前に書いたワールドトリガーの小説で綾辻さんの妹についてなんですけどまた書きたくなってきましたね…。
翌朝、青群達は朝食を食べていた。早くに起きていた彼女が置き手紙を見て微笑んでいたことは霞達は知らない。
彼女等は昨日の件もあり、中々起きる事が無かった。
その為青群は楓を抱き上げ朝食を作ることにした。そんな自身に昔を重ねていたことは言うまでもない。
「すみません〜寝坊して、挙句の果てには私の仕事を青群さんにさせちゃって…」
「いや、いいんだ。私がしたくてやったことだ。」
「あはは、料理は霞よりも美味しそうだけどね…痛っ!!!ちょ、やめて!!!」
霞は秋の助の脛をテーブルの下から蹴り続ける。そんなふたりの様子を青群は『全く…ふふっ』と笑いながら見つめ、楓はもう食べ始めている。
「あらら、楓ちゃん先食べちゃいましたね…。私達も食べましょうか。」
霞がそう言うと青群と秋の助は『そうだね(あぁ)』と言い3人は手を合わせる。そんな光景に楓は首を傾げる。そして自身も手をペチンと合わせる。
『頂きます!』
「うー!」
自分達の真似をしようとする楓に微笑みを隠せない3人。そして一斉に食べ出す。
秋の助と霞は『美味しい!』と声を上げる。そんな2人に青群は『ふふっそうか。口に合って良かった。』と自身も食べ出す。
「青群さん、元いた場所では料理作っていたんです?」
「あぁ母と一緒にな。いつも作っていたよ。」
「なるほど…」
彼女の言葉に声を詰まらせる2人。以前、彼女ご里に帰ってきた時あんなに雰囲気が変わったのはその母が亡くなってしまったからだろうと察する。
そんな2人を見て少し驚き、微笑む彼女。
「いや、確かに悲しかったが…それをいつまでも引こずる事を母は望んでいないようでな。それにこれから訪れる色々なことをいつか伝えなければならない。
だから、母の死は私を強くしてくれたと思っているよ。」
「いい母親だったんですね…。」
「青群ざぁん!」
霞は椅子を立ち全力で青群に抱きつく。そんな彼女に青群は全くと頭を撫で始める。
楓はそれを羨ましそうに『うー、うー』と青群に向かってを伸ばす。
「まぁま!うー!」
「「「っ!?」」」
楓は言葉を発した。
ソレは霞に向けてなのか青群に向けてなのかは分からないが。
秋の助と青群は驚きを隠せず持っていた箸をテーブルに落とす。
そして、霞は小刻みに震えながら楓を指さす。
「聞きました?」
「あぁ。」
「秋の助!やっぱり私の予想的中よ!」
霞はそう言って秋の助の料理からひと品を奪い取り口に入れる。
対して彼は『あっ!?』と驚いたが、彼女に奪われてしまってはもう遅いと諦める。
がしかし…
「まぁ今のは青群さんに行ったのかもね〜」
「なっ何おう!」
「全く…秋の助、私を巻き込むな…。」
青群がそう言うと彼は『あはは、すみません』と軽く頭を下げる。そんな彼と楓に『どっちに言ったの!!!』と聞き続ける霞を見て青群は再び箸を取り食事を再開する。その顔は終始にやけ顔だったが…
食事を終えた青群は皆の食器を洗おうとしたが、霞と秋の助に『それは流石に自分達がやります!』と仕事を取られ、現在楓を抱いている。
「2人は今日も御札作りか?」
「いえ、今日は青群さんに頼みたいことがありまして。」
「頼みたいこと?」
青群はグイグイと詰め寄る霞とそれを後から穏やかな顔で見つめる秋の助に首を傾げる。
霞は『出来たらでいいんですけど…』と少ししゅんとするが、青群が『まぁ言ってみろ』と言うため、なにか決心をしたように彼女に目を向ける。
「青群さんの家に連れて行ってくれませんか?」
「…。
ふふっ…あはは!そんな事か!
先程言っただろう?私は母の死を肯定的に捉えているんだ。そんなに気にするな。
家の件だが別にいいぞ。連れて行ってやる。」
「本当ですか!?」
霞はまだしも秋の助まで食い気味に聞いてくる。
青群はそんな2人に『あぁだからそんなにくっつくな』と2人を自分から引きはがす。
青群は母の死を肯定的に捉えているとは言っているがまだ少し未練は残っており、地底に行く前に1度は言っておかなくてはと思っていたのだ。
「だったら早く準備しないとですね!!!」
「あぁ!!!霞!着替えはどこだ!?」
慌てて着替える2人に、青群は楓と『全くお前達の親はどこか変わっているな』と話す。そんな彼女に対して楓は「まぁあ!」と言い続けるのだった。
「さぁ行きましょう!」
「本当に早いな…」
今にも外に出ていきそうな2人に楓を預けて青群は赤色の着物を母とお揃いの群青色の着物に着替える。そしてその上から自身の宝物である羽織を羽織る。
「ん?どうした秋の助。」
「いや…もう慣れたんですけど…
僕も男なので目の前で着替えるのは…」
「ふふっそうだな…。霞、お前の旦那が私を性的な目で見るんだが…。」
「うがー!よくも青群さんを!」
霞は秋の助を襲い出す。青群はその隙に自身の服装を整え戸を開く。
それ見て痴話喧嘩をやめて、ついて行く2人。
青群が妖怪の山に入ると以前よりも血の匂いがきつかったので楓と2人に『私から離れるなよ…。』と告げて山を登っていく。
登っていくうちに自分達に刺さる視線がきつくなり、少しオドオドし始める秋の助と霞。
その為の少し殺気を放つ青群、彼女は自分達に視線を向けているのが天狗達だと気付いているため、少しでもさっきを出しておかないと襲われかねないのだ。
しかし、覚えのある匂いがしたのでその匂いのするほうを向く。そこにいるのが白狼天狗ではなく烏天狗だと分かると彼女は少し微笑む。
「山の巡回は白狼天狗ではなかったのか?」
「あやや、気付いてましたか。そうですけど、見知った顔が人間をつれてわざわざ山まで来てくれたので顔を出そうと。
あっ白狼天狗の皆はいつも通りの巡回に戻ってください。ここは私が対処しますので。
で、青群さん今日は何用です?」
「鬼の元集落に行こうかと思ってな。まだ残っているか?」
「なるほど、まだ大丈夫ですよ。あと数週間したら天狗がそちらに移る予定ですから。」
天狗は鬼の元集落に拠点を移すらしい。その為、天狗達は気が立っているのだという。
血の匂いが濃いのもその為か…と青群は1人納得する。
そして、文に別れを告げると鬼の集落へ向かう。
それまでに何度かまだ視線を感じたが弱い妖怪のようで彼女は無視をして進むが、秋の助達は少し震えている。
鬼の集落に着いた秋の助と霞は驚愕する。あの鬼が1人もおらず、誰もいない集落がぽつんと残されているのだ。
「言い忘れていたが、鬼はこの地から去って地底に行ったぞ。」
「「聞いてません!」」
青群は『ふふっそうか。』と微笑むと鬼の集落に足を踏み入れていく。そこには沢山の闘いの後があり、霞達は改めて鬼の恐ろしさを認識する。
「ここまで来るのにかなりの量の妖怪に狙われていただろう?
私達、鬼が狙うのはその妖怪達を掻い潜りここまで来た強者と闘い、命をかけるらしい。
まぁ普段日頃から同族で闘っていたんだが…。
2人はここまで来たんだからわたしと戦う権利があるが?」
「えっ遠慮しマース。」
「お…同じく…。」
青群は『冗談だ』と言うと再び足を進める、そんな彼女に胸をなで下ろす2人。
彼女は1件の家の前で止まる。
そして『着いたぞ』と言うと戸を開けて中へ入って行く。
中を見ると自分たちと余り変わらない様子に少し拍子抜けをする2人。
対して青群は中にあるベッドへ座り込む。
「この家にはベッドと敷布団が1個ずつでな、いつも母とジャンケンをして誰がベッドで寝るか争っていたものだ…。」
「ふふっ意外と子供っぽいところあるんですね〜。」
そう言って家の中を歩き回る2人。楓は青群の腕の中で静かに眠っており、彼女は起こしてはまずいとベッドから家の中を見回し物思いにふける。
そうしてると霞が『あっ!?』と大きな声を出して青群の元へ走ってくる。
「青群さん!この羽織って!」
「あぁ私が昔着ていたものだな。ここに置いてきてしまっていたのか…。
ん?欲しいなら勝手に持っていくといい。私の家族であるお前達が使うならば母もあちらから喜ぶことだろう。」
「本当です!?ありがとうございます!」
霞は嬉嬉としてその羽織を着る。そして、『お揃いです!』とニコニコと青群の隣に座る。
「それで私の家に着ようと思った理由はなんだ?」
「それは霞が『青群さんが私たちに出会う前のことが知りたい!』と言って聞かなかったんです…。まぁ僕もそう思ったんですがここまで来るのがきついとは…」
家の中を大体見終わった秋の助が答える。対して青群は『言ってくれればその場で話したのだがな…』と言うが、霞が『実際に見に行きたかったんです!』と言い張る。
「まぁでもここでの青群さんは幸せに暮らしていたみたいで安心しました。」
「ふふっそうだな。まぁその裏には色々とあったんだが…
私がお前達を助けている理由はな、ただ私の境遇と似ていたからだ。」
「似ている…ですか?」
「あぁ私は昔を半妖だからと同族から気色悪がられていたんだ。まぁそんな私を救ってくれた奴らがいたんだが…」
それを聞いた秋の助は『なるほど…』と頷き、霞は『でも、青群さんにそんな友がいて良かったです!』とニコニコして彼女に抱きつく。
そんな母親の行動に目を覚ます楓。そんな2人の頭を青群はずっと撫でていた。
そうしていると、当然霞は顔を上げて青群に向かって『青群さんのお母さんの墓参りさせてもらえませんか?』と言う。
その言葉に青群は母が死ぬ前に1度は彼女等に会いたいと言っていたと思い出す。
「あぁもちろんだ。実を言うと母もお前達に会いたがっていた。」
青群がそう言うと秋の助が『青群さんの母親ということは僕達の母親ですね。』と言うため、青群も『母も同じようなことを言っていたぞ?』と微笑む。
そして、ベッドから立ち上がり我が家を後にする青群達。彼女は心でもう戻ることのない我が家に別れを告げていた。
青群が止まった場所はいつか3人で訪れた楓の舞う修行場所。
霞はその中で小さな墓石を見つける。その後ろには楓の木々が並ぶ中、唯一大きな切り株がありその下には楓の葉のカーペットができていた。
「もしかしてここですか?」
「あぁ正解だ。私の戦友が建ててくれた母の墓だ。
凛蝶さん、3人を連れてきましたよ。」
突然の青群の敬語に目を見開き驚く2人。楓は自分の名のつく葉を掴もうと秋の助の腕の中で手を伸ばしていた。
そして霞はぴょんと跳ねるように墓の前に座り込み手を合わせる。続くように秋の助も手を合わせる。
2人が各々の思いを凛蝶へ向け立ち上がろうとした瞬間、青群が2人の後に立ち目を閉じる。
「お久しぶりです、凛蝶さん。貴方が言った通り2人を連れてきましたよ。
貴方はこの2人に対してどう思うでしょうね…あなたの事です、『元気な子ね』や『賢そうな子ね』とでも言うでしょうか?
貴方を亡くしてからというものの、やはり私は運がいいと思います。こんな楽しい2人に会えたのですから。貴方の人生の延長線、私はこの3人と一緒に生きていきます。
2人が亡くなるまで、楓が立派に成長するまで…。
まぁ最後は勇儀たちと一緒になるでしょうが…この幸せな一瞬を必死に生きていこうと思います。
ふふっ少し長いこと話して貴方も疲れたでしょう…
それでは、また来ますね。」
そう言うと青群は2人に『行こうか』と言って楓を腕に抱え山を降りていく。そんな彼女の後ろを歩く2人は何故かずっと下を向いており、彼女の羽織の袖を握っていたので『ふふっまるで子供だな』と鈍感である彼女出会った。
彼女等が去ってもう1人烏天狗がその墓の前で手を合わせたことを青群が知ることはなかった。
家に帰った頃にはもう日は沈んでおり、霞と秋の助は『朝食は作ってもらったので今回は私たちが作りますね』と言い、2人で調理場へ向かう。
青群はその間、かえでと外に出て夜景を眺めていた。
楓は目に見える綺麗なものに対して反応するようで、星を掴もうとずっと上に手を伸ばしていた。彼女はそんな楓を見て『流石に届かないぞ』
と微笑み楓と共に星を眺める。
そうしているうちに霞が青群達を中へ呼ぶ。
彼女等が中へ入ると何故かいつもよりも豪華な料理が並んでいた。そんな光景に驚く彼女だったが楓を椅子に座らせると、自身も座る。
霞は皆が座った事を確認すると手を合わせる。
そして朝と同じように『頂きます』と言い、食事を始める。
その日の彼女等はいつも以上に盛り上がった。青群が昔話をし、秋の助の惚気話に霞が顔を赤らめたりして3人の笑顔が耐えることは無かった。
「お酒入れますね。」
霞がそう言って瓶を持ち出すと青群の眉が少し上がる。
「ふぅ…ようやく私を殺す気になったか…。」
「「…え!?」」
当然そう言い放った青群に『どうして?』と言った表情をする青群。
そもそも身体能力が優れている鬼は嗅覚も優れており青群は起きた時から瓶の中に入っている毒に気づいていたのだ。
それに気づいてから青群は自分が殺されるのはいつかと待っていた。
それを聞いた2人は驚き、行動も停止する。そして少し経って彼女等は2人で顔を見合わせて笑う。
秋の助は楓を敷布団へ移動させ眠ったのを確認すると再び2人の元へ戻る。
霞は盃を3つテーブルの上に置き、便の中身を注ぎ出す。
「そう言えば青群さんと会ってから色んなことがありましたね〜
私が土下座したり、妖狼と戦ったり〜」
「出会いは僕が殺させかけたところを助けてもらったんですけどね…。あはは、その節はどうも…。」
「そうだな…私はお前達と共にいられて楽しかったよ。
私は運がいいとつくづく思う。」
3人は思い思いのことを語り出す。そして、盃を手に持つと笑顔で顔を見合わせる。
『乾杯!』
3人は一気にその中身を飲み干したのであった。
まぁ文章的に考えて次の展開はすぐに読めると思いますが、お付き合い下さい。
この小説は完結まで行っても原作には追いつきません…まぁそれでも良い方は引き続きお付き合い下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。