東方半鬼伝   作:りすも

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誤字等あればよろしくお願いします。

この作品ほぼシリアスなのでそこんとこご理解ください。


7話

 

 

話は青群が休みを貰って少し経った頃に巻き戻る。

霞と秋の助は楓共に里まで来ていた。

何故かというと、今朝家に慧音が来て『今夜次の長を決めるらしい…。』と言った。

 

現在の長はもう長い事生きており、3人はある程度予想はしていた。

 

霞はちらりと青群は見たが、流石に鬼である彼女をそこに連れていくわけには行かないのだ。

2人は青群に休みをあげることにし慧音と共に里へ降りていく。

 

里の復旧はほとんど終わっており、活気に溢れていた。

ボロボロだった家は新たな木材で作り直され、以前はなかった団子屋や呉服屋など色々な店が顔を連ねていた。

 

 

「だいぶ復旧も終わったんですね〜!」

 

「あぁ里のみんなのおかげだ。」

 

 

それから3人と慧音に抱えられた楓は寺子屋に着き、話を重ねていく。

 

 

「ふふふ〜楓もあと数年したら寺子屋に行かせたいですね〜!」

 

「あぁ大歓迎だぞ。住む場所なら私が用意してやる。」

 

「そうしたら慧音先生も楓のお母さんですね。」

 

 

秋の助がそう言うと慧音は『そうか…母か。』と顔が綻ぶ。

 

それにニヤニヤしていた秋の助だったが、嫉妬をした霞と慧音に袋叩きにされる。

楓はボロボロになった父をペちぺちと叩き、そんなわが子を抱きしめる秋の助なのであった。

 

 

「まだ言葉を発さないのか?」

 

「そろそろだとは思うんですけどね…。楓の最初の言葉はなんなんだろうね。」

 

「それはもちろん!『まぁま』でしょう!」

 

 

ドヤ顔で胸を張りそう言う霞を微笑みながら撫でる秋の助。

霞は『なんで!?』と慌てるが、横を見ると慧音も微笑んでいた為、更に首を傾げる。

 

実は2人はただドヤ顔の霞をからかいたかっただけなのだが…。

 

 

「そういえば、先生は次の長が誰だか知っているんですか?」

 

「ん?まぁ予想くらいは出来るな。

現長の息子か自警団のリーダーだろうな。」

 

「どんな人なんです?」

 

「あぁ、息子の方は異常な妖怪嫌いだ。昔山に入って殺されかけたらしい。

まぁ頭の方はよく出来ているから長としては問題ないだろう。

 

リーダーの方は正義感の強いやつでな第1に里の人のことを考えるやつだな。腕っ節もあるし、ここの人からの支持もあるからな私としてはこっちを押したいな。

 

前者はお前達にとって不利だろう?」

 

 

霞と秋の助の家には妖怪であり、その中でも人間の恐れる鬼である青群が住んでいる。

里の人間は前回の妖狼の件で彼女の事を嫌ってはいないようだが…

 

慧音から聞くと、自警団のリーダーは彼女の事を尊敬しているらしく、『俺もあの方のように皆を1人で守れるような男になって見せます!』と言っていたらしい。

 

 

「まぁ別にどっちがなっても私達は構いませんよ!あの家からは動かない気ですから!」

 

「まぁそうですね。

もしも前者がなれば楓はうちで教えることもできますし。それに青群さんもいますから、大体のことには困らないでしょう。」

 

「心配はいらないようだな…。ただ楓がこちらに来れないのは悲しいが…。」

 

 

そんな風に話している間に総会の時間が近づいていた為、霞達は寺子屋を出て総会場所へ向かう。

 

外へ出るとかなりの人が移動を始めており、長候補の1人である自警団のリーダーに出会ったが、少し挨拶をしただけで彼は去っていった。

秋の助は『緊張しているのかな?』と思ったが、口には出さずそのまま向かうことにした。ただ慧音だけは何かを察した様な顔をしていた。

 

 

 

4人は総会場に着いたが、そこはたくさんの人で埋め尽くされていた。

総会場は里の大広場で、真ん中には高く建築された木造の壇があった。

 

会場はかなりの賑わいを見せており、その話題は次の長の候補の話であり口々に自警団のリーダーと長の息子の話が飛び交う。

 

すると賑わいがピタリと止まる。

 

霞達が壇上を見るとそこには現長がおり、その壇の下には自警団が勢揃いしており、その中にはリーダーもいた。

 

それを見た人達は『やはりリーダーが次の長か!?』とヒソヒソと話し出す。

現に霞と秋の助もそのような思いを抱いていたが、慧音の顔は少し優れないようだった。

 

 

「静粛に!!!」

 

 

現長の声に皆が黙る。そして次の言葉を胸をドキドキとさせながら待つ。

 

 

 

「これより、次の長を決めようと思う!

その理由としては、私もそろそろ年齢的に限界なのでな…。

長についてはこちらが事前に決めておいた。」

 

 

コツコツと壇上に上がる音がする。

 

 

壇上に現れたのは自警団のリーダー、ではなく。

 

 

長の息子であった。

 

 

壇上に現れた彼に顔を青ざめさせる霞と秋の助。慧音は『やはりか…』と呟く。

 

 

「次の長となった勘助という。

今、里の脅威として存在し続けている妖怪達。誰もが1度は彼等に恐怖したことだろう。

命を奪われそうになったもの、大事な人を奪われた者…私もそんな人の1人だ。

 

そして、前回の妖狼の襲撃によって多くのものが心にかなりの深手を負ったことだろう。

故に!私は皆を救いたい!

 

私が長になったからには皆を妖怪に怯えさせぬ生活を手に入れて見せよう。

その為には皆の協力が必要だ…そのための力を私に貸してくれ。」

 

 

『おぉ!!!』

 

 

会場に集まった人達は大きな歓声をあげる。壇上の彼はニヤリと笑を見せるとすぐさま降りていく。

 

 

「以上で総会を閉会とする!皆のものは新たな長を支えるように務めよ!」

 

 

その声に会場から去っていく人達。『やはりかぁ』『リーダーが良かったなぁ』という声が口々で放たれる。

慧音は手に抱えられている楓に『すまないな』と呟き会場を去っていきそれについて行く霞と秋の助。

 

しかし、自警団のリーダーがそんな彼女等を引き止める。

彼女等はその声に振り向くとバツの悪そうな顔をしたリーダーがおり、何事だ?と首を傾げる。

 

 

「勘助様が貴方達をお呼びです。ご案内しますので付いてきてください。」

 

「む?何の用だ?

私だけでなく秋の助や霞もなど…」

 

 

慧音が呼ばれるのは里で1番の年長者であり、彼の先生でもあったのでまだ分かる。しかし、霞と秋の助は彼との接点が無い。

 

自警団のリーダーは『私もただ連れてこいと言われただけなので…』と言ったが、その目は怒りに震えており何かあったのだろうと慧音達は付いていくことにする。

 

 

リーダーが止まった先は長の家であった。かなり豪華な作りであり、木材がかなり古いことから前回の襲撃で壊れなかったのだろう。

 

 

 

「中にて勘助様がお待ちしています。」

 

 

リーダーがそう言って家の戸を開ける。そうすると彼は『楓様は私が預かっておきます』と言うため、楓を彼に預けて3人は中へ入っていく。

 

すると中にて女中に案内された座敷には1人、先程長となったばかりの勘助が座っていた。

 

 

「ようこそおいでくださいました。総会のすぐ後で申し訳ないと思っていますが…。

ささ、どうぞ座ってください。」

 

 

勘助にそう促され彼を向いて座る3人。

よく見ると座敷の障子の裏には人影があり、護衛が何人もいることが分かる。

それを知った秋の助と霞は姿勢を整え息を呑む。

そんな2人を尻目にお茶をすする勘助、そして3人へ顔を向ける。

 

 

「さて、少し昔話でもしましょうか。

 

私は子供の頃、虫が大好きでしてね。よく周辺の森へさがしにいっては友に自慢したものです。

 

しかしね、ある日森に大きな虫がいたんですよ。

私は『これなら友達もびっくりすることだろうと』当時一緒にいた妹とその虫を追いかけたんです。そこが妖怪の山への入口だとは知らずに…。

 

そして、やっとこさその大きな虫を捕まえのですが、顔を上げるとニヤニヤと気色の悪い笑顔を浮かべる天狗がいました。

必死で妹の手を引き逃げましたよ。ですがね、人間の速さというものは天狗に比べるとたかが知れているんですよ。

 

そして捕まると思った瞬間、妹は私の背中を押したのです。彼女は頭の良い子でした、このままだと2人とも助からないとわかっていたのでしょう。

 

天狗は妹の首をつかみそのまま絶命させました。私は涙を流しながら逃げましたよ。

そして何とか逃げ切った私は決めたんです。

『妖怪に勝つための知恵を手に入れようと。』そうして全力で知恵を磨き今に至るというわけです。」

 

「で?何が言いたい?そんな長い話をしておいてただ聞かせたかった訳ではなかろう?」

 

 

慧音が勘助を睨みつけそう言うと彼は口角を上げて少し霞を見て口を開き出す。

 

 

「言ったでしょう?私は皆を妖怪の脅威から救うと。」

 

「それが本当に出来るとでも?奴らと人間では力が違いすぎる。」

 

 

妖怪と人間の差というものは大きく、強力なな妖怪ならば数名、いや1人でで里を滅ぼすこともできるのだ。

現に3人はそれを知っている。前回の襲撃の際、どうにもならなかった戦況を1人でひっくり返した大鬼がいるからだ。

それ故に彼の願いは無理だろうと思う3人だったが、それでも彼の口角は上がったままだった。

 

 

「えぇ、もちろんそれは無理でしょうね。正面から戦うのでは私達に勝ち目はない。

 

では質問ですが、今この里を妖狼が襲わないのは何故でしょうか?」

 

 

前回の襲撃以来、妖狼は里に姿を表していない。それは何故か…。

 

 

「門の前にある、あの時の巨狼のく、び…

 

まさか…」

 

「えぇ、その通りです。この方法なら人でもできるでしょう?」

 

「しかし、妖怪の山の奴らに対して効くような妖怪を私達が倒せると思うか?」

 

 

勘助は巨狼の首のように強力な妖怪の死体を里の前に置くことで、妖怪に里の脅威を訴えようというのだ。

そんな強力な妖怪を人間が退治できるはずもない…

だが、彼には1人思い当たる妖怪がいた。

 

 

「いるじゃないですか。

霞さん、秋の助さん貴方の1番近くに。」

 

「え?」

 

「ですが、慧音先生は何年も里を支えたことですからね。あなたを殺しては里からの反感はおかしい。それに貴方は私の先生でもありますからね。

 

 

 

だから、もう1人の妖怪を狙います。」

 

「貴様…!?」

 

 

そう、彼は霞のよく知っている妖怪、それもかなり強力な妖怪である青群を刺していたのだ。

それに対して、頭に血の昇った慧音が彼に向かって身を乗り出す。

 

しかし、それを霞の手が阻む。

 

 

「で?私達に鬼を倒せる力があるとでも?」

 

 

秋の助は冷静にそう言うが、その目は怒りに満ちていた。

霞に関しては平然としつつも手を強く握りすぎて血が出ている。

 

 

「えぇ、無いでしょうね。

ですがあの鬼は貴方達ととても仲が良い様でしたね。同じ食卓で酒を飲み交わし、盛り上がるほど…

 

 

これをどうぞ。」

 

 

勘助は女中を呼ぶと透明な液体の入った瓶を前に出す。

この時点で3人はそれが何なのか察しはついていたが、あえて尋ねる。

 

 

「それはなんですか?」

 

「分かっているんでしょう?

 

 

 

毒です。

 

天狗くらいならば殺せるでしょうが、鬼ならば体が長時間痺れるくらいでしょう。

いくら鬼でも心臓を刺されれば死ぬでしょう?

 

だから、これを飲ませて動けない所で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『奴を殺してください。』」

 

 

 

その言葉に秋の助と慧音は身を乗り出し、彼をぶん殴ろうする。

しかし、そうする前に霞が勘助の前にいた。

 

 

 

「その前にお前を殺すぞ?」

 

 

霞は普段ではありえないようなドスの効いた声を出し勘助の、胸ぐらを掴む。

彼女からは殺気が溢れ出ており秋の助と慧音も汗が止まらない。

霞にとって青群は愛する旦那を助けてくれた人であり、自分達をいつだって守ってくれて、更に家族である。

そんな、彼女を殺せと命令する勘助を許すわけにはいかなかった。

そして彼の首へその手を持っていこうとした瞬間…

 

 

「でもいいんですか?

 

貴方達の子供はこちら側にいるんですよ?」

 

 

彼がそう言うと障子が開き楓を抱えた自警団が現れる。リーダーは『本当のすまない…』と言いつつ腰に刺さる剣を抜く。

その光景に霞は胸ぐらを掴んでいた手を話す。

 

 

「勘助、貴様どこまで外道になった!」

 

「何を言っているんです?私はいつだって妖怪を殺すために生きてきましたよ。

 

その為の知恵を教えてくれたのは貴方です。

本当に感謝しているんですよ。

 

 

さぁ、受け取ってくれますね?」

 

 

勘助は口角を上げて瓶を差し出す。

それを震える手でそれを受け取ろうとする霞。彼女の目にはまだ殺気が篭っており今にでも彼を殺しそうであった。

後ろにいた秋の助も目を伏せ座敷の畳に爪を立てる。

 

そんな2人を見て力ずくでも楓を取り返そうとする慧音だったが秋の助がその手を止めることで、再び座る。

 

 

「慧音先生いいんです…楓の、為です。」

 

「霞…。」

 

 

そして瓶を受け取る霞。それに満足したように笑をこぼす勘助は楓を3人に返すように命じる。

 

 

「明日の夜。」

 

「え?」

 

「明日の夜作戦を実行してください。その際私たちも出向きますので、分かりましたね?」

 

「はい…。」

 

 

勘助はそう言うと座敷を出て行く。それについて行く女中と自警団。

そして残された3人は案内役の女中に出口までつられて家を出される。

 

 

「本当に…本当にすまない!」

 

「いや…いいんです…。」

 

 

必死で謝る慧音に首を横に振る霞、秋の助も同様である。

秋の助は楓をぎゅっと抱きしめる。その様子に慧音は目を伏せる。

2人目の親友が自分の教え子によって殺されようとしているのだ。

霞は瓶を地面に置くと慧音へ向かって歩き出す。

 

 

 

そして慧音の前に立つと『ある頼み事』をする。

 

 

 

「っ!?本気か!?」

 

「はい。よろしくお願いします…。」

 

 

霞は地面を頭につけて頼み込む。秋の助もそれに続いて楓を抱えたまま頭を下げる。

その様子に慧音は目を見開く。

 

 

「頭をあげてくれ!

分かった…気は乗らないが…」

 

「慧音先生には最後までお世話になりますね。本当にすみません…。」

 

「別にいい…。早く帰ってやれ、青群もお前達がいないと退屈だろう。」

 

 

慧音がそう言うと霞と秋の助は『確かにそうですね』と笑い合う。

そして、慧音にもう一度深く頭を下げる。

 

これまでの感謝を込めて…。

 

 

 

 

 

家に帰った2人と楓は戸の前で寝ている青群を見つける。

2人は少し悲しそうな顔をして、重い彼女を引きずって家の中に入れる。

いつもならば起きるであろう彼女が起きない様子を見て、明日の夜を思い浮かべる。

 

そして彼女を敷布団まで運ぶ。

 

グゥ〜。

 

霞のお腹の虫が鳴く。それに対して顔を赤らめること無く調理場に向かう霞。秋の助も『手伝うよ』とついて行く。

 

 

「お腹すいたね〜

 

ねぇ…何食べたっ…」

 

 

テーブルの上に置かれた3つの御盆を見つける2人。その上には乗せられた豪華な料理。

『ご飯ありがとう、美味しかったよ。』

置き手紙を見て、少しの間目頭を押さえる2人。

すぐに楓を持ち上げ椅子の上に座らせ、自分達も座る。

そして、冷めた料理を食べ出す2人。そんな2人を見て楓もご飯を食べ出す。

 

 

「ふふっ本当に何でもできるんですね〜」

 

「そうだな…強くて、優しくて、頭も良くて、料理もできる。そんな彼女に僕達は惹かれたんだろうね。」

 

 

「ふふっそうね…。ねぇ秋の助は青群さんと生活してて幸せだった?」

 

 

その質問に対して秋の助は微笑みながら霞と楓を見つめる。

 

 

「もちろん、ずっと幸せだったさ。」

 

「私も!」

 

「うー!」

 

 

3人の食べ終わったテーブルの後には1 枚の置き手紙が残されていた。

 

 

 

 

『ありがとう』と。




勘助


里の長の息子であり、次の長に任命された男。妖狼の襲撃の際は妖怪を憎んではいたが、家から出ることは無かった。
そして復旧作業の際に見つけた青群を見て彼女を殺す作戦を練り上げる。
その為に何度も自警団を霞達の家に送っていた。

里の人からの評判は悪く、『いつか誰かを殺しそう』とまで言われている。
容姿としては長の息子とはいえかなり年をとっており、いつも黒い服を来ている。



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なんかあれな予感しかしませんね…


最後まで見て頂きありがとうございました。
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