東方半鬼伝   作:りすも

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誤字等ありましたらよろしくお願いします。

人間との関わりですが、作者の解釈になりますのでそこの所は御容赦下さい。


3話

あの戦いから数十年が経つ。

 

しかし、山の鬼達の暮らしは変わらない。

それは青群も同じでいつも通り楓の葉と共に修行に励む。

ただ少し変わったことがあるとすれば修行場には勇儀の姿はなくたまに勇儀、萃香、凛蝶などが見に来るだけである。

 

それでも変わらずに努力を続ける青群は鬼の子供たちの憧れにもなっていた。

 

 

 

 

ある日、青群が修行を終え帰ろうとするとこちらに近づく音がするので身構える。

すると出てきたのは人間の死体を担いだ白狼天狗だった。

白狼天狗は青群を見た瞬間「ひっ…鬼…」と呟き足早々に逃げていった。

 

青群は生まれて此方人間を見たことがなかったので死体を見て少し驚いていた。

 

 

少数でも鬼を追い詰めた人間は白狼天狗に負ける程の弱いのか?

 

 

青群はそんなことを思いながら凛蝶の家へ戻っていく。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

青群は凛蝶の家に帰ると凛蝶は椅子に腰掛けてお茶を飲んでいた。

テーブルの上にはあの日の宴会でとった4人の写真が綺麗な写真立てに入れられていた。

 

青群は今日思った疑問を凛蝶へぶつける。

 

 

 

「凛蝶さん、人間は弱くなったんですか?」

 

「え?いきなりどうしたの?」

 

 

凛蝶は前回の戦いで完全に口調を昔のように戻していた。

 

いきなりのことに驚いたが事情を聞いて『あぁなるほど』と頷いて少し呆れた顔を青群へ向ける。

 

青群にとってもこれはかなり気になることであり、少数で酒呑童子を倒したと言われる人間があんなに弱いわけはないと思っていたからだ。

 

 

「あのね…人間っていうのには差があるのよ。

強いやつはすごい強いし弱いやつは少しつまづいただけで骨が折れるやつまでいるの。

 

何奴も此奴も強いなんてことはないのよ。」

 

「なっなるほど…。」

 

 

凛蝶の言葉に納得をする青群。

青群は強い人間はかなりの努力をしたのだろうと関心をし、今度手合わせでも…と考えるが、それでは勇儀達と同じだ、と考えその思考を止める。

 

 

そして、次の日青群は昨日と同じように修行に励んでいると民家の方で鬼達がワイワイと賑わい始めたので少し気になり向かう。

 

すると、いるのは互いに向かい合う1人の鬼と人間、それを囲う鬼達。

向かい合っている鬼は何やら自信ありげに人間を見下ろし、人間の方は体は震えているが戦闘の意識はあるようだ。

 

 

「この鬼共!今日ここで僕がお前達を倒してやる!」

 

 

人間がそのように言うと周りの鬼達は一斉に笑い始める。

 

そしてすぐに試合が始まる。

 

その試合は散々なものだった。

人間がただ一方的に遊ばれ最後に殴られて終わり。

その人間は連れていかれた食われていたが、青群にとってそれは興味をそそった。

 

 

(あんなに弱い人間はどのようにして強くなるのか?)

 

 

そう考えつつ青群はいつも通り凛蝶の家へ戻る。

家には勇儀と萃香がいて、昼間から酒を2人で飲んでいた。

その光景に凛蝶は少し諦め顔をしており、青群は『あぁなるほど』とひとりで納得して凛蝶の隣へ座る。

 

 

「あら、おかえり青群。」

 

「おー!青群じゃないか。ささ、一緒に飲もうや!」

 

「ほらほら注ぎますよっと。」

 

 

勇儀と萃香は盃にお酒を注ぎ青群の前へ差し出す。凛蝶は『ちょっと!』と言おうとするが青群がそれを受け取ったため押し黙るしかなかった。

 

 

「ねぇ…凛蝶さん。頼みがあるんだけど…。」

 

「ねぇ?青群少し酔っ払ってないかしら?」

 

 

凛蝶は少し顔を赤い青群を気にしつつもその頼みとやらを聞こうと青群の方へ身を寄せる。

その様子に勇儀と萃香はニヤニヤしながらそれを見守る。

 

 

「山を一旦降りてみようと思うんです。

そして、人間を見てみたい…んです。」

 

 

ブハッ!!

 

 

突然の青群の言葉に勇儀と萃香が口に含んでいたお酒を吹き出す。

 

その吹き出したお酒をは全て凛蝶にかかり2人を奥の部屋へと連れていく。

 

戻ってきた凛蝶は何なやらスッキリとした様子で、対する2人は何やら少しやせ細っていた。

 

 

「…。

 

はぁ…いいわよ。

 

どうせ貴方は1度決めたことは誰に求められないし。それに貴方の人生だもの。

 

自由に生きなさい。」

 

「!?ありがとう!凛蝶さん!」

 

 

凛蝶の言葉に青群の顔は明るくなる。

そして次の瞬間青群は凛蝶に抱きついた。

 

青群からは強いお酒の匂いがして凛蝶も『うっ…』と、鼻をつまむ。

 

 

「やっぱり酔っ払ってるんじゃない…。

 

全く世話のかかる子ね…ふふふ。」

 

「やーい、親バカ。」

 

「親バカだねぇ…。」

 

 

凛蝶を煽るふたりだったが、凛蝶の『何?』という気迫に押され『何でもない』と顔を逸らす。

対して青群の顔はいつまでも綻びが収まることは無かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

鬼の村を出ようとする青群の見送りには大勢の鬼達が来た。

 

 

「まぁ、止めはしないけど…。

 

本当に行くのかい?

アタシは人間なんかに興味は湧かないけどさ。」

 

「あぁ、行くよ。

私はまだ外の世界に無くてね。この機会に触れてみたいんだよ。」

 

 

勇儀は昨日も夜遅くまで酒を飲んでいたのか、あくび混じり青群に聞いてくる。

 

それに対して青群は決意は変えないと笑顔を勇儀へ向けると、勇儀は『はぁ…』とため息を1つ吐き『行きな。』とその場を去っていく。

 

 

「それじゃあ行ってくるよ。萃香、凛蝶さんのことを頼むよ。」

 

「あぁ任せときな。」

 

「あんたらにとって私は何なのよ…。」

 

 

青群は凛蝶が無理をしないか心配していったことなのだが、凛蝶は自分が年寄り扱いされているのか、と考え青群と萃香を睨む。

しかし、すぐに笑顔で青群に向き直る。

 

 

「まぁ行ってきなさいな。

 

だけど!絶対に元気で帰って来なさい。

あと…帰ったら沢山お話を聞かせてちょうだいね!」

 

 

凛蝶は青群の方を叩きながらそう言う様子に萃香は『親バカだねぇ…』と思うが言ったら最後、その後の事は目に見えているため胸に止めておく。

 

青群はそんな皆に背を向け山を降りていくが、ふと凛蝶のことを思い出すと足が重くなる。

『ほんとあの人らしいなぁ…』と最後の凛蝶の言葉を聞いて顔が綻ぶ。

しかし、自分で決めたこと。決意を胸に山をどんどん降りていく。

 

途中、弱い妖怪に襲われたが少しあしらってやればすぐに逃げていった。

もちろん烏天狗や白狼天狗などの強い妖怪は鬼の力量が分かっており、さらにその相手は『縁の下の大鬼』と知っているためすぐに逃げていく。

 

そして山の麓まで着くと少しずつ進んだ先に人里があることを確認する。

青群は『あった!』と少し興奮気味に足を動かす。

 

しかし、青群は妖怪であり鬼であるため歓迎などされるわけも無かった。

 

 

「お…鬼!ここはお前達妖怪が来る場所ではない!お、お前ら…やるぞ…何としてでも里を守れ!」

 

『おう!』

 

 

凛蝶がその様子に唖然としているうちに目の前にはいつの間にかたくさんの人間が集まっていた。剣を取っているもの、弓を構えているもの、挙句の果てには農具を持っているものまでいる。

 

青群は『仕方ない…戦うしかないか』と少し臨戦態勢に入るとたちまち人間達はその様子にビクビクと震え始める。

 

 

「待て!お前達!」

 

 

そして人間達が動こうとした瞬間、1人の女性がそれを止める。

出てきた女は腰にまで届くくらいの銀髪に赤いリボン、頭には何やら変な立方体の帽子を着けている。

人間達はその女の登場に『先生!』と口々に声を出す。

女は青群の前まで立つと軽くお辞儀をし改めて向き直る。

 

青群は『思っていたよりも背は低いんだな…』と思いつつ自身も彼女に向き直る。

 

 

「私の名は上白沢 慧音と言います。

ここは山の妖怪が来る場所ではありません。何用でしょうか?」

 

「名を返すのが礼儀って奴か…私は 縁下 青群。

あぁ別にお前さん達とやり合いに来たって訳じゃない。

ただ単に聞きたいことがあって来たんだ。」

 

 

慧音は戦う気は無いと少し両手をヒラヒラと上げる青群をじっと見つめる。

そして何かを答えを出したのか青群に背を向け、1歩前に出る。

その様子に青群は『結局入れずじまいか?』と思ったがそれは思い違いだった。

 

 

「分かりました。

 

これ以上里の人の不安を仰ぐわけにもいきませんし、本当に戦う気がないというのなら郷へと案内します。

ただし私の家で貴方が聞きたいことを話してあげる代わりに、聞いたらすぐに出て言ってください。」

 

 

青群は慧音の言葉に顔をみるみる明るくさせ『あぁ!もちろんだ!』と彼女の後ろをついていく。

その様子に里の人達は『本当に大丈夫なのか…』と不安の声は絶えないが再び里の中へと入っていく。

 

 

「さて…それでは何が聞きたいのですか?答えられることならば出来る限り答えましょう。」

 

 

慧音は家兼、寺子屋に着くと青群を招き入れる。子供たちは早めに返しているため中からは誰の声もしない。

初めてのそのと世界である人里に来た青群はキョロキョロの辺りを見回しており、その様子に慧音はため息をつく。

 

 

「あぁ、聞きたいことは1つだけだ。

 

この村人間で1番強い奴は誰だ?出来ればどの位強いのか教えて欲しい。」

 

「?まぁいいですが…それを教えても里の人に手出しはしませんね?」

 

 

里の中で1番強い奴を教えろという青群に対して不安を覚える慧音。

教えたら最後、その者と戦うと言うかもしれない。

そんなことになったら倒されるのは完全に人の方だ。

 

そう思っていた慧音だったが青群が『あぁ。』と真剣な顔持ちで言うため今はそれを信じることにする。

 

 

「では、一応教えて欲しい理由を聞かせてもらえますか?」

 

「ん?まぁいいが…ただ人間という弱い種族は昔我々に1度勝った。つまりは鬼よりも強かったということだ。

ということはそいつが努力どんな努力をしたのか聞きたいんだ。」

 

 

青群の示す理由に慧音は唖然とする。

この鬼は人間の強者が全て鬼と同等に戦えるとでも思っているのだろうか?

 

確かに100年程前に人間達が酒呑童子を倒したと聞いたが、それは酒を使った卑怯といえば卑怯と言われる作戦である。

まともに戦ったならいくら強い人間でも勝つことは出来ないだろう。

 

慧音は『はぁ…』と大きなため息をつく。

青群は『どうしてため息をつく!』と言いたげな顔を慧音に向けているため少し腹が立つ。

 

 

「はぁ…言わせてもらうが、人間がいくら努力をしようと山の妖怪のトップである鬼達に敵うことは無い。人間は知恵を使い、相手に買ってきたんだ。」

 

「いきなり口調が変わったな…。なるほど…知恵か…。」

 

 

そう言って少し考え込む青群に対して再びため息をつく慧音。

しかし、こんな鬼もいるのだと少し顔の緊張が解ける。

慧音にとって山の鬼というのは脅威の存在であり、一人一人がずば抜けた身体能力を持ち再生速度も早い。

 

しかし、鬼達は挑んでくる人間にしか手を出さないため、どちらかと言うと山の天狗達の方が脅威であるのだ。

 

実を言うと天狗が鬼達へ人間を運び、鬼達はそれを食べているのだが…。

 

「念の為聞くがこの里で最も強い奴はどれくらいだ?」

 

「あぁ、山にいる小さな妖怪を倒せるくらいしかない。」

 

 

その言葉に青群は落胆を隠しきれないでいた。

人間はそこまで弱いのか…そういうふうに思っていると青群の姿を見ていた慧音はクスクスと笑っている。

 

 

「まぁそんな気を落とすな。人間はそんなものだ。

だから私は好きなのだが。質問は以上か?」

 

「あぁ…はぁ…」

 

「ふふ、『縁の下の大鬼』噂とは違って面白い奴だな。」

 

 

青群はいきなり呼ばれた自分の2つ名に目を見開いて驚く。

 

流石に人間の方まで伝わっているとは思わなかったのだ。

その為青群が慧音に『なぜ知っているのか?』と聞くと慧音は少し笑顔になりながらも答える。

 

 

「人間と妖怪の共存を目指しているある妖怪がいてな。

そいつがたまに妖怪の山の様子を伝えてくれるんだ。

 

そこでお前のことを知ったよ。

四天王では無いがそれと同等の力を持つ鬼、『縁の下の大鬼』とな。」

 

「人間と妖怪の共存か…限りなく不可能に近い話だな…。

まぁその妖怪については少し気になるがな。

 

あと青群でいい。私も慧音でいいか?」

 

 

青群がそう言うと慧音は少し吹き出し、『あぁもちろんだ。』と言う。

そして話し終わった2人は立ち上がり、青群は帰ろうと家から出ようとして慧音はそれを見送る形でついて行く。

 

先程の話、妖怪にとって人間は食料の1つであり、また恐怖を抱かせる餌である。

そんな2つの共存なんてそんなの無理に決まっていると青群は1人で考える。

 

そんなことを考えていると青群はいつの間にか里の門まで来ており、慧音に別れを告げる。

 

その際に『また会えるといいな』と青群が言うと慧音は『ふふ、そうだな』と笑い混じりに返す。

そして、青群は里から離れていく。

 

かなり早いが山に戻るかと考えて歩き出す。

 

本来の予定ならば人間の強者と共に修行をして強くなって山に帰る予定だったのだが…。

そもそも戦闘自体を禁止され、さらに里で最も強い奴はそこら辺の弱い妖怪と同等のだという。

 

外の世界に触れるというミッションは達成したが、少し物足りないと言った様子で山に向かっていく青群。

 

 

「うわぁぁ!」

 

 

山の方から悲鳴が聞こえる。青群はそこに行こうと走って向かう。

するとそこにいたのは1匹の白狼天狗と人間。恐らく山に無断で入ってしまった人間を白狼天狗が殺そうとしているらしい。

ふと青群の頭に慧音の顔が浮かぶ。『人間が死んだらあいつは悲しむだろうな…。』そんなことを考えると自然と足が動いていた。

 

 

「無断でこの山に入った罪!命で払ってもらおう!」

 

「すみませんでした!僕はただ山菜を取りに来ただけなんです!」

 

 

人間を掴みにかかろうと突撃する白狼天狗、何とかしようと言い訳を放つ人間だが白狼天狗は『問答無用!』と止まらない。

 

 

「待ってくれないか?」

 

「っ!?何奴!?」

 

 

突然腕を掴まれ、現れた青群に驚く白狼天狗だったが、彼女の頭につく白い片角を見ると一瞬で顔色が変わる。そして一気に腰が低くなってしまう。

 

 

「これ私にくれないか?」

 

「はっはい!こんなもので宜しければ!それでは私はすぐに巡回に戻ります!」

 

 

白狼天狗すぐに山の中へ入っていく。人間の方は先程よりも顔を青くし絶望している。

前にいるのは天狗のさらに上である鬼のなのだ。『もう僕の人生は終わった』と半ば諦めの目をしている。

 

 

「お前…はぁ…

別にお前を同行しようってわけじゃない。安心しろ。」

 

 

青群のその言葉に人間の顔は明るくなり、青群に向かって何度もお礼をする。

挙句の果てには『どうぞうちに来てください!ご馳走を用意しますので!』という始末だ。

 

青群は里に入れるかな?と思いつつも人間の行為に甘えて付いていくことにする。

 

そして人間が止まった場は里から少し離れた民家だった。

 

 

「里の中ではないのか?」

 

「えぇ、僕はちょっと色々な研究をしていまして…そのせいで里の人から気味悪がられ、ここに追い出された始末ですよ、あはは。

 

 

あっどうぞ入ってください!」

 

 

青群は男に言われて家に入ると中には御札が至る所にあり、『確かにこれは気味が悪いな…』と思う。

そして少し進むと何やら机で御札を熱心に作っている女性を見つける。

 

 

「あはは、その人は僕の妻です。ほらほら、一旦御札作り停止!挨拶して!」

 

「ん?ようこそ!って…鬼…?

……キャァァァ!すみません!お命だけはぁ!」

 

 

青群を見た女性は悲鳴をあげ一瞬のうちに土下座をする。

その姿には流石の旦那もポカーンとし、動く様子はない。

 

『別に君を食べに来たわけじゃない』と青群が言うと女性はバッ、と顔を上げて『本当ですか!』と急接近する。

いきなり近ずいてくる女性に青群は困ったような顔をし、それを見かねたのか男の方が引きはがす。

 

そして改めて向き直る。

 

 

「里で霊術等の研究をしておりました秋の助と申します。

まぁ今は里から追い出されて毎日結界を貼って妖怪をくい止めていますが…。」

 

「はい、秋の助と同じく霊術の研究をしていました霞です!

鬼様この度は旦那の命を救って下さりありがとうございます!」

 

 

人から初めてお礼をされて何も言うことが出来なかった青群。

だが、里から追い出されて尚夫婦睦まじく暮らしている様子と自分を重ね合わせる。

 

青群自身も同族たちから嫌われていたが現在は凛蝶共に幸せを掴み取っていた。

だからこそ2人には幸せになってほしいという気持ちが強くなる。

 

 

「あぁそれに関しては気にしないでくれ、私が勝手にやったことだ。

改めて妖怪の山の鬼、縁下 青群だ。よろしく頼む。」

 

青群がそう名乗ると霞のはとても機嫌が良くなり、『すぐにご飯作りますね!今日はご馳走だぁ!なんて〜』と言ってキッチンへと足を動かす。

 

それに対して秋の助は『すみません…。久しぶりの来客ではしゃいじゃってるんですよ。できれば仲良くしてやってください。』申し訳なさそうに言うが、青群にとっては人間の友達など初めてで興奮が覚めやまない気持ちであった。

 

そして、青群と霞、秋の助夫婦は目の前のご馳走を食べながら話で盛り上がっていく。

もちろんその中にはお酒もあるが、青群には少し薄く感じ、『これなら酔いそうもないな』と思ったが、霞と秋の助はもうかなり出来上がっていた。

 

 

「うへへ〜。

わらしは青群さんに会えて本当に嬉しいんでひゅ!最近はわらひ達を心配してきてくれる慧音しぇんシェイしか来ないし!うわぁん!青群さぁん!」

 

 

霞は呂律が回らず青群は少し聞き取れない部分もあったが、『慧音もこの家に来るのか…』と思いつつ抱きついて泣いてくる霞の頭を撫でる。

 

対する霞は『青群さん大好きでしゅ!』と言ってきており、その様子が可愛くて青群はついにやけてしまう。

 

 

「うがぁ!最近は御札用意しても妖怪は少し入りつつあるし…このまま死ぬのかぁ…妖怪に殺されて死ぬなんてそんなの嫌だぁ!」

 

「同感だよ!死ぬなら誰かのためにだぁ!」

 

秋の助と霞は2人で頷き合いながらどんどんお酒を飲んでいく。

 

『まるで宴会時の鬼だな…』と青群は思いながらも1つ溜息を吐き、何かを決心した様な顔お持ちで2人の方を向く。

 

 

「あぁ…もし良ければ私が君達を守ってやろうかと思うが…

食べ物と住む場所さえ提供してくれるならだが…」

 

「「本当に??!!!」」

 

 

青群の言葉に目を輝かせて迫る霞と秋の助。

 

その様子に青群は少し戸惑うが『あぁ…』と言うと、霞は『提供しますとも!』と興奮気味に言う。

 

秋の助は感銘を受けているのか1人で酒を飲みながら涙を流している。

 

 

「よし!これで妖怪からビクビクする時代は終わりだぁ!なぁ、秋の助!」

 

「あぁ…!本当にありがとう…青群さん!」

 

 

妖怪から2人を守る代わりに、2人は青群に住処と食を提供するという契約は結ばれた。

 

霞は『どのくらいの期間の契約デス?』と聞いてきたため、青群は『とりあえず山に帰るまでだ』とそこと無くはぐらかす。

そして気分の良い2人と再び酒を組み直し夜を越していくのであった。

 

その後の生活というのは快適で、たまに結界を超えてくる妖怪を青群が威圧して追っ払い、2人の家で夜はワイワイと盛り上がる。

 

青群は秋の助が山菜取りに行く際この家の守りはどうしようかと考え聞いてみると『大丈夫です!』と霞が全く筋肉のないマッスルポーズをするため、霞も一緒に行くことになった。

 

青群はこの生活になんだかんだで満足をしており、山に帰るのが遅くなるかもしてれないな…と手紙を書いておく。

 

そしてある日の事、3人で朝食をとっていると青群は霞の異変に気付く。

 

 

「なぁ…霞、最近太り過ぎじゃないか?お腹がすごい膨らんでいるぞ?」

 

「え…!?」

 

 

青群からの言葉に霞は兎も角秋の助まで反応する。その様子に青群は首を傾げ、2人をじっと見つめる。

 

すると、2人は観念したみたいで顔を見合わせる。

 

 

「実は…妊娠してるんです。」

 

「「は?」」

 

 

霞のいきなりの告白に驚く青群だったが、その声はもうひとつ聞こえた。

3人は声の聞こえた戸の方に目を向けると食料品を床に落としてポカーンとしている慧音がいた。

 

 

「えーと…妊娠…妊娠!?

 

いつの間に…私はずっと2人そばにいたはずだが…」

 

「えへへ…実は青群さんが寝ている間にちゃちゃっと〜

 

なんちゃって?」

 

 

青群は『私が寝ている間に…』とジト目を2人に向けるがすぐに目を逸らされる。

2人は慧音の元へ行き『おーい、せんせー』土方を揺さぶる。

 

 

「はっ!なっなんで青群がここにいる!というか…に、妊娠!?」

 

 

あたふたとしている慧音に3人は顔を見合わせ「あはは!」と笑い合う。

 

その様子に慧音は腹が立ったらしく秋の助の頭を両腕で掴み、その頭目掛けて頭突きを放つ。『なんで僕だけ…』と秋の助は倒れ込む。

 

そして霞と青群で事情の説明をする。

 

慧音は納得したようで、『これからもこいつらのことをよろしく頼む』と青群に頭を下げる。

そして、食料を霞に渡して出ていこうとするが霞に捕まって4人で夜ご飯を食べることになった。

 

その後、青群が秋の助との出会いを語り、彼に2度目の頭突きが放たれることとなった。

 

帰る際、慧音は霞から御札を貰い『最近妖狼の方が里周辺に増えていてな。気を付けろよ。』と残して帰っていった。

 

 

 

 

それから3年後、秋の助と霞の子は無事に生まれることとなった。

名前は青群さんが付けてと言われたため、名は『楓』となった。

 

子供の世話は大丈夫かと慧音が何度も訪ね、何度も2人に教えて行ったがその顔は終始綻び気味だったのは気のせいだろうか?

 

青群はこんな日々がもっと続けば…と思いながらも楓を抱き抱える。

それはとても軽く少しでも触れたら壊れてしまいそうであり、慌てている青群の姿に2人は笑い合う。

そんな二人を見て青群も笑う。

 

そんな様子を山から妖狼はじっと見つめていた。

 

 

 

 




秋の助

霞の夫であり、霊術の研究をし続けたが故に里を追い出された男。その容姿は少し痩せ気味であり、ボサボサの髪にメガネをかけている。
霊術を扱っているとはいえ、作れる結界は脆く鬼ともなるともはや空気のごとく中に入られる。





秋の助の嫁であり、同じく里を追い出された女。容姿は少し長めの茶色い髪を後ろで1つにまとめている。里では彼女の、明るさでモテていたらしい。
同じく霊術を使うが結界を貼るというよりも御札を作り、扱う方が得意。



妖狼

見た目は普通の狼と大差ないが身体能力はかなり高い。しかし、妖怪の山では中の下程度である。
蒸れて行動することが多く現在の数は今までで1番多いと言われており集落まで出来ている。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


オリキャラ2人追加ということですが、この2人は後に大事になってきます。
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