

部下が大変失礼致しました。

正式な謝罪をしたいので、よろしければ、お名前を頂戴できないでしょうか」

 

「江ノ島盾子でいいわ。そう生きると決めたの。

絶望の江ノ島盾子じゃない、新生江ノ島盾子としてね。

大体の経緯は知ってると思うけど」

 

そしてもう一度彼女に微笑む。

表には出さないけど、少しだけ彼女の緊張がほぐれたのがわかる。

 

「ありがとうございます。

江ノ島様、この度は我々の手違いで、

無実のあなたをジャバウォック島に閉じ込め、私生活を放送するという、

本来なら人として許されない罪であなたを苦しめてしまいました。

全ての責任は部下の苗木にあなたの拘束を命じた私にあります。

謝罪で済む問題ではありませんが、

私にできることならどんなことでもして償うつもりです。

ですから、その、あなたが別人であった事は、

内密にしていただくわけには行かないないでしょうか……」

 

霧切さんが深く頭を下げる。紅茶をまた一口。

 

「ふぅ……随分と都合のいい話ね。

アタシが未来機関の不祥事を黙っててあげることに、何かメリットはあるのかしら」

 

「この事が表沙汰になれば、一度絶望を捨て去った者達が、また元に……」

 

「それはあなた達の都合でしょう。アタシには関係ないわ。この世界がどうなろうとね」

 

「図々しいお願いだとは承知しています!

江ノ島様には衣食と安全の保証された住居をご用意します。

あなたのいらした世界への帰還方法も全力を上げて……」

 

「足らないわ」

 

柔らかい声で、だけどはっきり拒絶する。

 

「どうか、お願いします!他に差し出せる物がないのです。この世界の人類に希望を!」

 

「ボクからもお願いします!気が済むのなら、ボクの頭を蹴って下さい!」

 

まだ土下座を続ける苗木君を見て一言。

 

「霧切さん。さっき何でもして償うって言ってくれたわね。

……なら、そこに跪いて靴をお舐めなさいな」

 

一気にその場の空気が凍りつく。

 

「えっ!ボクじゃ駄目でしょうか……」

 

「だめ。彼女が言ったんだし、彼女には拳銃を突きつけられたこともあるわ。

これでもアタシ、根に持つ方なのよ?」

 

やはり笑顔と優しい声で続けると、同じく頭を下げ続けていた霧切さんが背を正す。

そして冷や汗の流れる顔でアタシに近づいてきた。

ゆっくりとアタシのそばで膝をついて、ブーツに両手をかける。

 

「……江ノ島盾子様、私達の罪を、お許しください」

 

彼女が小さく舌を出して、レザーブーツに頭を寄せる。

その舌が、硬い皮を撫でようとした時。

アタシは両手でそっと彼女の顔を持って、丁寧な仕草で上を向かせた。

江ノ島盾子の手と、霧切響子の柔らかな頬の感触が、互いを優しく押し返す。

 

「そこまで」

 

「あ……」

 

「試すような真似をしてごめんなさい。不愉快な思いをさせて本当に悪かったわ。

だけどアタシも不安だったの。あなた達が本当に希望を託せる存在なのかどうか。

でも、霧切さんの覚悟を見てわかったわ。未来機関とは……取引ができる」

 

目を丸くしてアタシを見る二人。

その後、霧切さんが今度こそ落ち着かせた苗木君と共に、

アタシと対面しているソファに着いた。これでようやく具体的な話を始められるわ。

 

「取引、ということはどういう事なのでしょうか?江ノ島様」

 

「その前に、ご丁寧なお客様扱いはやめてくれないかしら。

これから対等なパートナーになる、かもしれないんだから」

 

「ですが!ボク達は……」

 

「苗木君。先方がそうお望みなんだからそうすべき。

じゃあ、これまで通りの対応を取らせてもらうわね。

あなたが望んでいるものは何?希望を託すとはどういう事?」

 

緊張がピークに達し、喉が乾いて紅茶を飲み干してしまった。

平静を装っちゃいたけど、あんなことして平気でいられるほど図太くはないの。

というより、かなり神経の線が細い方だから優しくしてくれるとアタシ助かる。

 

「ふぅ。希望と言っても苗木君や日向君のような大それたものじゃないの。

アタシにとっての微かな、でも大事な希望。

……具体的に言うと、塔和シティーを取り戻して欲しい」

 

「塔和シティー?」「塔和シティーだって!?」

 

二人が同時に驚きと疑問の混じった声を上げる。

無理もないわ。本来アタシにとっては、塔和シティーは無関係。

せいぜい“彼女”が希望更生プログラムに不正侵入して話しかけてきたくらい。

 

「そうよ。もっと言えば、そこにいるはずの人を助けてほしいの」

 

「となると、まさか……」

 

「ええと、誰のことだかわからないんだけど、教えてくれないかな?」

 

「……苗木君。ふざけてないで真面目にやって。

最後の数日間を共に過ごした彼女のことよ」

 

「ま、まあ、あなた達に取って重要なのはアタシの動きだったから、

覚えてなくても無理はないけど、戦刃むくろ。

彼女の救出に手を貸してくれるなら、アタシも協力を惜しまない。

当然自分が偽物だった事実も伏せておくし、

超高校級の女神で絶望の残党を元に戻して見せる。世界復興の力になると約束するわ」

 

霧切さんは片方を顎にやって少し考え、問いかけてきた。

 

「戦刃むくろは、あなたにとって、どんな存在?」

 

「お姉ちゃんよ」

 

即答する。

 

「でも……ウサミから状況は聞いていたけど、

あなた達はどちらもオリジナルから生み出されたクローン。本来血縁関係などないはず。

てっきり自分の帰還方法を優先するものだと思ってたわ」

 

「似た者同士、だからよ。

アタシはこの世界に連れてこられて別人の肉体に心を植え付けられた偽物。

お姉ちゃんは、本人のDNAから造られ、ほぼ同じ記憶を植え付けられたクローン。

誰かに造られ世界に放り出された。

強制シャットダウンまでの数日間を一緒に楽しむうちに、その寂しさと言うか、

心に空いた隙間のようなものを、互いに埋めていたの。

普通に生まれた人には説明しづらい奇妙な絆だけど。

でもこれだけは言える。アタシはお姉ちゃんを失いたくない」

 

「……すぐ、トップに連絡するわ。でも、覚悟してね。

塔和シティーは難攻不落の要塞と化してる。成功する確率は限りなく低い」

 

「それについては心配してないわ。……みんな、お願いがあるの!」

 

アタシはどこかに設置されているビデオカメラに向かって呼びかけた。

 

 

 

 

 

時間を少し遡って。

 

大会議室の大型テレビモニターで、応接室の様子を見ていたみんなは、

霧切さん達が入ってくると、息を呑む。

未来機関がどう出るか、緊張した面持ちで見ていたみたい。

 

特に血の気の多い人達は、アタシを黙らせようと強引な手段に出るようなら、

派手に暴れるつもりだったって聞いたわ。

ワオ、アタシも未来機関も知らないうちに危ない橋渡ってたのね。

 

“謝罪で済む問題ではありませんが、

私にできることならどんなことでもして償うつもりです”

 

「チッ、なら腕のひとつでも落としてみやがれ……」

 

「ぼっちゃん。ここは江ノ島の裁量に任せましょう」

 

「ああ……わかってる」

 

“この事が表沙汰になれば、一度絶望を捨て去った者達が、また元に……”

 

“それはあなた達の都合でしょう。アタシには関係ないわ。この世界がどうなろうとね”

 

「えっ……江ノ島おねぇ、嘘だよね?わたし達の世界を助けてくれるんじゃないの?」

 

「落ち着いて日寄子ちゃん。今は盾子ちゃんを信じよう?なんだか考えがありそう」

 

“霧切さん。さっき何でもして償うって言ってくれたわね。

……なら、そこに跪いて靴をお舐めなさいな”

 

「ひえええ!!盾子ちゃんがエライ人にSMプレイ要求っすー!!」

 

「どうしてだよー!どうしてその役をぼくにやらせてくれなかったの!?」

 

「花村うるさい!」

 

「なんで?おねぇ、そんな人じゃなかったのに……」

 

「お、落ち着くのだ!天秤の神アヌビスが今こそ彼の者達に審判を下そうとしている!

俺には分かるぞ!

江ノ島盾子は、今こそ彼女を秤にかけ、

罪科の重さを真実の口から語らせようとしているのだ!」

 

「いい加減、宗教統一しなさいよ……って言ってる場合じゃないわね。

アタシも、盾子ちゃんを信じる!」

 

「はい、わたくしも、江ノ島さんを信じて見守ります……!」

 

“……江ノ島盾子様、私達の罪を、お許しください”

 

会議室にも重苦しい空気が流れる。

そして、アタシが霧切さんの頬にそっと手を当て、目を合わせた。

 

“そこまで”

 

“あ……”

 

“試すような真似をしてごめんなさい。不安な思いをさせて本当に悪かったわ。

だけどアタシも不安だったの。あなた達が本当に希望を託せる存在なのかどうか。

でも、霧切さんの覚悟を見てわかったわ。未来機関とは……取引ができる”

 

「だーっ!脅かすんじゃねーよ!

もうちょっとで本当にベロがブーツにくっつくところだっただろーが!」

 

「黙れ左右田、肝の座らん奴め。

江ノ島もギリギリまであの女の出方を見たかったのだろう。

それにしても興味深い言葉が出てきた。……取引か。

会社経営のプロたる俺も同席したいものだが」

 

「でも正直アタシもヒヤヒヤした。だけど、取引したいことってなに?」

 

“あなたが望んでいるものは何?希望を託すとはどういう事?”

 

“ふぅ。希望と言っても苗木君や日向君のような大それたものじゃないの。

アタシにとっての微かな、でも大事な希望。

……具体的に言うと、塔和シティーを取り戻して欲しい”

 

「塔和シティー?確か、プログラムに不正アクセスしてきた、

塔和モナカという少女の根城と言われとるところじゃのう。

確かにモノクマに支配された重要拠点ではあるが、

江ノ島にとって大事な希望と言えるほどの場所とは思えんが……」

 

“……戦刃むくろ。彼女の救出に手を貸してくれるなら、アタシも協力を惜しまない。

当然自分が偽物だった事実も伏せておくし、

超高校級の女神で絶望の残党を元に戻して見せる。世界復興の力になると約束するわ”

 

「そうだった……

むくろちゃんは、塔和シティーから希望更生プログラムにアクセスしてたから、

肉体は向こうにあるんだったよね。

向こうでずっと一緒にいたから、未来機関の取り調べを受けてるって勝手に思い込んで、

彼女がいないことに気づかなかった。

……数日だけとは言え仲間だったのに、冷たい人間だね、アタシ」

 

「状況が状況だったから仕方ないですよぅ~船も予想より早く着いて、

それからもワタワタしてて、そんな事言ったら私だって……」

 

「むっ、ふたりとも静かに。話の展開がわからなくなってきたぞい」

 

“……あなた達はどちらもオリジナルから生み出されたクローン。

本来血縁関係などないはず。てっきり自分の帰還方法を優先するものだと思ってたわ”

 

“似た者同士、だからよ。(中略)誰かに造られ世界に放り出された。

(中略)普通に生まれた人には説明しづらい奇妙な絆だけど。

でもこれだけは言える。アタシはお姉ちゃんを失いたくない”

 

皆が、沈黙を保って話に聞き入る。

 

“……すぐ、トップに連絡するわ。でも、覚悟してね。

塔和シティーは難攻不落の要塞と化してる。成功する確率は限りなく低い”

 

“それについては心配してないわ。……みんな、お願いがあるの!”

 

「江ノ島さんがボク達に話しかけてきたよ!」

 

「お願い?よくわかんねーけど、オレたちになにができるってんだ?

どういうことだ、オッサン」

 

その答えはすぐ会議室のみんなに告げられ、全員が承諾してくれた。

 

 

 

 

 

塔和シティー某廃ビル

 

ここにかつて“希望の戦士”を名乗り、破壊活動を行っていた少年少女達がいる。

皆、塔和モナカがいるであろう工場エリアを一面ガラス張りの窓から見つめている。

過酷な環境での生活で服や顔に汚れが目立っているが、

その目から生きる意志は失われていない。

 

幼少期から凄惨な虐待を受けていた彼らは、子供達の楽園を目指し、

モノクマや洗脳ヘルメットで操った子供達で、

塔和シティーの大人達の殺戮を行っていた。

しかし現在はモナカと袂を分かち、彼女の動きをマークしている。

例え他にできることがなくても。皆の更生のきっかけとなったのが……

 

 

 

「コワレロ!」

 

青い光線が命中すると、ずんぐりした体型のモノクマが仰向けに倒れた。

 

“まいったな~”

 

ボカン。

ふふん、またまたやりました~!拡声器の形をしたハッキング銃で、

レーザー型の自発破壊命令を放ち、モノクマの電子回路をショートさせ、自爆させた!

……って説明されたの。

 

「見て見て、冬子ちゃん!弱点に当たったよ!」

 

 

私、苗木こまる。ごく普通の女の子。超高校級の才能もなければ、

ゲームみたいに大怪我しても時間経過で治るような特異体質でもない。

高校生の年齢なんだけど、ちょっと事情があって高校には行かずに、

こうして塔和シティーでモノクマからみんなを守ってるんだ。

高校自体がないってこともあるんだけどね。

 

 

「……いちいちうるさいわね、いつものことでしょうが。

箸が転んでもおかしい年齢もとっくに過ぎてるくせに」

 

 

いつも不安げなこの娘は、友達の腐川冬子ちゃん。

希望ヶ峰学園の生徒で、超高校級の文学少女なんだけど、

冬子ちゃんには凄い秘密があってね……ごめん、また後!

ビルからモノクマの群れが飛び降りてきた!

 

“イヤッホーウ!!”

 

「囲まれたよ!?」

 

「現実から逃げたいんだから見ればわかることいちいち言わないでよ!早く片付けて!」

 

「モエロ!」

 

”うわっぷ!”

”なんと!”

”いや~ん”

 

「……だめ、さばき切れない!」

 

連射性能に優れた連撃燃焼で薙ぎ払うけど、背後の敵がどうしても!

 

「あああ、もう!当てにならないわねぇ、やればいいんでしょ!」

 

冬子ちゃんが拳銃型のスタンガンで頭にショックを与えると……

 

──邪邪邪じゃーん!呼ばれて飛び出て、ジェノサイダー!!

 

電撃が頭を叩くと、彼女のもう一つの人格、殺人鬼ジェノサイダー翔に変身するんだ。

ハサミを武器にモノクマをズタズタにするし、どれだけ攻撃を受けても平気なの。

どんな身体の構造してるのかわかったものじゃないよね!

 

「こらぁ、デコマルゥ!!今、頭ん中でアタシのことディスったろ!?

坊ちゃん刈りにしてやるからこっち来い、オラ!

……バーバー腐川はぁ、お客様の貴重なお時間を大切にしま~す!」

 

「ディスってないし、床屋さんごっこして場合じゃないよ!後ろ見て後ろ!」

 

「ああ、うっぜえ!!」

 

振り向きざま両手のハサミが閃き、宙に何本もの刃のきらめきが走ると、

冬子ちゃんに飛びかかったモノクマ達がきれいに切断されて、地面に転がった。

あっという間に敵の襲撃を鉄くずにしちゃった冬子ちゃん。

今はジェノサイダー翔だけど。彼女は喜ぶ様子もなく、私に詰め寄ってくる。

 

「つか、いつになったら、このダサくてキモくてしょーもない島から出られんのよ!」

 

「絶望との戦いが終わったら、お兄ちゃん達が迎えに……」

 

「つか、白夜様どこ!アレから一度も会いに来てくれねえし!」

 

「脱出してからこの街の攻撃が増しててなかなか……」

 

「キー!!こんな退屈なとこ耐えらんねーっての!続きはWebで!」

 

すると、冬子ちゃんが立ったままガクンと頭を垂れ、また顔を上げると、

さっきまでの凶悪な面構えからいつもの彼女に戻った。

 

「はぁ…はぁ…息が、呼吸が……こまる、あんた便利な武器持ってんだから、

あんまりあたしに働かせないでよ。肉体労働はあんたの役目でしょ」

 

「うん、ごめんね。でも、冬子ちゃんも少しは運動したほうがいいよ?

それに、すごく今更だし助けてもらって何だけど、

やっぱり頭にスタンガンは身体に悪いよ」

 

「白夜様が大丈夫だって言ったんだから大丈夫に決まってるでしょ。

ちょっと休むわ。動き過ぎて吐きそう。

……まさか、こんなブスが吐いても絵にならないとか考えてないでしょうね」

 

「誰が吐いても絵にならないって!」

 

私達ははかつて一緒にに絶望を乗り越え、“希望の戦士”達の暴走を止めたの。

今は塔和シティーに留まって、子供達と生き残った大人達との衝突やトラブルの回避、

モノクマの破壊を頑張ってる。あと……最後の希望の戦士、

塔和モナカちゃんの居場所を突き止めなきゃ。

 

「休んだら、今度は裏通りの敵をやっつけなきゃ。

みんなが移動できる範囲を広げよう!」

 

「まだやるの~?本当に吐いたらあんた責任持って片付けてよ」

 

途切れ途切れの通信で、お兄ちゃんが言ってた。

……モナカちゃんはまだ、塔和シティーにいるって。

 

 

 

 

 

場所は変再び元希望の戦士達の暮らす廃ビル。

 

彼女達の様子を見ていた、利発そうな少年が皆に告げる。

元超小学生級の社会の時間・新月渚。

 

「きっとあの人達が、時間を稼いでくれる。

みんな、ここに未来機関の大人達が来ることがあっても、絶対抵抗しちゃだめだ。

両手を上げて言われたとおりにする。間違っても暴れたりしないで欲しい。

……全てが台無しになる」

 

「わ、わかったよ。そもそもボクちんは、誰かとケンカしたりするのとか無理だし。

学校に入るときには下駄箱に靴を入れて上履きを履くけど、

兵庫県の一部では土足が当たり前なんだって。

だからボクちんは新月君の言う通りにするよ」

 

元超小学生級の図工の時間・煙蛇太郎。愛くるしさを持った整った顔が特徴的。

 

「ちくしょー!一体モナカは何がしてえんだよ!

こんなこと続けてたら、自分も先がねえってのに!」

 

元超小学生級の体育の時間・大門大。

今では少数派となった子供らしい元気さにあふれる少年。

 

「世界に、さらなる絶望をもたらそうとしているのですわ。

今もその準備を着々と進めています」

 

元超小学生級の学芸会の時間・空木言子。

ピンクのロングヘアをリボンやカチューシャで飾った可愛らしい少女。

だが、その髪飾りも破損し、逆に痛々しさを感じさせる。

 

「そう。僕も江ノ島盾子が生きていたなんて驚きだけど、

モナカが彼女と共に、

再び未来機関との戦争を起こそうとしているとしているのは間違いない」

 

新月が自分の見解を述べた時。

 

──いないよ、盾子ちゃんは。本当に死んじゃった。

 

高校生くらいの少女が、アサルトライフルと弾薬の入ったバッグを背負って入ってきた。

 

「お、お姉さんは、誰ですか!私達を殺しに来た大人なんですか!?」

 

「違うよ。なんというか……君達と一緒に答えを出したい。

考えたいの。自分が、どうしたいか」

 

「空木さん下がって。モノクマだらけの街を通って、よくここまで来られたね。

通常兵器は、ほとんど効果がないのに」

 

「モノクマの自律行動を可能にしているのは、

大きな赤い左目に内蔵された、精密なカメラ。

周囲の空間、物体・生物の行動を観察して、AIが最適な行動を導き出してる。

でも、膨大な情報を得るにはどうしても邪魔なカバーガラスを薄くせざるを得ない。

そこをピンポイントで狙い撃つ。

CPUと直結してる目を失えば、モノクマは行動不能になる」

 

「全部、あの小さな目を撃って倒してきたのか!?」

 

「うん。モノクマを壊したから、モナカちゃんとはもう敵対状態になった。

……お願い。私もここに置いてくれないかしら」

 

「えうう…新月くん、どうするぅ?」

 

「この人は、怖い大人じゃないですよね?まだ高校生くらいだから大丈夫ですよね?」

 

「落ち着いて。

……そうなると、お姉さんは今までモナカと組んでいたってことになるけど、

どうして手を切るつもりになったのかな。それについて教えてくれないか」

 

「長くなるよ?」

 

「話してくれ、モナカのことも、全部」

 

元希望の戦士達は、謎の少女の話に耳を傾ける。

だが、驚愕の事実に皆、言葉を失うばかりだった。

 

 

 

 

 

未来機関第十四支部。

 

なのよ今度は。コロコロ場所が変わってごめんなさいね。

って誰に謝ってるのかしら、アタシ。

あの後、一旦霧切さんと苗木君コンビと別れたアタシ達は、

みんなが待ってる大会議室の場所を教えてもらって、足を急がせた。

ノックもせずに慌ててドアを開けると、途端にもみくちゃにされた。

 

「おおう、戻ったぞい!」

 

「もー!おねぇ、心配させないでよ!

いきなり変なこと言い出すからびっくりしたじゃんかー!」

 

「ごめんごめん、どうしてもああする必要があったのよ。

理由はその後の話で説明したでしょ?」

 

「私も胸がドキドキしちゃいました。

あう、その…もしあの江ノ島さんに同じことを言いつけられたらとか、

想像したわけじゃありませんから!」

 

「安心して下さい。わたくし達もあなたの本意ではないと信じていましたから」

 

「取引とはお前らしくもない言葉が出てきたから、俺は物珍しさで悠々と見ていたがな」

 

「アヌビスの審判が下ったか。バベルの塔築きし人の子は、太陽神ラーの光に照らされ、

再び破壊と混沌の渦巻く現世に生きることを赦された。

それが人類にとって未来なのか、破滅への秒読みに過ぎないのか、

俺の邪眼をもってしても推し量ることは、できない」

 

「そのことなんだけどね」

 

「普通に田中の中二語を受けた!?駄目だよ盾子ちゃん、これに慣れちゃったら!」

 

「さっき、お願いしたこと。勝手なこと言っちゃったけど、力を貸して欲しいの。

お姉ちゃんを、塔和シティーから助けたい。

放っておけば、またモナカに利用されるのは目に見えてるの!」

 

「……勝手なわけ、ないじゃない」

 

小泉さんが、少しうつむいて語りだした。

 

「むくろちゃんのこと、思い出されてくれたのは、盾子ちゃんじゃない。

アタシ、勝手に未来機関に保護されて、それで大丈夫だと思っててさ。

あの面会のときまで全員揃って帰ってこれてたって油断してたの。ひどいよね。

自分で思ってるより賢くないみたい、アタシ」

 

「いやー、そんなこと言ったら唯吹はもっと馬鹿っすわー。

面会の内容に頭が一杯で、今むくろちゃんのことに気づいたんすからね……」

 

「では、皆で塔和シティーに戦刃を迎えに行けばいい。

そして再会が遅れたことを謝ろう」

 

「辺古山さん……いいの?」

 

「たりめーだ。伊達に九頭竜組の看板背負ってねえ。

ペコの言う通り、身内はぜってえ取り戻す」

 

「九頭竜君、辺古山さん、ありがとう……」

 

「あまーい!オレ達も参加するに決まってんだろう?

まだ戦刃とはろくに話もできてねえんだからよ」

 

「左右田君も、来てくれるの?」

 

「左右田さんだけじゃありません。戦刃さんとまた会いたい。全員が同じ気持ちですわ。

江ノ島さんの彼女への想い、確かに聞き届けましたから」

 

会議室に集った77期生。皆がその目に同じ輝きを宿してアタシを見つめる。

 

「……ありがとう。本当にありがとう」

 

胸が一杯で、それしか言葉にできなかった。

 

 

 

その後、みんなに寝室が与えられ、

未来機関上層部の返事を第十四支部で待つことになったけど、

もうひとつ支給されたものが。霧切さんが持っていたようなタブレット。

電子生徒手帳よりハイスペック。

 

一応電話もできるけど、決められたエリアの決められた相手としか話せないし、

なにより大きすぎる。さっそく左右田君が興味を持っていじくり回してるわ。

 

「あんだあ?

世界めちゃくちゃなのに、貴重なサーバーで8chにのめり込んでる連中がいるぞー。

よしゃいいのに……ってオレらのこと好き放題書いてやがる!」

 

「うそっ!……何よこれ、勘弁してほしいわ」

 

 

 

江ノ島生活生中継について語るスレ part251

 

1 名前:超高校級の名無し

引き続き語りましょう。学級裁判実況、兵員募集、危険区域情報は該当スレで。

 

791 名前:超高校級の名無し

急に生中継が止まって今日で半月なんだが、どうすりゃいいんだよ。

ずっと素っ裸で正座待機中。

 

792 名前:超高校級の名無し

風邪引くぞ。確かに「しばらくお待ち下さい」のまま復旧する見込みがない。

未来機関の中の人にとっては15日間も“しばらく”の範囲に入るのか?

 

793 名前:超高校級の名無し

平和だった頃なら歴史に残るくらいの放送事故だが、

クレームを入れる電話すら満足に機能していないもどかしさよ…

 

794 名前:超高校級の名無し

私、思いついちゃった!

未来機関はやっぱり江ノ島盾子を処刑したor何かの手違いで死なせちゃった。

それを世界にひた隠しにしてる。……なんてどう?

 

795 名前:超高校級の名無し

くだらん陰謀論者も世界と共に崩壊すれば良かったのだが。

処刑するならむしろ絶望に対する大々的な勝利宣言と共に行うだろう。

事故死にしても、そのまま公表すれば、

“所詮絶望はその程度”と印象付けることができる。

それでも更に絶望の深みに嵌まる者は、楽にしてやればそれでいい。

普段俺達がしていることだ。いずれにせよ、未来機関が何かを隠蔽する理由は全く無い。

わかったか?

 

796 名前:超高校級の名無し

>795必死過ぎワロタw

 

 

 

……過去ログ見たけど、最悪の一言だったわ。

思い出したくない記憶が蘇ってきて、綺麗な思い出が汚れた。そっとブラウザを閉じる。

 

「異世界に来てまでやるもんじゃないわね。

ようつべで気分を変えたいけど、そっちは完全に死んでるし……

左右田君もあんまり見ないほうがいいわよ。

でも、突然中継が終わったことを皆が不審に思い始めてるのは気になるわ。

早く何か手を打たないと。左右田君もチャネラー?」

 

「いや、そっちじゃねえ。向こうでお前にもらったやつを設計してる途中。

塔和シティー攻めるなら、正攻法だけじゃ厳しいからな」

 

そう言えばさっきからずっと画面にタッチペンを走らせてるわね。

何を作ってるのか気になったけど、邪魔しちゃ悪いわね。

霧切さんからの返事もまだだし、少し部屋で休ませてもらいましょう。

 

「アタシ、部屋で仮眠を取るわ。ちょっと失礼するわね」

 

「おう、お疲れ」

 

会議室を出て近代的な設計のビルの中を歩く。

枯れた廃ビルの荒野にそびえ立つ、未来機関第一四支部。

数日後、もっと凄い建物にいる重要人物と会うことになるんだけど、

今はとにかく休みたい。緊張の糸が切れて眠くなってきたわ。おやすみなさい。

 

 

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