東方半鬼伝   作:りすも

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誤字等ありましたらよろしくお願いします。


今回は戦闘展開が主になります。
作者自身の結構苦手な部類なのですが頑張りました。



2話

翌朝、山の四天王の星熊 勇儀が山の鬼を集め出す。

山の鬼たちは『何事だ?』と大慌てで家から飛び出していく。

 

凛蝶、青群も一緒でほかの者達とは違いゆっくりと話しながら歩いていく。

 

いざ集合指定場所につくとかなりの量の鬼がおり、皆口々に『何のなさるのだろう?』『新たな四天王の誕生か?』などを話す。

そして、凛蝶、青群を見つけると話題は2人への陰口への変わる。

 

 

『よく顔を出せるな。』

 

『半端鬼が来るところじゃねぇっての。』

 

 

そんな声が所々から聞こえ流石に青群も頭にきて拳を思いっきり握りしめる。

このまま暴れてやろうか?とも思ったが、凛蝶がそれを望まないようだったので握りしめるだけで我慢する。

 

そうしているうちにドカドカと勇儀が集まった鬼達の前へと立つ。

その姿に先程までのざわつきは一瞬で消え、代わりに緊張感が走る。

勇儀の後には同じく四天王である『伊吹 萃香』が腕を組んで佇んでいる。

 

 

「今日皆に集まってもらったのはアタシの勝負を見守ってもらいたいからさ。

 

久々に本気を出せそうでね、ワクワクしているよ。」

 

 

そう言って殺気を放つ勇儀に集まった一同は息を呑む。

内心『自分か?』などと期待して胸の鼓動が収まらない者もいる。

 

対して凛蝶、青群は顔にそこまで変化を見せず、萃香に関しては少しニヤついている。

 

 

「あぁもちろん命をかけた勝負だ。

そこまでしないと面白くない。アタシは四天王をかけるよ。

ほらさっさと出てきなよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縁下 青群。」

 

 

指名をされたのは半端鬼『縁下 青群』。そもそも半端鬼として名が通っている青群の名を知るものはおらず『誰?』といった反応をするのが多数。

そして、動き出す青群に目を見開いて驚く鬼達。

この間まで蔑んでいた半端鬼が山の四天王と勝負するというのだ。

 

 

「あれだよ。

どうせ、勇儀の姉さんが半端鬼を殺すためにしくんだ勝負だよ。」

 

 

鬼の中から聞こえた声に皆が口々に

『そうだ!』と叫び。

『勇儀様!やっちまってください!』というものまで現れる。

集団全体は半端鬼アウェーであり、そんな様子に萃香は無表情で腕を組み、凛蝶は奥歯を噛み締める。

 

 

「クソ鬼共が…。」

 

 

凛蝶が我慢ならず出ていこうとしたその時。

 

 

 

 

「そんな半端鬼相手、ササッと決めてくださいよ!勇儀様!

 

 

「あ?うるさいよ。」

 

 

ぐぁっ!!?」

 

 

青群をバカにしようとする鬼が1人吹っ飛ぶ。あとに残るは勇儀の右拳。

一同は唖然とする。

その光景に萃香は再び笑顔になり、凛蝶は驚いているがその目には嬉しさが滲み出ている。

 

 

「アタシはねぇ、別にこいつを殺すために勝負をするんじゃないよ。こいつは強い。精神的にも!身体的にもだ!

文句があるならアタシに言いな!

 

そして…今日私の全力を持って戦いたいと思えたんだよ。だから勝負するのさ。」

 

 

その言葉に静まり返る一同。

半端鬼が自分達よりも強い、そんな言葉信じられないとも思いつつも勇儀に文句は言えないためそのまま押し黙る。

 

青群は勇儀の言葉に足取りは誰よりも軽く、緊張感は誰よりも高く彼女の前に立つ。

 

 

「よし、ようやく来たかい。

 

どうだい?今の気分は。」

 

「あぁ…なんとも言えないな。

でもこれから奴らを見返せると考えると少し期待に胸が膨らむね。」

 

「へぇ…もう勝てる気なのかい。

お前も気付いてる通り、修行でのアタシは本気を出していなかったよ?」

 

 

自信満々に言い放つ青群に対して勇儀も笑顔でそれに応える。

 

青群も勇儀が本気を出していないことは知っていたがそれでも簡単に負けはしない、むしろ勝ちの目もあると考えていた。

 

凛蝶、勇儀との修行を思い返しその気持ちはさらに確信めいたものになっていく。

 

 

「じゃあ始めようか。

 

アタシは妖怪の山の四天王、星熊勇儀

使う能力は『怪力乱神を持つ程度の能力』だ!」

 

「自分の名は縁下 青群、皆に知られる『半端鬼』。

 

さぁ!山の四天王、尋常に勝負!」

 

 

青群、勇儀の2人は互いに名乗りを上げる。

そして次の瞬間2人の拳がぶつかり合う。

その衝撃に鬼達も身が震える。

 

『あれは半端鬼ではないのか?』

 

そのような疑問が皆の頭に浮かぶ。

 

 

『怪力乱神を持つ程度の能力』

つまりは凄い怪力を持っているということだ。

『能力なのか?』と言われると微妙ではあるが、確かに勇儀の怪力はほかの鬼の何倍も強い。

 

そんな彼女と真正面から打ち合う青群。

どちらが押されるなんて目に見えている。

 

 

「ほらほら!どうしたんだい、そんなもんじゃないだろう?」

 

 

勇儀は押され始める青群を逃がさぬようにラッシュをかける。

 

それを黙って受ける青群ではなく、腕や脚など様々な所を使って勇儀の攻撃を逸らしていく。

それに目の前の鬼達は唖然。

 

対して萃香は興奮が抑えきれない様子で今にも動き出しそうである。

 

ドン!

 

青群に一撃が入った…と思われたが彼女はそれを両腕で防御をし、わざと勇儀から距離を取るように受ける。

 

勇儀は逃がすまいと猛スピードで追っていく。そして目の前に青群を捉え右拳を彼女に向かって放つ。

 

しかし、その拳は青群に当たることは無く彼女の体の右側へとずれる。

青群は前に勇儀と戦った時と同じように向かってくる腕の手首に自身の左腕を全力で打ち込む。

 

その威力は前回とは比較にならず、勇儀はそのまま体制を崩して青群に向かう勢いは止まらない。

その瞬間を青群は見逃さず一瞬で勇儀の懐へと入り込む。

 

 

「…がら空きだよ。」

 

 

バァン!!!!!

 

 

彼女が放った渾身の右ストレートは勇儀の頬へ綺麗に入り、彼女はそのまま民家を1つぶち壊しながら吹っ飛ぶ。

 

 

「すげぇ…。」

 

 

見ていた鬼の1人がそう呟くと、周りの鬼たちはこれまでの罵倒が嘘みたいに

 

『すげぇぞ!片角!』

 

『これマジでやっちまうんじゃねえか?』

 

『いけぇ!縁下!』

 

と青群を応援する。凛蝶はその様子に青群を心配し顔を遠目から覗く。

 

その顔は今更応援をする鬼たちへの失望かと思われた。案の定青群は目を見開き驚いていたがその目は少し潤んでいた。

 

青群は今まで集落のだれからもおうえんされたことがなかった。

そのためこの状況は彼女にとって最も心にくるものだった。

 

 

「あぁ…お前は鬼達を憎んではいなかったんだな…。

 

ただ認めて欲しかったんだな。」

 

 

か細く小さな声で吐き捨てる凛蝶。

青群の修行に凛蝶が付いてこなくなっても、彼女はひたすら自分も磨き続けた。

 

それは報復のため…。

 

凛蝶はそう思っていたが、1人で立っている青群の姿を見て『それは違った…』と思っていた。

 

 

バキ、バキバキ

 

 

「何勝った気でいんのさ。アタシはまだ死んでいないよ、ほら!まだまだ行くよ!」

 

 

民家だったものの下から出てくる勇儀、その目は興奮が抑えきれないといった様子で今にも突撃をしてきそうである。

 

ダッ!

 

青群、勇儀の両方は同時に飛び出す。

またも両者の拳がぶつかり合うか?と思われたが勇儀は殴りかかろうとしてくる青群の拳を手で抑える。

 

 

「っ!?あぁあぁぁあぁぁ!!!!!」

 

 

それなら逆の手でとと左腕を動かそうとする青群だったが右拳に走る激痛に顔をしかめる。

すぐに確認をするため目を向けると、勇儀が青群の右拳を握り潰していた。

 

拳から流れる大量の血、所々から飛び出る骨。

凛蝶はその光景に流石に我慢の限界だったのか、青群の元へ飛び出そうとする。

しかし、いつの間にか後ろへ回り込んできていた萃香に方を掴まれ止められる。

 

 

 

「っ!?邪魔をするな!萃香!

あの子が死んでしまっては私は!私は…。」

 

 

「…。これは2人の勝負だ。邪魔することは許さないよ。」

 

 

その言葉に萃香を睨む凛蝶。

萃香はそれでも肩にのせる手を話すことはなく、凛蝶が出ていくのを阻む。

 

 

「なんだい、大声を出して、そんなもんかい…?

 

 

 

 

 

っ!?

 

ハハハ!それでこそアタシの認めた鬼だ!

さぁ、アタシかお前のどちらかが壊れるまでたたかい続けようじゃないか。」

 

 

若干呆れ顔で青群を見る勇儀だったが彼女からいきなり繰り出された左拳にすぐに反応をして後ろへ下がる。

そして、改めて青群の目を見ると闘志以外の何も無いただひたすらに勇儀を見る目がそこにあった。

 

そんな様子に凛蝶は少し不安な様子を見せるが勇儀が一旦離れたことに肩を撫で下ろす。

その肩には萃香の手はもう無かった。代わりに後ろで満足気な彼女がいたのだった。

 

 

バキッ!

 

 

青群はそんな中、自身の右拳を手首から千切り地べたに捨てる。

 

そして、再び勇儀へ迫る。

勇儀も『何度来ても同じさ!』と身構える。

 

そして繰り出されたのは今までで1番早く強烈な蹴り。

青群の脚は綺麗に勇儀の横っ腹に入り、勇儀は血を吐きながら体制を崩す。

 

青群はそのまま勇儀を追い詰めようとするが、勇儀は青群と同じく彼女の脚へ怪力乱神の蹴りを放つ。

 

 

バキッバキバキ!!!!!

 

 

それを避けることの出来なかった青群は右足の膝を粉砕されながらも左拳を彼女の頬へ繰り出す。

 

勇儀はそれに対して避けずに受け、今度はひるむことなく、構わず自身の右拳を青群の腹へ打ち込む。

 

腹を思っいきり殴られた青群は大量に吐血する。

 

鬼達はその様子にこれは勝負が決まったが青群の戦いに拍手をしようと手を動かす。

 

 

「まだ…まだ終わってないんだよ!!!!!」

 

「ハハハ!いいね、さぁどんどん行くよ!」

 

 

足を砕かれ、腹を殴られ、拳を握りつぶされ尚青群は立ち上がり続ける。

その姿は指でつつけばすぐにでも倒れそうな様子で、見るに堪えなかった凛蝶は走り出す。

 

萃香に止められるかと思ったが、彼女は青群の戦いに入り込みすぎており反応が遅れる。

 

 

バッ!

 

 

「「!?」」

 

 

互いに1歩を踏み出そうとしたところに凛蝶が割り込む。

凛蝶は青群の前に立ち手を広げ勇儀を睨む。

 

対する勇儀と青群はその姿に唖然とする。

勇儀は萃香を睨むが、

 

「はぁ…凛蝶を止めるために呼ばれたんだけどね…

 

あんたらの勝負に入り込みすぎちまったんだよ。

すまないね、あまりに楽しませてくれるものだから。」

 

と笑いながら返す。そんな萃香に勇儀はため息を一つ吐き殺気を凛蝶に向ける。

しかし、凛蝶は怯むことはなかった。

 

 

「青群…貴方の体は鬼とはいえ1日じゃ治らないほどボロボロ。これ以上戦い続けることは私が認めないわ!

 

分かって…私は貴方を失いたくないの。」

 

 

「凛蝶さん…口調が…

 

いえ、嬉しい…です。

自分をそこまで心配してくれるなんて貴方が初めてで。

 

 

 

 

 

 

 

 

『でもダメなんです。』

 

 

 

 

 

この1戦だけは最後まで続けます。

 

恥ずかしながら自分はあれだけ鬼を嫌っておきながら鬼としてのプライドはかなり強いみたいで…。

あはは、こんなこと言ったら貴方は『私』のこと嫌いになるかな?

 

 

凛蝶さん、私は自分のケジメをつけてきます。

 

 

萃香!」

 

「はいよ。」

 

 

凛蝶は泣きながらの願いも青群の新年の前には届かなかった。

そして青群は凛蝶のをボロボロの体で持ち上げ萃香の元へ投げる。

萃香はそれをひょいとキャッチする。

 

 

「嫌いになんかなるわけないじゃない!貴方は私の自慢の娘よ!

 

青群…なら…なら!絶対勝ってきなさい!

明日は絶対安静よ!」

 

 

萃香の腕に抱えられている凛蝶は青群に向かって叫ぶ。

彼女にとって青群は娘のようなもの、ではなく『大切な娘』なのだ。

 

そして、飛び切りの笑顔を青群へ向ける。

青群はその顔を確認するともう一度勇儀へ向き直るがその目から2雫の涙が落ちていた。

 

 

「いいのかい?」

 

「どうせあの子はもう聞かないわよ。それにあんなに強い『信念』見せられたらもう止められないじゃない…。

 

ふふっ反抗期ってやつかしらね!」

 

「あんた昔の口調に戻ってるよ…。まぁそれがあんたらしくて私は好きなんだけどね。」

 

 

凛蝶は目に涙を含みながらももう決意も決め青群を応援する。

萃香もその様子に笑顔になり同じく2人の戦いを見守る。

 

 

「ふぅ…凛蝶の親バカにも困ったもんだねぇ。

さてとさてと邪魔者は消えたし始めようか、青群!」

 

「あぁ、体は動く。今はそれだけで十分だ。」

 

 

最終ラウンド開始。

 

青群は粉砕していない方の足に全力の力を込めてその力を解き放つ。そして彼女はこまでで1番早いスピードで勇儀に近づく。

 

勇儀はそれを真正面から受け、青群の顔めがけて右拳を打ち込む、左手は彼女の左拳をいつでも受けられるように構えている。

 

ドンッ!バキバキッ!

 

 

「っ!!」

 

 

勇儀の右拳を青群は手首から先の無い右腕で受ける。

 

その右腕は肘から先が砕け散る。

 

勇儀は青群の残された攻撃手段が左拳しかないとその腕の警戒をする。

鬼たちも青群は左拳を打ち込もうとすると思っていた。

 

 

ゴッ!!!!!

 

 

「がっ!!?」

 

 

否、彼女が使ったのは頭、そのスピードで勇儀に向かって渾身の頭突きを繰り出した。

 

勇儀はその頭突きに直撃し頭がふらつく。

そして次の瞬間、青群の左拳が勇儀の顔に直撃する。

 

しかし、勇儀はその腕を掴み青群を地面に向かってぶん投げる。

 

バァン!!!!!

 

地面に直撃した青群は少し遠くにそのまま飛ばされる。

何本も骨が折れたのは分かっていながら彼女はまだ立ち上がる。

 

 

「いけぇ!縁下!」

 

「勝っちまえ!」

 

 

未だ死闘を続け、骨の大半は砕けている青群を鬼達の声援が支える。

 

確かにこの鬼達は自分を『半端鬼』と蔑んできた奴らだ。

だけど、そんな奴らの声援が今は何より嬉しい。

 

そんな思いが青群の頭に浮かぶ。

 

 

「青群!貴方は私の自慢の娘、怪力鬼なんて吹っ飛ばしてきなさい!」

 

 

凛蝶の声がさらに青群の後押しをする。

青群の目には先ほどをさらに超える闘志が漲っていた。

 

 

「結構な声援だ。

 

だが、それだけでこの局面は変わらないことは分かっているだろう?

まぁアタシもそろそろ限界だ、こんな戦いは久々でねぇ…萃香に嫉妬されちまうよ。

 

さぁ最後の1発になるだろうさ!この1発でお前を完全に壊す!

 

 

行くよ!」

 

 

「はぁ…はぁ…。

いや、変わるさこの声援は私を強くしてくれるんでね。未だに立ち上がれるのが何よりの証拠だ。

 

まぁ…こちらもあと一発が限界だ。

だが、一つだけ言っておこう

 

 

 

 

 

 

 

今の繋がりで私の勝利は確定したよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『勇儀あんたはこれ以上私に触れることは出来ないよ。』」

 

 

勇儀は青群の最後の言葉に若干の違和感を覚えたが怪力乱神の力を持つ自分が最後の最後にそんなへまをするわけないだろうと頭からかき消す。

 

そして、目の前にいる相手を壊すことに全力で集中する。全力で踏み込み青群へ近づく。

 

青群は全身の痛みにより反応が遅れる。

それに対して勇儀は顔を歪め全力で右拳を彼女に放つ。

 

 

「貰った!」

 

 

その拳は狂いなく青群の顔に直撃するはずだった。

 

 

 

「…あ?」

 

 

しかし、その拳は青群には当たらず彼女の前で空振る。

その光景に鬼達はもちろん萃香や凛蝶まで目を見開いて驚く。

 

なぜなら『不自然すぎた』。

青群は1ミリたりとも動かなかった。

勇儀があの状態で相手との距離を見誤るとは思えない。

なのに、勇儀の拳は『自分の意思』で動いたように空を切った。

 

 

「いや、今日の私は本当に運がいい。

 

勇儀、だから言っただろう?私に触れることはできないって。

 

ふぅ…ハァッ!!!」

 

「ガッ!??」

 

 

そして青群は自身の左拳に今込めれる全力を込めて勇儀へ放つ。

その拳は勇儀とは違って狂いなく彼女の顔に直撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが『半端鬼』こと縁下 青群が『四天王』星熊 勇儀を倒した瞬間である。

 

 

勇儀はそのまま後ろへ倒れる。

 

その様子に一同は唖然とする。萃香は驚きはしているが、笑顔で青群を見つめる。

 

凛蝶は誰よりも努力をし、誰よりも信念を貫き通した娘に涙を流しながら盛大な拍手を送る。

その拍手に周りの鬼達もつらて拍手をする。

 

周りから聞こえる拍手、青群にはそれは聞こえなかった。残っているのはあと数ミリで切れそうな意識のみ。

 

だが、それでも彼女は勇儀を打ち倒した自身の左腕を天高く上げる。

 

 

「おぉぉぉ!すげぇ!ほんとにやりやがった!」

 

「強すぎるぞ!縁下のねぇさん!」

 

 

所々から歓声が上がる。青群にはそれは聞こえはしないもののその目からは涙がこぼれ続いていた。

 

 

「かぁ!やられちまったか!」

 

 

いきなり響く声に歓声と拍手か止む。

それは聞こえるはずの無い声、倒れたはずの勇儀の声だった。

 

 

「なっ!?」

 

 

「おっと残念だがアタシの負けだ。

もう体が動かなくてね。ほら、勝者の権利だ!

 

煮るなり焼くなり好きにしな。」

 

 

勇儀は倒れ体は動かないものの意識はギリギリ保っていた。そして、負けたものとして勝者からの最後の一撃を待っていた。

しかし、それはいつになっても来ない。

 

 

「あはは、すまないな。

私ももう体が動かないんだ。

 

この勝負は引き分けって感じでどうかな?」

 

「…。

 

ハハハ!なんて中途半端な終わり方のなんだい!お前らしいよ!

 

 

だけど今日ばかりはそういうのも悪くないね。」

 

 

そして、最後まで戦いきった2人の意識は途切れた。

勇儀の方は萃香が担ぎ、青群の方は凛蝶が担いで帰ろうとする。

 

 

「凛蝶、あんたは中々いい娘を持ったじゃないか。その口調といい、こいつがあんたを変えたんだろうね…。

 

 

あっ…それと今度アタシとも勝負させてくれないかい?」

 

「そうね、あの日の呪いを少しずつ解いてくれたのがこの子はなのかもしれない。

 

 

本当に私の自慢の娘よ!

 

 

だけど最後の言葉は却下よ。親だからこそ、危険な目には合わせたくないのよ。」

 

 

萃香は少し名残惜しそうな目をするがすぐに『じゃあな』と勇儀を担いで去っていく。

青群を担いでいる凛蝶も同じく家に帰っていく。

 

「頑張ったね、青群…。」

 

 

この戦いは妖怪の山の中でも有名な一戦となり半端鬼が四天王に届いた1戦であった。

 

そして、四天王ではなくとも同じ強さを持つ縁下 勇儀の事を『縁の下の大鬼』と言うようになり。

これは後に出来る幻想郷での『縁の下の力持ち』の語源となった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そして翌日、青群はベッドの上でずっといることとなる。少し外に出ようとしても凛蝶が鬼の形相(実際に鬼なのだが)でそれを阻止するため諦める。

 

しかし、凛蝶の家には青群への見舞い客が大勢来て勇儀、萃香な山のほぼ全員とも言える量の鬼たちが来た。

そしてほぼ全員が今までの事を謝罪するという状況に青群も驚き、『いいんだ、あの頃の私が弱かっただけなんだ。』と返しておいた。

 

確かに青群は彼等を憎んでいたがその声援のおかげで勝てたのは事実。実際その恨みも戦いの途中から無くなっていた。

 

勇儀からは「最後のあれは何なんだい?」と聞かれたがただ単に「運が良かっただけだ。」と答えると勇儀は納得行かない様子で帰っていった。

 

流石に初めての体験で疲れた青群はすぐに眠りについた。その姿に凛蝶は顔のほころびが治らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてさらに翌日。

凛蝶と青群は勇儀と萃香に呼ばれる。『何の用なんだ?』と2人は疑問に思いつつも集合場所へ向かっていった。

 

その集合場所は『楓の舞い散る場』青群の修行場だった。

 

 

「さて?勇儀、何の用だ?」

 

 

集合場所に着いた青群はまだ怪我が完全に治っておらず所々に包帯が巻かれている。

 

 

「なぁに、引き分けなんざ後味悪いだろ?さぁもう1戦!」

 

「「!?」」

 

 

動き出そうとする勇儀に対して『何をしようとしているんだ』と凛蝶が前に出て応戦しようとする、がしかし…

 

 

「勇儀何してんのさ。皆を脅かすんじゃないよ。」

 

「いった…萃香痛いじゃないか。

 

はぁ…まぁそうとは行かなくてねぇ…」

 

 

萃香が勇儀の頭にげんこつを落とし止める。対する勇儀は全く痛がった様子も見せず止まる。

だが、青群と凛蝶は萃香の『皆』という言葉が引っ掛かっていた。

 

 

「萃香、皆とは?ここには私たちしか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勇儀のねぇさんと縁下のねぇさんの素晴らしい戦いを祝して!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乾杯!』

 

 

 

 

 

 

木々の影から沢山の鬼達が出てくる。

そして所々に座り片手には酒を持ち飲み始める。その光景に青群、凛蝶の2人は目を見開く。

 

 

「さぁ、青群、飲むよ!今日の主役はアタシとお前さんだ!」

 

 

勇儀はそう言って酒と盃を片手に青群を引っ張って行く。

 

 

「全く勇儀のやつ…。まぁこっちはこっちの飲もう凛蝶。」

 

「ええ…そうね。」

 

 

保護者役2人も盃を片手に萃香が瓢箪から押さかけ注ぎ飲み始める。

 

 

「でぇ?青群はなんの能力があるんだい?」

 

「能力なんか無いさ。」

 

 

連れていかれた先で盃を片手に聞いてくる勇儀にそう返すと。勇儀は青群を睨んで盃に酒をいっぱいになるまで注ぎ一気に飲み干す。あっぱれと酒をちびちびと飲む青群はその様子に感心する。

 

 

「『繋がりを力に変える程度の能力』だよ。ほらそう睨まないでくれ。」

 

「…半分嘘では半分本当って所か。全く今はそれで構わないがいつかぜったにおしえてもらうからね?」

 

 

ため息とともに酒を飲む勇儀に小さく『あぁ』と返す青群。

勇儀は目をつぶり少し考え事をする。

そして、再び目を開けると青群の頭をワシャワシャと撫でる。

 

対する青群は初めはびっくりしたもののそれを拒絶することは無かった。

 

 

「懐かしいね…アタシと青群が出会ったのもここか…。

あの日出会って戦って凛蝶に会い、修行の度に戦った。

 

かぁ!アタシは幸せもんだねぇ!

 

で?お前さんはどうなんだい?」

 

「あぁ…最初は鬼という存在が憎くて、勇儀に関しても強くなるための道具としか見ていなかったよ。

 

でもね、やっぱり繋がりっていうものは凄いなぁと思ってたよ。

 

何時からか勇儀や鬼達の事が好きになっていた。」

 

 

恥ずかしながらも話す青群に勇儀は頬を染めながらもハハハ!と笑って青群の盃に酒を注ぐ。

青群も注がれた酒を見て満面の笑みを広げ…。

 

 

コツン…。

 

 

 

 

 

「「乾杯!」」

 

 

 

 

 

そして、宴会は翌朝まで続き楓の葉をベッドにして寝るものが続出したという。

 

その中にはあの4人も含まれており、珍しく凛蝶までもが寝ていた。

 

 

 

かつて鬼を倒した人間。青群が彼等の子孫達と関わる日は遠くない。

 

 




縁下 青群

性別…女

今作の主人公であり鬼と人間の半妖。群青色の髪を首元まで伸ばし、額の右側からだけ白い角が空へ向かって伸びている。
衣服の方は着物の上に群青色の小さな花弁の描かれた羽織を着ている。
半妖という身分と自身の弱さが原因で昔から過度のいじめにあっており、拾ってくれた2人の夫婦からは見捨てられた。
楓の木の立ち並ぶ場所で寝ていたところを凛蝶に拾われて以降彼女と共に住むこととなり、彼女を母親として認識している。

強さに関しては修行を重ねて強くなり、能力ありきでは勇儀と同等かそれ以上の力を発揮する。そのため山の妖怪からは『縁の下の大鬼』と恐れられるようになる。
能力に関しては『繋がりを力に変える程度の能力』と言っているが勇儀からは半分嘘と言われてしまう。







最後まで読んでいただきありがとうございました。
縁の下の力持ちに関しては後の幻想郷での由縁になります。現代には全く関係ありません。

伏線は少し貼れたかな?と思いますが…どうなんでしょう。
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