学校が本当に忙しくて全然更新できなく、今回はお詫びの意味もあり少し長めになってます。
ついに学園祭が始まりました。
さらにユイトと意外なメンバーに恋愛フラグが……!?
22話、よろしくお願いします。
『九重奏(ノネット)の 音色を
聴いた夢ノ木は天に向かつてのびてゆくかな』
「我ながら上手い歌を詠ってしまったぜよ……それでは、準備に向かうか」
朝の5時。
静かに玄関扉を閉め、ユイトは家を出た。
街が薄明るい。太陽が顔を出し始めたようだ。
今日は文化祭当日。
μ'sにとって、いや、それだけではない、音ノ木坂学院にとっても勝負の日だ。
今日の結果によって、廃校になるか否かが決まる。
この日のために、ユイトは幾つかの計画を練り、進めてきた。
しかし、当日である今、ユイトができることは、万全の体制で彼女達がパフォーマンスできるための準備をすること、そして、祈ることのみとなった。
音ノ木坂の運命は、9人の少女に託されたのである。
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「ふぅ……学校に6時前に着くなんて初めてだぜ……」
そう独りごちながら、ユイトは
グラウンドの門をくぐる。
既にそこには、生徒会が発注した特設ステージの姿があった。
業者によって夜のうちに組まれていたようだ。
改めて生徒会長である絢瀬絵里と、副生徒会長である東條希の手際良さと、リーダーシップに脱帽する。
そして、ユイトが自宅から持ち出したノートパソコンにビデオカメラを接続する。
それを、数百台パイプ椅子が並べられた客席の後ろに設置する。
これでライブの様子を生中継することができる。
ネットワーク環境も、生徒会に整えてもらった。
もちろん、見にきた中学生に入学意欲を持たせるというのが今日の本来の目的だが、この機を利用し知名度を上げることも重要だと感じていた。
どちらにせよ、失敗のできない舞台である。
そして、ユイトはあらかじめ発注してあった段ボールに詰まったペンライトの山を確認する。メンバーがそれぞれ希望したイメージカラーのペンライトが入っている。
これをお客さんに持たせることで、ライブの盛り上がりの様子をわかりやすく視覚化して、全国に中継できる。客席がカメラに映るように、客席の後ろにカメラをセッティングしたのはそのためである。
ちなみにこれも生徒会の予算で買ったものである。
生徒会って最強。
その時、後ろから誰かの足音が聞こえた。
それも二つ。
「ユイトか……?こんな朝早く何やってんだ?」
その声に振り返ると、同じクラスに所属する
ノートパソコンを抱えた小林シンイチと今井モナの姿があった。
突然の来訪者に驚くユイト。
「俺はμ'sのライブの準備をしてたんだが……
お前たちは?」
「わたしたちもμ'sの……」
「おい!言うなって!」
もなの言葉をシンイチが遮る。
「分かってるって。お前たちもμ'sのためにきてくれたんだろ?」
「はぁ……バレてたのかよ……どうしてそれを?」
ユイトの言葉に、驚いた顔で問い返すシンイチ。
「今まで怪しいと思ってたんだが、今日確信したぜ。
お前たちとμ'sが一緒にいるとこ何回も見てるからな」
「そ、そうか……でも俺は真姫タソ推しなんだ!
それだけは譲らないぞ!」
吠えるシンイチ。
「よし、じゃあ準備始めるか!」
「スルーするなぁぁぁーっ!!!!」
シンイチの叫びが、早朝のグラウンドにこだました。
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μ'sメンバーもまた、学校に密かに集まり、自主練を行っていた。
「ついに今日が本番ニコ……全部出し尽くすニコ……」
そう言いながらも、緊張からかにこは神妙な面持ちである。
「音ノ木坂のみんなに、いや、全国のみんなに、μ'sの全てを見てもらおう!」
穂乃果も、握った拳が震えている。
「そのためにも、今は練習ね。休憩は終わり。次で最後の合わせよ」
絵里が練習の指揮をとり、μ'sも最後のツメの段階まできていた。
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そして、9時きっかり。
学園祭が幕を開けた。
「音ノ木坂学院スクールアイドル、μ'sをよろしくお願いします!
ライブは昼公演が10時から11時まで。夜公演は6時から7時となっております!」
学園祭が始まると共に、校門の前で声を張り上げ、来校者にμ'sのチラシを配るユイトの姿があった。
ちなみに、チラシはユイトの手作りである。
『芸術も出来なければ、真の文人とは言えない』
と自分1人でデザインし、コンビニに行き自腹でコピーしたのである。
その数500枚。
カラフルな紙面にμ'sの9人のイラストと紹介が書かれている。
ユイトの愛がこもった、チラシであった。
「学園祭始まっちゃったニャー……」
「……そうだね」
部室の窓から外を眺める凛と花陽。
「ホントに120人も入りたいって人、集まるのかニャー……?」
「どうだろうね……私自信ないよ……」
「花陽、そんなことを言ってはダメです。今まで私たちがやってきた事を、信じましょう」
絵里が花陽の肩に優しく手をのせた。
「絵里さん……」
「私のことは絵里さんじゃなくて、『えりち』でいいわよ」
絵里が花陽に微笑みかける。
「はい…………えりちー」
花陽も小さな声で、それに答えた。
「かよちん顔真っ赤にゃー」
「凛ちゃん言わないでーー」
顔を赤くして困った表情の花陽を見て笑う絵里と凛。
「えりちも良かったやん。花陽に『えりち』って呼んでもらえる様になって」
そこで、希が絵里に声をかける。
「そ、そうね……」
「えりちーも顔赤いにゃー!」
凛の言葉で、あたりは笑いに包まれた。
ステージ前の緊張もいつのまにか和らぎ、いつものμ'sに戻っていた。
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そして、開演十分前。
ユイトが全員を舞台裏に集めた。
「みんな、今日で今後の音ノ木坂の命運が決まる。
気合を入れていこう!」
「うん……!」
穂乃果を初めとする全員が、ユイトの言葉に静かに頷いた。
「だけど、音ノ木坂がどうなろうと、君たちに責任は無い。ここは、元々廃校が決まっていた場所。だから、もし200人集まらなかったとしても仕方ない。運命として受け入れるしかないんだ。だけど……μ'sなら、その運命を変えられると、俺は信じてる。頑張ろう!」
沈黙。全員がユイトの言葉を黙って噛み締めていた。
「そういえばユイトっていつからこんなリーダーみたいになったんだっけにゃー?」
「確かに……そうですね」
凛の言葉に海未も同意する。
「え、偉そうだったか……すまない……」
頭を垂らすユイト。
「違うにゃ!凛は……凛はそんなユイトがカッコいいと思うにゃ!」
ユイトが何故ここにいるのか。それは本人自身にも、きっとわからないだろう。しかし、今のユイトを、彼女ら自身にも自覚は無いだろうが、μ'sの9人が導いたことは事実である。
「……そっか、ありがとう。俺も全力でサポートするぜ!
おっと……そろそろ時間だ。みんな、楽しんでこい!」
「うん!それじゃみんないくよ!」
穂乃果の声に、9人が手を重ねる。
『μ's、ミュージックスタート!』
9人はステージへと駆け出した。
「今だ!シンイチ!」
ユイトが叫ぶ。
「わかってるって」
シンイチがスピーカーに接続したノートpcのエンターキーを叩いた。
そして、力強いピアノ伴奏が流れ始める。
と共に、μ'sが舞台上に現れ、拍手に包まれた。
「みなさんおはようございます!
1曲目は、『START:DASH!!』です!」
穂乃果の曲紹介。
そして、伴奏が終わる。
「I say……」
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無事に1曲目を終え、胸を撫で下ろすユイト。
そして、休みなく2曲目が始まる。
「聴いてください……『Mermaid festa vol.1 』」
海未の曲紹介と共に、まるで波の音のようなマラカスとフラメンコサウンドの伴奏が流れ始める。
「No,とめないで あなたから熱くなれ……」
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「最後に、『ススメ→トゥモロウ』です!」
ことりの曲紹介で、会場が再び歓声に包まれた。
「だって可能性感じたんだ……」
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最後の曲も、無事に終わった。
そして、穂乃果のMCに移る。
「私達は、音ノ木坂学院の廃校を止めるために頑張ってきました。今ここにいる中学生の皆さんに、この学校に入れ……とは言いません。もちろん超〜言いたいですけどね」
会場が笑いに包まれる。
「だけど、本当に言いたいのは、音ノ木坂学院は、いや、ここ音ノ木坂が、素晴らしい場所であるということ。
確かに、ここらへんは何か特別なモノやコトがあるわけではありません。だけど、だからこそ良さがあるはずなんです。言っても伝わりませんよね。私も、この間までは全ッ然わかりませんでした。でも、私たちの姿を見て、何か感じてくれれば、嬉しいです。みなさんありがとうございましたーーー!」
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「すごい……入場者ランキング1位だって……」
動画サイトへの生放送を撮影していたもなが、歓喜の声をあげた。
「8888888888888」
「みんなめっさ可愛いんだがwwwww」
「喋った子、めっちゃしっかりしてるなー。しかも可愛い」
「これA-RISEと同じ地域のグループだよな」
「じわじわ人気上昇中のμ'sだろ知ってるぜ」
「夜公演も楽しみだわwww」
こういった多くの感想がコメント欄に書き込まれていた。
こうして朝公演は無事に幕を閉じた。
しかし、夜公演で後にスクールアイドル史に残る、ある出来事が起こるとは、この時誰も予想していなかった。
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「めちゃくちゃ緊張したにゃ〜」
「そうですね、でも無事に終わって良かったです」
9人が舞台裏に戻ってきた。
ユイトが声をかける。
「みんな、良かったよ。お疲れ様、夜も頑張ろう!」
「はい!」
穂乃果が大きな返事を返した。
「また30分前にはここに集合してくださいね。それじゃあ解散!」
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夜公演までの間、各自自由行動である。
その中で、凛と花陽は他の部活やクラスの出し物を見て回っていた。
「凛ちゃん、ここ入ろうよー」
花陽が指差したのは、お化け屋敷。
「うぅ……こういうところは苦手にゃー」
「いいからいいからー」
「かよちん腕をはなすにゃーー!」
凛は花陽に引き摺られ、お化け屋敷へと突入していった。
お化け屋敷は、新聞紙が一面に吊るされており、それで道が作られている。途中で、潜んでいるお化けに扮した生徒が脅かすという仕組みだ。会場は教室だが、窓も新聞紙等で塞がれており、足元と1メートル先ほどが辛うじて見える暗さだ。
「うぅ……くらいにゃぎゃぁぁあああっ!!」
「な、何?凛ちゃん?」
「こ、これ……」
凛が指差す先には……机に置かれた明らかにマネキンと分かる生首があった。
「凛ちゃんはこれくらいで驚けて逆に羨ましいよ……」
「わぁぁぁーーーっっ!!!」
全身をトイレットペーパーでくるんだと思われる、ミイラに扮した男が奇声を発しながら追いかけてきた。
「きゃぁぁぁっ!!」
思わず花陽も叫んでしまう。
「怖いにゃーーーー!ユイトーーー!!」
凛の方は、花陽を置き去りにして全力ダッシュである。
「はぁ、はぁ、やっと出られたにゃー」
「そうだね……そういえば凛ちゃんさっき『ユイト』って叫んでたよね?」
「な、何の事かにゃ〜?」
「凛ちゃんもしかしてユイト先輩のこと……」
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そして、公演30分前。
「よし、みんな集まったか。この夜の公演には朝よりも多くの人が既に集まってきている。
緊張せずに、朝と同じイメージで行こう!それじゃあ準備を始めてくれ」
μ'sメンバーは衣装の着替えや化粧等のチェックを始める。
その時、ユイトの元へモナがやってきた。
「ユイト、照明の調子がちょっと悪いみたい。
チェックしておくわね」
「おう。頼んだ」
この時、ユイトに起きた、微かな胸騒ぎ。
だが、それも緊張のせいだと納得することににした。
そして、開幕の時間がやってきた。
『μ's、ミュージックスタート!!』
9人はステージへ駆け出して行った。
「しかし、何なんだこの胸騒ぎは……」
ユイトは1人、何故か得体の知れない不安を感じていた。