前話以前から伏線を貼りまくっていた、大事件が発生。
笑えないヤツです。
乗り越えるヒントも、伏線として隠されているので、一緒に考えてみていただいても楽しいかもです(笑
μ’s始まって以来の、シリアス展開!
ユイトはどう乗り切る?
「まだ始まらないのか?」
「6時開始だから、もうそろそろだな」
「ことりタソ……ハァハァ」
現時刻、午後6:00。
紅く染まった夕空に、ステージを照らすライトが輝く。
「みなさーん!こんばんは!」
夜公演は、その穂乃果の挨拶から始まった。
(昼公演よりも、人が集まってる……)
穂乃果が、客席を見渡す。
客席、だけではなくグラウンドが、μ’s
を見るためにだけに集まった客でいっぱいだ。
多くは学生だが、
推すメンバーが背中に描かれた法被を着たり、缶バッチを付けたりしている客もいる。
客それぞれが思い思いの格好で、μ’sを応援している。
そして、それぞれが、配布された、思い思いの色の、ペンライトを持っている。
ここに集まった多くの人は、『ラブライブ!』のサイトや、生放送、その他SNSでμ’sの事を知ったのだろうと、穂乃果は推測する。
『ラブライブ!』だけでなく、インターネットを通しての人々の繋がりの強さ、穂乃果は、全身で感じていた。
ーー40分前ーー
(μ’sのライブ……来てくれた人はどう思ってるんだろ……)
本当は、他人の評価を気にすることなんて、イケナイ事だと分かっていながらも、穂乃果は、スマホを使って、短文投稿SNS『つぶやいたー』で、『μ’s』と検索をかけてしまう。
すると、μ’sに関しての、たくさんのつぶやきが現れる。
「メチャクチャ良かった!曲が耳から離れない!」
「本物、ヤバかったwwかわいすぎるw」
「あんな可愛い子がいたら、絶対入学するお。だけどワイ、30代ニート」
時には、辛口のそれもあった。
「パフォーマンスは頑張ってたけど、やっぱりまだ素人感がね……」
しかし、穂乃果の目を1番引いたつぶやきは、これだった。
「彼女達は、この半年、学校のために、また、夢のために頑張ってきました。今、世の中では、『夢』を見ることが難しくなっています。しかし、だからこそ『夢』の持つ力は大きいのです。輝きたいという、楽しみたいという、単純で、それでいて大きな、『夢』です」
「これをつぶやいた人は……風間……ユイト!?」
「【拡散希望】 μ’s夜公演、午後6時から音ノ木坂学院グラウンドで行います。ぜひおこし下さい。来れないという方は、同時に生放送もしますので、そちらをご覧ください」
「宣伝も、ちゃんとしてくれてるのね……全部、私達のため……」
ーーーーーーーー
(風間くん……思えば、やはり風間くんのおかげで、μ’sはここまで来れた気がする。それはみんな思ってるよ。
言えなかったけど……ありがとう)
「一曲目!『ススメ→トゥモロウ』いっきまーす!」
音ノ木坂を揺るがす、歓声が沸き起こった。
「彼女達にとって、ここからが正念場ね……」
そして、グラウンドの隅で、μ’sを見守る影が3つ。
ーーーーーーーーー
4曲目まで、昼公演と同じラインナップが、終了した。
そして、夜公演は、遂に新曲を披露する。
「みなさん……次は、新曲、『僕らのLIVE 君とのLIFE』です!」
穂乃果の言葉に、再び会場が湧く。
(凄い盛り上がりですね……燃えてきます)
海未は、心の中できつく拳を握る。
(やっぱりまだちょっとだけ恥ずかしいけど……楽しい!)
今回の衣装をデザインもしたことりは、ライブに楽しさを見出していた。
(ふ……真姫ちゃんがいるとなれば、このくらいの動員数は当たり前よ!)
真姫のテンションも、既にマックスだ。
しかし、真姫目当てのファンが多いのも事実……!
恐るべし、第6回人気投票を制覇しただけの実力……!
(終わったららーめん食べたいニャー。
かよちんと真姫ちゃんといくニャー!)
全てのエネルギー源は、その留まることを知らない食欲……!
しかしそこが魅力でもある。
安定の凛クオリティ!
(新曲……初めのステップは……あれ、どどど、どうするんだっけ……?誰か助けてー‼)
緊張のあまり、ダンスをド忘れしてしまう花陽。
しかし、緊張する、という事は失敗を恐れているということ。
つまり、本人に自覚はないかもしれないが、より良いパフォーマンスをしたいと思っているということだ。
その誠実さと謙虚さが、緊張につながっているのだ。
(生放送でにこの存在をアピールするニコ……!そうすればここあとこころも、あんな貧乏生活から脱出ニコ。ありとあらゆる企業、アイドルグループからオファーが殺到するに違いないニコ……!)
飽く無き野望を抱くにこ。
しかし、兄弟を想う姉の気持ちは、本物だ。
ユイトが舞台裏で、シンイチに合図を出す。シンイチの操作で、新曲のイントロが流れ始める。
9人はそれぞれのポジションにつく。
しかし、ユイトの胸騒ぎは、収まらない。
丁度その時だった。
バチン! という大きな音。
そして、ステージのライトが……消えた。
「何があった!?」
ユイトが叫ぶ。
「わかんねえ!だけど、電気が供給されてないみたいだ……!」
シンイチの悲痛な叫び。
その時、ユイトの脳裏に予想されたのは、最悪の事実。
ライブに用いる電気は、学校から引っ張ってきているものだ。
当初予定では、日頃から大量に電気を消費する場所であるがために、電気量は充分だと予想していた。
見積もりの段階で、その予想は正しかった。
しかし、グラウンドや校舎内では、予想以上に屋台などが出店されており、さらに、μ’sのライブの効果で、賑わっている。
結果として、学校が供給できる電気量をオーバーしてしまったのではないか……!?
それしか、考えられない。
失態……!軍師として、決して犯してはならないミス!
甘い……! 甘かった……!
「ブレーカーを上げに行ってくれ!」
近くにいた生徒会役員を、校舎内へ走らせる。
しかし、これでライブはもうダメ……!
ーーーーーーーーーー
舞台上では……
突然の事態に、客席がざわつく。
「みんな、落ちつくのよ……」
(何があったの……?恐らく、非常事態だわ……)
絵里は、戸惑うメンバーを、必死になだめる。
それでも、彼女もパニック寸前だ。
しかし、1人、動じない少女がいた。
(ユイトなら、この困難を乗り越えられるはずや……
タロットカードが……ウチの心がそう言ってるんや……!
頼むで!ユイト!)
ーーーーーーーーーーー
「ダメでした……!ブレーカーを操作できるのは職員だけなのですが、先生方がいらっしゃいません!」
「使えねえ……ッ!!」
ユイトが声を荒げる。
「内部電源があったから、曲だけは流せそうだ!しかし照明が……」
シンイチも復旧に急ぐが、電気が来なければ無駄……!
(どうすればいい……)
ユイトは考える。
(考えろ……考えろ……俺は、こんなところで彼女達の夢を断ちたくないッ‼)
中止するしかないのか……
しかし、μ’sは全国に失態を晒すことになる。
「くそぉぉぉっっ‼」
ユイトが、叫んだ。
その時、ユイトの必死の想いが、天に通じたのだろうか、神が舞い降りた。雷に撃たれたような衝撃が、ユイトの身体を走る。
「……!?……待てよ……いける……いけるぞ!シンイチ、マイクをよこせ!そして、9人を一旦下げろ!」
「おう…!」
戸惑いながらも、マイクを渡すシンイチ。
9人が舞台裏に戻る。
「何があったニャー!?」
「心配です……」
「今は……ユイトを信じるんや!」
深呼吸して、ユイトはマイクを通して、観客に語りかける。
「こんばんは、みなさん。サプライズイベントとして、最後に、彼女達『μ’s』が、『μ’s』と呼ばれる所以、その彼女達の美しさを、幻想的な雰囲気の中で、十分にご堪能あれ……!」
「なんだなんだ……!?」
「事故じゃなかったのかよ!?」
会場がまた、湧いた。
「えwwサプライズイベントかよwwwww」
「手が込んでるなwwwww」
「期待大です!」
と、生放送にも、どんどんとコメントが書き込まれている。
「いいですかみなさん、先ほど配布したペンライトを、ステージの周辺に投げてください。他の人に当たらないよう注意して投げてください。また、危険なので、ステージ上でなく、周辺に投げ入れて下さい」
観客らは、指示に従い始めた。
ステージまで届きそうにない、後ろの方の客は、前の客にペンライトを託す。
そうして、リレー方式で、ペンライトが、少し高く組まれたステージの周辺に、集められた。
これが……この展開を打破するアイデア!
事前配布したペンライトを、照明として、用いる!
それらは、間接照明と化し、夕闇の中でステージを7色の光で、幻想的に照らしていた。
「凄いニャ……」
「だから言ったやろ?」
「ユイト……流石です……」
9人も、ユイトのその神的な機転に、心を震わせていた。
「みんな……もう一回だ!」
ユイトが叫んだ。