東方半鬼伝   作:りすも

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2章突入です。

誤字等ありましたらよろしくお願いします。


悲しき別れと出会い
6話


 

凛蝶の家にあるものを整理していく青群。

彼女が持っているものの中には筆、手紙、…色々な思い出が手にあった。

 

そして立ち上がり家を出る。

 

彼女の着る羽織はいつもとは違い群青色の花だけでなく、紅葉色の楓が書かれていた。

 

 

家から出るとそこには勇儀がいた。

 

 

 

「…先に行ってるよ。」

 

「あぁ…私にはまだやるべき事がある。その為にまだ地底には行けない。

 

まぁでもそれが終わったらすぐに行くさ、勇儀。」

 

「あはは、なるほどねぇ…。目つきも変わって大人になったねぇ…。

 

ほら。」

 

 

勇儀は自身の拳を前に出す。

 

青群は最初、なんだ?と思っていたが勇儀の穏やかな顔を見てすぐにそれが何を意味するのか気付いた。

 

 

「ふふっ、あぁまた会おう。」

 

「あぁ約束だ。」

 

 

コツン。

 

 

 

2人は笑い合いながら拳を合わせる。そして勇儀と鬼の集団は地底へ。

青群は里へ歩いていく。

 

 

『青群のねぇさん!!!また会いましょう!!!』

 

『待ってますぜ!!!』

 

 

青群との別離にそんな声を口々にする鬼達。それに対して彼女は『あぁそれまで元気でな』と告げ別れる。

 

 

青群はゆっくりと山を降りて行くが、彼女の纏う静かな殺気の前に山の妖怪達は襲う気にもなれない。勝てないと否応なしに分かってしまうから。

 

 

「ず…随分と変わられましたね…」

 

「ん?お前はあの時の白狼天狗…。」

 

「はっはい!白狼天狗の犬走 椛と申します。」

 

秋の助を1度襲った白狼天狗である。実はこの白狼天狗、青群の珍しさにずっと能力である千里眼で見ていたのだ。

人間を守る鬼は山では異質すぎたのだ。

そして、実物を見て思う…。この鬼に喧嘩は売ってはいけないと。

 

 

「強さっていうものは何かを失って得ることの出来るものなんだよ。」

 

「えっと、何かを失うですか?」

 

「そう。得続けるだけじゃその器に変化は訪れない。単純な強さほど弱いものは無いよ。

 

今回はそれを味わってしまってね。」

 

 

白狼天狗はなるほど…と頷いて、これ以上聞いてはいけないだろうと一礼をして山に帰っていった。

凛蝶の死は青群に精神的な苦痛を与えていた。単純な強さじゃ精神的な問題は対処できなかった。

 

だからこそ…青群は母の死を忘れない。

 

それが今の彼女の強みであった。

 

 

青群が少し歩いていると里が見えてくる。かなりの時間がいると思われた復旧…今どうなっているのだろうか?

そんな思いを胸に抱きつつ門へ向かう。

 

 

「おかえりなさいませ!」

 

 

門番達に礼をすると青群は中に入っていく。復旧は…少し進んでいるようである。

そして、里の人達から掛けよられ『どこに行っていたんです?』などを聞いてくるが青群は、はははと笑うだけである。

 

 

 

 

 

 

「身内の不幸…か…?随分と雰囲気が変わったな。」

 

 

青群は後から声が聞こえたと思いふりむく。すると、声の主は慧音だった。その顔は少しバツの悪そうな顔であった。

青群は少し出していた殺気を抑えて彼女の元へ向かう。そして握手をする。

 

 

「よく帰ってきたな、…おかえり青群。」

 

「あぁまだやることが残っているからな…」

 

 

青群と慧音は互いに握手をすると少し微笑み、二人並んで歩き出す。そして復旧作業をしている人達の元へ行く。

復旧作業はまだ終わっていないらしく、未だにボロボロの家も見られる。しかし、里の人達は活気に溢れており、笑顔が絶えない。

青群はその後継が以前よりも眩しく感じられたがゆっくりとその足を進める。

 

 

「いました!青群さーん!」

 

「霞か。ただいま。」

 

「おかえりなさい、青群さん!」

 

 

霞が手を振りながら青群へと走ってくる。秋の助もその後に続いて歩いてくる。

2人とも彼女の変化については気づいているが触れてはいけないと察しあえていつも通り振る舞う。

 

 

「お前達は…変わりないな。」

 

「それら貴方が離れてから7日程度しか経ってませんからね〜。

まぁ妖怪に比べて寿命の短い私達は短い間にかなり変化しますけど。」

 

「あぁそれよりも復旧に私の力は必要か?」

 

「もちろんです!!!皆さん、強力な助っ人が帰ってきましたよ、頑張りましょう!」

 

『おぉ!!』

 

 

 

青群はそのまま歩いて復旧作業を手伝う。人間が数人で持ち上げれる木材も片手で持ち上げる。

周りの人間が『すげぇ!!!』などと歓声を上げると、彼女は少し嬉しそうな顔をしていた。

 

その様子に慧音、霞、秋の助は『あいかわらずだね』と自分達も復旧に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそこから数日経ち、里の復旧も大分済んだため、青群、霞、秋の助は里に別れを告げ元の家へと戻って行く。

その際慧音から『本当に留まらなくていいんだな?』と言われたが、霞はVサインを満面の笑みで彼女に突き出し、「大丈夫です!」と言った。

慧音は『全く…ふふっ』と呆れつつも笑みを零す。

 

 

「またな、慧音。

なに、心配は要らないさ2人には私が守るからな。」

 

「ふふっ、これ程頼もしい護衛はいないな。まぁどうせまた近いうちに行く予定だ。」

 

 

青群がそんな風に言葉を交わしていると、霞が『はやくー!置いていきますよ〜!』と急かす。

横いる秋の助の腕には楓がおり、青群に向かって必死に手を伸ばしている。

 

 

「ははっ、楓は母親に似て行くのかもしれないな。」

 

「同感だ。あの子が成長して寺子屋に来ることを気長に待っていよう。それに2人目の母親にも似てきていると思うがな。」

 

「2人目か…そうだな。あの人もこういう気持ちだったのかな…

いや…そろそろ行こう。これ以上待たせたら霞がいじけてしまう。」

 

 

青群はそう言って慧音と別れ、2人と楓の元へ向かう。その様子を微笑ましく慧音は見守っていた。

 

 

 

 

 

「青群さんおそいですよ!楓も私もぷんぷんです!」

 

「うー!」

 

「楓は君の意に反して青群さんの味方みたいだからそ僕もそっちに着くよ。」

 

「えぇ!?そんなぁ!」

 

 

霞は一瞬で不利になったため『じゃあ私も〜!』と青群に抱きつく。そんな彼女を青群はよしよしと宥め、家へ向かう。そんな様子を笑いながらついて行く秋の助は『やはりこの人は凄いな…』と胸に止めつつも歩き出す。

 

 

「うっ!?こっこれは…」

 

「これは色々と来ますね…楓は見ちゃダメー。」

 

「あぁ完全に忘れていた…。」

 

 

家に着いた4人を迎えたのはあの日から変わらない…いや、以前よりもきつい腐臭を放つ妖狼の死体。それも辺り全体に広がっている。

 

 

「やっぱり里に戻るとかどうです?」

 

「…。(じー。)」

 

「えっと…あんな笑顔で『大丈夫です!』て言っておきながらそれは無理だろう…。」

 

「…わかってますよォ!だから青群さんもそんな顔で見ないで!」

 

 

そんなやり取りをしていると青群は山の中にとある者を見つける。

 

 

「2人とも楓を連れて家の中に入って居てくれ。家の中ならばそこまで臭いは無い。」

 

「えぇ!?流石の青群さんでも1人では…いや、わかりました。何か案があるんですね?」

 

「あぁ。」

 

 

秋の助はわかりましたと霞の手を引っ張り楓と共に家にいれる。

霞は『え?なんでぇ!?』なんて言っていたけど無視をする。

 

そして、青群は山の中へ入っていく。そして目標を見つけると全力で1歩目を踏み込み、走り始める。

目標もそれに気づいたらしいが、もう遅い。青群はどんどんその差を詰めていた。

 

 

「あやや!?え?何かが迫ってきてる!?」

 

 

 

彼女の目に入っていたのは烏天狗である。

烏天狗も急接近する青群を感知し、一気に飛び立つが、MAXスピードに入る前に捕まってしまう。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…もう少し遅ければ捕まえきれなかったな…。」

 

「おっ鬼!?なっ何の用でしょうか?」

 

「そんな畏まるな、ただ風の力を使って掃除をしてもらいたいだけだ。」

 

「そっ掃除?」

 

 

青群は烏天狗の足を掴んだまま引きずって家の元へ向かう。

途中で『に、逃げませんから!足離してください…!』と泣きながら訴えてきたので話してやると黒い羽根でパタパタと飛びながら走る青群について行く。

 

 

「これを掃除してほしい。風の力であればこれくらい吹き飛ばせるだろう?

あと私に対して敬語はいい。」

 

「いえ…目の前にいる有名な大鬼に対して敬語

使わないなんて…

 

分かりました、努力はしますから!だから足をそんなに強く握らないで下さい!」

 

「よろしく頼むぞ…。」

 

 

烏天狗は辺りに突風を起こし、瞬く間に妖狼達の死体を吹き飛ばしていく。流石に地面染み込んだ血はどうにもできないようだった。

 

 

「あの…これでいいです?」

 

「あぁ…助かった烏天狗。」

 

「いえ、でも変わっていますね…『縁の下の大鬼』が人間のために力を貸すなんて…

それに鬼達は地底に行ったのに…。

あっ!私、射命丸文と申します!」

 

「む…となると名前を知られているわけか…まぁいいか…縁下 青群だ。

よろしく頼む。

 

まぁこれからは天狗が山を治める時代になるのだろうな…」

 

「そうですね…私は今の天狗社会は苦手なんですが…」

 

「鬼は別に身分なんて気にしないからな…。

強さが全てってやつだ。」

 

「あはは、鬼らしいですね〜。」

 

 

文はようやく口調の堅苦しさが抜ける。

そもそも妖怪の山での鬼の地位とは天狗の上であり、上司でもある鬼に気軽に話すなんて普通はできやしないのである。

 

天狗を嫌う勇儀ならば気軽に話しかけてくる天狗なんていたら殺しに来るかもしれない…。青群はそんなことを思いつつ文に顔を向ける。

 

 

「ひとつ聞いていいです?」

 

「なんだ?」

 

「なんで貴方は人を救うんですか?」

 

「私が半分人間だから…かな。

鬼ならば普通人間を嫌うものだ、人間を攫って食うのが鬼だ。

でもね、私にはそんな感情は無かったんだよ。

 

 

…。」

 

「ほほぅ…ん?どうしました?」

 

「いや、最初に仲良くなった人間が自分に似ていたからかもな、と思っただけだ。」

 

 

青群の頭に秋の助と霞の顔が思い浮かぶ。

2人は里から気味悪がられ、追い出されれた。青群は汎用だからといじめられ続けた。

彼女は自分の境遇に似ている2人を助けたいと思って今まで護衛を続けている。

 

 

「あやや、自分に似ているですか…

人間が鬼に…私としては信じられませんね。」

 

「だろうな…やはり私が半妖だからなのだろうな。

 

おっと、長居しすぎたな。済まない助かったよ、文。」

 

「文!?いえ、まさか鬼からそう呼ばれるなんて…。

ふふっ、こちらこそいい話が聞けましたよ。

青群さん、ありがとうございました!」

 

 

文はニコニコしながら山へ帰っていく。

青群は鬼にしては異質な少し律儀な性格をしており、手伝ってもらった彼女に何もしないというわけにはいかなかった。

その為、彼女に敬意を込めて文と呼ぶことにした。それは青群が友と認めた証である。

 

そして、彼女が居なくなるのを見届けると家のなかに入っていく。

 

 

「終わったんですー?すごい音なってましたけど…。」

 

「あぁ死体は掃除した血の方はどうにもならんな…。」

 

「ありゃりゃ…まぁそこは慣れていきましょ。現に私慣れましたし〜!」

 

「「…。」」

 

 

霞の嗅覚に呆れる青群と秋の助。霞は2人を見て『えっ?』と首を傾げるが、そんな彼女を見ないようにして2人は晩御飯の用意をする。

 

 

「えぇ!?ふーん!いいですよ、私には楓ちゃんがいますし!

 

あれ?楓ちゃん!なんでお父さんの方へ行くのぉ!?」

 

 

そんな風に夜まで盛り上がっていく4人であった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

それから数ヶ月が経ち、青群は妖怪の山で1人もう誰も来ることは無い楓の葉が舞い散る修行場へ来ていた。

 

とある切り株に腰掛けぼーっと楓が落ちる様子を眺めていた。

 

何故彼女があの二人の護衛をしていないかと言うと、里での長が決まるため招集されたらしい。

 

その場は流石に鬼である青群は立ち入ることは出来ず、慧音が『3人は私が家に届けておくから大丈夫だ。お前もたまには休め。』と言われた為1人残されたのだ。

 

とは言っても彼女に行く場所、趣味などは無く何をしようか考えてみたところ、この場所に行くことに決めたのだ。

 

 

「変わらないな…ここは…」

 

「えぇ、変わりませんね。」

 

 

青群は突然背後から聞こえた声に反応し、すぐに臨戦態勢に移る。

そこに居たのは金髪を長く伸ばしナイトキャップを被った女。

 

 

「別に貴方と戦いに来たわけではありません『縁の下の大鬼様』

 

少し話でもしませんか?」

 

「名も言わん相手と話す気なんて私には無い。」

 

「私が人間と妖怪の共存を目指している妖怪だ。と言ったら?

貴方の母親の目指していたものでしょう?」

 

 

 

青群は少し殺気を強くする。『軽々しく母について話すな。殺すぞ?』と言うが、女は『ですが、本当のことでしょう?』と口元を扇子で隠しながら言う。

 

そう言われ、青群は押し黙る。目の前のこいつは以前慧音が話していた妖怪だと分かったが、なぜ母のことを知っているのか。溢れ出る妖気の点からもこいつは危険だと体が訴える。

 

(こいつは私や勇儀達と同等に渡り合える…)

 

そう思っていたが、彼女自身も人間との共存には興味があった。

 

共存は凛蝶が望んでいたことだから。

 

 

「分かった、話を聞こう。」

 

「ありがとうございます。

では縁下 青群様に質問します。

 

貴方は人間と妖怪の共存ができると思っていますか?」

 

「ん?

まぁ出来ないとは思わないさ。

でも、それは本当に遠い道だ。妖怪の寿命でも足りないかもしれない。

加害者と被害者の共存なんて両者によっぽどの事が起きないと交わることも事も無い。」

 

「なるほど…もしそれが叶う場ができたら貴方は来て貰えますか?」

 

「あぁ、もし出来たならな。」

 

「ふふ、なるほど。話は以上です。」

 

 

女は不敵に笑うと目の前に黒い隙間を表す。

その光景に青群は驚くがすぐに『こんなので良かったのか?』と聞くと、女は『十分ですよ。』と隙間の中に入っていく。

青群は女に対して『何がしたかったんだ…』と呟く。

 

 

「あぁ忘れていました。

私の名は『八雲 紫』と申します。また会う機会があればどうぞよろしくお願いします。」

 

 

女はそう言って隙間の中に入り隙間が消えると彼女もいなくなっていた。青群は不思議なこともあるものだと再び切り株に座る。

 

そして、紫の言っていた人間と妖怪の共存について色々と考える。

 

 

「もう鬼は山から消えてしまった…残ったのは共存に関しては絶望的な天狗だぞ…」

 

「私としてはそれでもいいんですけどね…」

 

「急に現れるな…文。」

 

「あやや、すみません。面白い組み合わせだったので。」

 

 

突然入れ違いに現れた文にため息を吐く青群。

いや、彼女は紫が離れるまで待っていたのだが…

 

青群は1人で少しぼーっとしたいのにな…と思っていた。

未だに忘れられない母との記憶に耽りつつ…

 

だが、友との話も悪くないと思い、再び文に目を向ける。

 

 

 

「天狗がある限り共存は難しそうですね〜。なんせ上があれですから…。

 

その点鬼は簡単ですよね。力を示せばいいんですからね。

いやそれこそ1番難しくないです?」

 

「何故私に聞く…。

まぁ人間が私達に勝てるかといったらほぼ不可能だろうな…

それに、私達は卑怯なやり口を1番嫌うからな。」

 

「あやや、だったら天狗は1番嫌われそうですね…。

でも、そう思うと青群さんはやはり不思議ですね〜。

 

ところでなんで他の鬼は落ちていったのに留まるんです?」

 

「まぁ鬼の中でも私は異質だからな…。

 

あの家族の人生を最後まで見届けるためだろう。人間の寿命は短い、それくらいならあいつらも待ってくれるさ。」

 

 

青群がそう言うと文は『やっぱり変わってますね〜。』と微笑む。

 

彼女は無意識に『お前とは話しやすいな…』と呟いていたが、それは生憎文には聞こえていなかったみたいだが…。

 

凛蝶の死を受けて彼女の放つ殺気というのは刺すようなものから包み込むようなものへと変わっていた。

それ故に前よりも天狗共が話しかけてくる。以前から天狗の1部は彼女に興味があったみたいなのだ。

 

 

「全く今日はいろんなやつに絡まれるな…」

 

「そう言ってなんだかんだで色々と話してくれるところも変わっていますね〜。」

 

「うるさいぞ。全く…。」

 

「あやや!?額が!?額が!?」

 

 

青群は少し調子に乗っている文の額にデコピンする。文はとても痛そうだったが彼女はそれを無視して楓の葉を1枚手に取る。

 

 

「私は思うんだよ…どんなに強い妖怪だって、人間だって心の強さは同じなんだろうって。大事な人を無くせばどんなやつだって悲しむ。

心が強いやつはそこから立ち上がるスピードが早いんだだろうな…。

 

そう思うと私はまだまだなんだろう…。」

 

「急にどうしたんですか…。まぁ確かにそうですね。

今目の前にいる大鬼さんも何か抱えているみたいですし。」

 

「ふふっ、確かにそうだな。」

 

 

青群はそう言うと切り株から立ち、そして楓の葉を手放す。

 

いつまでもあの人にすがらないために。

 

少しの間空を見上げ、文を見て微笑む。その様子に彼女は首を傾げる。

 

 

「どうしたんです?」

 

「いや、ただお前にはなんでも話してしまうなってな。」

 

 

文は顔をほんのり赤らめ『なんですそれ…新手の告白ですか〜?』と言う。

そんな彼女に再びデコピンを放つ。

なぜ?彼女にはこんなに話してしまうのだろうか?青群はそう考える。

長年付き合った訳では無い、ただ数ヶ月に1度あっただけ…。

彼女は性格面だけでなく、ただ心にポッカリと空いた穴を塞ぎたかったのだ。

だから、自分について聞いてくれる文に心を許した。

 

 

「ふぅ…もう夕暮れ時だ。私はそろそろ戻ろう。

楽しかったよ文。」

 

「あやや、もうそんな時間でしたか…。私も上の天狗達に付いておかないといけませんね。

はい!私もですよ〜、また良ければお話しましょう。」

 

 

そう言って2人は別れていく。山を降りる青群の顔は以前よりも穏やかなものになっていた。

家の前はまだ腐臭が酷いが時期消えるだろうと血の染み込む地面を踏みしめ家の中へ入っていく。

 

 

「誰もいないか…。」

 

 

中には誰もいなかった。ただ作りかけの御札とお盆に乗せられたご飯があるだけ。

その隣には『多分遅くなりそうなので先に作っておきました!どうぞ食べてください!』と置き手紙があった。

 

青群は静かに夜飯を食べだす。その料理は冷たいながらもとても美味しかった。

『ふふっ霞はいい母親だな…』と呟く。

彼女はその後、何をしようかと思うが御札は作ることも出来ない。掃除はしっかりとされている。

 

 

「久々に料理でも作るか…3人のために。」

 

 

青群は調理場にて遅くに帰る3人へ夜飯を作り出す。そしていつも通りのテーブルの上3箇所にそれを置き『ご飯ありがとう、美味しかったよ。』

と手紙を書く。

 

青群は思う『やはり3人がいないととても退屈だな…』と。しかし、いつかは別れのくる人間。

彼女はその日まで私も強く生きねばな…と思うのであった。

 

そして、扉の前にて座り込み眠りに落ちる。

 

 

 

悲劇の時は近い。




作者は古戦場で忙しかったです。


青群は基本的に色んなものを失っていきます。悲劇の多い人生で性格はどんどんと変わっていきます。


最後まで読んで頂きありがとうございました。
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