江ノ島盾子にされてしまったコミュ障の悲哀【完結】 作:焼き鳥タレ派
「前回の澪田唯吹さん自殺教唆事件に関する学級裁判について、
軽くおさらいしておきましょう。
まず事件当夜、病院全体を探したと言うにも関わらず、
大きな脚立を見落としていたという矛盾の指摘を、
罪木蜜柑はごめんなさいという意味不明な一言で否定。
続いて、ソニアさんの挙げたICレコーダーに関するキーワードに同意することにより、
レコーダーは電気屋で入手できる可能性が極めて高いことが判明。
電気屋を往復できるのは彼女しかいないのですが、
それでもやはり罪木さんは関与を否定しました。ここまでで前回は中断。
では皆様、引き続きご観覧をお楽しみください。では。……失礼、その前に」
○左右田の証言
ICレコーダーは電気屋で入手可能。電気屋までは5番目の島まで移動する必要あり。
短時間での往復は不可能。
■コトダマゲット!!
○左右田の証言 を生徒手帳に記録しました。
【学級裁判 再開】
「私じゃないって言ってるじゃないですかぁ~どうして信じてくれないんですか!」
「罪木さんが何ら具体的な反証をしてくださらないからです。
むしろ我々はあなたの無実を証明しようとしているのですが」
「だったら何とかしてくださいよ……なんだか私が怪しいみたいな感じになってます~」
「でしたらあなたもご協力を。電子手帳のキーワードを見てお気づきの点があれば、
提示して頂けると私としても大変助かるのですが」
「キーワード……あっ、これです!」
「何か、具体的な証拠でもございましたか?」
「“遺書”と“澪田の叫び”です!
澪田さんは本当に自らの命を断つつもりだったんです!」
「しかし、バンシーの悲鳴については全員が耳にしたかがあやふやなため、
証拠としては扱わないと決まったはずであるが……」
「でも、私と江ノ島さんは確かに聞いたんです!
あの、ひとつ試してみたいことがあるんですけど……」
「もー!言いたいことがあるならさっさと言ってよ、ゲロブタ女!」
「すみません!つまり、澪田さんの自殺は突発的なものであって、
歌を聞いたときに暴れだしたのは、何かの偶然が重なった結果なんじゃないかって」
「今更何を言い出すんだ、罪木。ならば澪田がICレコーダーを持っているはずがないし、
2度も同じ歌で暴れだすのを偶然と片付けるには無理がある」
「同じ歌って“ハチのムサシは死んだのさ”だったよね?辺古山さん」
「ああ、酷い暴れようだった。七海はあの音声ファイルを聴いてどう思った?」
「今の所なんとも。ただの昔の歌としか。もう少し議論を進めなきゃ」
「あ、あの。それについてはやっぱり、
彼女にとって刺激が強かったんじゃないかと思います。
歌詞の中に澪田さんのトラウマを引き起こす何かがあって、最初は平気でも、
何度も聞くうちに、自殺願望を引き起こしてしまったと考えられなくはないですか?
ICレコーダーのことはわかりませんが、
彼女、時々綺麗な小石や花を拾ってくることがあるんで、もしかしたら……」
「あんだと!?ならやっぱり江ノ島のせいってことになるじゃねえかよ!!」
「だから、確かめたいことがあるので、皆さんに協力してもらいたいんです」
「協力?何をしたいんだ」
「もう一度“ハチのムサシ”を聴いてもらうんです。
日向さん達に澪田さんを抑えてもらって、また暴れるようなら裁判を続けましょう。
でも、反応がないなら、彼女は本当に自殺したかった。それで決まりにしませんか?」
明らかに何か企んでいるようです。
あからさま過ぎて、かえって怪しく見えている事に、彼女は気づいているのでしょうか。
様子を見ましょう。弐大君達が澪田さんの周りに集まったわ。
「ワシらは準備万端じゃ。絶対澪田に怪我はさせん。
澪田、少し窮屈な思いをさせるが我慢してくれ……いいな?」
「……」
「あのぅ、まだ鎮静剤が残ってるみたいですね」
「……」
「わかった……小泉、歌を流してくれ」
「オッケー!」
ハチのムサシは死んだのさ…♪
……静寂、ですね。
曲が終わりましたが、澪田さんはやはり虚ろな目で前を見続けるだけです。
「ぬっ、何も起こらんではないか!昨日は確かにこの歌で澪田が暴れだしたのだが……」
「一体どういう事なんだ……?澪田、何か気分が悪いとか、そういった事はないか?」
「……」
「ねっ!?あれはただの偶然だったんですよ!歌はまだ澪田さんには早すぎたんです!
でも江ノ島さんを責めないでください!
彼女のために歌ってあげて欲しいとお願いしたのは私なんですから。
少しでも回復の手助けになると思った私の判断が甘かったんです……」
なぜ歌に反応しないのかは不明ですが、とにかく強引に幕引きを図ろうとしています。
そうみたいだけど、あなたをかばおうとしているのが気になるところね。
だったら何故こんな事件を起こしたのかしら。とにかくみんなを引き止めて。
「ケッ、人騒がせな連中だぜ!時間の無駄だ、帰るぞペコ」
「はい、ぼっちゃん」
「皆さん証言台にお戻りください。まだ議論は尽くされていません」
「あんだとクソメガネ!まだイチャモンつける気か!?」
「ぼっちゃん、それは、私にも……」
「はい。全ての事実が明らかになるまでは、
何度でもイチャモンつけさせて頂く所存です」
「……面白え。
次の議論で何も出なかったら、指の1本でも詰める度胸はあンだろうな?」
「何本でもどうぞ。
あなた方の職業で、詰めた指を何に使用しているのかは不明ですが、とにかくお戻りを」
「逃げんじゃねえぞ」
■議論開始
コトダマ:○遺書
九頭竜
歌を聴いても[反応がなかった]のに、裁判続ける意味はねえと思うがな!
江ノ島(メガネ)
それは全く同じ条件で曲が流れた場合の話です。
罪木
[同じ条件]ってどういう意味ですか?
七海
文字通り、事件当時と全く同じかってこと。今日の澪田さん、[ちょっと違う]よね。
終里
おう!あの[澪田の髪型]、玉ねぎみたいでうまそうだよな!
・とりあえず
どのウィークポイントも破壊できそうにありません。
・大丈夫。そういう時は、誰かの意見を記憶して新たなコトダマにできるの。
力を持つ言葉に意識を集中して。
REPEAT
九頭竜
歌を聴いても[反応がなかった]のに、裁判続ける意味はねえと思うがな!
江ノ島(メガネ)
それは全く同じ条件で曲が流れた場合の話です。
罪木
[同じ条件]ってどういう意味ですか?
七海
文字通り、事件当時と全く同じかってこと。今日の澪田さん、[ちょっと違う]よね。
終里
おう!あの[[○澪田の髪型]]、玉ねぎみたいでうまそうだよな!
REPEAT
九頭竜
歌を聴いても[反応がなかった]のに、裁判続ける意味はねえと思うがな!
江ノ島(メガネ)
それは全く同じ条件で曲が流れた場合の話です。
罪木
[同じ条件]ってどういう意味ですか?
──それは違うわねぇ!!
[同じ条件]論破! ○澪田の髪型(MEMORY):命中 BREAK!!!
・なるほど。
・これからも手持ちのコトダマで手に負えない時は、誰かの証言から探してみて。
「あの、違うって何がでしょうか……」
「皆さんのほとんどが開廷から見て見ぬ振りをしているアレです。澪田さんの髪型!」
○澪田の髪型
普段は罪木がセットしている。ツノの形を作るのが難しく、罪木以外に再現できない。
■コトダマゲット!!
○澪田の髪型 を生徒手帳に記録しました。
「ぷぷっ、日向おにぃより飛び出してるよね、色々」
「飛び出してるってどういう意味だ!……悪い、何が言いたいんだ?」
「事件当時と大きく異なる条件で歌を聴かせても意味はありません。
その条件となっている人物がこの中にいるということです」
「や、やめましょうよぅ。また何がきっかけで……」
「やめません。
私は指を詰めるという、何がしたいのかわからない行為を賭けて発言しているのです」
「おめえ、さっきから微妙に極道馬鹿にしてねえか?」
■怪しい人物を指名しろ
ハナムラテルテル→ニダイネコマル→ツミキミカン→ソニア→[ミオダイブキ]
──アンタしか、いないのよォ!
「えっ、唯吹ちゃん!?あの娘自身が条件って、あんた何が言いたいのよ?」
「小泉さん。今、彼女の頭部に何が見えていますか?」
「何よ、急に」
「5秒以内に答えられない方は馬鹿とみなします。5,4,3,2…」
「わかったわよ!目、鼻、口……耳!?」
「そう、大きな玉ねぎ頭に隠れた耳。そこにヒントが隠されています」
「ああ…はうあう…」
「征け、破壊神暗黒四天王!サルガッソーのアギトから、未知なる世界を掌握せよ!」
田中さんが飼っているハムスター達が、澪田さんに飛びつき、
雑にセットされた髪に潜り込みました。
さすがに彼女もくすぐったかったのか、時折ふひっ、と妙な声を出していましたが、
それはさておき……出てきました。小さなシリコン製の物体2つ。
「よくやった、サンD、マガG、ジャンP、チャンP!む、何だこれは!……耳栓か?」
「「耳栓!?」」
○耳栓
完全に雑音をシャットアウトする高性能な耳栓。
■コトダマゲット!!
○耳栓 を生徒手帳に記録しました。
「江ノ島さんが言ってた条件の違いって、この事だったんだね。
聞こえてないなら、いくら音楽を流しても意味ないよね」
「七海さんのご明察通り、
耳栓なら患者の安眠を確保するために、病院にひとつはあってもおかしくない。
そして、今日澪田さんに耳栓をつけるチャンスがあったのは……
彼女の髪をセットしていた罪木さん、あなただけです」
「え……」
「そうですね?罪木さん」
──それは……違うよ
江ノ島(メガネ)
黙りこくっていたと思っていたと思えば、何が違うのでしょう。
出来れば永遠に黙っていてほしかったのですが。
狛枝
あんまりにも議論が迷走してるからつい、ね……
■反論ショーダウン 開始
>>左右田の証言
狛枝
なんだか/江ノ島さんは罪木さんのせいに/したいように/ボクは思えるんだけど、
ICレコーダー/にしろ耳栓にしろ……/彼女が用意した/って証拠はないよね。
ボクは彼女が言う通り/澪田さんが/突発的に/自殺を図ったとしか/思えないんだ。
《発展!》
江ノ島(メガネ)
ICレコーダーと遺書らしきものを澪田さんに持たせることができたのは、
私と罪木さんしかいませんし、
逆に当日私にICレコーダーを用意できなかったのは先程申し上げたとおりです。
やはり罪木さんに十分な説明を求めるべきかと。
狛枝
やだなあ。それは/罪木さんも同じ/じゃないか。彼女も仕事で忙しい/わけだし。
5番目の島まで出向いて/ICレコーダーを探す/時間なんてあるわけない/じゃないか。
結局/何が言いたいかと/言うと……
罪木さんに[犯行は不可能/だった]ってことなんだよ。
──その言葉、ズタズタにしてあげる!!
斬![犯行は不可能だった]論破! >>左右田の証言 BREAK!!!
「何かボクの反論におかしな点でもあるのかな?」
「ありすぎて何から挙げれば良いのか困るくらいですが……
罪木さんにも犯行は可能で、ICレコーダーを探すチャンスもあった、ということです」
「ちょっと待ってほしいな。
ここから5番目の島の電気屋までは徒歩で大体20分。走っても往復30分。
さらにICレコーダーを探していると、少なく見積もっても1時間は掛かるんだよ?
そんなに長い間病院を抜け出したら、きっと患者が不審に思うよ」
「ICレコーダーは本当に電気屋でしか発見できないのでしょうか。
また、その時間もなかったのでしょうか。私にはそうは思えません。
ある人物の存在がそれを証明しています」
「へえ……それって誰の事だい?」
■怪しい人物を指名しろ
ヒナタハジメ→ソウダカズイチ→コマエダナギト→ソニア→[ハナムラテルテル]
──アンタしか、いないのよォ!
「ええっ、ぼく!?」
「ご安心ください。
あなたを犯人として槍玉に挙げて縛り上げ、
全員でしばき回すつもりは一切ございませんので」
「み、みんなでぼくを縛り上げ……そんな素敵なっ!」
「花村君がこの件にどう関わっているのか、ボクとしてはその説明が欲しいんだけど」
「うん、唐突に彼の名前が出てきたから、私達も戸惑ってるんだ」
「七海さんが驚かれるのも無理はありませんね。
その前に左右田さんにひとつ確認したい事が」
「オレに?一体何だってんだよ」
「ICレコーダーは本当に電気屋でしか入手できないのでしょうか。
それとも別の場所で手に入る可能性は完全にゼロ?」
「ああ、間違いねえと思……あ、そうか!電気“屋”じゃなくて3番目の島、
よーするにこの島にある電気“街”でも、落ちてる可能性がなくはねーぞ!
花村指名したのはそういう意味なのか?」
「そういう意味なのです」
「二人で納得してないで、俺達にも説明してくれよ!」
「少々お待ち下さい、日向さん。
更に事実を詳細に整理いたしますので、お時間を頂戴します」
そこで私は自らの心に問いかけ、脳内の世界に飛び込みました。
あの江ノ島盾子とは正直、気が合わないのですが、
直接顔を合わせずに済むのがせめてもの救いでしょう。
■ロジカルダイブ 開始
ウヒャヒャヒャ!本日も最っ高にイカれたスピードの祭典、スタートだぜェ!!
さっさと始めろや、腐れスタートシグナル!!
お願いだから事故には気をつけてね?問題文近くでは徐行運転。
うっせババア!最初から最後までフルスロットルで爆走だァ!!
本当にこの娘達ったら……
3.2.1…DIVE START
QUESTION 1
ICレコーダーがあったのはどこ?
病院の中 病院の外
[病院の外]
「見よ!この華麗なコーナリング!!」
ほぼ直線道路じゃない。
QUESTION 2
犯人がICレコーダーを手に入れたのはいつ?
事件当日 事件発生以前 事件発生以降
[事件発生以前]
変な風車もアタシのハンドリングで見事に回避ィ!他、選んだ奴全員バカ!
口は悪いけどそうなるわね。
QUESTION 3
犯人がICレコーダーを手に入れたのはどこ?
電気屋 電気街 病院
[電気街]
前回の記録を0.47秒更新してフィニーッシュ!!
よくやったわね。さあ、表の世界に戻るわよ。
──真実はアタシのもの!
「どうした。まただんまりか?」
「うっせえぞ、百貫デブ!今から俺がまとめてやった事実をご披露してやっから、
逆立ちしながらよーく聞きやがれ!」
「はひゃあぁ!今度は凶暴な方の江ノ島さんになっちゃいました……」
「もう2回目なんだから慣れろっつーの。まず、ICレコーダーの入手経路。
これは病院の外で間違いねえ!
次、ICレコーダーは電気屋か電気街以外では手に入らない。
そこでテルテルの野郎が出てくるってわけなんだよ!」
「そ、それと、ぼくに何の関係があるの?ぼくが犯人だとか言わないよね?」
「だかあっしゃあ!お前に出番はねえよ、安心しろ。もう用済みだから卓に戻んな」
「はい……」
「肝心なのは一週間ほど前にテルテルが起こした爆弾事件だ。
全員そん時の状況をよーく思い出せ!」
「フフッ、自らクロに指名した彼の古傷をえぐるなんて、さすがは超高校級の……
ああ、なるほどね」
「あの事件が起きた時って確か……あんたまさか!?」
「わかったかァ!あん時は数名を除くほぼ全員が“電気街”にいたんだよ!!」
「そーか!そーだよ!オレ含めた手の空いてる奴全員で、
ジャンクパーツ集めに行ってたんだ。
金属片とか重い鉄くずとかで怪我したやつが出た時のために、
確か罪木にも来てもらってたんだよな?」
「えうう……そうですけど…違います…私じゃ……」
「そこで!クロはICレコーダーを見つけ、今回の犯行を思い立ったんだろうよ!
可能性が高けーとは言え、確実に見つかるとは限らないICレコーダーを、
計画的な犯行に組み入れるのは無理があるからよう!」
「信じて…お願い…許して……」
「左右田さん、その時電気街で罪木さんはどんな作業をしてたんですか?
わたくし、ホテルで作業をしていたので現場の状況がわからなくて」
「万一に備えて“待機”っすよ。
罪木まで手伝わせて医療班が怪我したら意味ねっすから」
「じゃあ、ICレコーダーがクロの手に渡ったのは、
犯行日時のずっと前だったってことなのか!?」
「うんうん、日向君の言う通り、必然的にそうなるね。
ちょうどボクが風船爆弾で入院した時、だと考えていいよ」
「もー最後までそのキャラで行ってよね!
江ノ島おねぇの中じゃ、あんたが一番マシなんだし?」
「すまないけど、目立ちたがり屋がうるさくてね。最後まではご一緒できないよ」
「さっすが江ノ島さん!いきなり議論吹っかけちゃってごめんよ。
退屈な裁判だったから、君という絶望的に巨大な存在に、
ちっぽけなボクがどこまでやれるか、つい試してみたくなっちゃったんだ!」
「……おイタはよしなよ。さっきの江ノ島盾子だったら、コトノハじゃなくて、
本物のナイフでサクッと行ってたかもしれないから、さ」
──勝手な事ばかり言わないでくださいよおおおぉ!!
突然響いた絶叫に全員が思わず目を奪われる。
そこには、髪を振り乱し、長さのバラバラなロングヘアを握りしめて、
恐ろしいまでの形相を浮かべる罪木さん。
普段の彼女とは似ても似つかない風貌に、皆が戦慄する。
「さっきから、皆さんで、私を、責め立てて!どうせみんな、私が人殺しをするような、
バイ菌ウジ虫口臭女だと思ってるんでしょう!?」
「落ち着け、罪木が犯人だなんて結論はまだ出てないじゃないか。俺達はただ……」
「そうだ。口臭女は1人でたくさんだ」
「うるさぁい!!」
「「……っ!?」」
「……あーあ、もういいです。結局皆さん私を仲間外れにしたいんですね。
なら好きにしてください。でも私、犯人じゃありませんから。
あと勝手にやってくださーい」
今度は全てを投げ出し、心の闇を孕んだ表情で、どこか諦めきったように宙を見る彼女。
一種の現実逃避だと思っていいのかな。だけど、それで追撃をやめるボクじゃないのさ。
そう。今の彼女を放置してはだめ。これは救いでもあるの。彼女の闇と向き合って。
■議論開始
コトダマ:○澪田の髪型
罪木(狂気)
私がなんかした[証拠]でもあるんですかー?
[ICレコーダー]が怪しいんですかー? [耳栓]が怪しいんですかー?
警察みたいに[指紋でも調べた]んですか!?
耳栓だって、探せば[病院の外]にもあるじゃないですか!!
[ハチのムサシ]だって、江ノ島さんが直接聴かせた可能性もあるのに、
どうして私ばかり疑うんですか! もう、許してくださいよぉぉ!!
・最後は曲撃ちみたいな芸は必要なさそうだね。
・そう。弱った彼女の隙を撃ち抜いて。あなたならできるわ。
REPEAT
罪木(狂気)
私がなんかした[証拠]でもあるんですかー?
[ICレコーダー]が怪しいんですかー? [耳栓]が怪しいんですかー?
──これで、とどめよ!!
[耳栓]論破! ○澪田の髪型:命中 BREAK!!!
「で?それがなんだっていうんですかー?証拠見せてくださーい」
「君の言う通り、耳栓が怪しいってことだよ」
「そんなの、マーケットのどっかに……」
「おや、失礼。耳栓そのものじゃなくて、誰にそれを取り付けることができたか。
それが重要なのさ」
「えっ……?どういう、意味ですか」
罪木さんが少し怯える。正気を取り戻そうとしてるみたいだね。
「事件発生当時から、澪田さんは常に誰かの目が届くところにいた。
駆けつけたみんなで病院は寿司詰め状態だったからね。
そんな彼女の耳にこっそり仕掛けができるのは、
普段から彼女の髪をセットし、今日もそうしていた罪木さんしかいないんだよ」
「そ、それがなんなんですか!?
仮にそれが私だったとしても、事件が起きた後のことです!
澪田さんの自殺とは何の関係もありません!
それに……江ノ島さんだって怪しいじゃないですか!
ひょっとしたら、いつものように窓から直接彼女に歌を」
「それはありえないんだよ。
事件が起きた時、ボク…の肉体の持ち主がぐっすり眠っていたことは、
君自身の証言通りだよ」
「ううっ……違います…私、なんにも悪いこと……許して…お願い」
わかってるだろうけど、ここで罪木さんを“許す”ことは、何の解決にもならないわ。
ああ。向こうの盾子もお待ちかねだから、ボクはそろそろ引っ込むよ。女王様、どうぞ。
「オッホホホホ!!許す、許さないは、
平民は黙って最終審判に耳を傾けていればいいのよ!」
「とうとう、終わるんだね。江ノ島さん……この事件を、ゲームオーバーにして」
「なんだ、キノコじゃねえのか。さすがに王冠は食えねえな」
「皆の衆、私様がお前達でも理解できるよう事件のまとめをしてあげる。
実に単純でくだらない結末を期待して待っていなさい!」
■クライマックス推理
>クライマックス推理 開始
>推理を完成させろ
Act.1
事件の始まりは約一週間前。爆弾騒ぎがあった当日のこと。
私様を含む約3名を除いて、ほぼ全員が電気街へ赴き、
ささやかな財を求めてゴミあさりに精を出していた。
緊急時の役割があるとは言え、そうそう不測の事態が起こることもなく、
暇を持て余していた犯人は、辺りをブラブラしていたんでしょうねえ。
そこで犯人はあるものを見つける。
Act.2
そう、それが犯行に使われたICレコーダー。
犯人もその時は何の気なしにポケットに入れた。
後で戦利品の一つとして左右田にでも渡すつもりだったんでしょう。
でも、その日に事件が起きた。あの風船爆弾よ。
そこで負傷した私様の姿を見た犯人は、今回の犯行を思いついた。
つまり、全治約1週間の私様に、澪田唯吹への自殺教唆の容疑をなすりつける。
Act.3
入院中の私様と澪田のやり取りを見ていた犯人は、
後に濡れ衣を着せる目的で私様に澪田の病状を伝え、
その上でICレコーダーを使い私様の美声を無断で録音。
ハイスペックな集音機能を持つレコーダーなら、
廊下に響く歌声を捉えることは簡単にできたでしょうね。
実際犯人はそれを聞きつけてこのトリックを考えたんですもの。
もし、私様が歌を歌わなくても、日常会話をこっそり録音して代用すればそれで済んだ。
わざわざ歌を利用したのは、私様への疑いをより濃いものにしたかったからでしょうね。
Act.4
とうとう犯人は計画の最終段階に入る。
あらかじめ用意した偽の遺書と、
タイマー機能で6時20分頃に歌を再生するようセットしたICレコーダーを、
澪田の入院着のポケットに入れる。
その時の澪田は、何でも言うこと聞いちゃうロボットちゃん状態だったから、
口止めするのは極めて簡単。そして夕方6時20分。
タイマーが作動して、ICレコーダーが流した歌を聞いた澪田は、
犯人から受けていた命令を実行する。
“ハチのムサシが流れたら自殺しろ”、“自分のことは絶対喋るな”。
Act.5
あとは素知らぬ顔で、自殺しようとする澪田を止めるふりを続けていればいい。
仕上げにメンバー全員に緊急メールを送ってね。
目論見通り、私様が病院の外に出てきた時、飛び降りようとする澪田を目撃。
直後に駆けつけた日向達が、人間離れした方法で澪田を取り押さえて計画はご破算。
ジ・エンドってやつよ。
ここまでの手順を誰にも怪しまれず、全て実行できたのは、病院の主であるお前だけ。
そういうことでしょう?罪木蜜柑!!
──これが事件の全貌よ! COMPLETE!
「きゃああああ!!」
事件を解決して満足した江ノ島盾子が僕の中に帰っていく。
同時に罪木さんが悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。
「結論が出たみたいでちゅね……
みなちゃん、お手元のボタンで、クロだと思う人を投票してくだちゃい」
結果:罪木蜜柑 GUILTY
「罪木が、犯人だと……!?」
「確かに意外な人物だね。
辺古山さんほど驚いてはいないけど、ボクも動機だけは気になるかな」
「やっぱゲロブタが犯人だったんじゃん!」
「罪木さん!?どうして澪田さんを殺すなど!
あんなに一生懸命お世話をされていたではありませんか!」
「う…あぅ……違います…私、殺すつもりなんて……」
「その続き言いやがったら女だろうとぶっ飛ばすぞ!
最近の半端な連中は皆“殺す気はなかった”で言い逃れようとしやがって!
人の
熱でふらつきながらも、僕は罪木さんのそばに向かう。
「みんな……まずどうして罪木さんがこんな事をしたのか聞こうよ……」
「くっ、未遂とは言え罪木まで!ワシらの誓いは、なんだったんじゃあ!!」
「冷静になって、弐大くん。江ノ島さんの言う通り、動機がまだだよ?」
以前より七海さんの口数が多くなった気がする。
今度彼女について日向君に聞いておかなきゃ。でも、今は罪木さんだ。
床に座り込む彼女の前に僕も座って、
深呼吸してから、できるだけ落ち着いた声で問いかける。
「どうして、こんな事をしたんだい?」
「それは……」
「それは?」
「江ノ島さんが……」
……やっぱり、彼女も僕のことを。
「カワイ過ぎるからじゃないですかぁ!!」
えっ!?と声を出す間もなく、罪木さんが思い切り抱きついてきた。
ちょっと待って!顔に大きなものが当たってるっていうか挟まれてる!
もがきながら、なんとか立ち上がるけど、彼女は決して離れようとしない。
「何言ってるの?さっぱり意味がわからないよ!」
「言葉通りの意味ですよぅ!動機?
そんなの、江ノ島さんを私だけのものにしたかったから!他に何があるんですか?」
やっと彼女の拘束を振りほどいてその顔を見る。今度は別の狂気に満ちていた。
恍惚感に満ちた笑顔を紅潮させ、よだれが垂れるのも構わず、潤んだ目で僕を見てる。
彼女が何を考えているのかわからない!
「罪木!お前、まだ絶望が抜けきっていなかったのか!?」
辺古山さんが竹刀を抜くけど、罪木さんは僕以外何も見えていない様子で、
たどたどしい歩調で僕に近づいてくる。
「絶望?ああ、そんなの、とっくに忘れちゃいました……
これは、純粋な“愛”なんです!」
「あ、愛?」
「はい。確かに、最初は皆さんと同じように、
江ノ島盾子への憎しみと恐怖の入り混じった感情を抱いていましたが、
実際あなたと会って、一気にどうでもよくなりました。
みんなにいじめられてる、弱虫の江ノ島さん。
月のものでパニックになって、わんわん泣いて私に助けを求める泣き虫の江ノ島さん。
その姿を見て私は……胸がキュン、となっちゃいました!」
「そ、それが、どうして澪田さんを殺すことになるのさ!」
「うふふ……言ったじゃないですか。殺す気なんて初めからなかったんです。
私は命令したのは“自殺するふりをしろ”ですよ?澪田さんだって愛してるんです。
私のお願い、なんでも聞いてくれますし、絶対私をいじめたりもしません。
今回は江ノ島さんを私だけのものにするために、
少し協力してもらっただけです。あはぁ…」
「うげ、ゲロブタ女マジキモ……」
「この病院を3人だけのユートピアにするのが夢でした。
この裁判でクロになって、ますます立場が悪くなった江ノ島さんが、
いじめられて泣きながら帰ってくる。私はそんなあなたを抱きしめて慰める。
その後は、いつもいい子の澪田さんと3人で一緒にご飯を食べるんです。
そんな慎ましやかな生活をいつまでも送りたい。
それは許されない夢なんでしょうか……?」
「ふざけないでよ!澪田さんにあんな危ない真似させて、何が愛してるだよ!
屋上には湿った落ち葉やビニールのゴミが溜まってて、
いつ足を滑らせてもおかしくなかったんだ!
下からは低く見えるだろうけど、
あの高さでも落ちたら大怪我や死につながってたんだよ?」
「え…“死”?……」
死というキーワードに罪木さんが若干冷静になる。
「誰かの命と引き換えにしてまで、本当にそのユートピアが必要だったのか、
よく考えてみて!」
「あ、ああ……私、殺したくなんか……ただ、必要だった……」
「ユートピアが?」
彼女はただ頭を振る。
「私の、居場所……誰も私をぶったり、いじめたり、罵ったりしない。
ただそれだけの場所が……江ノ島さん。私の髪型を見て、どう思いますか?」
「どうって……個性的だと思う、よ?」
「切られたんですよ!私は幼稚園の頃からずっといじめを受けて育ってきたんです!
この髪だって本当は真っ直ぐだったんですよ!?
でも高校に入る前に、みんなが面白半分でメチャクチャにしたんです!
女の子が髪をここまで伸ばすまでどれだけ掛かるかわかりますか?
家だって私の居場所なんかじゃなかった。学校で殴られ、お家でも殴られ……
私は、一体どこに行けばいいんですか!?」
「どうしてここのみんなを信じられなかったんだよ!一緒に罪を償う仲間を!
居場所なんてこの島……そうじゃない。僕なんかにすがらなくても、
みんながいるところなら、どこだって罪木さんの居場所だったのに!」
「え、へへ……どうせみんな裏切るに決まってます。
友達になってくれる条件に毎月5千円を要求してきたあの女の子みたいに……」
「ここじゃ誰も!」
「何ふざけたこと言ってんだよ、このブス!」
僕の言葉を遮って、西園寺さんが罪木さんを扇子で指しながら、罵倒を浴びせる。
「ここにも外にもお前の居場所なんかねえんだよ、変態女!クソレズ、毒ヘビ、
嘘つき女、VXガス、腐った牛乳、能無し、ジメジメ女、ボウフラ、要らない子!」
「要らない子……?」
黙って西園寺さんの悪口を受け続けていた彼女が、最後の言葉で明らかに動揺した。
顔が青ざめ、目に涙が浮かぶ。
そして、少しの物音でかき消えそうな小さな声で否定する。
「要らない子なんかじゃ、ない……」
その反応を目ざとく見つけた西園寺さんが、再び罵倒を繰り返す。
「要らない子!要らない子!罪木蜜柑は要らない子!1カゴ100円でも売れませーん!」
「いや……いや……お願い。謝りますから、許して……」
彼女を止めなきゃ。僕は西園寺さんに早足で近づく。
途中、ソニアさんの証言台に置かれていたムチを手に取る。
多分、ゆうべのメールを見て、非常時に備えて念の為持ってきたんだろうけど、
今はどうでもいい。
「ごめん、借りるね」
「あの、何を……?」
何も答えず、僕は歌うように罪木さんを侮辱する西園寺さんの前に立った。
「ん、なに?江ノ島おねぇも一緒に歌う?ほれ、罪木蜜柑は……」
パシン!
心臓がバクバクする。振るった手も震えてる。
だって、女の子の顔を張ったことなんて人生で初めてなんだから。
「え……?叩いた?う、う、びえええん!江ノ島おねぇがぶったー!
小泉おねぇ、助けて!」
初めは何が起きたかわからず、左頬に手を当てるだけだったけど、
だんだん状況がわかってきて、大声で泣き出した。
小泉さんがすかさず守るように彼女の前に立つ。
「何してるの、この娘に近づかないで!」
僕は何も言わずに、手にしたムチを見て、覚悟を決めた。
バシイイィン!!
法廷に響き渡る、何かが破裂するような大きな音。意味不明な僕の行動に皆がざわめく。
彼女と同じ左頬を打つつもりだったんだけど、
手元が狂って顔全体に思い切り斜めにムチを叩きつけてしまった。
この世にこれほどの痛みがあるのかと思うほどの激痛で、涙が出そうになる。
というか泣いてる。
「江ノ島…おねぇ……?」
「あ、あんた何がしたいのよ!?」
「江ノ島さん!全力でそのムチを使っては!」
僕は痛みを堪えながら改めて西園寺さんに向き合う。
「西園寺さん、叩いたりしてごめん。これで許して。
でも、これだけは聞いて欲しいんだ。
はなクソ、ボケナス、ゴキブリ、うすのろ。
この中で付けられて嬉しいあだ名って、ある?」
「あ、あるわけないじゃん!」
「じゃあ、その中に“ゲロブタ”を加えたら?」
「なによ……それじゃあ、わたしのせいであいつがこの事件を起こしたっていうの!?」
返事をしようとした瞬間に、全身からガクンと力が抜ける。視界もぼやける。
きっとウサミのステッキの力だと思う。
だけど、僕はわずかな力を振り絞って、床を這いながら彼女に訴える。
「それは、ちがうよ……でも、つみきさんには、あやまって。
つみきさんは、ぜつぼう、なんかじゃない。いらなくなんか、ない……」
「な、なんなの!?来ないでよー!」
「……江ノ島さん?どうして、私なんかのために……」
この時、罪木さんの顔からは狂気が抜け、ただ涙を流す女子高生がいるだけだった。
後で聞いた話だけど。
「ただの、きっかけなんだ、きみの、わるぐちは。
……つみきさんは、ずっと、みんなに、たたかれたり、ひどいことを、いわれつづけて、
いたみを、かんじなくなってた。
でもそれは、へいきだから、なんかじゃない。
こころが、ちまみれになるまで、きずついて、いたいことにも、きづけなくなってた。
だれかに、“たすけて”って、いうことも、できないくらい……」
背後で誰かが裁判長席に向かって何かを告げたような気がした。
すると、身体に力が戻り、立ち上がれるようになった。
何にせよ、これでまともに喋れる。
「お願い西園寺さん。
言葉はコトノハ以上に人を傷つけることもあるんだ。
それだけはわかって、頼むよ」
「日寄子ちゃん……」
小泉さんにそっと背中に手を当てられた彼女は、しばらく、そっぽ向いていたけど、
小さな声で確かに言った。
「わかったわよ。……ごめん、罪木おねぇ。もうゲロブタとか言わないから、許してよ」
「西園寺、さん……?はい、もちろんです!」
「ただ殴って叱るのではなく、自分も同じ痛みを受ける覚悟で語る執念。
……これぞ漢じゃあ!」
「ツッコまないわよ」
「フン……ケジメの付け方くらいは知ってるみてえだな」
ほっとしたら、さっきの無茶が今頃出てきた。顔はまだまだ痛いし、全身クタクタ。
「はぁ…窒息するかと思った。
生きるのに最低限必要な呼吸しかさせてくれないみたいだね、あれ。ははっ」
「笑ってる場合じゃないでしょう!アタシ達の心臓止めるつもり!?」
「ふふ、ごめんね。あ、ソニアさん、ムチ返すよ。勝手に借りてごめんなさい」
「それは構いませんけど……顔は大丈夫ですか?」
「正直大丈夫じゃない。本当に激痛だけが残るんだね、これ」
ツヤのある証言台で顔を見るけど、痕は全然残ってない。こんなにジンジン痛むのに。
その時、罪木さんが立ち上がって、みんなに語り始めた。
「……皆さん、今回は私の欲望に皆さんを巻き込んでしまい、
本当に、申し訳ありませんでした。特に謝らなければならない、江ノ島さん。
最悪の場合、全てを明かすつもりだったとは言え、
あなたを犯罪者に仕立て上げてしまったことは、許されることではありません……」
「僕は、許すよ。
罪木さん、途中で自殺は偶然だってことにして、僕をクロから外そうとしてくれたし。
もうひとり、謝りたい人がいるんだよね。さあ」
「ありがとうございます……」
彼女はポロポロと涙を流しながら皆に頭を下げ続けている。
そして、彼女が謝りたい人物に向かう。
「澪田さん。あなたの命を危険に晒すようなことをして本当に」
──イヤッフオオオーーオィ!!
「ぐほっ!」
その時、カラフルな影が僕に体当たりしてきた。
爆弾でも爆発したのかと本気で思ったよ!で、その爆弾の正体は……
「おはようございまむ!澪田唯吹、満を持しての大復活っすよー!ペロリン!」
「「なんで!?」」
そりゃ、一斉に同じ声も出るさ!今までボーッとしてた玉ねぎ頭が、
テンションMAXで法廷中を飛び回る勢いでジャンプしながら皆に手を振るんだから!
「澪田さん、回復したんですか!?」
「蜜柑ちゃんが看病してくれてたから体調バッチリっす!
それにしても、このヘアスタイル、大胆な一本角もイカしてますなあ!
それともコレ玉ねぎ?唯吹わかんねっす!タハハ!」
「玉ねぎでいいと思うよ?たまねぎ剣士は最強だから」
「千秋ちゃんもおひさ~!ゲームもいいけど唯吹とセッションもどうっすか?
予備のギターで一緒に練習するっす!」
「私は、音ゲーでいいよ」
「くぅ~!大人しそうな千秋ちゃんのルックスに、
派手なエレキギターのアンバランスさが映えると思ったんすけど、惜しい逸材っす。
まぁ、そんなわけで完全復活を果たした澪田唯吹をこれからも応援よろしくっす!」
なんというか……このままだと、法廷が澪田さんに支配されてしまう!
僕は何故か回復した彼女に話しかける。
「あの、澪田さん。君が治ったのはもちろん嬉しいんだけど、
どうして治ったのかを僕達は知りたくて……」
「あー!盾子ちゃん!会いたかったよー。かませて!」
「うん、僕も君の元気な姿…痛っ!本当に噛んだ!
“まかせて”を君なりに、もじっただけだと思ってたのに!」
「ふむふむ、盾子ちゃんのお耳はミディアムレア……と。
挨拶はここまでにして、唯吹も盾子ちゃんに聞きたいっす!」
「今までの挨拶だったの?それで、聞きたいことってなあに?」
「どうして、盾子ちゃんがここにいるっすか」
急に真剣な面持ちになって、本質的な問いをぶつけてくる。そうだった。
彼女も未来機関で説明は受けてたんだよね。江ノ島盾子の存在、その正体も。
何から説明すればいいんだろう。困っていると、日向君が助け舟を出してくれた。
「澪田。どうして江ノ島盾子がここにいるのか、それについては複雑なんだ。
後で俺からゆっくり説明する。念の為、今日はコテージに泊まって身体を休めてくれ。
長い裁判で疲れただろう」
「了解っす!」
「それでだ。今度はお前に聞きたい。どうして今になって元気さを取り戻せたんだ?」
「う~むむ……」
彼女は腕を組んで考え込む。そして答えが出ると、はーい!と思い切り手を挙げた。
「ぼーっとしてた唯吹の意識に、激しいロックの
自分をムチでぶっ叩くセルフSM、
地べたを這いつくばりながら腹の底から絞り出すメッセージ、
そしてフィニッシュは美少女の涙!これでハートが燃え上がらない方がおかしいっすよ!
それに……」
「それに?」
「盾子ちゃんの歌ってくれた歌。
なんでかわかないんすけど、初めて聞いたのに懐かしい感じ。
初めての感覚にインスピレーションが刺激されて、
居ても立ってもいられねーって感じで、気がついたら飛び出してたっす!」
「じゃあ、心の傷は癒えた、と思って大丈夫か?」
「……いいや、唯吹の罪が消えることはないっす。
ただ、こうして受け身になって、誰かの命令を聞くことが、
償いになんかならないことに気がついたんすよ。
これからはみんなと一緒になんかやるっす!なんかが何かは未定なのである!」
「ふふ、これから忙しくなるぞ」
「唯吹頑張るっす!……それと、盾子ちゃん」
すっかり置いてきぼりにされていた僕に、澪田さんが近づいてきて、僕の両手を握った。
「今は盾子ちゃんの立場とか、難しいことはわかんねえっすけど、
唯吹はあの歌で立ち直れた。それだけは事実なんす。だから、ありがとう……」
「本当に、元の澪田さんに戻ってくれて、僕も嬉しいよ。
あと一人、君と話がしたい人がいるんだ」
「わかってるっす。……蜜柑ちゃん」
「ごめんなさい。謝っても謝りきれませんけど、澪田さんに「ゲッチュウ!」」
「きゃぶっ!?」
また澪田さんが親指を立てながら罪木さんに体当たり。彼女自身は痛くないの、あれ?
「湿っぽいのは唯吹嫌いっす。
それに、ボケっとしてたけど、命令されたことはちゃんと覚えてたんすよ。
蜜柑ちゃんこう言ってたっすよね。
“自殺するふりだけして。落ちないように気をつけて”って。
だから、唯吹は屋上に行っただけーってことでヨロシクっす!」
「澪田さん……ありがとう、ありがとうございます……」
彼女の目からまた大粒の涙が。それは静かに頬を濡らす。
その様子を見守っていたウサミが、裁判の完結を宣言する。
「……2回もしこりを残すことなく学級裁判が終わるなんて、
あちしは信じられないです。こんな嬉しいことはありまちぇん。
みなちゃん、また一緒に明るい南国生活を送りまちょう。
それでは、今回の学級裁判を終わります」
カン!
【学級裁判 閉廷】
ウサミの木槌で学級裁判は終了した、かに思えた。
「ちょっと待ってくれないかな」
彼だ。狛枝凪斗が顔のそばで人差し指を立てながら、若干不満げな表情で告げる。
「クロが見つかったのに、このまま何もなしで終わるのかい?
それってちょっと納得行かないかな」
「な、なにが言いたいんでちゅか?」
「学級裁判の最後にはさ、必ずあるでしょ。“おしおき”」
一同がざわめく。“おしおき”とはつまり処刑だけど、
今回のプログラムにそんなものあるはずない。
「何を言っとるんじゃ狛枝!ワシらは江ノ島を……調査するために」
「でもさ、罪木さんは未遂とは言え自殺教唆を実行してるんだよ?
それについて何の罰もないって変じゃない?
だったら、この島では犯罪行為し放題ってことになっちゃうと思うんだけど」
「じゃあ、アンタはどうしてほしいのよ!
唯吹ちゃんと……盾子ちゃんも許すって言ってるのに!」
「こんなのはどうかな。
クロはおしおきとして、“絶望”だった頃の自分の罪を告白する」
「なんじゃとう!?」
「残酷でちゅ!
罪と向き合い贖罪に心血を注いでいる、みんなの心の傷に塩を塗り込む行為でちゅ!」
「残酷?みんなが無実の人達にしてきたことの方がよっぽど残酷だと思うけどな。
まぁ、僕の才能は単なる幸運だから、
大したことはしなかった、というよりできなかったんだけど。
それで?やるの、やらないの?」
「……わかりました。皆さん、聞いてください。私の罪を」
「蜜柑ちゃん!?こんなバカの言うこと聞かなくてもいいって!」
「いえ、いいんです!確かに狛枝さんの言う通り、自分のしたことには、
何かの形で決着をつけなくちゃ、何でもやりたい放題になってしまいます。
二度と学級裁判なんて起きないよう、こんな事は私で最後にしないと……!」
「そんな……」
「そう来なくちゃ!花村君はやり遂げたんだし、できるよね?」
「あわわ…どうちてこんな酷い事が!」
「では、私の罪を懺悔します。私の罪は“治療”です」
「治療?どういうことだい」
「崩壊した世界で絶望の残党と戦う、傷ついたレジスタンスの方々に、
私は治療を施してきました」
………
“ううっ!ここは…どこだ?”
“ふふっ、お目覚めですか?あなたは脚にひどい怪我を負って、倒れていたんですよ~”
“そうだった!モノクマの群れに足をやられて……はっ!無い!俺の脚がない!”
“ああ、それですか。あ~んまり症状が酷かったんで、処置しておきました!”
“なんだと……?ちくしょう、返せ!俺の脚を返せよ!”
“もちろんお返ししますよ、ほらここに!
ノコギリで切断して傷口を焼き潰したので、もうくっつくことはありませんけど”
“うあ、あ……くそったれ!殺してやる!”
“は~い、患者さんは車椅子で大人しくしててくださいね。
死ぬまでこの地下壕でお世話して差し上げますから、安心してください。
そうそう、3号室の患者さんにも処置を施す時間ですね。
ワックワクのドッキドキです!”
“待て!待て、このイカレ女!俺の人生を返せぇ!”
“んー!まべぼ!んぐー!”
“はぁ…はぁ…ごめんなさい。あんまりあなたが暴れるんで、
ベッドにテープで巻き付けるしかなかったんです……
もう大丈夫ですから、心配しないで”
“んがー、ふがー!”
“あなたの目、ちょっと濁っているので、処置をさせてもらいますね。
チクッとしますけど、少しの我慢ですから。
最近の注射は針が細くて痛くないんですよ~”
“んー!んー!はぶべべー!”
“うふふ……じっとして。眼球への注射するのは初めてなんです。
わぁ、綺麗な瞳に針が……”
ダァン!
………
「そこで、突入してきた未来機関のエージェントに取り押さえられました。
“処置”自体は適切でした。
脚はガス壊疽を起こしていて、一刻も早く切断しないと命に関わる状態でしたし、
眼球には細菌が侵入し、直ちに薬を直接投与しないと失明するところでした。
……でも、そんな事何の言い訳にもなりません。
患者さん達にそれらを伝えず、身体を失った絶望、恐怖に染まった顔を見て、
私は悦んでいたんですから……!!」
「わかったよ!もういいから!」
そこで強引に彼女の話をやめさせた。罪木さんというより、僕自身のために。
絶望。それが目の前の女の子を変質的異常者に変えてしまうなんて。
ゲーム機の向こうからでも空恐ろしかったのに、
本人の口から真実を聞くと、細かい震えが止まらなかった。
「これが、私の償うべき罪なんです……」
“自分でもわからないんです。私の唯一の取り柄だった、
“超高校級の保健委員”としての能力に、まだしがみついているのか、
心の底から傷ついている人を助けたいのか。そんな事を願う資格すら私にはない“
あの時の彼女の言葉を思い出す。
超高校級の保健委員として使命、自分の抱える罪、方向を誤った欲求。
罪木さんはこんなに重い荷物をたくさん背負ってたんだね……
みんなも黙り込んでしまった。
さっきまでの明るい空気は暗く淀み、皆の呼吸を辛くするものに変わった。
沈黙はなおも続く。だけど、そんな暗闇を打ち破ったのはやっぱり彼女だった。
「みんなー!唯吹の歌を聴くっすー!!
“ハチのムサシは死んだのさ2018 in ジャバウォックアイランド”!
エアギターバージョンでお送りするっす!」
嫌でも澪田さんに注目が集まる。そして彼女は激しく歌い出した。
♪おいらはハチさ 太陽めがけ
空を駆け抜け 急上昇 (Stand by READY!)
いつか アイツの ハートを射抜く
自慢の針が 貫くぜ (Armor Piercing!)
おいらが怒れば Everybody is DEEEAD!!!
“嵐を呼ぶ男”は歌ったことないんだけどな……思わず苦笑いが出る。
でも、沈み込んでいた空気が一気に軽くなった。
澪田さんのおかげで、みんなも過去に立ち向かう勇気を得られたみたい。
「ほら、変態男。気は済んだでしょ。アンタはさっさと一人で帰って!」
「わかってるよ。やっぱり今回はあんまり盛り上がらなかったな。
江ノ島さん、次こそ君を倒せる強者が現れるといいね」
僕は何も答えずに、エレベーターに向かう狛枝君の背中を見つめていた。
彼の姿が見えなくなると、澪田さんも気が済むまで歌ったようで、
オーディエンスに挨拶した。
「みんなありがとう!またこの島で歌えるなんて、正直思ってなかったっす!
唯吹に力を分けてくれた二人、聴いてくれたみんなに、マジ感謝っす!」
ウサミを押しのけ、玉座に立って語る彼女は、本当に活き活きとしていた。
「ここでの生活を楽しんでいいのかは、わからないんすけど、
今の唯吹はメチャハッピーっす!
えっ、アンコール?しょーがねーっすねえ!
それじゃあ、以前も大好評頂いたナンバー、“君にも届け!”」
「「うっ……行こう、行こう」」
澪田さんが頼まれてもいないアンコールに応えようとすると、
みんなエレベーターに殺到する。例のアレか……!僕も逃げなきゃ。
「あ、待つっす!今回は特別にユーロビートVerで……」
諦めた澪田さんが最後にエレベーターに乗り込むと、僕達は法廷から外に出た。
もう入院患者はいないから、罪木さんも一緒にホテルのある第1の島に戻る。
長い道路を歩いていると、彼女が僕の隣に寄って、話しかけてきた。
「江ノ島さん。本当に、ありがとうございました。
私、生きることに少し自信が持てたような気がします。
結局、私が皆さんを信じていなかっただけだったんですね。
だから、あんな馬鹿なことを……」
「ねえ罪木さん」
「はい」
「“ハチのムサシは死んだのさ”だけど、後年になってリメイクされたんだ。
ハチのムサシは生きていて、長い月日を耐え抜き、
折れた剣を振るって風に舞うって内容だよ。
僕は、みんなにも、そうあって欲しいと思うんだ」
「……私、必ず耐えて、いつかは…きっとその時が来るのを待ち続けますね」
「僕も、ここから飛び立てる日を信じて待つよ」
「江ノ島おねぇ!澪田おねぇに変な歌教えないでよね!」
いつの間にか隣にいた西園寺さんから文句が飛んできた。
「新しい音波兵器作られたら、たまったもんじゃないし!」
「やっぱりそんなに凄いんだね……」
澪田さんには内緒にしておこう。ハチのムサシにディスコアレンジも存在することは。
「あと……」
「なあに」
「顔は、大丈夫なの?」
「うん。もう痛みは引いたよ。叩いて悪かったよ。
やっぱり手を上げるのはよくないよね」
「それは……わたしのせいでもあるし?」
「……偉いね、西園寺さんは」
「うっさい、子供扱いすんなー!」
「ごめん、ごめん。でも、本物の僕はみんなより年上なんだよ?」
そんな他愛ない言葉を交わしながら、僕達は夕陽で朱に染まった道路を歩き続けた。
CHAPTER 2 CLEAR
ショクザイ ノ カケラ
ツミキ ミカン ×200
ミオダ イブキ ×150
サイオンジ ヒヨコ ×50 ヲ ゲットシマシタ