ラブライブ!if-モシモノ世界、カガヤク未来-   作:あさと

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にこ登場です。


7話 「にこ」

突然だが、俺、風間ユイトは今日、正式にμ`s専属の作詞家になった!...のだ

が...。

 

 

「不来方の お城の草に寝転びて 空に吸われし十五の心」

 

この句は、石川啄木が中学生の時、いろいろあって授業をサボ

り、城跡の公園で寝転んでいた時の

心情をうたった句だ。

ユイトは、この句が気に入っている。

彼も中学生時代辛い思いをしている。だからこそ、この句にうたわれて

いる、悩みを抱えている中での、

未来への不安や、期待、そんなものに彼は共感したりしたのだった。

 

いやぁ......いい句だなぁ......。

とユイトが俳句の世界に浸っていると。

「風間くん、何を読んでるの?」

クラスメイトでスクールアイドル「μ's」の一員でもある、南こと

りが、

話しかけてきた。

「これは、断じてエロ本ではなく、詩集みたいなものだよ」

本を閉じて、ユイトが答える。

「…分かってるよっ。でも、詩集を読むなんてさすがμ'sの作詞家!」

あれ?作詞したことは、海末と真姫

しか知らないはずなんだけどな...。

と彼は記憶を辿る。

「どうして南さんがそれを?」

「海末ちゃんに教えてもらったの、

海末ちゃんが書くのに悩んでたとき、

風間くんが助けてくれたって。

だから........風間くんをμ's専属の作詞家に任命しまーす!」

「え!?いや落ち着けそんな急に言われても...」

「まあまあ、一ヶ月に一曲くらいのペースで書いてもらっても全然OKだよ!」

 

「それが大変なんですが...」

と言いつつも、俺は、しぶしぶμ'sの専属作詞家になることを決意

しました。

 

 

放課後

 

 

 

ユイトは、今日もまた、放課後に学校をうろつきながら、俳句のネタを探

していた。

 

こんなとこにもμ'sのメンバー募集のポスターが...。みん

な頑張ってるなぁ。

スクールアイドルか......

「って!ちょっと待てよ!そういえば、この学校って、もともとスクールアイドル居なかったか!?」

 

一年前の春

 

「新曲、『まほうつかいはじめました』

歌いまーすっ!

 

♪届け魔法 笑顔のまほう

みんなをしあわせに

にっこりの魔法 笑顔のまほう

なみださよなら

にっこにっこにこにこーだよ

ほら楽しくなれっ」

 

去年の新入生歓迎会、彼女たちもμ’sと同じく講堂でライブを開いていた。

お客さんは......たまたま通りかかったユイトを除き、やはり数人。

 

しかし…彼は彼女たちの姿、特に

リーダーの、矢澤....なんと言っただろうか、思い出せないが、彼女の純粋に、みんなに「笑顔」を届けたいというその真っ向ぐな、アイドルの原点とも言えるその姿は、

「いとをかし……」

つい古語で感想を言ってしまうほど、入学当初のユイトにとって、とても印象的だった。

しかし、それから彼女達の姿は見なくなった。

ユイトもまた、日常に追われ、いつしか忘れていた。

それでも、μ’sに素直に協力できたのは、心のどこかで、彼女たちが、その

リーダーの姿が残っていたからではないかと彼は思う。

 

 

 

 

しかし、彼女たちは、いったいどうしたのだろうか…。

「聞いてみるか…」

あたりを見回し、人を探す。しかし放課後なので人は少ない。

半ばあきらめかけたところ、廊下の曲がり角に少女の後ろ姿が見えた。

「あの、すみません…」

急いで声をかける。

「何…?にこになんか用?」

不機嫌そうな声でこちらを向いた少女は……。

「あぁぁっ!あんた!矢澤……なんでしたっけ?」

「にこ、矢澤にこよ」

不機嫌そうに名前を名乗るにこ。

「で、あんた誰?にこに何の用?」

「俺は二年の風間ユイトです。えっと、矢澤さん,

スクールアイドルやられてましたよね?」

「ま、まあね……」

にこが、怒りと悲しみが混ざったような表情になる。

「なんか、ごめんなさい…」

 

「解散したの…あんた知らないの?もともと人気も出なかったし、メンバーもや

る気がないし、意見も合わないし…

だから解散したの、みんなに笑われたわ…にこは、アイドルが大好きで、だか

ら、にこはみんなに笑顔を届けたかった…バッカみたいよね」

にこが自嘲気味に笑う。

 

「そんなことないですよ!俺は…俺は矢澤…いや、にこ先輩の曲…『まほうつか

いはじめました』て曲、好きでした!」

 

「なっ……そ、そう……ありがとう……でもにこはもう……

そうだ、あと、μ’sとか言うスクールアイドル気どりのやつらに会ったら言っ

といて、あんたたちは、スクールアイドルでも何でもない、素人だって、あいつ

らアイドルを舐めてる!」

「ちょっと…!」反論しようとしたユイトだっただが、彼女はそのまま去って

行った。

 

その後ろ姿を見ながら、

直感的に彼女の存在は未来のμ’sには必要だ、と

ユイトは感じた。

 

日も暮れてきたし、そろそろ帰ろうかと思い、教室に向かい、歩いている

と……。

何かが聞こえてくる。この曲は……

「『START:DASH!!』!?どこから…?」

曲が聞こえてくる場所を探すユイト。

「ここは…アイドル研究部!?失礼しまーす」

どうしてアイドル研究部から…それよりも、アイドル研究部なんてものがあったこと自体がユイトにとって

驚きであった。

そこには、先ほど会ったばかりの矢澤にこの姿。

彼女はアイドルのポスターだらけの閉め切った暗い部屋で、何やら動画を見てい

た。

「にこ先輩…って…!それ『START:DASH!!』じゃないですか!?」

彼女が再生していたのは、まぎれもなく、μ’sの動画、しかもこの間のライブ

の。

「あんた…ほんとしつこいわね、そんなに、にこがかわいいの?」

「にこ先輩、どうして!?さっきあんなこと言ってたじゃないですか!しかもそ

れ動画サイトですよね?

なんでアップされてんですか!?」

「スルーされた…まあいいわ、μ’sはまだまだ全然ダメダメよ!だけど…」

言葉を濁すにこ。

「だけど?」

「……なんでもない」

彼女は決してμ’sが嫌いなわけではない。ユイトはやはり直感的にそう感じた。

ただ、心の傷、彼女の結成したグループが解散してしまったこと、その思い出の

せいで、

ついμ’sにつらく当たってしまうだけなのだ。心の中では、きっと応援している。

だから、彼女は変装してライブに来ていた。カメラでライブの動画をとっていたのもよく考えれば、彼女だったと思う。

 

「じゃあ、にこ先輩が、μ’sに入ってくださいよ」

 

「はぁ?確かにーにこが入ればーお客さんもたくさん来るけどぉ

にこは入りたくないなー」

そのしゃべり方はなんとかならないのだろうかとユイトが若干イラついていると。

「にっこにっこにーを50回できたら、μ'sに入ってあげてもいいわよ」

 

こんな展開このあいだもあったような気がしたが……気のせいだな。

 

「暇だし、いいですよ」

 

「じゃあまずお手本を見せてあげるわ、こうして、」

顔の横に2つピースを作るにこ。

「にっこにっこにーってやるの!

これ大事だからね、テストに出るからね!」

 

「でません、じゃあやりますよ」

顔の横にピースを作り、無理やり笑顔も作る。

「あんた、笑顔はキモいわね......」

 

「よく言われますけど、笑顔『は』?つまり笑顔以外は…」

 

「もう!うるさいわね!早くやりなさいよ!」

 

「はいはい...じゃやります、にっこにっこにー!...にっこにっこにー!」

自分でやって恥ずかしくなってきたユイトだが、ここは耐えるんだ!

 

_______________________________

 

 

 

「やったよ母さん……ついに……ついに50回やったよ。

でも、大切な何かを失った気がするのは気のせいかな……」

 

 

「……あんた何言ってんの?あと、さっきのは嘘よ」

「なん.....だと....」

「でもぉー考えてあげないこともぉー

ないかなぁー」

そのとき、僅かだが、にこは「本当」にほほえんでいた気がする、作られた笑顔

ではなく、素の笑顔。

「はいはいわかりましたもういいです、代わりに、いいものが見られましたか

ら」

と言ってしまって後悔する。

「何!?にこのことが見れてそんなに嬉しかったの、じゃぁ、にこもぉ悪魔じゃ

ないからぁ毎日五千円でぇー

にこのちょっと恥ずかしい写真見せてあげないことも...」

「遠慮しときます」

あなた十分悪魔ですから...。

 

 

「そう、まあいいわ、あんたも今日からアイドル研究部の一員よ!感謝しなさ

い!」

この人頭どうかしてるな。いやほんと。

 

「遠慮しときます」

「な...そうね、わかった。

でも、ここには...いつでも来ていいわよ、部員も居ないし」

この人には友達が居ないのだろうか。

にこは友達が少ない(笑…。

「にこ先輩って相当なぼっちなんですね、わかりました、暇なときは来ます」

「にこはぼっちなんかじゃないわよ!」

「はいはい、しかし暑いですね...窓開けましょう」

カーテンを開き、窓を開けるとオレンジの光が部屋を照らす。

「はぁ...涼しい、それじゃ俺そろそろ行きますから、」

 

「♪届け魔法 笑顔のまほう

みんなをしあわせに」

 

にこが突然歌いだす。

 

「♪にっこりの魔法 笑顔のまほう

なみださよなら

にっこにっこにこにこーだよ

ほら楽しくなれっ

 

もう!こんなサービスめったにしないんだからね...!

あとね、μ’sのことはまだ認めないわよ!」

 

「はいはい」

 

「じゃあね!にっこにっこにー!」

 

 

そのときの、こちらを向いたにこの笑顔に、思わずユイトは見とれてしまった。

そして彼もまた、無意識のうちに、表情が綻んでいた。

しかし、

そのときの彼女は、本当に魔法使いだったような気がした。

みんなに笑顔を届ける魔法使い。

 

 

部室を出て、夕日を見ながら廊下を歩くユイトは、

ふと思いついた句を口にしていた。

 

「強西日 笑顔がふたつ にこにこと」

 

ちょっと上手いかな、と自画自賛しつつ、こんなんじゃ、賞には到底入れない

な...とため息をついたが、

 

彼はどうも、その句を気にいってしまっていたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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